SUPER STUDIO カスタマーエクスペリエンス室長の渕上です。創業初期から、弊社のメインプロダクトである「ecforce」をはじめとしたプロダクトやブランドデザイン、デザイン組織の立ち上げを担当してきました。
私たちカスタマーエクスペリエンス室では、プロダクト領域・マーケ領域・ブランド領域を幅広くカバーしており、デザイナーやフロントエンジニアを中心に、業務委託を含む計28名が所属しています。
EC領域のSaaS事業に加え、自社でD2Cブランドも展開するSUPER STUDIOの事業拡大を支えるデザイン組織の全体像や求められる役割、実際の取り組みについてご紹介したいと思います。
SUPER STUDIOでは、SaaS事業である「ecforce」と、「(ふつうの)ショップ」や「MEQRI」などの自社D2Cブランドを展開しています。
それぞれの事業が独立しているのではなく、自社D2Cブランドの運営で得たノウハウや知見を顧客へ還元し、システムの課題をecforceの機能開発にフィードバックしています。一方で、ecforceの新機能やアップデート機能は自社D2Cブランドで効果検証しています。こうした「ノウハウの循環」が私たちの事業開発プロセスの特徴となります。
SaaS事業とD2C事業を両立し、滑らかに顧客成果につなげていくために、デザイン組織としてカバーすべき領域は多岐にわたります。
例えば、ecforceのUIデザインやUXリサーチをはじめとしたD2Cブランドのサイト設計、店舗・ポップアップ・パッケージ等のデザイン、モーションや映像制作など、デザインする対象が広く、これらの領域をうまくカバーしながら、顧客成果に繋げていく責任を担っています。
これまで取り組んできた具体的な事例は、SUPER STUDIOのページでもご紹介しているので、併せてご覧ください。
ただ単に幅広い制作業務をカバーするだけでなく、複数事業とノウハウの循環を起点とした開発プロセスのなかで顧客成果を高めていくために、注力してきたテーマは以下です。
複数事業をつなぐ、デザインシステムの開発・運用
ノウハウの循環を事業成果につなげる
オンラインとオフラインの体験をつなげる
それぞれの具体的な取り組みをいくつかご紹介します。
先述の通り、SUPER STUDIOではSaaS事業であるecforceと、D2Cブランドを掛け合わせた事業形態を取っています。また、ecforceに関しては、EC事業における集客・顧客獲得・顧客対応・顧客育成/CRMなどの各フェーズを支援するプロダクトを提供しています。
これらのプロダクトを1つのサービスとして展開するうえで、デザインと開発を可能な限り効率化しながら、素早くサービスを改善できるようにしています。そのなかで、サービスとしてのブランドイメージを強く形成できるようにすることが重要です。 そのため、SUPER STUDIOではサービス開発初期から、デザインシステム「albers」を開発・運用してきました。
albersの構成は、デザイン原則などの基本要素、広告や資料などのタッチポイントに関わるブランドデザイン領域、プロダクトのUI/UXに関わるプロダクトデザイン領域から成り立っています。
また、蓄積したバックログを基にロードマップを可視化しながら、継続的な改善・運用も進めています。手探りではありますが、Figmaのブランチ・Slackの通知機能も活用しながらデザインシステムの更新状況を可視化することで、プロダクトとマーケティング領域での目線が揃っていく状況を目指しています。
開発チームをはじめとしたメンバーの努力だけでなく、このようなデザインシステムを運用してきたことによって、特に新規プロダクトにおけるリリーススピードが向上しています。ただし、すべてのプロダクトへ反映する場合は、技術的な負債の解消と並行して進める必要があるため、その点は今後の課題となっています。
SUPER STUDIOの事業開発プロセスは、ecforceとD2Cブランドを運営するなかで生まれる「ノウハウの循環」が特徴的だとお伝えしましたが、この循環をデザイン組織として推進していくことも重要な役割です。
例えば、ecforceが提供している「テーマテンプレート」では、自社D2Cブランドで活用した際の意見や顧客からのフィードバックを分析しながら、デザインの改善を行っています。
ブランドサイトは商品と消費者の重要な接点であり、商品の売上に直結します。「売上が確実に上がるサイト」としてテンプレートの改善を重ねてきた結果、テンプレートを導入したブランドサイトでのコンバージョンレートも向上しています。
また、自社D2Cブランドの運営で得た知見やノウハウを活かし、セールスと連携しながらecforceの導入検討者向けにサイトモックアップを制作しています。
この取り組みによって商談の成約率が向上しており、今後もセールスやカスタマーサポートなど幅広い領域での価値提供を行っていきたいと考えています。
ecforceでは、EC/D2Cブランドのビジネス成長を支援するOMOソリューション「THE [ ] STORE」を展開しています。
リアル店舗をデザインするには、店舗内の導線設計はもちろん、商品をスムーズに購入できるデジタル上の体験、店舗に訪れるまでの流入経路など、さまざまな点を考慮する必要があります。
オンラインとオフラインの体験を接続し、顧客の事業成長につなげていく取り組みは、幅広い専門性が求められるため難易度も高いですが、面白みのある領域です。
このようにSUPER STUDIOのデザイン組織では、EC/D2C領域でのサービス展開を軸に、その事業特性に合わせたアプローチに注力してきました。 組織としても徐々に拡大し、さまざまなスキルセットを持ったメンバーが活躍している一方で、まだまだ取り組めていないことも多くあります。
今後は大きく2つの方向性で、デザインによる顧客成果の最大化に取り組めるようにしたいと考えています。
■プロジェクト間の連携強化
複数のプロジェクトが同時並行で進むなか、連携しやすい体制を構築する
柔軟なアサインや、ナレッジや知見をシェアする仕組みを整える
デザインシステムの強化
複数のプロダクトで構成されるecforceとD2Cブランドの両立、プロダクトからコミュニケーションまでを担うデザイン組織として、個の力だけでなく、組織力を活かした価値貢献を強化していきます。
■ ケイパビリティの強化
幅広い領域のカバーと専門性の深さを両立できる体制の構築
評価指針のアップデート
キャリアパスの明確化
現状は、幅広い領域のプロジェクトをデザイナーが兼任することが多いですが、グラフィックやリサーチ、UIなど、各メンバーの伸ばしたい専門性に合わせたアサインや、成長を促す仕組みを強化していきます。
EC/D2Cというドメインでは、ブランドの企画やクリエイティブの品質、洗練されたサービス体験が顧客の事業成長に直結するので、デザインへの注力は“Nice to have”ではなく“Must have”だと捉えています。
そのなかで、ただデザイン業務をこなしていくのではなく、事業成長や顧客成果に対して影響の大きいイシューに的を絞り、そのイシューを解決できる組織体制を作っていく必要があります。
SUPER STUDIOは成長フェーズの会社であり、その事業を支えるデザイン組織もまだ発展途上です。今後も、デザインを通してEC/D2C領域における顧客成果を最大化できるよう取り組んでいきますので、ご期待ください。