コニカミノルタでは、教育現場における社会課題の解決を目指す、学校教育向けソリューション「tomoLinks」の開発・運営を行っています。
私たちはコニカミノルタの「デザインセンター」に所属するデザイナーとして、tomoLinksのUI/UXデザインに携わっています。
tomoLinksは立ち上げから約4年の新規プロダクトです。小中学校における新しい学びのあり方を提案するため、単に業務を効率化するだけでなく、教育を取り巻く環境を理解し、時には現場の先生とともに価値を探索し、それをプロダクトに反映していく必要があります。
今回は、tomoLinksのデザインに携わる中で意識している、教育現場での新しい体験をつくること(攻め)と一貫した使いやすさを維持すること(守り)についてご説明します。
tomoLinksは、教育データ活用を軸とした3つのサービスで成り立っています。
教育現場は、デジタル化の進展や学びのあり方の多様化など、日々大きく変化しています。現場の先生方は、これからの社会に求められるより良い教育を提供するための試行錯誤を重ねています。
その中で、先生方が今抱えている課題をそのまま開発に落とし込むだけでは、真に必要とされるプロダクト提供にはつながりません。どのような体験が先生や子どもにとって価値になるのかという仮説を持ち、プロダクトを通して提案していくことが求められます。
新しく機能をつくる時には、目指す学びの姿を構想することから始まります。そして、構想した体験が実際に教育現場で受け入れられるかどうかを検証する必要があります。
また、tomoLinksという一つのアプリの中で多様な機能サービスがある中、使いやすさを維持することも重要です。先生や様々な年代の子どもたち(小学1年生から中学3年生まで)が毎日利用するため、使いやすさを維持できなければ、子どもたちの学びの妨げになってしまいます。
そのため、教育現場での新しい体験をつくること(攻め)と一貫した使いやすさを維持すること(守り)の両立が重要だと考えています。
教育現場での新しい体験をつくる取組みとして「とも学」のリニューアルを紹介します。
とも学は、子どもの学習状況を先生が手元でリアルタイムに確認し、声かけが必要な子どもを見つけたり、授業の展開を考えるなど、ICTならではの授業展開が可能となる授業支援サービスです。
リニューアルのテーマは「協働学習」の促進でした。協働学習は、教育現場で取り入れられている新しい学習方法であり、子ども同士が教え合い、学び合う協働的な学びを提供することを目的としています。
子どもたちがグループをつくり、1枚の模造紙を囲んで、学んだことをまとめたりシェアし合うような体験をオンラインでも実現し、子ども同士の学び合いを成立させたいという考えがありました。
tomoLinksでは、教育現場でのリアルな行動や声に触れながら課題やニーズを知り、デザインすることを大切にしています。
例えば、小学校の先生に一日密着して、授業の進め方や、子どもたちとのコミュニケーションの取り方、プロダクトの使い方などを観察させていただくといったこともしています。
観察を通して得られた気付きはレポーティングしてチームに共有。その後、特に重要なインサイトは何か、構想している新機能がどのように使われると良いかを探っていきます。
一方で、現場観察やオープンクエスチョンのヒアリングだけでは、特にフィードバックが欲しいポイントに対する潜在的なニーズを引き出すことができません。
新しい協働学習のあり方を提案する機能の場合は、単にプロトタイプを見せて感想を聴くだけではなく、先生が実際にどのように使えるのかイメージをしてもらいながら、話を引き出す必要があります。
そこで、ヒアリングの仕方として、架空の授業シナリオを用意し、そのストーリーに沿ってプロトタイプを見ていただく形でヒアリングを行いました。
実際の授業の流れをイメージしながらプロトタイプを見ていただいたことで、「こんな授業進行ができそう」「この機能があれば、先日の授業でも違ったかたちで授業できたと思う」といったリアルなフィードバックをいただくことができました。
このような現場観察とヒアリングによる仮説検証をして、実際の授業で活用できることを確認しながら、より詳細な仕様やUIを検討していきます。
例えば、子どもたちがグループワークで自分の回答と友達の回答を見せ合いながら学びを深められるようなUI、回答を入力しやすいUIなど、デザインチームで案を作成し、企画や開発のメンバーと一緒にデザインレビューを行い、細部を詰めていきました。
このような過程を経て、とも学のリニューアルを実施しました。
リリース後、実際の教育現場でも、子どもたちの協働学習を支援するツールとして活用いただくことができています。(実際の活用事例は、こちらからご覧いただけます。)
上記のように、教育現場における新しい体験を創出していくと同時に、プロダクト全体で一貫した操作性を維持し、UXを洗練させていくことも大切にしています。
tomoLinksは教育現場の先生方や、様々な年代の子どもたちが利用するプロダクトなので、日々の授業で使いやすく、分かりやすい品質を守ることも重要です。
そこで、デザインセンターのメンバー主体で、開発や評価など、関連部署のメンバーを巻き込み、現状のプロダクトや仕様に対する振り返りと課題出しを行い、操作性改善を実施しました。このような活動は定期的に行っていく必要があると考えています。
日々営業メンバーを通じて寄せられるユーザーからのフィードバックも重要なインプットになります。ただし、フィードバックをそのまま受け取るのではなく、「なぜこのような声が生まれるのか」を深堀って対応することが適切な改善につながると考えています。
私たちはtomoLinksのデザインに携わる中で、教育現場での新しい体験を創出することと、一貫した使いやすさを維持することの両立を大切にしています。
学校教育の現場では、先生や教育に携わる方々が指導の仕方に試行錯誤を重ねており、現場で使われるツールもテクノロジーの発展によって日々変化しています。
今後もtomoLinksを通じて、先生や子どもたちに寄り添い、より良い教育が届けられるよう、デザインに取り組んでいきますので、引き続きご期待ください。