こんにちは、はじめまして。SmartHRで「コミュニケーションディレクター」をしている関口 (sekig) です。

昨年入社をしてから、もう半年ほど経ったでしょうか。

現在はコミュニケーションデザイングループ内の Brand-comm Unit でチーフを務めており、社内では「:dezaozi: 」なんて呼ばれることも。すごいですよね、なんでしょうかこれは。でかい、概念がでかい。

実はこれ、「デザインおじさん」ではなく「デザイン(こじらせ)おじさん」の略が通称になったものなのです・・・かわいいあだ名つけてくれよう………(泣)(願)(切実)

さて。そんなわたしの「コミュニケーションディレクター」といういかにもよく分からない肩書きなんですが、本記事ではそんな私が普段取り組んでいる「謎図(なぞず)」について残していきながら、私が組織の中でどんなことをしているのかを知っていただく機会になると嬉しいです。

もともと出版やエディトリアルの領域でデザイナーとして活動していたこともあり、「言いたいことや原稿を、図や絵に表す」ことはよくやっていました。

そしてSmartHRに入ってからも、「ふわっとしたニュアンスや、コンセプチュアルな議論」をまとめて、全員が共通のイメージを持つための手段として、この図解力のようなものが活きているのを感じます。

https://miro.com/app/board/o9J_l_d1aNk=/?moveToWidget=3074457360196615114&cot=14

例えば、働くの実験室(仮) という企画について仲間と議論しているときは、ウェブサイトへどのように人が入ってきたり、サイト内で行動を起こしていくのかについて、当時三角錐モデルと名付けていた考え方で議論を進めてみました。

※ちなみにコレを社内で共有したあと、同僚の u さんから「それ、円錐形だよ」と教えてもらいちょっとはずかしかったです…! この図は仲間にすぐ伝えたくてその場で瞬発力で書き起こしたんですが、いろいろ雑なところがあってお恥ずかしいです…が、そのまま公開します! ご容赦!

これは、いわゆるSEO的な意味も含めて「そのページを見られたいなら、このページから誘導しよう」といった、型にはまった考え方から抜け出してみるアプローチです。

実際にウェブサイトに流入する人は、必ずしもサイトのトップページから流入するわけではないし、SNSから流入したり、他の人によるSlackなどでのシェアから入ってきたり、しかもそのエントランス(入り口)はマルチです。もっと立体的に、多面的に捉えた方がよりよい企画につながるのではと考え「視点を変える」ために起こした図です。

このように、「一見するとなんのことか分からないけど、企画やプロジェクトの当事者からすると、文脈をしっかり感じとれる図のようなもの」を謎図と呼んでいます。

逆に、文脈を知らない人からすると、全く謎の図だから、謎図、でもあるんですね。

なぜ謎図が必要なのか。もちろん、場面によってはとくに必要じゃない場合もありますよ。

SmartHRコミュニケーションデザイングループ (コムデ)では、マーケティンググループと協働しながら進めている先程の働くの実験室(仮)など、いま新しい取り組みが多いのです。

前例があまりない新しい取り組みを始めるときや、企画やグラフィックなど、言葉よりもイメージ(枠組み・アウトライン)でざっくりすり合わせることから始めた方がいいフェーズで、この「図のようなものだけど、図ほど綺麗じゃない」謎図が出てきたわけです。

そして、デザイナーあるあるかもしれないですが、言葉より視覚的なイメージのほうが、伝わる感じがしたり、理解しやすかったりする人もいます。

わたしが入社してまもない頃、他のメンバーと話していて「視覚的なすり合わせの方が、この人はやりやすいのかもしれない」と思ったことも、謎図を社内で積極的に使うようになったきっかけの一つです。

そのような経緯で、「概念をすり合わせる」ことを意図している謎図ですが、ありがたいことに、他の人がわたしのやり方を参考に自律駆動でアレンジしてみてくれたりと、一つのコミュニケーション手段として役立っている場面を見かけます。

