RENOSYを運営するGA technologiesでデザイン部長を務めつつ、RENOSYを始めとするサービスのブランドマネジメントも担っている山本です。

今回、サービス開発が一貫した基準で行われていない課題に対して、共通の開発指針をつくるために「RENOSYのサービスコンセプト」を開発しました。

RENOSYの一貫した開発を支えるための指針としてのサービスコンセプト

一般的なブランドマネジメントの取り組みと比べると、以下の2点がユニークな部分かと思います。

  • サービス開発における指針となることを目的としている

  • 具体的なユーザーの声から生まれたものである

拡大してきたRENOSYに、なぜこのような施策が必要となったのか。背景から具体的な取り組みまでまとめていきたいと思います。

RENOSYは、安心・簡単・最適な、不動産による資産形成を叶えるテクノロジーを活用したAI不動産投資サービスです。

はじめての方も安心してはじめられるよう、生涯にわたってお客様一人ひとりに合ったサービスを提供していくことを目指してサービスを開始し、2024年に東京商工リサーチが行った調査では、マンション投資における販売実績(※1)および投資用不動産の買取実績(※2)でともに全国No.1を獲得している、急拡大の事業です。

「不動産による資産形成をあたりまえにする」ことをビジョンに掲げる、不動産投資プラットフォームRENOSY
(※1)株式会社GA technologies「AI不動産投資のRENOSY、投資用マンションおよびアパートの売上実績で全国No.1を獲得」(2025年03月11日発表)https://www.ga-tech.co.jp/news/dby19it2v__h611_/ (※2)株式会社GA technologies「RENOSY、投資用不動産の買取実績で全国No.1を獲得」(2024年12⽉25⽇発表)https://www.ga-tech.co.jp/news/1u2thdi9g0vjf62z/

そんなRENOSYでは、事業や組織が拡大してきたタイミングで、デザイン部が中心となってブランドマネジメントを始め、一つ目の取り組みとして今回のサービスコンセプト定義を行いました。その背景には、以下のようなきっかけがありました。

ブランドマネジメントの発端は「各メンバーが売上に繋がりそうな施策は考えているが、一貫したユーザー体験を考えられているメンバーが少ない」という問題を解決したかったことです。

これはいくつかの問題が重なって生まれる問題です。例えば、ユーザーの声を十分に聞けていなかったり、事業拡大に対応するために細かく部署が分かれていて連携がしづらかったり、急拡大ゆえに売上意識が強まりすぎて、ユーザー体験を意識する文化が育っていなかったりと、複数の背景がありました。

このままでは、施策の良し悪しは売上からしか判断されず、最終的にユーザーの体験も悪くなってしまい、長期的には売上も下がっていってしまいます。

当時のブランドマネジメントの課題整理
メンバーがそれぞれに売上に繋がる施策を考えているが、サービス全体で一貫した体験をつくることは意識されていなかった

このような、サービス全体のユーザー体験を考えられていない問題への対応として、ブランドマネジメントの取り組みが始まりました。

施策の一貫性がない課題に対して、最初は、ユーザーの理想の体験を決めることで解決しようとしていました。

しかし、議論やアウトプットを重ねても、なぜかうまく決まっていきません。これはその手前で「何を理想の体験とするのか?」を判断する軸がないことが問題だと分かってきます。

RENOSYには当時から「不動産による資産形成を、あたりまえにする。」というビジョンがすでに存在していました。それでも施策実施の際に判断がブレるのは、「これをやると良い/これはやってはいけない」という具体的な基準がないからです。つまり、サービスとしてのスタンスを示すコンセプトが定義されておらず、これをつくる必要があると考えました。

ビジョンと、理想のユーザー体験の間に、サービスとしてのスタンスを示す「コンセプト」をつくる必要がある

ここから、RENOSYのサービスコンセプトの開発を進めていきます。大きく分けると、5つのステップでサービスコンセプト開発は進められました。

RENOSYの、サービスコンセプト開発プロセス

冒頭に記載した通り、今回のプロセスにおいて特に意識していたのは、具体的なユーザーの声を根拠としてサービスコンセプトに紐付けることです。ただ綺麗な言葉でコンセプトを定義するだけでは、開発の指針に落とし込むことはできません。

