デザインプログラムマネージャー(以下DPM)のイノツメです。 DPMとは、デザイナーがデザイン業務に集中することを助けるため、デザイン業務以外の仕事を最適化する役職のことです。

本記事では、マネーフォワードがDPMを活用する背景と、活動の一端を書かせていただきます。DesignOpsの導入や、DPMの採用を検討している方のお役に立てば幸いです。

デザイン業務とデザイン業務以外の一例

現在、マネーフォワードには、4つのデザイン組織があり、約70名のデザイナーが在籍しています。私が入社した2018年からの4年間で10数名規模から現在の規模まで成長しました。

デザイナーが1人増えるごとに、同じだけデザインのアウトプットが増えれば良いのですが、実際はそうではありません。デザイナーが増えることにより、評価/育成、プロセス整備、調整、事務作業など、デザイン以外の業務も増加し、組織運営の難易度が高まります。

今後もデザイナーが増えることが見込まれる中で、デザイナーがデザイン業務に集中し、デザイン組織のミッションである『デザインで世界を前へ。』を進めるため、DPM職を担当することになりました。

ここからは具体的な4つの取り組みを紹介します。 1.マネジメント人財育成:新任マネージャー向けの人財育成プログラム 2.デザイン研修:デザインスキルの底上げ 3.オープンドア:CDOとメンバーの情報連携機会づくり 4.ハッピーアワー:ナレッジ共有とデザイン文化づくり

マネジメント人財育成プロジェクトの全体像

組織拡大する中で、マネジメントの重要性が高まっています。 一方で、マネージャーはマネジメントを体系的に学ぶ機会が少なく、個々の経験に頼りがちで、手探りで向き合っている方も多いと考えています。

マネーフォワードでは、「マネジメントは一人で向き合うものではなく、助け合うものである」という考えから、デザインマネジメントについて学び合う機会として、『マネジメント人材育成プロジェクト』をスタートしました。

全2回の研修を実施後、マネージャー同士の相談会、DPMとの1on1、自身の言葉でマネジメントを語る経験を通して、マネジメント理解を深めていく予定です。また、各自が獲得した知識を『マネジメントが活用できるガイドライン』に集約し、マネーフォワードとしてのマネジメント知識をより高いレベルに引き上げていきます。

これらの取り組みを通して、新任マネージャーが実際の現場でマネジメントができる状態に近づけていく予定です。スタートしたばかりのプロジェクトですが、社内にDPMを設置したことで、研修だけでなく、中長期でマネジメントを支援できる体制になった点が良かったポイントです。

『UIデザイナー向けエンジニアリング基礎研修の概要( https://goodpatch.com/blog/ui-training-software-engineering )』より引用

マネーフォワードのプロダクト開発の特徴は、『スモールチーム』『権限移譲』です。 1チームあたりの人数を絞り、各チームに必要な権限を移譲するスタイルで現在まで拡大を続けています。

デザイナーは1つのプロダクトに深く関わるため、UIデザインだけでなく、情報設計、エンジニアやPdMへの提案、リサーチなど、幅広い業務に携わります。そのため、幅広い知識やスキルが必要です。

全社デザイナー向けの研修では、デザインを推進する上で必要な基礎的な知識やスキルを習得し、マネーフォワードのデザインレベルの底上げを目指しています。 今回は、Goodpatchにご協力いただき、『デザイナーに役立つエンジニアリング基礎知識』というテーマで研修を実施していただきました。

メンバーからの質問と回答の一例

組織が拡大することで、CDOとメンバーの交流機会が減っていることに課題を感じていました。そのため、CDOとメンバーが考えていることを自由に意見交換できる会議体を設けました。

初回は、セルジオさんと私がスピーカーを担当しました。メンバーからの質問に回答する時間と、セルジオさんと私から『デザイン組織とDPM』というテーマで発表する時間を設けました。

「朝のルーティーンを教えてください」「尊敬しているデザイナーは誰ですか?」「デザイン組織はどこに向かっていくのか?」「やりたいけどできないことがあれば知りたいです」など、さまざまな質問があり、ひとつずつ回答しました。

ライトニングトークと懇親会の様子

これまで、全社デザイナーが交流する機会として、毎週1時間、『デザイナーランチ会』というミーティングで、新入社員の紹介やチームビルディングをする時間を設けていました。

ただ、『デザイナーランチ会』を進める中で、徐々に以下のような課題や意見があがるようになりました。 ・同じ時間に定例ミーティングが入っているため、参加できない ・作業しながら聞いているため、集中して参加できない ・オフラインでの交流がしたい

上記を踏まえた上で、他部署のデザイナー同士が互いの知識を共有できて、信頼関係の土台となる機会をつくるため、『デザイナー・ハッピーアワー』というイベントを企画しました。

内容は、ライトニングトーク、新入社員紹介、懇親会がセットになっており、オフラインとオンラインのハイブリッドで開催しました。(懇親会はオフラインのみ)

開催頻度を毎週から1〜2か月に1回に減らし、1回あたりの時間を増やしています。

初回は50名以上のデザイナーが田町本社に集まりました。2時間で終了する予定だった懇親会が4時間経っても終わらないほど盛り上がりました。

まだ検討中の内容ですが、デザイナー向け評価制度を改善する取り組みについても共有します。

マネーフォワードでは『デザイナーのグレード要件表』を整備しています。

『デザイナーのグレード要件表』には、グレードごとの要件が詳細に書かれており、グレードを上げるために何をすれば良いか理解しやすい環境を整備しています。

しかし、詳細に書かれていることで全体像の把握が難しい側面があるため、全体を俯瞰して把握できるような資料を今後用意する予定です。

最後までご覧いただきありがとうございます。 本記事では、マネーフォワードがDPMを活用する背景と、活動の一端をご紹介しました。

海外では、DesignOpsの導入やDPMの採用が進んでいます。UXが海外で普及してから日本で普及したように、DesignOps、DPMもこれから日本で普及する可能性の高いデザイン領域だと考えています。

私は、DesignOpsやDPMを活用し、高品質なデザインをユーザーに届けるためのデザイン環境を整備することが、日本のデジタルデザイン業界を進化させるために必要なことだと考えています。

まだまだ事例が少ない領域ですので、今後もDesignOpsやDPM関連の情報を発信していきます。

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