2022年の6月から約4ヶ月間をかけて、デザイン・イノベーション・ファームTakramのニューヨークスタジオのみなさんに協力いただき、ビザスクコーポレートブランドのリブランディングを行いました。
今回大切にしたかったことの一つは、組織全体に「ビザスクらしさ」に対する納得感が生まれるように進めることでした。そのために、BrandCoreをつくり基準を言語化した上で、VIにもその要素を反映する進め方でプロジェクトを進めていきました。
今後コーポレートリブランディングに取り組む方々やビザスクに今後入社される方に向けて、今回のリブランディングの背景や具体的な進め方をまとめてみます。
ビザスクで、創業から10年弱ほとんど変わっていなかったコーポレートブランドをリブランディングすることになった理由は大きく2つありました。
リブランディングを行うことが意思決定されたきっかけの一つは、2021年11月、Coleman社を買収したことで、2社のブランドを統合する必要が生まれたことでした。
異なるカルチャーやバックグラウンドを持った2社が一つのブランドとして一丸となりMissionを実現するためには、顧客やアドバイザーはもちろん、社内のスタッフに対しても一つのブランドイメージを作り浸透させることが必要不可欠になりました。
またその統合ブランドは、日本だけではなく、世界各国で通用しうるものであるということも必須の要件となりました。
Coleman社とのブランド統合が決まる以前から、特にデザインチームの中で、制作物をつくる時に、ビザスクの”らしさ”が定義されておらず、つくられるものにブレが生じている課題感がありました。
創業から10年弱経つ中で、制作物、事業はたくさん生まれていましたが、”らしさ”が明確に定義されていないため、デザイナーごとにつくる制作物のトーンが揃っていない状態になっていました。
今回のリブランディングのタイミングでは、ただ2社のブランドを統合するだけではなく、ビザスクの”らしさ”をしっかりと言語化・見える化し、今後つくられるものが統一されるようにしていくことが重要でした。
Takramさんと協業しながら、約4ヶ月に渡る大規模リブランディングがスタートしました。
プロジェクトの前半では、Takramさん、経営陣も加えたPJメンバーと、ビザスクの”らしさ”の定義を言語化するために、Brand Coreを定義しました。
これまで定まっていたMission/Vision、Valueなどの「内向けの価値」だけでなく、「外向けの価値」であるValue PropositionやBrand Personality、デザイン基準を表すDesign Driversなどを新たに定義した。
いくつか、Brand Coreを定義するために行った具体的なプロセスを残しておきます。
まずは、”自分たちがステークホルダーに対してどういう価値を提供している何者なのか”という、「Value Proposition(ブランドの提供価値)」を設定していくことからスタートしました。
クライアントや関わるステークホルダーから見て、競合他社と比較してビザスクがなぜ選ばれるのか?を言語化したもので、情緒的な価値と機能的な価値の2つの側面を合わせ持っています。
Value Propositionは、ビザスクで元々定義されていた内部向けの7つのバリューと、経営陣へのエグゼクティブインタビューをもとに得たインサイトから抽出されました。
また、提供価値を明確にしていくために、ビザスクのブランド人格として「Brand Personality」を定義しました。
これからビザスクのブランドはこんな風にしていきますと打ち出した時に、デザインや言葉、ブランドのテンション等に落とし込むため、人格を定義しておくほうがコミュニケーションがとりやすいといった利点があります。
設定においては、Takramさんから提案いただいたブランドアーキタイプモデルという手法を活用しました。「Sage(知性・誠実さ)」「Hero(信念)」など、12個のタイプから、ビザスクはどういう人格要素で構成されているかをプロジェクトメンバーと話しながら決めていきました。
これらのプロセスを経て、Brand Coreを言語化した結果、ビザスクが目指す方向についてメンバー間の認識が揃った状態になりました。
そこから、Brand Coreをもとに、TakramのデザイナーさんにロゴやカラーなどVIへの落とし込みを行っていただきました。
