エイチームライフスタイルのデザイナーの章です。
私が所属するライフエンディング事業部では終活情報メディア「Life.(ライフドット)」を運営しており、2021年現在はお墓紹介サービスに注力しています。
ライフエンディング事業では事業ミッションを定めており、インナーブランディングの一貫として2018年から2019年にかけて事業ミッションのビジュアライズを実施したことがありました。
今振り返ると、事業に対する目線を揃えるために有効な手段だったと感じることが多いため、知見としてまとめてみようと思います。
ライフエンディング事業部では「ライフエンディングに纏わる人たちの不安を解消し、業界とともに最良の選択へ後押しすることで前向きな明日へ繋げていく」 という事業ミッションが設定されています。
これは、
- 死と向き合う事業だけど、提供できる価値にフォーカスしたい
- SEOを中心としたサービスで根気がいるため、共通の目指す姿にワクワクしながら働きたい
という事業責任者の想いから生まれました。
しかし、文字で見ると少し長かったり、文脈が伝わらなかったり…せっかくミッションを明文化したのにそれが形骸化し、みんなの目指すべき方向がバラバラになってしまうのは避けたいことです。
そこで、普段から自分たちのミッションを事業に携わる一人ひとりが意識できる環境づくりのために、インナーブランディングの一環として事業ミッションのビジュアライズを行いました。
なぜ、事業ミッションをテキストによる明文化だけではなく、ビジュアライズまでしたのか。
ライフドットは2017年にスタートしたSEO集客を主軸としたお墓の紹介サービスで、最終的には終活情報メディアを目指しています。
ビジネスモデルの特性上、黒字化させていくには長い時間を要することがわかっていました。
そのため、事業に携わるメンバーのモチベーションや、やるべき事をコツコツと積み上げる根気強さが事業成長の要となります。
苦しい時期をみんなで乗り越えるために、「なぜこの事業をやっているのか」「この事業がどういう意味を持つのか」事業ミッションを達成した先のビジョンをみんなで共通認識として持ち、ワクワクしながら事業に向き合いたいという事業責任者の想いがありました。
- ライフエンディングチームで事業ミッションに対し共通認識を持つ
- 日頃から事業ミッションを意識できるようにする
上記を目的として事業ミッションを揺るぎないイメージとして認識できるビジュアライズの実施に至りました。
今では営業資料や普段のzoom背景にも使われています。
まずは、事業責任者の協力を得ながらメンバーに対してワークショップの開催を呼びかけ。
全部で3回(合計約5時間)実施しました。
第1回は「認知・理解」を目的とし、事業責任者から事業ミッションに込めた想いと、インナーブランディングの意図、ビジュアライズを行うためのワークショップの流れを説明。
第2回は「理解・共感」を目的とし、実際に手を動かして事業ミッションに対するメンバー同士の理解を深めます。
- ライフエンディングに纏わる人たちとは誰か?
- ライフエンディングに纏わる人たちの不安とは何か?
をポストイットに書き出しながら発散・収束を繰り返し、認識を揃えていきます。
ワークショップを通じて事業ミッションに対する各々の理解を深めところで、第3回は
- "前向きな明日"とはどんな状態か?