できる限り多くユーザーの声を集め、それを根拠として示していくことで、コンセプトの強度や、メンバーの納得感を高めていくことに取り組みました。

まずは、それぞれのメンバーが何を理想としていて、どのあたりを課題として捉えているのかを把握しにいくために、営業・マーケ・不動産管理・不動産仕入れ、、などさまざまな部門へのヒアリングを行っていきました。もちろん、同時に複数の役員にもヒアリングを行います。

ここでは、現在のRENOSYのサービス全体像を表した簡易なジャーニーを用意して「RENOSYや、あなたのチームが、どのような状態になると良いと思いますか?」「現在の課題はどの辺りに感じていますか?」といった現状の意識をヒアリングしました。

簡易なジャーニーを用意して、各部門のさまざまなポジションの方、役員に対して、RENOSYの理想像や課題感をヒアリングしていく

これは、各部門で何を理想としていて、どこにズレがあるのかを明らかにしていくためのアプローチです。サービスコンセプトは共通の目標に落とし込まれるべきなので、どんな立場のメンバーでも追いかけたい理想像へと昇華するために、このステップで情報を幅広く集める必要がありました。

その後、どの部門においても共通する課題感を分類します。大きくは「能力 (できること)」「プロセス」「エモーション (感情)」の3つの部分で、うまくRENOSYのできることがお客さまに伝わっていないような感覚を持ちました。

ヒアリングを踏まえて、RENOSY全体に共通する課題を整理しておく

メンバー視点でのRENOSYへの課題認識を踏まえつつ、ここでユーザーインタビューで直接ユーザーの声を集めていくアプローチを行います。価値はユーザーが感じるものなので、社内だけでこねくり回すのではなく、早めに「ユーザーが何を求めているか/現状ではどのような価値を感じているか」という情報をもとに考えられるようにしたいと思っていました。

インタビューでは、利用者はもちろんですが、非利用者にも聞きにいくようにしています。

  • RENOSYの運営 (GA technologies)へのイメージ

  • RENOSYというサービスのイメージ

  • 現在も、RENOSYに価値を感じること

  • 逆に、現在はRENOSYに対して価値を感じないこと

などの項目を、約5名ほどの方にヒアリングしていきました。

RENOSYの提供価値を明確にするために、ユーザーの声を聞きにいく。利用者・非利用者の両方に「企業やサービスへのイメージ」「価値を感じること/感じないこと」をヒアリングした
ジャーニー別で「価値を感じること/感じないこと」を回収

ここで生まれたインサイトを一覧化し、ユーザーが求めるRENOSYの価値も整理しました。この時点で、最終的なコンセプトに近い「安心」「簡単」「最適」という3つの価値仮説が生まれています。

ユーザーから得られたインサイトの一覧をまとめ、そこからRENOSYに求められている価値仮説をシンプルに整理

さらに、ヒアリングした内容をもとに、ソリューションとして求められている内容も整理しておきます。

ユーザーの声をもとにソリューション仮説を整理

ここから、3つの価値仮説を、具体的なRENOSYの体験に当てはめていきます。最終的に開発でも使えるコンセプトにしたいので、具体的に、私たちがどのような体験をつくっていきたいのかを施策ベースで考えていきました。

RENOSYの体験を、ざっくり6つの体験に分割して、それぞれで価値仮説から体験や施策を考えていきます。

3つの価値仮説を、RENOSYの体験に当てはめて、施策ベースでは何ができるかを考えていく

このステップは、それぞれの体験を担当しているPdMと一緒にワークショップを開催して進めました。このタイミングで各PdMを巻き込んだのは、最終的につくられるサービスコンセプトを、開発における指針にしていってもらうためにも、納得感を持ってもらいたかったからです。

ここまでの取り組みをコンセプトにまとめます。

コンセプトに変換する前に、ここまでに集めたユーザーの声を整理し、サービスコンセプトの根拠としてまとめています。

恣意的に主観でまとめたものではなく、「間違いなくユーザーが求めている価値」をもとにコンセプトをつくることで、疑いようのない開発指針へと昇華していくと考えています。

