東京海上日動システムズの内製デザインチーム「Knot+」で、東京海上日動ホームページ (以下HP) 内の「お客様サポート」のリニューアルに取り組みました。
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/support/
今回は、漠然とした課題はあったものの「そもそも何をやるべきか?」がわかっていない段階から、企画者と並走する形で
「ビジネスモデルキャンバス」を使った、ビジネス構造の整理
過去の問い合わせキーワードの分析
お問い合わせタイプごとのペルソナ、ジャーニーマップの策定
システム設計目線で、as is / to be を整理
プロトタイピングによる体験の検証
などを行い、企画実施の意思決定を推進することができました。
「単に依頼をこなす」だけではない、東京海上日動システムズのデザインチーム「Knot+」による、課題発見型プロジェクトの進め方についてまとめてみたいと思います。
東京海上日動システムズのエンジニアリング組織は、東京海上日動火災を中心とした東京海上グループのシステム開発を担う内製開発組織です。
その中には、企画・プロダクトデザイン・開発を内製で推進するためのデザインチーム「Knot+」があります。
私たち「Knot+」は、依頼を受けてそれに応えるだけでは不十分だというスタンスをとっています。それでは他社の開発パートナーと変わりません。
内部に開発機能を持っているメリットは、企画推進するプロダクトオーナーとの連携が行いやすいことにあるはずです。
必要ならば「企画の必要性」から示していき、企画に入り込み、確信度を上げていく。これが東京海上日動システムズのデザインチーム「Knot+」の役割だと考えています。
今回は、このような役割を最初に示せた事例として、「お客様サポート」サイトのリニューアルの事例を紹介します。
「お客様サポート」は、東京海上日動のサービスごとの手続き方法などをまとめた、サポートページです。これまでは東京海上日動のHPに「お問い合わせページ」「ご契約者様向けページ (ご契約者様の手続きメニューをまとめたページ」「よくあるご質問」の3つが別々に分かれていましたが、これら3つのページを統合して新設されたのが「お客様サポート」です。
これまでの問い合わせページの問題として「コール (電話でのお問い合わせ) 数が多い」ことが挙げられていました。
東京海上日動のHPには、ご契約者様が手続きごとに必要な説明がまとめられた、お客様が自己解決できるコンテンツが用意されています。一方で、そのコンテンツへのたどり着き方が分かりづらく、結果としてコールでのお問い合わせをする方が増えてしまっていたので、もっとお客様が自己解決しやすくすることが必要だろうと考えられていました。
このような背景で企画自体は動き出していたのですが、企画をしていたプロダクトオーナーは「お客様が何を求めているのか」をまだ明確にできていない課題感を持たれており、開発までスムーズに進行させるには、ユーザー調査をもとに企画推進からサポートしていく必要があるだろうと考えていました。
そのため、東京海上日動システムズのデザインチーム「Knot+」からデザイナーがプロジェクトに参加し、プロダクトオーナーとともに「まず何に取り組むべきかを明確にする」ところからプロジェクトが始まりました。
プロジェクトとして注力したのは以下のようなポイントです。
ユーザー調査をもとに、理想的な顧客体験を定義する
プロトタイピングで検証して、顧客体験コンセプトに確信を得る
これらのアプローチのために、企画実施を決定するまでのスケジュールは、以下のように進めていきました。
ここからは、企画実施に至るまでの詳細なプロセスを一つずつまとめてみます。
まず最初に取り組んだのは、「ビジネスモデルキャンバス」を用いて、今回のプロジェクトで取り組むべき課題や、お客様に届けるべき価値を明確にすることでした。
企画の目的から探っていくために、プロジェクトメンバー全体で価値の認識を揃える必要があると考えて、このようなアプローチを取っています。
ビジネスモデルキャンバスのフレームワークを用いて、プロダクトオーナーと議論をしながら、「お客様サポート」のモデル構造をまとめます。
整理を通して、「お客様サポート」が本来ユーザーにどのような価値を提供すべきか、今回のサイトリニューアルを通してどのような効果を生むべきかが分かってきたので、これをプロジェクトの目的として言語化しておきます。
プロジェクトの目的や解決することを整理したものの、まだ「そもそも何に取り組んでいけば良いか」が具体的になっていませんでした。
そこで次に、ユーザー調査を通してお客様の解像度をとにかく高めていくことに取り組みました。
ここでは定量調査と定性的なインタビューを組み合わせながら、現在のサイトの課題を分析していきます。
例えば定量的な調査としては、泥臭く、これまでの1年間のお問い合わせを全て確認し、共通するキーワードを分析していきました。
このように実際のお客様の声をもとに、傾向を考えていきます。
結果として、お問い合わせのタイプが3つに分かれることに気づけたので、このタイプ別にペルソナを策定しました。
同時に、ペルソナごとのジャーニーや課題も整理し、お客様がどのようなことを求めているのかをプロジェクトメンバー間で合意します。
定量/定性調査や、ペルソナ・ジャーニー設計を通して、網羅的に課題がわかってきたので、さらに具体的にやることを明確にするために「課題を一覧化」しました。
課題整理をもとに、サイトリニューアルを進めていくためのソリューションの検討を行います。
ここでは、よりシステム的な目線で理想的な体験を整理していきます。
まず、現在のお問い合わせフローを簡易に図解 (AsIs) した上で、そこからあるべきサポートページの体験の流れを整理 (ToBe) しました。
さらに、あるべきお問い合わせフローが実際のお客様が求めるものを満たしているかを検討するために、お客様がサイト内でどのような行動を行うのかも、ペルソナごとに整理しました。
ペルソナごとの理想的な体験仮説が整理できたので、これらが実際に起こせるかどうかをプロトタイピングで調査します。
ペルソナごとの想定行動を踏まえたプロトタイピングを作成し、実際にペルソナと合致する方にテストを行いました。
調査の結果、いくつか改善点が見つかりつつ、全体としてはうまくプロトタイピングが機能しそうなことが分かります。
ここまでの調査内容をデザイナー側で整理して、プロダクトオーナーを含むプロジェクトメンバーに資料として共有し、結果として開発着手の意思決定が行えました。
実装フェーズでもここまでの整理を踏まえた支援を行います。システム設計から一緒にディスカッションし、もしつくりづらい部分があれば、お客様の体験を踏まえたデザインデータの調整を一緒に行なっていきます。
このようなプロセスを経て、無事「お客様サポート」のリニューアルが行えました。
繰り返すと、今回のプロジェクトとして注力したのは以下のようなポイントでした。
ユーザー調査をもとに、理想的な顧客体験を定義する
プロトタイピングで検証して、顧客体験コンセプトに確信を得る
東京海上グループのシステム設計に責任を持つ組織である東京海上日動システムズのエンジニアリング組織。
その責任を果たすためには、私たちデザインチーム「Knot+」は「そもそもの企画にまで入り込んでいけるデザイン組織」になっていくことが必要です。
デザインチーム「Knot+」では、今回と同じように企画設計も並走していく事例がどんどん増えています。また、定量調査に特化したアプローチなど、専門性も増しています。
今後も、東京海上グループのデジタルへの投資を加速していけるように、デザインチーム「Knot+」が企画から並走してプロジェクトに取り組んでいきます。