DeNAデザイン本部の渡辺です。普段は本部内のマーケティング部の部長として、イベントの設計、組織や事業を横断してクリエイティブ周りを統括しています。
今回は昨年行われたイベント「DeNA DESIGN KNOCK」の設計プロセスについて書いていきます。デザイナーとしてイベント企画運営に携わる方の参考になると幸いです。
2022年4月に、DeNAに興味を持つデザイナーの方々を対象とした「DeNA DESIGN KNOCK」というイベントを開催しました。
DeNAはこれまで、数々のデザイナー向けイベントを開催してきました。イベントはその場の雰囲気を直に伝えることができるため、採用を目的とすることも多く、DeNAの「働く場所としての魅力」を発信できる有効な手段として捉えています。
また、自社の採用に留まらない、個々のデザイナーのブランディングやデザイン業界全体への貢献を目的としたイベントを開催することもあります。
どちらにせよ、僕らは勢いでイベントやってみようということではなく、その時々の課題や目的に沿って丁寧に体験を考え、イベントを開催するということを意識しています。
今回は、DeNA DESIGN KNOCKをどのように設計し、開催まで準備してきたか、背景やプロセスをまとめていきます。
2022年4月に行われたDeNA DESIGN KNOCKですが、その前年はデザイナーの採用を止めていました。「今年から再開するぞ」となったときに、施策の1つとして、DeNAに興味を持つ人に向けたデザイナーのイベントをやることに。
まず最初に行ったのが、現状把握と課題設定。
続いて、目的の設定。
課題をベースに「デザイン本部が積極採用していることの認知拡大。その上で興味を持ってもらい、採用検討者を増やす」という目的を立てました。また、ここで課題にもあった「現場の様子やメンバーの雰囲気を伝える」ためには“イベントの開催”が良いのでは、と何となくHOWもここで決めていました。
目的をきちんと整理しておくと、後々ブレそうな時にも立ち帰ることができるので、こういう基本的な作業を毎回しっかりと行っています。
次は、ターゲットの設定。
ターゲットを決めるときはいつもは慎重になりますが、今回は「どんな人に入社してもらいたいか=入社後に活躍しているメンバー」ということが部内の議論でも明確だったので、苦労せずに決められました。
社内でターゲットになるだろう数人を選定させていただき、雑談ではありますがDeNAに入る前はどのような会社にいたのか、どういった仕事をしていたのか、その時どうして転職しようと思ったのかなどをインタビューしました。
その中で見えてきたことは、DeNA入社前は制作会社に在籍し、日々泥臭く仕事をしてきた方が多かったこと。そのために、手元のデザインスキルがしっかりとあったこと。
続いて、イベントのコンセプト、つまり、もっとも大事なWHATの部分を決めました。
そこで参考にしたのは、面接や今回のインタビューで「どうして、制作会社から事業会社へ転職を考えたのか」という質問に対し、多くの方が「上流から関わりたかった」という回答をしたことです。
一見「たしかに」と思う内容ではありましたが、「上流」という言葉はまだまだ抽象度が高いように思いました。イベントのコンセプトを決めるためには、もう少し解像度を上げていく必要があります。その人にとっての「上流」とは何を指すのか、さらに一歩踏み込んで質問することを意識しました。
インタビューを終え、僕なりに分析したターゲットが持つ「上流」の定義とは、「ビジネスメンバーとの関わり」でした。これまで、デザインという領域を主に専門にしてきた方が、ビジネスに寄与できるデザイナーになることで事業に直接貢献し、顧客に驚きのある体験を届けたい、自身も領域の幅を広げることで成長できる機会があるのではないかということでした。
これを踏まえ、今回のコンセプトは、DeNAのデザイナーがどのようにビジネスメンバーと関わって仕事しているのか、いわゆる「DeNAでの上流」の解像度を上げていけるようなイベントにする方向で決定しました。
実際のイベントのコンセプトはもう少しブレイクダウンしました。
コンセプトが明確になったところで、次はアートディレクターの田中を巻き込み、ビジュアルづくりに入っていきました。
コンセプトは若干ビジネス寄りで硬い印象はありますが、世界観はターゲットであるデザイナーさんがパッと見たときに何かセンスが感じられるもの、また、イベントでは「デザイン本部の普段の様子」を見せたいと思っており、その辺りを田中とコピーライターの伊藤(デザイン本部のメンバー)と擦り合わせました。
伊藤からそれであれば「扉をノックして、覗きにくるイメージ」はどうだろうという提案があり、今回のイベントコンセプトやトンマナにも合いそうということで決定しました。また、「DeNA DESIGN KNOCK」というイベント名もこのタイミングで決まりました。
その後、「どのような場にするか」のイメージの言語化を進め、タグラインが完成。
タグラインが決まった後は、外部クリエイターのMACCIU(マチュー)さんに依頼し、キービジュアルを作っていただきました。
アートディレクターである田中には、コンセプトを決める段階から入ってもらい、社内インタビューのログを一緒に見たりしながら、共通認識を作っていきました。
そのおかげで、ディレクションしたアウトプットも全てイメージ通りに作られ、ほとんど手戻りはありませんでした。
DeNA DESIGN KNOCKは「DeNAのデザイナーのビジネスとの関わりを見せる場」であるので、当日はデザイン本部以外のビジネスメンバーにも登壇してもらい、デザイナーとの対談形式のコンテンツにすることに。
同時に、デザイン本部の雰囲気を伝えるために、普段のカジュアルな雰囲気を前面に出しました。
「現場の雰囲気や仕事の進め方がよく分かった」「転職を考えているので非常に参考になった」など多くのポジティブな声もいただき、イベントの当初の目的を少なからず達成できたと思っています。
また、このイベントがきっかけで面談につながるなど、実際の反響もあり、大変有意義なイベントになったと思っています。
イベントの準備プロセスを振り返ると、課題、目的、ターゲットの解像度を上げることで、コンセプトづくりからビジュアル作成までスムーズに進んだように思います。
これからも参加者が満足する、そしてデザイン本部の魅力が伝わるイベントを丁寧に作っていきたいと思っています。