コニカミノルタのデザインセンターには、ハードウェア・デジタルの2つの役割に分かれて、20名以上のデザイナーが所属。中途採用だけでなく、新卒のデザイナーも多く在籍している組織です。

デザインセンターでは、各メンバーが自分のキャリアやスキルの成長を意識しながら業務に取り組めるように、組織としていくつもの仕組みを用意しています。

その取り組みの一つとして、昨年から運用を開始した「自分分析シート」という仕組みをご紹介します。

各メンバーが自分のキャリアやスキルの成長を意識して業務に取り組むための仕組み「自分分析シート」

コニカミノルタのデザインセンターでは、全社機能横断組織として、幅広く事業に関わっています。組織規模としても20名以上と拡大している状態です。さらに新卒のハードウェア、デジタルのプロダクトデザイナーを毎年数名、採用しています。

全社機能横断組織であるコニカミノルタデザインセンター。20名以上のデザイナーが在籍、毎年数名の新卒デザイナーを受け入れている

このように組織が発展していく中で、組織としてデザイナーの “成長の仕組み” を用意していく必要性を感じるようになってきました。

「自分分析シート」を用意したのは、メンバーが「今の活動のままで良いのか」という漠然とした不安を抱えている様子を観測したことがきっかけです。

デザインセンターのメンバーは、年間を通して複数の事業部と協働しながらプロジェクトに取り組んでいます。そんな中で「業務と自分のキャリア設計がどのようにつながっているのか見えにくい」「スキル面で成長できているかどうか、自信が持てない」というメンバーが多くいることが分かってきました。

当時よく挙がっていたメンバーの声「業務と、自分のキャリア設計とのつながりが見えにくい」

このような声が挙がっていた原因には、キャリア設計を実務に落とし込む仕組みがなかったことにあります。

もともとデザインセンターでは、全社共通の仕組みである「CDS(キャリアデザインサポート)」というシートを使って、期初のタイミングでメンバー個々人に自分のキャリア設計を考えてもらう運用をしていました。

一方で、このCDSで考えたキャリア設計を意識した行動は、目標や評価に繋がらず、業務上の目標設定や評価は「課題目標シート」という別のシートをもとに行われていました。「課題目標シート」は、業務目標の達成度を評価するためのものであり、個人の視点やキャリアに関する記述は原則として含めないことが推奨されています。

CDSで考えたキャリア設計と、課題目標シートに記載された業務目標との間につながりがなく、メンバーの中には「業務目標だけを追っていて、本当に大丈夫なのか?自分のキャリアに結びついているのだろうか?」という不安を感じる人もいました。

これまでの目標設定の仕組み:業務上の目標 (課題目標シート) と、キャリア設計 (CDS) の繋がりがなくなってしまっていた

理想的な状態とは、CDSで描いたキャリア設計が、課題目標シートに書かれた業務上の目標や評価とうまく連動していることです。つまり、組織として不足していたのは「キャリア設計を実務に反映させる仕組み」だと捉えました。

CDSで考えているキャリア設計と、課題目標シートで考えている業務上の目標を繋げる仕組みが必要

同時に、このような仕組みがないことでキャリア設計を考えづらくなっているのは、メンバー個人の問題ではなく、組織として必要な仕組みが整っていないことに起因する構造的な問題だと考えています。

理由の一つに、特にデザインの領域においては、「どのようなスキルを伸ばすべきなのかを、自分だけで考えることは難しい」という問題があります。10〜20年前であれば「このスキルさえ伸ばしておけば大丈夫」という明確な指針がありましたが、不確実性の高い現代では、どのようなスキルを伸ばすべきかを見極めること自体が、年々難しくなっています。

また、「個人の立場から取り組む業務を選ぶのは難しい」という問題もあります。例えば「このスキルを身につけるためにこの業務に関わりたい」と思っても、キャリア設計の視点で、実際の業務アサインを自分でコントロールすることは、簡単ではありません。特に若いメンバーほど難しい場合が多いと思います。

だからこそ、組織側から、デザイナー自身が「このスキルを伸ばそう」と選びやすくなるような成長メニューをつくり、それを業務と繋げやすくする仕組みを用意する必要があると考えました。

