スティーブアスタリスク(以下、Steve*)のシニアアートディレクターの吉岡とアシスタントアートディレクター松口です。
Steve*は、企業や商品の企画やブランディング、または地域のブランディングなど、幅広いクライアントを対象とした制作に関わるクリエイティブカンパニーです。
今回は私たちの制作現場において、複雑なアートディレクションを成立させるための、Notionを活用したコミュニケーションロスや無駄な作業を減らした制作の仕組みについてご紹介します。
制作に関わる人数が多い場合や、制作物が多くある場合に、進捗管理やコミュニケーションハブの役割を担う担当者を置くのではなく、全員がクリエイターとして制作物に集中するための仕組みをつくりたい方はぜひご覧いただければ嬉しいです。
Steve*では、ファッションや飲料などの商品ブランディング、採用や組織改編などに伴う企業ブランディング、教育機関と連携して行う地域ブランディングなど、業種や業態に縛られない案件に取り組んでいます。
案件の中では、クライアントの抱える問題や状況に応じて臨機応変に解決策を考えます。そのため、ひとつの案件の中でも多岐にわたる制作物を扱うことが多くあります。
商品開発、ロゴやコピーの開発、映像、Web、ツール、パッケージ、イベント、空間デザインなど、その時にクライアントに必要だと思ったものを幅広く企画・制作しています。
その現場でアートディレクターとして働く中で、本来はクリエイションに集中するべきなのですが、実際は管理業務にかなりの工数を割いていることに気づきました。
例えば、新サービスのWEBサイトをつくる案件では、ロゴデザイン、コピーライティング、UI/UXデザイン、ムービーの撮影と編集、イラスト制作、サイトのアニメーション演出を含めたフロントエンド構築、バックエンド構築など、アウトプットが多岐にわたり、多くの人が関わります。
それらのやり取りをチャット上だけで完結させるのは難しく、情報の整理やコミュニケーションに膨大な工数をかけている状況でした。
また、クリエイティブそのものの制作だけでなく、クライアントに提案をする際にも、クリエイティブを伝えるための提案資料の作成にも手間と時間がかかってしまっていました。
クライアントの社内稟議が通らなければ制作に進めないので一概には言えませんが、必ずしも手間のかかった提案資料を作ることがクライアントの問題解決に直結するわけではありません。
こうした問題意識から、アートディレクターとしての日々の仕事と並行しながら、同じ考えを持つスタッフと協力して情報整理やコミュニケーションの時間を減らすための仕組みづくりを試行錯誤するようになりました。
そして辿り着いたのが「人ではなく、ツールをハブにしたクリエイティブ制作」の仕組みです。
Steve*では、情報整理のハブになるだけの役割は置くべきではなく、全員がクリエイターとしてクライアントの課題解決に取り組むべきという考えを持っています。
そのため、制作における情報の管理でも、誰かに役割を任せて解決するのではなく、ツールを使った解決ができないかと考えていました。
結果として、管理業務をメインとした専任を置かずとも、コミュニケーションコストをかけずに情報が整理され、それぞれのメンバーが自分の作るものに集中して取り組める仕組みがNotionによってできつつあります。
今回はその中から3つの具体例をご紹介します。
Steve*では、制作に関わる情報を一つの場所にまとめた「プロダクションプラン」というページをNotionで作成しています。
これまでは、企画、コンセプト、進行スケジュール、イメージボード、デザイン、フィードバックなどの情報がバラバラになっており、案件の中心になる人が情報整理に時間を使わなければならない状況でした。
情報を誰かに確認したりどこにあるかを聞くことや、リマインドをしてもらう、というようなことは本質的には無駄なことなので、オートメーション化することで解決したいと思っていました。
また、制作データそのものだけでなく、付随してそれぞれが考えたことや経緯、想いなどのメタデータまでが一箇所にアーカイブされることで、他の人が後からでもその案件について理解し、説明ができるようにしています。