主にポイントだった3点をまとめます。
まず、一番VIを理解する必要があるデザイナーの納得感を引き出すために、デザインチーム全員を巻き込んで、Brand Coreを具体のカラーやロゴの形に落とし込んだらどうなるか?をワークショップ形式で発散しました。
その後、みんなの意見や考えをまとめていただきながら、Takramのデザイナーさんにいくつかのロゴの案を作成してもらったのですが、この時点ではCEO端羽や、デザイナーそれぞれが思う”ビザスクらしさ”にまだ違いがあり、「これだ!」というものに絞り込んでいくことが困難でした。
そこで、Brand personalityで定義したビザスクらしい要素である「Sage(知性・誠実さ)」「Hero(信念)」などにもとづくカラーを用いたカラーパターンを複数用意。意味とセットでカラーを絞り込んでいきました。
それにより、主観ではなく、Brand Coreと組み合わせてカラーの良し悪しを判断できるので、納得が生まれやすい進め方になりました。
ロゴのシンボルマークの決定にあたっては、実はいくつかの制約事項がありました。
具体的には
ビザスクとColemanのどちらにでも対応できるものであること(異なるタイポグラフィに合わせることが出来るシンボルデザイン)
シンボルには「V」などビザスクだけを想起させるようなアルファベットは使わないこと
プロダクトなどで小さく使用する機会も多いため、複雑な構造は避けること
別の意味のあるモチーフに誤解されてしまうものや、既視感のあるものは避けること など...
これらの制約事項はプロジェクトの当初は言語化されておらず暗黙知的になっていた部分でしたが、VIのデザインレビューを繰り返す中で追加で出てきた観点、上記の制約事項と合わせて言語化し、都度可視化しながら進めていきました。
最終的なシンボルの形は、ビザスクがMissionとして掲げている「Insightful Connections」というキーワードを概念図として整理するプロセスを挟むことでようやく具体化されました。
ビザスクが体現したいMissionを概念図にしたことで、「知見と挑戦が一つずつ繋がって、誰かの新しい挑戦につながる。そうした知見と挑戦が連なって未来へとつながっていく」というコンセプトがよりリアルに浮かびあがり、ロゴデザインの核に繋がる着想を得ることができました。
こうして、ビザスクの新しいVIが完成しました。
これは、CEO端羽が度々社内でも引用する「Connecting the dots (点と点をつなげる)」からもインスピレーションを得ています。
複数の知見と挑戦の連なりでできているシンボルですが、明確な接続点は形では省略化された代わりに、異なるカラーが連なることで表現されています。
3色のカラーにはブランドパーソナリティの要素にも内包される「探索、信念、知性」をそれぞれ表現しています。また副次的な意味合いとして、従来のビザスクのブランドカラーである青と、Colemanのカラーである赤が合わさって紫が新たに加わっている様子は、2022年にあらたにビザスクのValueとして加わった「違いは強さ、共に創る」にも通じています。
様々なプロセスを経てこの案にたどり着いたとき、その場に居たプロジェクトメンバー全員に「まさにこれがビザスクにふさわしいデザインなのではないか。」という、一種のアハ体験のような不思議な納得感が生まれました。今まで時間をかけて決めてきたプロセスが1本の線となり、繋ぎ合わせることができた瞬間だったと思っています。
今回のリブランディングでは、これからのビザスクをつくっていくという意識で進めたことで、納得感の高いブランドシンボルにまで落とし込むことができました。
2022年12月に、社内に初めてVIを公開した時にも、Brand CoreとVIの繋がりについて、社内からも共感を得ることができました。
一貫したブランド認知をつくるために、まずはスタートラインに立ったところです。今後はプロダクトやツールに落とし込んで、実際の運用や反応などを見ていく予定です。
新しくなったビザスクを、これからどうぞよろしくお願いします。
CEO端羽とリブランディングに込めた想いや、プロジェクトの経緯について対談した記事はこちら
ビザスクのブランドストーリーが詳しく書かれたBrand Siteはこちら