NEWPEACEで、クラフト酒の世界をひらくオンライン酒屋「クランド」のブランドリニューアルプロジェクトに取り組みました。

ブランドとしてのあり方から見直し、ブランドブックを制作、また、VIの改訂、ECサイトのフルリニューアル、ECサイト内の商品バナー制作など、幅広いコミュニケーションに落とし込んでいきました。

ビジョンを中心としたブランドリニューアル。ブランドとしての方向性から戦略を策定し、ブランドブック、VI刷新、ECサイトリニューアル、ECサイト内の商品バナーの制作など、幅広いコミュニケーションに落とし込んだ。

今回は、NEWPEACEが意識している、ビジョンを中心としたブランドリニューアルについて、プロセスをまとめていきます。

NEWPEACEは、企業の根幹にあるWHYを起点に、ブランドの開発からそれを支持するコミュニティの形成まで、持続的な成長を支援するプロフェッショナルの集まりです。

今回のプロジェクトは、KURAND株式会社さん (以下 KURAND) から、NEWPEACEに依頼をいただき始まりました。

当初、KURANDさんからの依頼は、「お客さまにとって印象に残る商品ブランドをつくりたい」というものでした。

しかし、数週間にわたりヒアリングをしながらよくよく整理をしてみると、KURANDのURANDさん印象に残る商品をつくりたいという思いには、顧客に対してKURANDの印象を届け、35名の社内メンバーに対してもKURANDの目指す先を共有して、ひとりひとりの判断がブランドの成長に繋がるモチベーションの循環を産みたい、という願いが潜んでいることが分かりました。

ECを改修すべきという社内の声が高まっているなかで、この願いの実現には一つの商品ブランドをつくることは最適な打ち手ではないと、プロジェクトの変更を共に検討して行きました。

クランドでは​​、「お酒の新しい価値を作り、世界中のあらゆる人々の人生に、楽しさ、豊かさ、幸せを届ける。」というミッションに基づいて、これまでに累計で1000以上もの、新規性とクラフトマンシップに溢れるオリジナルなお酒をつくっており、どれも品質が高いものでした。

しかし、それがECサイト上では伝わっておらず、自社製品であることすら取り逃がしてしまうような、卸のように伝わってしまっていることが印象面の1番の課題だと設定します。

当時のクランドのECサイト
月10以上のオリジナル商品を開発している一方で、サイト上では自社製品であることもうまく伝えられていなかった

そうして、「一つの商品ブランドをつくる」という依頼から、「クランドというブランドをつくる」というプロジェクトにリデザインされ、新しいビジョンの開発、ビジョンに基づくブランド戦略の策定、VIのオールリニューアルと範囲が調整され、兼ねてより課題であったEC刷新もその範囲に含まれました。

NEWPEACEから、新しいプロジェクトのスコープを提案

このように、NEWPEACEでは、依頼をいただいたあと、プロジェクトの範囲を決めることに1ヶ月近い時間をかけています。

クランドのブランド全体を見直していくことが決まった上で、まずはじめに行ったのはビジョンを可視化することでした。(このようにビジョンを中心としたブランドづくりのプロセスを、NEWPEACEでは「VISIONING」と呼んでいます)

VISIONINGの全体像

ビジネス的に、とか、市場的に、とかではなく、ブランドとしてどうありたいのか・それはなぜか、という根本のWHYを掘り下げることで、そこを起点として一貫したブランドリニューアルや、その後のコミュニケーション施策を行っていくことができます。

具体的には以下のようなことを行いました。

  1. VISIONINGインタビュー

  2. 戦略とブランドコンセプトの設計

まず、ビジョンを創業者の言葉から理解するために、創業者に対してインタビューを行いました。

ここでは、時間軸、ビジョン、コンテキストを把握していくことを意識して、例えば以下のような質問を行っています。

  • KURANDのミッションで定義されている「あらゆる人々」とは誰か?

  • クランドは「売り場」なのか「商品」なのか「売り方」なのか?

  • KURANDが作り出す新しい市場に対して、どのような「山の登り方」を描くか?

さらに、その結果をただ議事録のように渡すのではなく、プロジェクトの初期段階からビジョン浸透を見据え、透明にコンテクストが社内展開できるよう、「VISIONING interview」という読み物形式に編集して共有しています。

創業者にビジョンに関するインタビューを行い、それを「VISIONING interview」という読み物の形式にまとめた。

「VISIONING interview」インタビューの内容を踏まえて、ブランドの方向性を定義していきます。まず、ブランド面・事業面・プロダクト面の3つから戦略を整理していきました。

VISIONING structureという名前で、ブランド面・事業面・プロダクト面の3つの観点から戦略の方向性を整理していく。

これは、事業戦略、プロダクトマネジメント、ブランディング、それぞれの戦略策定のスキームを基に、NEWPEACEのオリジナルのブランド戦略策定スキームです。 そして、それらの観点から分かってきたポイントを、ブランドコンセプトとして3つの文章にまとめています。

