2026年3月、MIXIのブランドムービー「コミュニケーションのその先へ。」を公開しました。
多角的に事業を展開するMIXIが、根底で大切にし続けている「心もつなごう。」という想いを広く伝えるために制作した映像です。
このブランドムービーは、外部制作パートナーにも一部協力いただきながら、企画からコンセプト設計、演出などのコア部分はデザイン本部を中心に担い、制作を進めました。
さらに制作過程では、実写映像と生成AIを組み合わせながら、コンセプトが最大限伝わる表現を模索していきました。
実写映像と生成AIを組み合わせた制作プロセスの概観
なぜ今、ブランドムービーをつくったのか。どのようにつくりあげたのか。その裏側をまとめます。
今回のブランドムービーは、MIXIが大切にしてきた「心もつなごう。」という想いをより広く伝えるために、ソーシャルキャピタル本部 ブランドデザイン室が企画しました。
MIXIは現在、スポーツ・ライフスタイル・エンターテインメントなどの領域で、多角的に事業を展開しています。その根底にあるのは、コミュニケーションを軸に、心もつながる場と機会をつくり続けていくという想いです。
しかし、MIXIが現在展開している事業や、その根底にある想いへの認知は、まだ十分には浸透していませんでした。また、「MIXIは今、何を目指し、何をやっている会社なのか」を分かりやすく伝えられるブランドアセットも不足していました。
そこで、ブランドムービー制作が企画され、デザイン本部内で制作プロジェクトが立ち上がりました。
まず考えたのは、MIXIが大切にしている「心もつなごう。」という想いや、コミュニケーションという軸を、象徴的に伝えられるテーマはないかということでした。
単にサービスを羅列するのではなく、MIXIが目指す世界観を、短い映像の中でどう表現できるか。その問いに向き合う中で、コミュニケーションの象徴として着目したのが「手」でした。
MIXIは数多くのスマホアプリを提供しています。そこから着想して、スマホを触る手や、手と手がつながるような描写を演出の中心に据えることはできないかと考えました。
例えば、「家族アルバム みてね」を使って、スマホで孫の写真を見ていた手が、その後に孫を抱き寄せる手に変わるといったイメージが頭の中に浮かんでいました。
次に、「手」というテーマを軸とした上で、さらにMIXIらしさを表現できないか、演出の中心が「手」である必然性をより強く持たせられないかと議論を重ねていきました。
その中で、「スマホをしまった後に続くコミュニケーションこそ、MIXIがつくりたい瞬間を表しているのではないか」という考えに至りました。
スマホを「ひらく」「さわる」「しまう」という動きの先に続く、「家族や友人に会いに行く」「一緒に盛り上がる」といった体験の中に、心もつながる瞬間があるのではないかと考えたのです。
この考えをもとに、映像構成としても、MIXIが提供するさまざまなサービスに触れるシーンから、スマホをポケットにしまうシーンを経て、そこから一気にコミュニケーションが広がっていくような流れを設計していきました。
今回のブランドムービーには、MIXIが提供するサービスの中から10のサービスが登場します。
各サービスの特色を見せつつも、特定のサービスにフォーカスするのではなく、全体としてMIXIらしさを感じられる映像にする必要がありました。
そこで、ひとつひとつのサービスへの理解を深めながら、どんなシーンを描くべきか、どんな順番でつなぐべきかを、パズルを組み合わせるように考え、絵コンテに落とし込んでいきました。
例えば、以下のようなイメージです。
「ことば」を共通項として、「mixi2」と「共闘ことばRPG コトダマン」のシーンをつなげる
絵コンテをより詳細に作り込む段階では、Adobe Fireflyボードを活用しています。
例えば、これまで手書きで描いていた絵コンテを画像生成によって制作することで、撮影現場に入る前から、完成形に近い解像度で理想的なイメージを関係者と共有できるようになりました。
また、数多くのパターンを画像生成し、それぞれを比較・検証しながら、各シーンに最適な1枚を選ぶということもできるようになっています。
初期段階から理想的なイメージを高い解像度で可視化し、何度も検証できるようになったことで、そもそもブランドムービーで伝えたいことやストーリーの設計により集中できるようになりました。
絵コンテができた後は、撮影・編集工程へと進んでいきました。この段階からは一部外部パートナーにも協力いただきながら制作を進めています。
その中で今回は、特に編集工程において生成AIを活用しています。
これまでもアイデア出しや絵コンテなど、中間成果物ではAIを活用していましたが、ブランドムービーという重要な映像において、最終成果物として見られる部分にAIを使うことは大きなチャレンジでした。
一方で、予算やスケジュールの制約がある中で、コンセプトが最大限伝わるクオリティを追求するには、生成AIを制作手段として取り入れることが必要だと判断しました。また、これまでデザイン本部内で積極的に生成AI活用を検証してきた蓄積があったことも、大きな後押しとなりました。
ここからは実際にAIを活用した新しいプロセスでつくったシーンを3つ紹介します。
まずは、千葉ジェッツのブースター(※バスケットボールのファンを表す名称)同士が集合するシーンです。