プロダクションプランには、つくりたいものの全体像や、何を大事にしたいのかを残しています。
さらに、個別のデザイン・イラスト・アニメーションなどのイメージや参考資料、指示などもまとめます。それぞれのスタッフから共有された制作物へのフィードバックもプロダクションプラン上で行うこともあります。
画像、URL、プレビュー、動画など、あらゆる情報を集約させて階層構造で整理したり、過去にまとめたものをデータベースとして再利用できるのがNotionの利点です
全員が1つのページに情報を集約させることで、「このページにないものはない」ということが分かる状態にしたことで、リモートワーク、組織内外関係なく、全員が作っているものの状況、ゴールを把握できるようになり、アートディレクターの私たちも本来のクリエイション業務に集中できるようになりました。
2つ目は、Notionを使ったスタッフの稼働状況を可視化する仕組みです。
これまでは、「誰が」「いつまでに」「何をつくるのか」を、プロデューサーまたはアートディレクターが常に把握して管理していました。
しかし、実際はどこまで管理するのかの線引きが難しく、プロデューサーやアートディレクターによっては管理の得意不得意があったり、制作と管理業務のバランスがうまく取れない(集中すると忘れる、気にしていると集中できない)など、トラブルの原因になっていました。
そこで、進行、工数、見通しを管理するためにつくったのがこの仕組みです。Notionですべての案件の工程を入れたデータベースを作り、リンクドデータベース機能を活用し、タイムラインビュー表示とソート機能で個別に表示しています。
- その工程にどのくらいの工数がかかるのか、かけられるのか
- 担当案件を全て合わせて今週、来週にどのくらいの作業が予定されているか
- これまで誰が何にどのくらいの時間を使ったのか
などがわかるので、スタッフが自分の工数を確認でき、スタッフ間での自発的な調整が生まれています。
現状は、工程や時間の見積もりを自分でNotionに入力する必要がありますが、将来的には案件のスケジュールから自動的に入力されるような仕組みにする予定です。
これまでクライアントへの提案は、PowerPointやKeynoteなどのスライドで行うのが暗黙の了解となっており、企画や制作物の説明をするためのプレゼンテーションスライドを案件の制作物とは別に作成する必要がありました。
しかし、PDF化や印刷しやすいといったメリットはありつつも、動画などのメディアや縦長のWEBデザインなどの場合には、情報のレイアウトやページ割りに手間がかかり工数がかさむこともありました。
そこで、先方的に問題がない場合には、提案資料をNotionで作成しています。
プレゼンの場でもNotionページを映して説明をし、Notionページの共有設定でクライアントに共有しています。
スライドにまとめ直す時間を省くことで、提案内容に集中できるようになりました。また、特にベンチャー企業のクライアントの場合などは、逆に無駄を省く姿勢を好意的に受け取っていただけることも増えてきました。
このように、情報の整理や処理をNotionで代替した結果、進捗管理やクライアントとのコミュニケーションのみ行う役割の人がいなくても円滑に案件が進行できるようになりました。
Steve*では、新卒入社のスタッフでも、ただ手を動かすだけではなく最初から企画や提案に深く関わり、全員が制作に携わるクリエイター、クライアントの悩みに寄り添うパートナーとして働いています。
クリエイティブに限らず、交通整理や情報処理をするだけのポジションは今後さらに減っていくと考えています。
そこに人のリソースを使うよりも、人にしかできないクリエイティビティに注力し、ひとりひとりの違う考え方や個性を活かすことで、クライアントの要望に応え、新しいものを作っていきたいと思っています。
そのためのツールとして、Steve*ではNotionの可能性を活かしたクリエイティブ制作の仕組みづくりに取り組んでおり、今後も制作環境をアップデートしていきます。
Steve*はクリエイティブパートナーとして、クライアントと一緒に悩みながら、共にゴールを目指す関係性を築いていく、そんな組織でありたいと思います。