を一人ひとり絵に描き起こしてみます。
絵を描くことが苦手なメンバーもいましたが、ここでは下手でも良いので自分の中にあるイメージをビジュアルで伝えることを重視し、どうしてもアウトプットできない場合はイラストを得意とするメンバーがフォローするサポート体制を取りました。
各々が描いたイメージをチームみんなの前でどのような意図を持って描いたのかプレゼンします。
みんなのアイデアを出していく中で、最終的に選ばれたのが中央のイメージです。
これから旅立つ当事者が家族や友人に囲まれ、さらに業界の人々に支えられて全員が前向きに明日へ向かっていく様子が表現されています。
こちらを下絵として私の方で最終的なイラストの清書を行い、最後は全員で色を塗っていきます。
"みんなで作ったビジョン"として所有感を持ってもらうためにも、事業に携わるメンバー全員に色塗りに参加してもらいました。
色塗りの段階でもメンバー間でイラストに対する想いや、登場人物に対して各々の考えを話すなどの会話が生まれ、事業ミッションに向き合う有意義な時間を作れたと思います。
そして、最終的に仕上がったイラストがこちらです。
「ライフエンディングに纏わる人たちの不安を解消し、業界とともに最良の選択へ後押しすることで前向きな明日へ繋げていく」
通常業務と並行しながら行ったため、ワークショップ開始からビジュアライズ完了まで3ヶ月以上時間がかかりましたが、自分たちが事業ミッションを通じて達成すべき"ライフエンディングに纏わる人たちの前向きな明日"というビジョンを表すものとしてみんなで納得できる表現ができたと思います。
【余談】背景のモチーフに関しては当初『蓮の花』でしたが、それ自体が仏教を連想させるため、多様性を考慮するとともに、事業コンセプト"前向きな明日"に基づいて、太陽の方向に向いて咲く花『ひまわり』にすることにしました。
事業ミッションのビジュアライズ実施前と実施後で事業に対し、どんな意識変化がチーム内で起きたか、アンケートで振り返りました。
① 事業ミッションを意識できているかについて、実施前から実施後で1.2ptの上昇
② 事業に対してワクワクしているかについて、実施前から実施後で0.6ptの上昇
また、メンバーからの感想として
「今回のビジュアライズは、自分自身の意識変化よりも、取引先やこれから新しく入ってくる仲間と同じ価値観を共有してもらう為のツールとして、とても有用だと思った。 ミッション、理念を全員で考えて、それをビジュアルに昇華させる取り組みも全員でできたことは一体感、責任感(社会に対して)の醸成にいい影響を与えたと感じる。」
「上期は成長ステージ的なもので事業ミッションへの意識は個人的には低かったと思う。 ビジュアライズのイラスト効果?というよりも、今回洗い出しなどの過程において事業ミッションについて見つめなおすキッカケになった。」
「他の人が考えるイメージを把握することができ、良かったです。」
「事業ミッションを身近に感じるようになった」
……など、ポジティブな声をいただきました。
ビジュアライズ実施後で事業ミッションに対する意識と事業に対するモチベーションの向上が見られ、当初の目的を達成することができました。
インナーブランディングの一施策として、事業ミッションのビジュアライズはチームに対し良い結果を与えました。
今回のビジュアライズの目的は事業ミッションの浸透にあります。
形骸化しないよう、常に意識できるような環境づくりとして、以下のことを実施しました。
- 毎朝事業部メンバー全員が顔を合わせて実施する朝会ミーティングのwikiの表紙に設定
- 社内のライフエンディング事業部の島近くの壁にB1ポスターを貼付
- デスクトップの壁紙やzoom背景として配布
また、月一で開催されるライフMTGのスライド裏表紙や、新卒のオリエンテーションなどもそうですし、区切りのタイミングで事業責任者からメンバーにメッセージを発信する時は必ず事業ミッションの言葉とセットでイラストが登場します。
今では社内の他事業部からもライフエンディング事業部と言えばひまわりのイラストという認識になっています。
また、商談の場でも使われており、このビジュアライズがきっかけで、営業先にライフドットのサービス理念に共感いただけることも多くなりました。
自分たちが何を目指して事業運営しているのか、イメージとセットで説明できるようになったことで、ビジネスパートナーにも理解・共感してもらいやすくなったのだと思います。
事業ミッションのビジュアライズを通じて、チームの事業に対する目線を揃えられたことはもちろん、自分たちが何を目指す者なのかを対外的にわかりやすく説明する手段も手に入れることができました。
また、メンバーが新しく増えたり、コロナによるリモートワークで働き方が変わったりする中で、迷わず立ち返れる共通認識があるのはチームの一体感や帰属意識を保つ上で有用だと感じました。
最初は時間がかかる取り組みですが、みんなで手に入れたいと思う未来を形にし、継続運用し続けることで事業に対して愛着を持ち、必ず成功させるぞ、というモチベーション醸成に繋げられると思います。
サービス理念やメンバーの主体性を大事に事業運営したいPMや事業責任者、それをサポートするデザイナーの方々の参考になれば幸いです。