ダイニーは「すべての人の“飲食”インフラになる」というVisionのもと、飲食業界向けに複数のプロダクトを展開しています。
現在、プロダクトデザインチームは3名体制で、既存プロダクトの改善と新規プロダクトの立ち上げという2軸で活動を進めています。
ダイニー全体に通底する文化として「圧倒的な現場理解」があります。それはプロダクトデザインにおいても大きな強みです。実際に、顧客のインサイトを深く捉えるためのさまざまな活動を行い、その理解をもとに精度高く検証・改善を重ね、素早いプロダクトデリバリーへとつなげています。
ダイニーのプロダクトデザインの過程において、どのように現場理解を深め、アウトプットにつなげているのか。その具体的な取り組みを、実例をもとにまとめます。
ダイニーは、「All in One Restaurant Cloud.」を掲げ、外食産業におけるオーダー領域、店内オペレーション領域、CRM領域、タレントマネジメント領域、ファイナンス領域などを包括的にサポートするマルチプロダクト構想に取り組むスタートアップです。
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デザイナーは既存プロダクト・新規プロダクト双方で構成される開発レーンに分かれて配置されており、それぞれの領域でリサーチからデザイン設計までを一貫して担う体制をとっています。
飲食領域に特化したプロダクトを、本当に現場で求められるものへと磨き上げていくには、圧倒的な現場理解が欠かせません。普段お客さまとして見る風景からは想像できないほど、飲食店では日々多種多様な業務が忙しなく行われています。
例えばホールでは、予約・ウォークインの確認、席案内、オーダーテイク、配膳、バッシング、レジ対応、トイレ掃除などが同時並行で進行し、厨房では大量のオーダーに対する調理、ドリンクづくり、パントリーへの配置、皿洗い、オーダーミスへの対応で常に忙しい。
さらに店舗運営では、採用、シフト管理、給与管理、スタッフ教育、設備更新などの業務が山積みとなっています。
こうした現場でしか捉えることができない業務の実態や温度感を、細部まで丁寧に把握し、シンプルな体験に落とし込み、プロダクトを改善し続ける必要があります。
高解像度な顧客理解が求められるプロダクトデザインの一例として、ダイニーが提供するキッチンディスプレイのリニューアル事例を紹介します。
キッチンディスプレイは、モバイルオーダーやスタッフのハンディ端末から送られてきた注文情報を可視化し、商品の調理状況を一括管理するプロダクトです。約4年前のリリース以降、ダイニーの導入店舗で活用されてきました。
従来は、キッチンディスプレイと伝票を印刷するためのキッチンプリンターを併用して導入いただいていましたが、店舗によってはプリンターが不要であったり、初期導入コストが必要以上にかかってしまうケースもありました。
そこで、キッチンディスプレイ単体でも使うことができるようにすることに加え、この機会に複数の新機能を追加し、プロダクトとしての付加価値を高めることを目的に、リニューアルを行うことにしました。
しかし、キッチンディスプレイはリリース以降、長らく大きな改善に手をつけていませんでした。
そこで、改めて導入店舗へのヒアリングを通じて現状の使い方や要望を回収するとともに、業界的にスタンダードとされているUIについても調査しながら、仕様やデザインの検討を進めていきました。
ある程度開発が完了した段階で、旧UIとリニューアルUIを併用できる試用期間を設け、約2ヶ月にわたってダイニーの導入店舗で実際に使ってもらうと、利用者からは「以前の画面より使いづらいと感じた」「このまま切り替わってしまうのは避けたい」といった意見が多く寄せられる結果となりました。
ヒアリングやデザイン案を確認してもらう過程では一定の良い反応を得られていたのですが、実際に現場で運用してみると、使いづらさを感じる場面が少なくなかったのです。
例えば、ピークタイムには多くの注文が一気に入り、素早く注文や優先度の確認を続ける必要があります。厨房内では画面から離れた位置に居ることも多く、文字サイズやコントラストによっては視認しづらいと感じられる場面がありました。 また、従来のUIとの差分が大きく、慣れたオペレーションが崩れることで使いづらさにつながっているケースも見られました。