例えば、先程の円錐形モデル。私が提案したのは、あえてこのようにとても雑な(?)ラフなものでした。

https://miro.com/app/board/o9J_l_d1aNk=/?moveToWidget=3074457360197230505&cot=14

下図をみてください。これを、同僚の @s0rmymt が解釈してくれて、サイトのコンテンツ設計に落とし込んでくれました。

(これだけを見てもおそらく伝わりづらいかもですが) 一応解説をすると、ユーザーの流入経路に合わせて、それぞれのコンテンツをどのように置くべきなのか、パターンを検討したときのものです。

https://miro.com/app/board/o9J_l_d1aNk=/?moveToWidget=3074457360198236280&cot=14

組織図で活用することもあります。例えば、働くの実験室(仮) のプロジェクト体制について話し合っていた時は、打ち合わせ中に会話しながら、リアルタイムで下図のようにまとめてみました。

プロジェクトオーナーのマーケティングのメンバーとわたしの関係を軸に、他のメンバーの関わり方や関係者がどうなっているかのズレ埋め(認識合わせのことを、私たちはValueで定義している「認識のズレを自ら埋めよう」を略してこう呼びます)をしていますね。また、外部パートナーさんと一緒に制作している施策の関係性や、それぞれの役割といったものを、まるっとまとめてふんわりと一枚絵にしています。

これは厳密な「体制図」にはなり得ませんし、「サイトストラクチャ」にも、「PRD(製品要求仕様書)」にも、「コンテンツマップ」にも、どれにもなれない曖昧さがあります。しかしその場の検討においてメンバーの頭の中のすり合わせにはとても役立つ、その場限りの、フォーマットのない「謎図」なんですね。

https://miro.com/app/board/o9J_l_d1aNk=/?moveToWidget=3074457360198757044&cot=14

さて、いくつか例を出してみましたが、どれだけ伝わったのでしょうか...。

念押しになりますが、この謎図はそもそも「概念をすり合わせる」ための、その場で活躍するもの。こうして最初から説明するのはどうにも難しいものです。効率的なのかと問われると、ちょっと胸を張りにくいのが正直なところ…。

一方で、よくあるフレームワーク (例えばカスタマージャーニーマップや、4象限マッピングなど) で最初から考え方をまとめてしまうことで、逆にこぼれてしまう思考やニュアンスがあったり、フレームワークに「使われて」しまうようなことは避けたいなという思いが私の根底にあります。

これは、逆説的ですが「合理的」なんじゃないかなと思っています。

謎図は、必ずしも綺麗な “図解” じゃなくていいんです。たいせつなのはそこではなくて、「フィジカルな議論ができること」だと思うんです。

つくっているものがウェブサイトだったりすると、成果物に直接触れられないこともあり、企画の議論が空中戦になったりしやすいと考えています。

https://miro.com/app/board/o9J_l_d1aNk=/?moveToWidget=3074457360199359368&cot=14

そんなとき、まずは「話していることって、こうじゃないか」と、議論の場に置いてみる、可視化してみる。つまり、みんなの頭の中=メンタルモデルを可視化・共通化するように、「みんなで実際に同じモノを見て、触って話す」ということ。それさえできればOKなんです。

そして、いわゆるデザイン4原則のような「反復」だとか「整列」だとか、デザイナーにとっては基本的なことをあらためて意識しながら、情報をひとつずつ整理してみる。そうすると、まるで「議論を触る」ようにものごとをその場で直感的に試しながら整理できます。

難しく考えず、まずみんなの見える場所にポンと情報を置いて、眺めてみる、触ってみる。そうすることで、「正しい/正しくない」ではない「共通理解」が生まれればこちらのものです! あとは、もうちょっと右…いやもうちょっと大きいかも…いややっぱナシ…とフィジカルな会話を高速で重ねていくことで、タテ一列のテキストドキュメントでは難しかった「未完成の」「確からしい」イメージの取り扱いが、ちょっとラクになるかもしれません。

型(フレームワーク)があることは迷いを減らし、スピードをアップしてくれます。しかし、「型を使う」のではなく、いきなり「型を選ぶ」発想になってしまうことで、逆にものごとの議論が狭まってしまうこともあるかもしれません。

この「謎図」という、あえて怪しくて正しくなさそうな言い方にしているのは、わたし自身がこのやりかた自体に「それっぽくしたくなさ」を強く抱いている結果かもしれません。

もしかしたら、グラフィックレコーディングなどにも似ているのかもしれませんね。その場にいる人たちが、より実感を持って、より頭の中を共有できるようにするためのシンプルな取り組みが、謎図です。

謎図を通して (?) コミュニケーションディレクターの仕事の1つを垣間見ていただけたら嬉しいです。

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