GMOインターネットグループでは、2026年に150社以上のグループ企業に所属するクリエイター全体に向けて「DESIGN PRINCIPLES」を公開しました。
グループを貫く一つの具体的なクリエイティブ指針は、実はこれまでGMOインターネットグループで定義されていなかったものでした。
この事例では、なぜこのような原則をまとめるに至ったか。その内容はどのようなものか。私たちが捉えている時代観とともに制作プロセスを公開しようと思います。
デザインプリンシプルというアプローチはこれまでも一般的に取られてきたもので、「なぜ今さら原則の言語化に取り組むのか?」という疑問も生まれてくるかもしれません。
しかし私たちは、今の時代、そして今のGMOインターネットグループだからこそ、このようなブレないクリエイティブの指針が必要であると考えています。
これはAIの進化や普及がさらに加速すること、そしてそれに伴ってクリエイティブの重要性が高まる今だからこそ解決すべき課題です。
AIの登場以降で、サービスや施策が生まれるスピードは爆発的に上がりました。その上で、このまま市場が進んでいくと、「サービスの差別化が行われづらい状態」が訪れると予測しています。
私たちは、世の中にありふれたサービスが増えていくとした時、その中で選ばれ続けるためには必ず「クリエイティブの品質」がポイントになっていくはずだと考えています。
これからは、つくるだけでなく、強い世界観を提示できるサービスが選ばれる、だから一貫したクリエイティブが重要になります。
GMOインターネットグループは国内でもトップレベルでAI活用に経営として投資をしています。私たちはAIで既存業務のプロセスを変え続けているからこそ、その先に必要とされる「強い世界観の提示」までチャレンジできるはずです。
その上で、GMOインターネットグループという大規模な組織環境でクリエイティブをより強めていくためには、組織的な課題があると捉えていました。
グループ全体にはもともと「ナンバー1クリエイティブ」という方針が示されています。この方針は社内のクリエイターに浸透しているものの、「世の中でナンバー1のクリエイティブをつくっている会社 = GMOインターネットグループ」という状況にまで至っていないことに問題意識がありました。
原因を考えていく中で、大規模な組織体において、「ナンバー1クリエイティブ」という指針を曖昧なままにしていることが課題なのではないかという考えに行き着きました。
まず、GMOインターネットグループには無数のサービスがあり、グループ全体では数百名のクリエイターが所属しています。
それぞれのサービスが対象としているターゲットは異なり、求められる表現も違います。
そんな環境で、クリエイターは以下のような課題を抱えていました。
社内的な課題
サービスそれぞれで最適なクリエイティブを選ばないといけない
サービスに合うクリエイティブをつくるだけでなく、グループ全体のトーンも考えなければいけないため、どこまで表現に幅を持たせて良いのか分からない
社外的な課題
各サービスがそれぞれにクリエイティブをつくるため、GMOインターネットグループらしいサービスとして認識してもらいづらい
「GMOインターネットグループ = クリエイティブ」というイメージが醸成されていない
つまり、グループ全体で「ナンバー1クリエイティブ」を掲げていたとしても、各クリエイターからすると「それを自分のサービスでどう表現すれば良いか?」は曖昧なままだったのです。
この品質基準が明示されていないことによる課題を解決するために、先行してブランドマネジメントの取り組みを走らせているグループ会社もいくつか存在しています。
しかし、このようなブランド投資が行える体制がグループ会社すべてにあるわけではありません。
なので、GMOインターネットグループ全体としての基準を、全体を俯瞰した立場から明示していく必要があるのだと捉えました。
そのような課題意識から「DESIGN PRINCIPLES」が生まれました。
これは、GMOインターネットグループに所属するすべてのクリエイターがブレずに制作に取り組めるようにするための指針です。
構成としては、「GMOイズム」という全社の指針に記されている一節『すべてを最高にカッコよく!美しく!気持ちよく!』という表現を、クリエイティブに落とし込むために具体化されたものとなっています。
「DESIGN PRINCIPLES」は、いくつかの設計意図からつくられています。
設計意図1. GMOインターネットグループとして満たす基準の明示
「DESIGN PRINCIPLES」の文言は、全社としてすでに強く浸透しており徹底されている「GMOイズム」の文言と接続されるようにしました。