ブランドコンセプトの一例。「日常的な非日常を」

社内や社外に向けて、クランドが約束するものをまとめることで、今後もビジョンにもとづいてブレない事業やクリエイティブの設計ができるようになります。

ここから、ブランド戦略をもとに、クリエイティブに落とし込んでいきます。

具体的には、以下のような順序で進めていきました。

  1. ブランドスローガンと ”面構え” のすり合わせ

  2. 印象のすり合わせ

  3. 各種クリエイティブに反映

ブランド戦略をもとに、ビジョンミッションバリューの構造を整理し、「ひらけ!おさけ」というブランドスローガンを策定しました。

ブランドスローガンの立ち位置を表した資料。ブランドスローガンは「顧客と目線を共有した体験の合言葉」として作成
ブランドスローガン

ただ、言葉だけではイメージがすり合わなかったので、 “クランドというオンライン酒屋の面構え” がどんなものか、リアルな店舗のイメージをもとにすり合わせました。

オンライン酒屋であるクランドは「こういう面構え」にしたいよね、というイメージをリアルな商店のイメージから揃える

ブランドスローガンや面構えのイメージを整えた上で、ブランドイメージや、オンライン酒屋としてのあり方、クランドらしさの定義を行いました。

クランドというオンライン酒屋をどのようなものにしていきたいのかを改めて言語化、整理
「日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」というコンセプトを設定
「日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」というコンセプトをもとに、それを表現するためのクランドらしさをキーワードとして設定

また「クランドらしいデザインとはこういうもの」というイメージが湧くように、ECサイトや、ECサイト内のバナーなどを例に、デザインのテンションを表したイメージ画像を用意しました。

UIデザインではなく、どのような雰囲気のECサイトにしたいのか、メンバー全員で目線を揃えるためにイメージを用意
KURANDの商品それぞれの魅力が伝わるよう、ラベルデザインを拡張したサムネイルデザインを提案

デザインテンションは、あくまでテンションを伝えるものなので、精緻なUIやグラフィックではないし、このままリリースするわけではありません。 ただ、作り手側がイメージできていないと、誰も具体をイメージすることはできないので、できる限り精緻なものを用意するように意識しています。

例えば、クランドには450以上商品があり、それら一つ一つのブランドを際立たせることが求められていたため、この段階で、どのように商品バナーを見せるべきかについてもルールとして整理しています。

様々なデザインの商品が一同に並ぶため、それぞれの世界観が喧嘩せず共存できるよう微調整が必要。
商品画像のデザインポイントなど、想定できるところは細かくルールについても言語化しておく
最終的には、リニューアル時に販売されていた300種類以上の商品サムネイルをリデザイン。ひと目で商品のグラフィックが伝わるようになった。

ビジョンからどのようにクリエイティブに落とし込むのかイメージをすり合わせていきながら、VIなど各種クリエイティブの刷新を行っていきました。幅広くクリエイティブをつくっていますが、ここではVI改訂を例に、ビジョンとクリエイティブの繋げ方についてまとめます。

クランドでは、元々、英字で「KURAND」というロゴを使用していましたが、今回、カタカナで「クランド」というロゴに変更し、招き猫のロゴシンボルも合わせて作成しました。

クランドのロゴをリニューアル
「KURAND」という英字のロゴから、「クランド」というカタカナのロゴに変更し、招き猫のロゴシンボルも新たに作成

KURANDとしては当初VIまで改善する予定はなかったのですが、「クラフト酒を扱う、オンライン酒屋」には、お店の看板が必要だろうと考えて、NEWPEACE側から提案しました。

ブランドコンセプトに掲げたように「クラフト酒の世界をひらく、日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」になるために

  • 新しい酒屋に見られること

  • 活発で楽しそうなこと

  • ニッチに見えないこと

などの要素を重視して、VIのリニューアル案を検証していきました。

日本一にぎわい、愛される新しいオンライン酒屋としての印象づくりのために、VIという看板をリニューアルすることを提案
VI提案時の資料。KURANDのVIにおいて最も重要な機能は「酒屋であることが伝わること」

まずは、当初英語だった「KURAND」のロゴをブランドイメージをもとに調整してみます。この時に、カタカナのパターンも合わせて検証しました。

VISIONING interviewも踏まえて、「クラフト酒を扱う、オンライン酒屋」というコンセプトから、お店の看板としてのロゴも制作することに
ブランドとしての印象をもとに、改善点を洗い出していく
クラフトとクランドの音の響きや見た目が似ていることに着目し、カタカナにしたロゴのパターンも検証
KURANDさんにも確認した上で、この方向で進めていくことに

VIの位置付けを踏まえながら、お酒や酒屋の歴史を知るために酒蔵を訪れたり、文献を漁ったり、KURANDの歴史を知るために、代表の荻原さんにヒアリングを改めて行ったりと、試行錯誤を繰り返した末に、ロゴタイプに落とし込んでいきました。