ユーザーの声を根拠として、疑いようのないサービスコンセプトとしてまとめる

このユーザーが求めている価値をもとにサービスコンセプトとして「安心・簡単・最適な、不動産による資産形成サービス」という言葉が生まれました。

ユーザーから求められている「安心」「簡単」「最適」という3つの価値を入れた、サービスコンセプトを定義

さらに、ユーザーや全社員に対して見せても共感してもらえるように、つくったコンセプトを「コンセプトブック」としてまとめました。

RENOSYの「コンセプトブック」が完成

コンセプトブックには、指針としてコンセプトが機能するように、「安心・簡単・最適」とはどういうものか、RENOSYに関わるつくり手としてどういう行動が推奨され、どういう行動が推奨されないのか、を細かく定義しています。

コンセプトブックには、「安心・簡単・最適」という価値をつくるための行動を、DoとDon’tで整理している

サービスコンセプトをつくったあとは、徹底的に社内にコンセプトを浸透させていきます。

最終的に、一貫したサービス体験をつくるための開発指針にしていくことが目的なので、つくったものが使われないと意味がありません。

このステップでは、あらゆる方法で浸透していくことが大切です。

例えば、社内に掲載するポスター、営業資料の1ページ、コンセプトを表した動画、などいくつものクリエイティブを制作しています。

サービスコンセプトを表したポスターを制作して、社内に掲載するなど、いくつもの浸透施策を打ち続ける

また、サービスコンセプトがどの程度浸透しているのかを踏まえて、浸透施策を改善していけるように、定点のアンケートを取り始めました。

浸透度を測るために、定点でアンケートを実施

さらに、開発の場面でもサービスコンセプトが活用されるように、各部門でOKRを立てる時にサービスコンセプトを組み込んで考えてもらうようにしています。

また、コンセプト開発以降の流れも進めていけるように、ブランドロードマップを設計し、ブランドマネジメントのチームで推進しています。

施策の中でサービスコンセプトが活用されるように、OKRを立てる際にコンセプトを活用してもらうワークショップを開催
さらにRENOSYのブランドを強めていけるように、サービスコンセプト開発以降の流れもロードマップとしてまとめ、運用していく

結果として、今回開発したサービスコンセプトは社内に強く浸透し始めています。

多くの部署で、朝会のタイミングで共有される資料の冒頭に、今回つくったサービスコンセプトの資料が差し込まれるようになっていたりと、「私たちは何を目指すのか」「何のためにこの施策をやるのか」という共通言語として、多くの場合でサービスコンセプトが引用されるようになっています。

朝会で登壇するさまざまな部署の方が、冒頭でサービスコンセプトを引用してくれるように

一方で「共感はあるけど、サービスコンセプトを業務に落とし込むのは、やはり難しい」という声もあります。これも根気強く変えていくことが必要です。意識するだけでは変えづらい業務では厳密にルールを決めていくアプローチも時には必要だと思います。

例えばマーケティングでは「不信感のある広告は打たないようにする」ためのガイドラインを、自発的につくって運用を開始してくれました。

サービスコンセプトを参考に、マーケティングで自発的に「不信感のある広告を打たない」ためのガイドラインがつくられた

これからは、さらにブランドマネジメントの取り組みを強めていくために、アートディレクターの採用を行い、各タッチポイントへの反映をしていくことに取り組んでいこうとしています。

ブランドマネジメントをさらに強めていくためのアートディレクター採用に注力

私たちがブランドマネジメントで意識しているのは「使えるもの」をつくるということです。

コンセプトをただつくるだけでは、納得感も生まれず、一人歩きしないことが多いと思います。

目線として、必ず「使えるもの」にする意識を持つことが重要です。今回のサービスコンセプト開発でいうと、つくったコンセプトが開発指針になることをゴールとしていました。

そのように具体的な活用まで定義すると、コンセプトの開発プロセスも変わります。今回でいうと「ユーザーの具体的な声が根拠として紐付けられていないと、開発指針にまで昇華しない。だからユーザーインタビューや整理に力をかける」というようなプロセスになりました。

ユーザーのより良い体験をつくるには、デザイナーだけでなく、施策を動かす全ての社員につくりたいブランドが浸透していく必要があります。

GA technologiesのデザイナーは、ユーザーと向き合い、つくりたい体験を社内の共通言語にできるように「使われる仕組み」を増やしていきます。ブランドマネジメントだけでなくUXデザイン、リサーチなどあらゆるところからこれを行います。今後も、GA technologiesがユーザー中心な組織に生まれ変わるための仕組みの裏側を公開していきます。

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