これに沿っていれば、自然とイズムに合うものになり基準を満たせるような設計になっています。
設計意図2. シンプルな指針に
GMOインターネットグループ全体を貫く指針にするために、逆説的に細かく定義しないことが大切だと考えました。一見当たり前だと思われるようなシンプルな3つの指針だからこそ、どのサービスでも当てはまる絶対的な基準として機能します。
ただ、シンプルだからこそ、「どこまでいけば満たせているか」が読み取りづらいというトレードオフも生まれます。私たちは、その解消のための運用もセットで設計する道を選びました。(こちらについては後述します。)
設計意図3. 問いとして機能させる
シンプルであるからこそ、この基準を満たす方法は何通りもあるという設計になります。これは、時代や扱うサービスに応じてアウトプットを変えていけるということでもあります。
私たちは、グループのクリエイターには、常にこれまで以上のクリエイティブを生み出し続けてもらいたいという願いを持っています。
「DESIGN PRINCIPLE」は基準でもありつつ、「あなたや、あなたのサービスにとって、どんなクリエイティブがカッコいい?美しい?気持ちいい?」という問いのようなものとして設計しています。
では「カッコいい」「美しい」「気持ちいい」という3つの指針には、どんな意図が込められているのか。具体的な過去のアウトプットとともに解説します。
カッコいいとは、ユーザー、世の中や市場から「あれが欲しい」「ああなりたい」と思われるような求心力を意図してつくる力だと定義しています。
単純なアウトプットのカッコよさではなく、「憧れ」をつくるようなマインドセットを指しています。
「ロリポップ! for Gamers byGMOペパボ」のリデザインはその一つの例です。
当初試験的にローンチされたところから、本格的なサービス展開をしていくにあたりアートディレクターがチームにアサイン。
「ゲームのリッチな表現に日々触れている、ゲーマーにとって馴染みのある表現」にVIを寄せることを課題と捉え、サービスサイトのリデザインを行いました。
ここで作成したクリエイティブを基軸にサービスサイトをはじめSNSや広告媒体などユーザーとの様々なタッチポイントで活用しています。このリデザインをきっかけにデザインの統一感が生まれ、ブランドの展開を推し進めることができました。
結果として、プラットフォーム自体への好意的な声が増えていて、サービス自体の指名検索数も2倍に増加しています。
このように、文脈自体を設定し、目的に合わせて必要なコミュニケーションを最適化し、届けたい相手に寄り添うクリエイティブをつくっていける力が「カッコいい」ということです。
「美しい」とは、設計と表現の一貫性を追求する姿勢を指しています。
アウトプット自体の精度はもちろん、そこに至るまでのつくり込みが洗練されていることを重視しています。
例えば、GMOペパボのデザイナーによる「SUZURIの100Tee」という企画は代表的なアウトプットの一つです。
このプロジェクトは、100組を超える人気クリエイターによる夏の新作Tシャツを一挙公開する「SUZURI byGMOペパボ」の企画です。特設サイトの設計や、一つひとつのTシャツの見せ方はGMOペパボのデザイナーがディレクションをして用意しています。
例えば、特設サイト内のTシャツの画像表現には、実際に手元に届いた時のイメージができるように折り目やシワなどをあえて残すようにしています。その裏側では、実写で撮影した素材をもとにデザイナーが折り目やシワによる影・歪みのマップを作成、それをエンジニアがImageMagickで実装、クリエイターのデザインと合成してgifを作成する、という工程を挟んでいます。
参加していただくクリエイターの方としても、自分のつくったイラストが「こんな風にTシャツになるんだ」と楽しみにしていただけるような体験を意識してクリエイティブに落とし込んでいきました。
また、ターゲットに最適な表現を突き詰めていったアウトプットとして、GMOメイクショップの「Partnership Strategy」の特設サイトも一つの好例です。
GMOメイクショップでは、EC領域における事業の可能性を広げるために、仲間づくり (M&A) や出資を行うパートナーシップ戦略を推進しています。この特設サイトは、そのスタンスを市場に明確に伝えていくためのものでした。
このアウトプットの特徴としては、これまでのGMOメイクショップのアウトプットやトンマナを踏襲するのではなく、「GMOメイクショップとの協業や“仲間づくり”を検討する経営層」に向けて表現を詰めていったところにあります。
