ウォンテッドリーのCommunication Designチームでは、「Wantedlyブランドと市場の接点、新たなユーザーや顧客との関係を作る」ために、ブランディングやPR/マーケティングなどあらゆる領域のクリエイティブ開発を担っています。
2018年からは、Wantedlyらしさやデザインの一貫性を保つことを目的として「Graphic Standards」というガイドラインを定義・運用しており、Wantedlyに関連するクリエイティブは基本的にこのGraphic Standardsに準じるように制作されています。
一方、ここ数年でWantedlyにおいて制作されたクリエイティブを振り返ってみると、ガイドラインに規定されたカラーやフォントを基調としたものもあれば、初見ではWantedlyのものだと気づきづらいほどトーンが異なるものも意図的に多く制作してきました。
ブランドガイドラインは一般的には「守るべきもの」「固定されたもの」というイメージがあるかもしれませんが、Wantedlyでは超えるべき基準(Standard)として捉え、ガイドラインに軸足を起きつつも、「より良い表現手法や、新たなWantedlyらしさを探る」といったアプローチを推奨しています。 ここからは、その意図や、具体的な事例をまとめていきたいと思います。
先述の通りWantedlyでは「Graphic Standards」と呼ばれるガイドラインを定義・運用しています。
ロゴの扱いや、カラー・フォント・イラストレーションなどビジュアル要素の規定がまとめられているだけでなく、Wantedlyの”究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす”というWHYに対する、HOWとしてのデザインフィロソフィ(知的・大胆・洗練)が定義されていることが特徴の1つです。
このGraphic Standardsの対象は全社員であり、あらゆるタッチポイントでWantedlyらしさやデザインの一貫性を保つことを目的としています。また、クリエイティブ制作だけでなく、プロダクト開発におけるUIデザインシステムにも展開されるなど、Wantedlyにおけるブランドづくりを支える重要な要素となっています。
比較的しっかりとビジュアル要素の規定が定められてはいるのですが、すべての場面で踏襲すれば良いという考え方はしていません。
はじめにブランドにまつわる規定ありきで制作するのではなく、事業や施策における課題に対し、コンセプトやアイデアを考えるところからスタートし、表現手段に落とし込む段階でWantedlyらしいコミュニケーションとなるかを調整していくというイメージです。
このように考える背景としては、以下のようなものがあります。
ウォンテッドリーでは「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションを基に、Wantely Visit、Wantedly People、Wantedly Engagement Suiteなど複数のサービスを展開し、対象とするユーザー層も増えてきています。
また、Communication Designチームとして扱う媒体の幅も、Webサイトから、屋外広告、CM、ホワイトペーパー、書籍など、多岐に渡ります。
そのなかで、既にWantedlyを知っている・使っている人に対するプロダクトや資料であれば、Wantedlyのトンマナを踏襲し、統一感や安心感を持ってもらえるようにすることが適切だと考えられます。
一方で、Wantedlyを全く知らない人に対する広告であれば、コーポレートカラーのブルーを使用したからといってWantedlyだとは思ってくれませんし、それよりも見た時のインパクトや記憶に残るメッセージかどうかが重要です。
つまり、施策におけるターゲットや、シチュエーション、媒体特性に応じて、伝えるべき情報は異なりますし、そのなかで「Wantedlyらしい」と感じられるバランスを模索していくことが求められます。
このような考えを、制作をする上での視点としてまとめると次のようなイメージとなります。
まずは課題や与件に対し、企画やコンセプトを考えることからスタートし、案件ごとにターゲット・シチュエーション・媒体特性などを考慮しながら、インパクトがあり、かつ効果的なアイデアを幅広く検討していきます。(この時点でのアイデアは、手書きのラフや、テキストなど状態)
