啓蒙は、丁寧に継続的に。アクセシビリティの社内推進とメンバーの巻き込み方

Date

2021/09/15

Chatwork プロダクト本部 プロダクトデザイン部の守谷です。ChatworkではUIデザイナーとして活動しながら、アクセシビリティに関する取り組みを進めています。

前回は、会社のミッションからアクセシビリティ方針を策定した方法を紹介しました。

今回はアクセシビリティの取り組みにどのように周囲の人たちを巻き込んでいったかをご紹介します。

アクセシビリティ方針策定と同時に他のデザイナーと進めたことは、現実的な達成目標の設定や、アクセシビリティの規格「JIS X 8341-3:2016」への理解を深めるための勉強方法などの相談、実際のワークフローの定義などです。

対象範囲をまずはデザイナーの責任管轄である「Webサイトのみ」に絞りながら、計画ではコンテンツ立案に関係するすべての社員にも理解してもらうことを目指し、アクセシビリティ対応フローを想定・整備しています。

想定プロセスでは、企画にアクセシビリティ要件を含めてもらうことや、ライティングなどでもわかりやすい表現を用いることを定義しています。アクセシビリティの取り組みを、「誰か1人で頑張る」ものではなく全社をあげた取り組みへと進化させていくためには、次に社内啓蒙をおこなう必要がありました。

アクセシビリティは、性質上事業に与えるインパクトは短期で見ると非常に小さいものです。また、大多数が「聞いたことはあるかも」程度で、何のために取り組む必要があるのかなどを理解していない人も多数です。そのため、社内向けに説明会を開くなどして理解促進に努めました。

ここで意識したのは、対象にとって伝える内容を変える、ということです。

セールスやマーケなどのビジネスサイドのメンバーには、「組織利用においては、1人でも使えない人がいるサービスは検討の段階で弾かれてしまう。そのため、今後大きな組織の導入を進めていくためにはアクセシビリティ対応を進めていく必要がある」という内容を伝えていきました。

私たちが開発・提供しているのはサービスですが、取り扱っているのはメッセージ(情報)です。利用者の状況・状態に応じてメッセージの取り出し方を決められる状態を提供することによって、今後進んでいく労働の多様性などへの柔軟な対応も可能になるということも、説明に盛り込んでいます。

プロモーションなどを管轄するメンバーからは、「アクセシビリティを意識することで表現の幅が狭まる(プロモーション効果が下がる)のではないか」「守らないと罰則があるのか」といった反応も見られました。

それに対しては、解釈として「プロモーションであればターゲットを設定するはずで、その対象に含まれない対象へのアプローチであれば問題はない。例えば、ある一定層だけに絞ったプロモーションに対し、対象外の層・人への効果を含めるべきかという話と同等である。もちろん、対象が『すべての人』とするのであれば、対応すべき。」という説明をおこないました。

また、エンジニアに対しては、テクニカルな話に絡め、興味を持ってもらうように訴求しました。

有名なテック企業の発信や事例を例に挙げながら、メッセージが加工しやすく作られていると、未知のデバイスにも届けることのできる基盤が作れる……といったアプローチです。この説明をしたころにはまだスマートスピーカーが発売されていませんでしたが、「Chatworkで送られてきたメッセージがスマートスピーカーから流れてきて、それに声で返事をするとChatworkでその内容が送信されるような状態を作れたら、ワクワクしない?」と説明をすると受け止められやすかったです。

このような社内向けのメッセージングは継続することに意味があります。また、いつでも見られる場所にまとめておき、何か聞かれた場合はそれを提示する。さらに興味を持ってくれた人に対しては、常に最新情報を流せるように専用チャットルームを用意し、新しい情報をひたすら配信していく。こういった地道な活動の結果、徐々に共感してくれるメンバーが増えていきました。

アクセシビリティという名前が付くと、特別な対応や技術が必要なもの、と捉えてしまう人もいるかもしれれません。しかし、どんな職域の仕事であっても少し意識するだけで格段に状況がよくなるものです。

難しいと言われている各達成基準も、その理由を読み解いていくと特別な考え方ではありません。理解者を増やすことで、自然に設計に組み込んでいける開発者を増やしていきたいと思っています。

今回は、アクセシビリティの取り組みを社内で啓蒙する方法を紹介しました。実際のWebサイト、プロダクトへの対応の取り組みは別の機会にまとめていきたいと思います。

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