マネーフォワードのデザイナーのちゅうさんです。普段はXカンパニーのUXデザイン部のグループリーダーをやっていて、兼務でデザインチームの採用も担当しています。

マネーフォワードデザインチームでは、2021年9月に初めて23卒向けのインターンシップを実施しました。

元々デザイナーの新卒採用で、学生と早期に接点を持てていないという課題感がありました。他の会社はデザイナーインターンを徐々に始めていたこともあり、「マネフォらしさを伝えられるコンテンツ」を作らなくては、と思い、サマーインターンシップを行うことに。また、デザインチームを拡大していくうえで、学生と早期で関われるインターンシップは機会として今後も継続的にやっていくべきかを、実際に1回開催して検証してみたいという目論見もありました。 チーム内に全く知見がないなか始めましたが、次回以降の開催に繋がるような機会を作ることができました。

今回はデザイナー中心で進めた設計プロセスを、備忘録的にまとめていきたいと思います。

マネーフォワードは、全社のバリューに「ユーザーフォーカス」という文言が載るくらい、全体的にデザインの考えが浸透していて、サービスやプロダクト以外の、組織設計もデザイナーが担当することが多いです。

今回の取り組みもデザイナー中心で進め、最終的にデザイナーが関わったからこそ作れたインターンシップだったと思います。インターンシップの設計の参考にしていただきたいのはもちろん、マネフォデザインチームの雰囲気が伝わればと思います。

まず最初に、運営チームの「インターンシップ」という機会の解像度を上げるために、今回のターゲットでもある学生に比較的属性の近い入社1,2年目の若手デザイナー複数人にヒアリングを行いました。ヒアリングの内容としては、「今の学生はどのような経験をしたいか」「インターンでどのようなものを得たいか」というもの。

若手メンバーへのヒアリングログ

彼ら彼女らが就活時に実際に行ったインターンシップでよかったものも合わせて聞いて、あるべきインターンシップの要素を出した結果、まずは「研修型」ではなく「実務型」の機会にしようということが決まりました。並行して行った他社のインターンのリサーチ結果も踏まえ、座学でただ知識を得るよりも、実際に手を動かしてデザインする実務型のほうが学生側のニーズが強そうと判断したのです。

他社事例のリサーチ

私たちとしても、インターンシップの場を「マネーフォワードのカルチャーを知ってもらう」機会にしたいと考えていました。我々は職種関係なく、採用で一番カルチャーフィットを重視しているのです。

そうなると、どうしても一方通行のコミュニケーションでは伝わらない。若手デザイナーへのヒアリング結果を合わせ、カルチャーを体現している現場社員と一緒に手を動かすのが一番ではないかと考え、「現場のデザイナーと一緒に実際にサービスを作る」という方向性で意思決定しました。

方向性が決まったあとは、ワークショップづくりが得意なメンバーをチームに巻き込んでテーマを決めていきました。

インターンシップで行うワークショップのテーマは、マネーフォワードはお金の会社なので、お金に関わるFintechのサービスについて扱うのが大前提。案として最初は「マネーフォワードMEの改善」が有力案として上がりました。

ただ、サービスデザインのゼロイチを体験してほしいという考えがあったので、今まだマネーフォワードが対象としてないシニアと子供をターゲットにしたものにしようとなりました。参加者の年齢的に子供のほうが考えやすいんじゃないかということで、「子供向けの金融サービス」に決まりました(ちなみに、マネーフォワード MEの改善提案は、エントリー段階の課題としてやっています)。

また、参加する学生にとって嬉しい体験として私たちが捉えていたのは「インターンシップの成果物を自分のポートフォリオに載せられる」ということ。なので、ワークショップは「ゼロイチで新しいものを作り上げられる」内容にしました。

企画MTGの議事録の一部

2日間のインターンのうち、初日はUXワーク(リサーチ)、2日目がUIワーク(手を動かす)に決定。Day1はコンセプトシートを埋めるのがアウトプット、Day2はコンセプトシートをもとに実装するために必要な情報設計を行ってプロダクトを実際に作ってみるという、マネフォのサービスデザインのプロセスを2日間に落とし込む形で設計しました。

実際のスケジュール

最初の方向性決め以降のテーマ選定や当日の細部を詰めていくなかで、常に新卒メンバーに壁打ちをしてもらいながらプロセスを進めていきました。

常に「学生にとって嬉しいのは何か」という目線を入れて、形にしていきました。途中から彼らもチームに加わってくれて、スライドのデザインや景品の設計や配るノベルティづくりなどどんどんと業務を巻き取って進めてくれました。

このようにメンバーが一体となって、当日まで盛り上がりながら準備が進んでいきました。もともとマネフォには助け合う風土というものがあり、無理に周りにお願いしまくるというよりは、「やっていることをオープンにし続ける」ことを意識しました。「船頭を置かなかったこと」が、プロセスがうまく進んだ一つの要因かもしれません。

結果としては、及第点かなと思います。参加者はみんな楽しんでワークをやっていて、事後アンケートの声も概ね好評でした。

Day1のUXワークのスライドの一部
Day2のUIワークのスライドの一部

反省点としては、スケジュールを詰め込みすぎたこと。どうしても時間がキツキツになってしまい、短距離走的なワークになってしまった部分がありました。本当は、サービスづくりのリアルな流れでもある「一連のフローの評価、振り返り→改善」もやりたかったです。

当日のMiroを使ったワークの様子

しかし、次回以降の開催のための学習をたくさん得ることができ、チームとしては大きな成果になったと思います。

初めての開催にも関わらずこのような結果を得られたのは、企画段階から最終アウトプットまで、ターゲットである学生に近い新卒メンバーへのヒアリングを常に行ってきたからだと考えています。学生時代から5年以上たった僕やCDOがメインで作っても、それなりのアウトプットしか出なかったと思います。若手メンバーが忌憚ない意見をくれたおかげで、参加学生の体験の向上に近づきました。

また、2日間の密な時間というインターンシップ固有のメリットを捉え直し、デザインにおけるテクニックを研修的に教えるのではなく、バリューを体現しながら実際のサービスデザインを体感できるという形で開催できたのも効果的でした。エンジニアとの連携など、より現場で行われることを再現したコンテンツになったように思います。

次回以降は「及第点」以上の成果を得られるよう設計していきたいと思っています。

このデザイン組織をもっと知る