そこで導入した仕組みが「自分分析シート」です。これは、各メンバーが伸ばしたいスキルを自分で言語化し、業務がどのように成長目標につながるかを考えるための、デザイナーに特化した「成長メニュー」のようなものです。

項目としては、プロダクトデザイナーとして共通するスキル項目と、デジタル、ハードウェアという2つの役割別にそれぞれ固有のスキル項目を並べています。(デジタル用、ハードウェア用の役割ごとの「自分分析シート」を用意)

デザイナーに特化した成長メニュー「自分分析シート」
全体で共通するスキル項目と、デジタル側・ハードウェア側という役割ごとの個別スキル項目で構成されている

このシートの運用ポイントとしては、「あくまで個人の成長目標であること」「業務設計と必ずつながるようにすること」の2つです。

例えば、マネジメントや組織の立場から「このスキルを身に付けて欲しい」と要求するのではなく、全てのメンバーが「今、自分は何を伸ばすべきか」自分の頭で考えることを基本スタンスとしています。

また、成長目標を立てたあとは、「本人任せ」にせずに、必ずマネージャーと面談を行います。この面談では、客観的に自分のスキルセットを認識したり、成長目標に合わせた業務アサインを調整できるような運用もセットで行います。

運用のポイント「あくまで個人の成長目標であること」「業務設計と必ずつながるようにすること」

自分分析シートの運用は、1年間をサイクルとして、以下のような流れで回しています。

  • 期初: 成長目標の設定

  • 期中: 目標を意識した業務と、成長支援の取り組み

  • 期末: 年間での振り返りと、次期の目標設定

導入初年度は、新卒入社から数年以内の若手メンバーを対象に試験的に運用を開始しました。現在は、対象を全メンバーに広げ、デザインセンター全体で運用されています。

「自分分析シート」を用いた、1年間の成長支援サイクル

まず期初に「自分分析シート」の項目の中から、自分自身が身につけたいこと・やるべきことを、各メンバーに自分で考えて選んでもらいます。

さらに、この1年間で伸ばしたい成長課題を決めてもらった段階で、マネージャーや先輩デザイナーとの面談を行います。

CDSの場合、今すぐ業務に落とし込めなくても、より長期的なキャリア計画を考えることが目的のため、内容が抽象的になることもありました。一方で「自分分析シート」では、できるだけ具体的な成長目標を設定し、業務内容の調整まで行うことを目的としています。そのために、目標を立てた後は、マネージャーや先輩デザイナーとの面談を必ず実施し、スキルの客観的な把握や業務アサインの調整を行う運用をセットで行っています。

面談では、まず持ってきてもらった自己分析をもとに、マネージャーからフィードバックを行います。「ここは自己評価が低いけど、実際はもっとできているんじゃない?」などのフィードバックを行い、客観的なスキルの認識をすり合わせていきます。

期初の面談のイメージ

さらに、会話の中で伸ばしたい成長課題がすり合わせできたら、マネージャーから「だったらこういう業務をやってみたら?」「今の業務の中でも、このような進め方を意識してみたら?」とアサインや、業務の取り組み方の提案を行います。

今取り組んでいるプロジェクトで、目指している成長が得られそうにない場合は、新しく業務をつくることも検討します。

例えば「コミュニケーションスキルを伸ばしたい」という方には、異なる職種のメンバーと協働するワーキンググループでの勉強会運営など、その人に合ったチャレンジの機会を設計するようにしています。

「自分分析シート」の成長項目を踏まえて、担当業務の調整まで行う

これまでは、CDSで考えたキャリア設計を提出してもらった後、個人の努力に委ねる運用となっていました。

一方で、自分分析シートの運用では、デザイナーとしての成長項目を決めた上で、必ず業務の中で実践できるところまで落とし込めるような支援を、組織として徹底しています。

期中では「自分分析シート」で設定したスキル項目を意識しながら、業務に取り組んでいきます。担当する業務は「自分分析シート」を用いて決められたものなので、常にシートを見返さずとも、自然と成長を実感できるようになっています。