このシーンは当初、グリーンバックで演者を撮影した素材に、予め準備しておいたAI生成による背景映像を合成する予定でした。
しかし撮影前日に、準備していた背景映像を使用できないことが発覚します。背景映像のシチュエーション(場所・ライティングなど)が確定しない中ではあったものの、撮影は予定通り実施。
撮影した素材に、別途AIで生成した背景映像を合成してみたところ、現場で撮影した人物と背景のライティングや影が合わず、どうしても違和感が残ってしまいました。
そこで試したのが、撮影素材をもとに「動き始めの画」と「動き終わりの画」の2枚の静止画を用意し、その間をつなぐ映像をAIで丸ごと生成する方法です。
背景だけを合成するよりも、人物と背景が自然になじむ映像になったため、この方法をベースに完成版の映像をつくり上げていきました。
少し詳しく解説すると、次のようなステップでこのシーンの制作を行いました。
仮合成 ( After Effects ) : AIに「こういう構図にして」と伝えるためのラフ画像を作成
なじませ ( Runway ) : 仮合成をベースに色味や構図などを微調整する
動画生成 ( Runway / Veo) : 動きの始点と終点を決めて動画生成
仕上げ ( After Effects ) : 最終的なコンポジットでの補修作業で仕上げる
制作過程では想定外の事態が発生することもあります。そんな時でも、AIを手段の一つとして扱えることで、制約を乗り越えるだけでなく、より良いクオリティにたどり着けることもある。その可能性を実感することができました。
minimoのシーンでは、撮影時間を短縮するためにAIでの映像補完にチャレンジしました。
このシーンは、「左手を見る」→「右手のminimoアプリを見る」→「もう一度左手を見ると、ネイルがついている」という構成になっています。
通常であれば、ネイルをつけていない状態で撮影した後、実際にネイルサロンでネイルをつけてもらい、再度撮影する必要があります。しかしその場合は3時間近い待ち時間が生じるため、撮影スケジュールや予算を考えると、どうしても撮影時間の短縮が必要でした。
そこで、ネイルをつけていない状態で撮影した素材をもとに、ネイルがついた状態の映像は後からAIで生成することにしました。
当初は「ネイル部分だけ」をAIで生成できるのではないかと考えていました。しかし実際に試してみると、動く手にネイルを自然になじませる制御に苦戦することになります。
試行錯誤の末、実写素材をリファレンスとして映像全体をAIで生成する方法へ切り替えました。これにより、撮影時間を抑えながら意図した表現を実現することができました。
FC東京アプリを見ているサポーターのシーンでは、撮影していなかったカメラワークを、後から生成AIによって追加しています。
元々は、バス停で「スマホを見ているサポーターの姿」を斜め前から捉え、その後に「手元のスマホ画面」へ切り替わるシンプルな構成でした。
しかし撮影後に、もう少しダイナミックな演出にできないかと考え、AIを活用してトランジションを追加することにしました。
具体的には、撮影済みの実写素材から「動き始めの画」と「動き終わりの画」を静止画で用意し、その2枚の間をつなぐ動きをAIで補完するアプローチをとりました。
撮影後に元々なかった絵を足せるようになったことで、細かなトランジションまで粘って調整でき、映像全体のクオリティを高めることができました。
このようなプロセスを経て、MIXIのブランドムービー「コミュニケーションのその先へ。」を公開することができました。
公開後に実施した社内アンケートでは、「MIXIらしさが伝わるか」という項目において5段階評価で4.3点という結果を得られました。また、「多様な事業が一本の線でつながり、会社としての一貫性を感じられた」「人と人とのつながりや、その温かさが伝わった」といった声が寄せられました。
さらに、MIXIとは何かを伝えるブランドアセットの一つとして、広報・採用・IR・イベントなど、社内外のさまざまな場面での活用が広がっています。
今回はまず1つのブランドムービーを制作しましたが、これで終わりだとは考えていません。
他にも色々な切り口からMIXIらしさを表現したブランドムービーがあって良いと思っていますし、引き続き検証を続けながらMIXIのブランド力を高めていきたいと思います。
改めて今回は、実写映像と生成AIを組み合わせた新しい制作プロセスにも挑戦していました。
MIXIの根幹を伝えるブランドムービーという重要な映像に生成AIを活用することには、当初少なからず不安もありました。
それでも、これまでデザイン本部で積極的に生成AI活用を検証し続けてきた蓄積があったからこそ、むしろ今までにないクオリティを実現することができたと感じています。
これまでは諦めるしかなかった表現をその場で試せたり、撮影後に素材自体を作り変えられたりする。そうした制作プロセスの制約を取り払うことで、「本当に良いものをつくれているか?」という問いに、より純粋に向き合える感覚がありました。
これは、効率化やコスト削減以上に大きな価値だと思っています。
新しいプロセスに挑戦し続けることで、ものづくりはより自由で純粋なものになっていく。これからもチームで試行錯誤を楽しみながら、MIXIらしいコミュニケーションを磨き続けていきたいと思います。