BizHint事業部デザイナーの渡部です。

今回はBizHintで、会員登録導線の「小さな改善」の成功体験をきっかけに、開発チームが体験全体に意識を向けられるようになり、サービス全体の体験を可視化するにいたったプロセスを紹介します。

サービスに関わるデザイナーであれば誰しも、体験全体を俯瞰し、ユーザーに価値ある体験を提供したい想いを持たれていると思います。

しかし、同じサービスに関わるメンバーは、職種や立場が違えば見ている目的は同じでも、認識している課題や指標は異なり、体験全体を俯瞰して改善を進める優先度は低くなりがちです。

頭では「チーム全員が体験全体を意識する重要性」をわかっているものの、何を足掛かりとすればいいかわからない方に、チームの巻き込み方や取り組みのプロセスが参考になればうれしいです。

「BizHint(ビズヒント)」は中小企業の経営者や決裁者に向けたクラウド活用と生産性向上の専門サイトです。登録いただいた方に向けて、事業課題の解決につながるノウハウや具体的な事例などをお届けすると同時に、クライアント企業様に向けてメディアを通じたBtoBマーケティング支援を行うことで事業が成立しています。

Visionalグループの中でも比較的歴史の浅い新規事業で、少数で日々グロースに向けてさまざまな施策に取り組んでいます。

私たちBizHintも体験全体を俯瞰できていると、自信を持って言える状態ではありませんでした。

いちデザイナーの立場からお客様に「価値を提供し続けていく」ことを考えると、全体の体験をデザインし、改善していくことが必要だと強く思っていました。重要指標に関わる局所的な体験がどんなに良くても、サービスを利用する体験全てのなかに1つでも欠点があればお客様が離れてしまい、小さな綻びが事業の大きな損失につながる可能性があるからです。

だからこそ、価値あるサービスを提供できるチームに向けた次のステップとして、チームを巻き込んでユーザー体験を改善したいと考えていました。

そうした想いを抱えながら、登録導線の流れとユーザーの行動の数値を分析していると、パスワード設定画面で多くのユーザーが離脱していることに気づきました。

パスワード設定画面で、ページに到達した約12%のユーザーが離脱

そこで、改めて登録導線を見直し「会員登録の最初に初期パスワードを設定するのはユーザーにとって億劫でハードルが高いため、離脱が発生している」行動の仮説を立てました。

会員登録の最初にパスワードを設定する導線

会員登録数は開発チームとして追っている指標の一つです。考えた仮説にもとづき登録導線を改善して、数字として何かしらの結果が得られると、チームで「BizHintの体験」に目を向けるきっかけになるのではと考えました。

そこで毎週パスワード設定画面の離脱率をウォッチし、約50%の方が離脱していることを定例ミーティングで何度も共有するうちに、事業として取り組むべき課題という共通認識になり、登録導線の改善に着手することになりました。

登録導線の改善は、立場の異なるメンバーを巻き込みながら進めていきました。BizHintの人数が少ないわけではなく、Visional全体で共通して言えますが、肩書きや職種を問わず誰もが共通の課題があれば積極的に巻き込まれてくれます。

今回メンバーを巻き込むうえで、意識したのは大きく2つです。

1つは数字のエビデンスを必ず見せること。事業を伸ばすうえで、取り組みがプラスに働くことが伝わらないと、デザイナーの自己満足と思われてしまい、納得感をもって協力してもらえません。

日次で離脱率の状況をチェック。平日、休日の差や登録者属性のデータとの相関関係があるかもウォッチ

もう1つは、相手への伝え方や伝えるタイミング。SlackのDMのようなクローズドなコミュニケーションはせず、あえてオープンチャンネルでのコミュニケーションを進めました。そうすることで、自分がやろうとしていることが自然とチーム全体に伝わり、キーパーソンとの議論もスムーズに進みます。

この2つを意識しながら、広告集客の担当者をはじめ、エンジニアと壁打ちをしながら、進め方をブラッシュアップしました。巻き込んだメンバーは、定例ミーティングに出ていて私のしたいことを把握してくれていたので、いろいろとアドバイスをくださり「チャレンジしてみよう」と背中を押してくれました。

次にBizHintのコンテンツ作成を担当している編集チームに情報共有をしました。開発チームと少し持ち場が違う編集チームはコンテンツを通じた集客を指標にしているので、「登録導線を変えるため、会員登録数が急に変わる可能性がある」リスクを伝えて、登録導線の変更を把握してもらいました。

デザインと実装は、エンジニアと二人三脚で、どの指標をトラッキングするかなど、デザインから数値計測の設計まで密に議論をしながら進めていきました。

こうしたコミュニケーションを重ねメンバーを巻き込みながら、導線を改善し、改善直後は会員登録率が10pts向上し、結果を出すことができました。

パスワード設定をファネルの最後尾に移動

登録導線を改善して数字が上がった成功体験をチームで共有できた結果、「重要指標だけではなく、全体の体験の流れを見ていく必要がある」というチームの認識が徐々にできてきたように思います。

実際に、登録導線の改善をきっかけに、会員登録導線だけでなくより広範囲のユーザー体験を可視化する取り組みが新たに始まりました。

これまで会員登録数などの指標に関わる「点」の改善を続けてきました。今回、登録導線の流れを「線」でとらえ、チームを巻き込んで登録導線を変えることは、数値が落ちるリスクもあり前に進める勇気も必要でしたが「小さな成功体験」を共有できたと思います。

その結果として、チーム全体がユーザー体験を「面」で考えるようシフトしはじめ、新しい風を吹かせられたのが何よりの成果でした。

今も登録導線の「線」の改善や、全体の体験プロセスの「面」の可視化は継続しています。登録してくださった会員様に価値ある体験を届けられるよう、「BizHintを利用いただく会員様の全体の体験を改善し続ける」大きなコトに向き合える開発チームを目指し、引き続き頑張っていきたいと思います。

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