企画やコンセプトを磨き、グラフィックや動画など最終の表現に落とし込んでいく段階ではじめて、Graphic Standardsと照らし合わせ、ロゴ規定やカラーパレットなど最低限のルールが守られているか、ブランドのトーン&マナーから大きく逸脱していないか、などの調整を行います。
初期の段階から、Graphic Standardsに“合わせに”いってしまうと、アイデアの幅が狭まり、表現的にも新しいものが生まれにくいと考えています。
ここからは、事例毎にどのようなアプローチで施策の要件を抑えながら、Wantedlyらしいデザインに落とし込んでいるのかをまとめたいと思います。
WantedlyのStory(Blog機能)で、自社情報を発信する記事のファーストビュー部分に表示されるビジュアルのデザインです。
他媒体でのPR用の素材として展開されることも多く、内容としてもWantedlyのプロダクトやサービスのリリース情報がメインとなるため、王道の”Wantedlyらしさ”を意識しながら、それらの質の良さを感じさせるクオリティを目指して制作しています。
例えば、フォントやカラーなど基本的なWantedlyらしさは担保しながら、毎回似たようなビジュアルとなり飽きられてしまわないよう、内容に合わせて表現を調整しています。
Wantedly 創業時からの歩みと、会社のあるべき姿を創業者自身の言葉で綴ったハンドブックです。 主に社内メンバーに毎年配布しており、Wantedlyの根幹となる哲学に触れる重要な接点となります。
Wantedlyに深く携わるメンバーに、1年に1度の特別な機会に、書籍という媒体で届けるもの。
このような特徴を踏まえ、手に取った際には、Wantedlyの哲学を感じつつも、新たなWantedlyらしさや驚きを感じられるよう、毎年コンセプトを刷新し、カバーをデザインしています。
各年のコンセプトや、表現面でのこだわりはこちらに詳細にまとめられているので、あわせて御覧ください。
Wantedlyではテレビやタクシー内で放映されるCMも制作しています。
CMでは、Wantedlyを全く知らない人が見る場合も多く、1つのCMの時間も30秒前後と短いので、サービスのベネフィットを最大限インパクトをもって伝えるための企画・アイデアの強さ・面白さを重視しています。
安易に会社名や製品名を連呼したり、よくあるタクシーCMっぽいストーリー展開など、既視感のあるつくりにならないよう企画時に考慮し、新しく・驚きがある状態でサービスのベネフィットが伝わるよう心がけています。
また、CM内で取り入れる表現においては、例えば以下のような工夫を取り入れ、Wantedlyらしさやクオリティへのこだわりが伝わるように調整しています。
デザインチームで開発したサウンドロゴをすべてのCMの冒頭に挿入
背景や演者の衣装の一部にコーポレートカラーを差し込む (マストとはしていない)
CM内に登場するUI画面は、実際のデザインデータを元にアレンジし、プロダクトのデザイン性の高さもアピール
Wantedly主催のイベントでも、企画段階からデザインチームが参加し、コンセプトやテーマ、タイトル名の開発に積極的に関わっています。
イベントごとの企画内容・コンセプトに基づいた、メインビジュアルやロゴのデザインはもちろん、それらをベースにした会場造作やノベルティなど多岐に渡るアイテムを制作しています。
小さなアイテム一つ一つにもこだわり、デザイン面からも参加者にとって質の高い体験と感じてもらえるよう心がけています。
ウォンテッドリーではこのように、ブランドガイドラインを一貫したらしさを生むための軸として捉えつつも、課題やコンセプトに応じて、より良い表現手法や、新たなWantedlyらしさを探りながら制作を行っています。
“Graphic Standards” という名称としているのも、ただガイドラインに沿うことを促すのではなく、基準として捉え、その基準を発展させていくことを促すためでもあります。
現在は案件毎に最適解を探っていくような活動となっていますが、今後はそれらを新しい基準としてGraphic Standardsに反映させながら、チームとしての制作を強化していきたいと考えています。
ウォンテッドリーのような成長を続ける企業において、ブランドにおけるStandardもまた成長の途中であるため、変わり続ける必要があると考えています。これからも、Wantedlyのブランド価値を高めていけるよう、取り組んでいきたいと思います。