また、同時にコニカミノルタのデザインセンターとして、メンバーのスキル成長を支援するための仕組みをいくつも用意しています。

ハードウェア側、デジタル側のそれぞれで、チーム全体でスキルを向上できるような機会を用意

例えば、ハードウェア側では、設計・意匠の力を伸ばすためにプロダクトデザイナー全員で取り組む「ものづくりの解剖」「スケッチ会」などの機会を設けています。

ハードウェア側では、設計・意匠の力を伸ばすための「ものづくりの解剖」「スケッチ会」などの機会を定期的に設置

デジタル側では、デザインのスキルを磨くための勉強会や、UI/フロントエンドの連携を強める「開発ワーキンググループ」の運営など、業務を越えた成長をつくる機会が複数あります。

デジタル側では、基礎力向上のための勉強会や、デザインセンターを越えてコニカミノルタのエンジニアとデザイナーの連携を強める「フロントエンド開発ワーキンググループ」の運営を行う

振り返りは、半年に1度のスパンで行います。期中と期末に改めて自分分析シートを眺めながら、面談を実施しています。

年度末に、この1年間を通して、どのようにスキルが身に付いたのかを、改めて自分で分析してもらいます。その内容をもとに、再度マネージャーと面談を実施し、気づきや成長を共有します。そのうえで次年度に改めてどこを伸ばすかを共有し、また1年間の活動へループを回していく運用にしています。

年間を通じて、「自分分析シート」を運用する中で、スキルを身につけること自体がゴールではありません。各メンバーが「自分のスキルがどう変化したのか」に気づけることが、ゴールと考えています。

メンバーが「自分は成長できている」という実感を持ち、自分の頭で考えて業務の中でチャレンジを行えるようになることこそが、何よりも大切だからです。もしうまくいかなかった部分があっても、その要因を自分で考え、「次につなげよう」と思えるように支援をしています。

1年間の「自分分析シート」の運用を通して、明確にメンバーに成長実感が生まれています。

「自分分析シート」を使ってみて何が変わったかについて、2名のメンバーにヒアリングを行いました。

その内容を簡単にまとめてご紹介します。

Kさんの場合 (新卒入社・5年目)
Sさんの場合 (中途入社・9年目)

加えて、定期的に実施している組織のエンゲージメント調査においても、これまでに比べてエンゲージメントが大きく向上していることが確認できました。

中でも「自己成長」の項目は非常に大きく数値が上がっており、メンバー各人が成長実感を感じられている状況に一歩近づいたように思います。

組織のエンゲージメントは大きく向上。「自己成長」の項目は非常に大きく数値が上がっている

コニカミノルタのデザインセンターで組織設計に取り組む私たちは、各デザイナーと関わるスタンスとして「マネジメント対象ではなく、あくまで1人のデザイナーとして向き合う」ことを意識しています。

以前は、「このスキルさえ伸ばしておけば安心」と言える時代で、ひたすら業務に取り組むだけでも問題はありませんでした。しかし今は、不確実性が高く、数年先にどんなスキルが求められるのかすら誰にも分からない時代です。それはマネージャーであっても同じであり、自ら考え、柔軟にスキルを選びながら成長していく姿勢が、これまで以上に重要になっています。

だからこそ、新卒・中途・若手・シニアなどといった立場の違いに関係なく、すべてのメンバーが「1人のデザイナー」として、今の自分に何が必要かを自分の頭で考え、主体的にスキルを選び取っていくことが大切だと考えています。

そのために、私たちは組織設計の立場から、メンバーが自律的に成長できる環境と仕組みを整えることを責任として取り組んでいます。

コニカミノルタは、BtoB(企業向け)を中心とした、専門性の高い領域に取り組んでいます。だからこそ私たちは、「入社してすぐに理解を深めて、良い成果を出すのは簡単ではない」という前提に立ち、メンバーと一緒に成長していく姿勢で組織づくりに取り組んでいます。「分からないことは分からないと言える」ことを大切にし、長い目で見て成長し、やがて成果につなげるという考え方で、組織を持続的に育てています。

結果として、ここ数年での若手デザイナーの定着率は非常に高くなっています。それぞれが成長実感を感じながら、腰を据えて、コニカミノルタでの、ものづくりに取り組む姿が見られるようになりました。今後もそうしたデザイナーが1人でも増えていくよう、仕組みや環境を継続的に更新していきます。

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