こうした状況を踏まえ、計画していたリニューアル予定日を先送りし、改めてデザインを見直すことを決めました。開発工数としては大きな負担となる選択でしたが、「最大限、現場で使いやすいものとしてリリースしたい」というチームの総意による判断でした。
そこから、使いづらいと感じられた要因や、本来現場で求められているものは何かを探るため、改めて80件以上のヒアリングを実施しました。
その過程では、言葉として意見を聞くだけでなく、実際にスタッフが働いている様子をそばで観察させてもらったり、許可をいただいたうえで撮影を行ったりしながら、オペレーションやキッチンディスプレイが使われる環境そのものを徹底的に調査し直しました。
こうして集めた情報をもとに分析を行い、課題の優先度を整理していきました。
特に大きな課題だったのは、レイアウト・色のコントラスト・文字サイズといった「一瞬で判断できるか」に直結する要素です。
また、ダイニーのキッチンディスプレイは、居酒屋や焼き肉屋、カフェ、シーシャバーなど、さまざまな業態・規模の店舗で使われています。業態や店舗規模によってオペレーションが異なることを前提に、一定のカスタマイズ性を持たせた情報設計にすることも求められていました。
こうした分析を経て再度デザイン案を作成し、現場での検証を繰り返していきました。
その後、以前のリニューアルデザイン案に対して「使いづらい」と意見をくださっていたお客様にも改めてデザイン案を見ていただいたところ、9割以上のお客様から「これなら使いやすい」「オペレーションも問題なく回る」という評価をいただくことができました。
これらの結果を受け、現在はリニューアルに向けた最終的な準備を進めています。
前述の通り、飲食店の現場では日々多種多様な業務が忙しなく行われています。
その中で、どれだけヒアリングを重ねていたとしても、それだけで本当に使いやすいプロダクトができるとは限りません。 現場のオペレーションや空気感を、言葉として聞くだけで終わらせず、自身が当事者として理解し、その実感をプロダクト改善へと活かし続けることの重要性を、改めて実感したプロジェクトでした。
ダイニーでは、このような飲食業界の現場を取り巻く状況を、私たち自身が当事者として理解し、プロダクト改善に活かすためのさまざまな仕組みが、文化として根付いています。
プロダクトメンバーの顧客解像度・プロダクト解像度を高めることを目的として、PM・エンジニア・デザイナー・QAといったすべてのメンバーが、日常的に顧客と直接関わる活動を行っています。
さらに、単に顧客と関わるだけではなく、その前後で「顧客の声を代弁できるほどの顧客解像度」を得るための仕組みを運用しています。具体的には、以下のような取り組みを行っています。
顧客接触機会(商談・ヒアリング等)の前に「顧客代弁レポート」を記入する
商談・ヒアリング後に振り返りを行い、仮説がどう変わったかを整理する
定期的な「顧客代弁の共有会」(プロダクト本部全体)で各チームが発表・質疑応答を行う
このように、顧客と接点を持つ機会そのものだけでなく、「どう捉え、どう学びに変えるか」までを仕組みとして設計することで、ダイニーでは継続的に現場理解をアップデートし続けています。
2つ目は「加盟店のLINEグループに入れてもらう」ことです。アルバイトスタッフや店長・マネージャーが日々の業務連絡に使っているLINEグループに、ダイニーメンバーとして参加させていただくことで、現場でどのようなコミュニケーションが交わされているのかを直接観察することができます。
そこでは、単なる業務連絡だけでなく、スタッフが感じている不安や困りごと、時には温かいやりとりまで、まさに“生の会話”が交わされており、課題に気づくきっかけになることもあります。
例えば、次のようなやりとりが見られることがあります。
スタッフが体調不良で欠勤する時に、「シフト代わってくれる人いませんか…?」と申し訳なさを感じながらメッセージを送り、自分で代わりのスタッフを探している