フォント: 信頼性を強調するために明朝体に
カラー: GMOメイクショップと他の企業が融合することを伝えるために紫を選択
コンテンツ: 思想や戦略など、社としての姿勢をなるべくシンプルに開示する
といった、通常は使用しない表現をあえて選ぶようにしています。狙いと設計と表現を一貫させるコミュニケーションを選ぶのも「美しい」というプリンシプルを体現する一つの方法です。
3つ目の原則は「気持ちいい」です。これは、一度きりの驚きではなく、利用者の目的に馴染み、ずっと使われ続けるような体験をつくることを指します。
この原則を象徴する事例として、GMOグローバルサイン・HDが開発する「電子印鑑GMOサイン (以下、GMOサイン)」のプロダクトデザインがあげられます。
「GMOサイン」は、電子契約という老若男女が利用しうるプロダクトであるため、プロダクトの開発当初から「世界一わかりやすい管理画面にしよう」という方針が代表からも掲げられていました。
そのため、「GMOサイン」のプロダクトデザイナーは、常に利用者にとってわかりやすい画面とは何かをキャッチアップするため、ユーザーの観察をチームとして徹底しています。
例えば、プロダクト内のユーザー行動を把握して細かなコンテンツ改善を主導したり、月1のユーザーヒアリングを欠かさず行いユーザーの肌感覚を持つなど、「気持ちいい」プロダクトをつくるためのインプットにこだわり続けています。
わかりやすさ・使いやすさが導入理由にもなっています。とある会社が競合プロダクトから「GMOサイン」への乗り換えを行った際の一つの理由として「UIが使いやすいから」という話があがっていたりと、顧客への価値にも繋がる動きになっています。
このような原則は、ただ言語としてまとめられただけでは機能しません。特にグループには数百名を超えるクリエイターが所属しているので、浸透もセットで設計する必要がありました。
私たちは、「DESIGN PRINCIPLE」を公開する前から、いくつかの仕掛けで浸透に向けてアプローチしています。
クリエイティブの基準は、言語だけでは伝わりません。なので、言語とセットで絵的な品質基準を示していくことに取り組んでいます。
そのために私たちは社内クリエイター向けのポートフォリオサイト「CREATORS File」の制作をしています。
これは、グループ各社のクリエイターがこれまでにつくってきたクリエイティブをプリンシプルの基準に沿って溜めていき、誰でも過去のクリエイティブをまるでファイルのように取り出せることを意図した仕組みです。
こちらはまだ制作途中ですが、社内のクリエイターがまだ知らない素晴らしいクリエイティブや、グループのクリエイターに触れられる場所として機能させていく予定です。
もう一つ大事なのは、基準を形骸化させないことです。「DESIGN PRINCIPLE」に沿ってクリエイティブを判断した」という経験を何度も重ねること、その基準で動いているクリエイターが1人でも多く生まれることで基準は浸透していきます。
なので、GMOインターネットグループとしてつくる機会にはできるだけ毎回この基準を活用していくようにしています。
その一つとして、GMOインターネットグループが主催する、18〜29歳の若手クリエイターを対象としたデザインコンテスト「GMO DESIGN AWARD 2026」の審査基準として「DESIGN PRINCIPLE」を活用しました。
これは社外向けのデザインアワードですが、審査員になるクリエイターを含め、「DESIGN PRINCIPLEに沿って評価をする」ということが当たり前になるように意図しました。〈2026年9月30日まで応募受付中です。詳しくはこちら〉
ここまでが、現在の「DESIGN PRINCIPLE」に関わる動きの全てです。
まだまだこの指針は生まれたばかりの概念で、気を抜くと浸透せずに無かったことになってしまうかもしれません。ですが、そもそもGMOインターネットグループとしてこのような指針がつくられたこと自体が、社内に所属するクリエイターにとって誇りになれば良いなと思っています。
私たちは、これからもクリエイティブの可能性を信じていますし、これからのGMOインターネットグループにとってクリエイターの存在は必要不可欠です。
先陣を切って、「GMOインターネットグループは、これからもクリエイティブに投資し続ける」という意思を伝えていく責任が私たちにはあります。
不確実な時代に、クリエイターが自信を持ってその価値を惜しみなく発揮していけるように。DESIGN PRINCIPLEをその一助として機能させていきます。