ただ、その上で、「ひらけ!おさけ」というスローガンを踏まえた親しみやすさを感じてもらうには、もう少し要素が必要なのでは?と考えます。

微調整を加えながら、ロゴタイプが完成
ただ、もっと「ひらけ!おさけ」というスローガンを踏まえた親しみやすさを感じてもらうために、要素を追加することに

そこで、親しみやすさを感じてもらうために、招き猫のモチーフをシンボルとして追加で作成しました。

招き猫をモチーフにしている理由は、「人が集まり集う場となる」という意味合いと「創業期にKURANDの事務所に猫がいて一緒に暮らしていた」というストーリーからきている

くにゃんどのポーズバリエーション一覧。クリスマスやバレンタイン・梅雨など、1年を通じて様々なオケージョンで使えるバリエーションも制作した
ロゴの制作過程。モチーフを検証するために数百パターンを制作
表情や、手の角度など、細かいところまで「ひらけ!おさけ」の世界観を感じられるかを検証しながら調整した

英語からカタカナにロゴの表記を変更したのは、単にわかりやすくする理由だけではなく、ここまでのブランド戦略の議論の中で、「日本市場にまずは向き合う」ということを意思決定していたことが影響しています。 さらに、「ひらけ!おさけ」「日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」などのスローガンやコンセプトがあったことで、ロゴシンボルに猫を使う意思決定もスムーズに決めることができました。

ブランドをつくるための山の登り方や、ブランドの印象を初期に決めたことで、このような抜本的なリニューアルが行いやすくなっています。

このようなプロセスで、今回のブランドリニューアルを進めていきました。当初の「ひとつの強い商品を作りたい」というKURANDの思いは、クランドという主幹事業や、社名、ビジョン変更など遠回りをし、自分たちの届けているお酒は「クラフト酒(しゅ)」だ、というコンセプトで収束しました。

1本のお酒をリニューアルしたいという依頼が、ブランドごと作り直すことで、500本以上ものお酒の見せ方をリニューアルするプロジェクトとなりました。

「クラフト酒」を販売するオンライン酒屋、というコンセプトでブランドを一新
ECサイトもリニューアル

さらに、ビジョンが色濃く反映されたブランドとなったことで、社内に対してもクランドというブランドがより強く浸透しています。

例えば、VISIONING BOOKというブランドブックは当初社内向けのものでしたが、できあがったブックを見て、社外公開が決まり、今では採用候補者向けの資料としても活用されています。社内の意思疎通も取りやすく、社外にもクランドのブランドを伝えられるようになっています。

クランドのブランドをまとめた「VISIONING BOOK」

その結果、例えば、採用候補者の方が「クラフト酒」「オンライン酒屋」といった言葉を面談時点ですでに認知した状態で応募してくることも増えました。新卒の応募は2倍以上増えており、KURANDの思想が社外にも強く伝わっています。

さらに今回のブランドリニューアル後、クランドの売上は大きく向上しました。ブランドリニューアル後の売上は、月平均で130%以上向上しています。

大きな要因としては、「日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」「ひらけ!おさけ」というキーワードがあることで、社内メンバーが「これもやって良いんだ」「クランドらしいのはこうだよね」と各自で判断することができるようになり、メンバー主導の施策が増加したことがあります。

例えば、メンバー主導で、コアユーザーを巻き込んだコミュニティがつくられたり、SNSでの企画なども頻繁に行われるようになっています。

KURANDのメンバーの方のアイデアから、コアユーザーを巻き込んで「クラフト酒」を研究するコミュニティが生まれるなど、多くの施策がメンバー主導で起こるように

ブランドづくりの起点は、ビジネス要件からつくる、トップダウンで代表が満足するものをつくる、ユーザーから求められているものからつくる、などさまざまな方法があると思います。

中でも、NEWPEACEでは、ブランドをビジョンからつくる、「VISIONING」というプロセスにこだわっています。

さらに、ブランドを定義するだけではユーザーに届けることはできません。打ち上げ花火ではなくて、続けることが大事です。実際に、ブランドリニューアル後も、NEWPEACEはクランドのブランドパートナーとして関わり続けており、デザインの品質担保や、社内のデザイナーの教育をすることで、ブランドを守り続けています。

NEWPEACEでは、ビジョンを中心としたブランド戦略の提案から、クリエイティブなどコミュニケーションへの反映まで担うことで、一貫してブランドをユーザーに届けることにこだわっています。

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credit

NEWPEACE

山田 佑樹:Senior Brand Director 高木 新平:Executive Creative Director YOPPY:Art Director 村上 明和:Producer 飯村 一誠:Producer RIKU:Designer(VISIONING Book)

外部パートナー

才川 翔一朗:Creative Director、Mukei inc. 株式会社フラクタ:ECサイトUI/UXデザイン、実装 関口 究 :Editor QUOTATION / MATOI PUBLSHING,INC 神岡 真拓:Designer(酒ガチャロゴ・ビジュアル、VISIONING Book)、株式会社オンフ [ここち]

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