店長が「この日シフト入ってくれる人いませんか?」と呼びかけている
こうしたやりとりを目にしたことをきっかけに、ダイニーではヘルプ機能の開発検討や、シフトに入りやすくする施策を考えています。
ヘルプ機能の開発検討 : 店舗間でヘルプがスムーズになるような機能を開発中。また、自動でヘルプ募集される機能を検討中
シフトに入りやすくする施策 : 時給アップ設定(店舗ごとに設定できるので、お盆や年末など人が足りない時に時給を上げて入りやすくする = シフトのスキマを埋めやすくなる)
このように、ただ単にLINEのやりとりを見るだけでなく、そこから課題を発見し、プロダクト改善につなげるための重要な機会となっています。
ダイニーでは、日常的に導入いただいている店舗へ足を運び、1人のお客さまとしてふらっと訪れることもよくあります。
そうした何気ない訪問のなかで、他のお客さまの行動を観察したり、現場で働くスタッフの方にお話を伺ったりすることもあります。
例えば先日訪れた店舗では、混雑状況に対してシフトに入っているアルバイトの人数が多いことに気づきました。話を聞いてみると、「うまくシフトを組めないときがあって……」とのこと。そこでその場で、ダイニー勤怠の「モデルシフト機能」についてご案内しました。
実際にお話ししてみると、意外と機能の存在が知られていなかったり、活用しきれていなかったりというケースもあって、そうした“リアルな肌感”がつかめるのは、現場に足を運ぶからこそだと思います。
そこから、プロダクトだけでは解消できていなかった課題を対話で解消できたり、次のプロダクト改善の種につながることもあります。
現場に足を運ぶだけでなく、社内にいるドメインエキスパートに話を聞いたり、彼らが持っている知見を参考にすることも少なくありません。
ダイニーには、飲食店の店長経験者や元料理人、元アルバイトスタッフなど、飲食業界出身のメンバーが多く在籍しています。(実は私自身も、週末に飲食店でのアルバイトを続けています)
例えば、シフト機能のリニューアルを検討していた際には、過去に実際の現場でシフト作成を担当していたメンバーに、「こういう機能を追加しようと思っているんですが……」と相談し、意見をもらいながらデザインを進めることもありました。
また、商談のログから得られる学びも非常に多いです。提案資料や営業トークには、店長やマネージャーといった意思決定者が、何に課題を感じ、どこに価値を見出しているのかが如実に表れています。そうした情報を把握することで、プロダクト改善のヒントが見えてくることも多くあります。
このような仕組みを通して得られた現場でのインサイトは、社内のSlackやNotionにどんどん共有されるようになっています。
実際に店舗で働いてみたり、観察することで得られたインサイトは、ヒアリングだけでは分からない細部のニュアンスまで把握できるほどに具体的です。
組織内に蓄積されたインサイトが具体的であるからこそ、細かなプロダクトの改善や、顧客のニーズをしっかりと捉えたプロダクト開発がしやすくなっています。
ここまで、ダイニーにおける現場理解の仕組みや、どのようにプロダクトデザインに活かしているかについて、いくつかの実例をもとにまとめました。
こうした仕組みは、厳密に制度化されていたり、強制されるものではなく、「全員でプロダクトをより良くしていこう」というダイニーのカルチャーに支えられ、自然とみんなが取り組むようになっています。
だからこそ、プロダクトデザインに携わる立場として重要なのは、その環境をどう乗りこなし、どう楽しんで向き合っていけるかに尽きると思っています。
私自身、社員とユーザーの距離が驚くほど近いこの環境に惹かれてダイニーに入社しましたが、実際に飛び込んでみると、その想像を大きく超えるものでした。チーム全体が「本当に良いものをつくること」だけに集中できる環境が、ここにはあります。
そして今後も、飲食領域で新たなプロダクトを次々と生み出していく中で、デザイナーとして挑戦できることの幅もどんどん広がっていきます。これからも、そうした変化を楽しみながら、本当に良いと思ってもらえるプロダクトづくりを続けていきたいと思います。