クラウドサインのブランドデザインチームには、事業の急拡大に合わせて、2021年からディレクターのポジションが置かれています。
私はクラウドサインの1人目のディレクターとして、案件の進行管理や、交通整理の仕組みづくりに取り組んできました。
代理店のディレクター出身の私が「事業会社のディレクター?なにそれ?美味しいの?」状態から、どのように2年半、ディレクターポジションの立ち上げに試行錯誤してきたのかをまとめます。
クラウドサインで制作物の交通整理のニーズが高まったのは2021年ごろです。
当時、コロナ禍ということもあり、電子サインの需要が急激に高まり、クラウドサインも飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長していました。
事業成長にともなって、当然、ブランドデザインチームへの制作依頼数も増えていきます。
そんな中、ブランドデザインチームにいたのは2名のデザイナーのみ。無数の制作物をつくることに集中するも、どうしても手が回らない...という状況でした。
そんな中で当時のデザインマネージャーが、クラウドサイン初となるディレクター(進行管理) の求人を出します。私は2021年10月に入社しました。
代理店で10年近く働いてきた後、まだディレクターの前例もないクラウドサインという環境に飛び込むことになります。(当時はめちゃくちゃ不安でした笑)
これまでにディレクターがいなかったので、1人目のディレクターとして入社後に、そもそもどのような期待を持たれているのかをヒアリングしていくものの、もちろん社内の誰も答えを知っているわけではありません。
なので、本当に手探りで、ブランドデザインチームや他チームの方々と連携しながら、試行錯誤してきた2年半だったと思います。
私が1人目ディレクターとして入社してから2年半、大きく3つのフェーズでクラウドサインの制作体制を育ててきました。
はじめは、ブランドデザインチームに求められていることを探るところからスタートしました。
まずディレクターに何をして欲しいかを、デザイナーにヒアリングしていきました。
その中で、当時のクラウドサインにおいては、まず企画に入り込むよりも、膨大な制作物の依頼から制作までの流れを交通整理することが求められていることがわかります。
そこで行ったのは依頼〜制作のフローの変更でした。大量の制作物のやり取りをデザイナーと依頼者で直接していると、パンクしてしまうため、その交通整理からディレクターが行うようにします。
当時は、制作の依頼を投げてもらうチャンネルがすでに存在していたので、依頼後にまず自分が一次請けとして対応に入り、要件確認をするフローに変更することを事業部全体に伝えました。
依頼チャンネルで案件依頼を受けたあと、担当するデザイナーを決めたうえで、ディレクターである私から具体的な要件について確認していきます。
他にも「案件を依頼したいけど、デザイナーが忙しそうで依頼して良いものか分からない...」という声があったので、デザインタスクの進行状況を可視化することにも取り組みました。(結局、こちらはあまり運用されなかったので、後にクローズしています)
このように、最初はパワープレーで交通整理を行っていき、徐々にうまく案件が回っていくようになりました。ブランドデザインチームとしても少しずつ余裕が生まれていきます。
ただ、クラウドサインの事業はその後も成長し続けていくため、さらに案件も増えていきます。ブランドデザインチームにも、それにともなってデザイナーの人数が増えていき、より組織に目線を向けていくことが必要となっていきました。
案件数やブランドデザインチームの人員も増えてきて、私が毎回一次請けをするフローを超えて、より根本的な体制づくりへと動き始めました。
ここで行ったのは「チーム内外との連携を強め、制作業務における課題(ブロッカー) を特定する」ことです。
ブランドデザインチームとして業務のブロッカーになっているフローを特定し、解決しにいく動きを行いました。
具体的には、まず直近半年間で行った業務を大分類(デザイン作業、採用など)、中分類(バナー作成など)、小分類(ラフ作成、レビューなど各タスク)で洗い出してもらい、工数を3段階(重→普通→軽)で評価してもらいました。
そのうえでブロッカーが発生する/発生しそうなポイントを赤くして理由を記載してもらっています。
それらをもとに、全体として業務の妨げになっているポイントを抽出、課題を整理して、重きを置いて解決すべきポイントをまとめていきました。
現状では「依頼時の一次情報の不足」が大きな業務のブロッカーになっていることが分かりました。(この分析を踏まえた改善内容は、次のフェーズの説明で後述します。)
誕生期につくったTrelloを使った事業部全体への進行状況可視化の仕組みもアップデート。
実際のところ、デザインチーム以外の方は、すべての細かいタスク状況を把握したいわけではないと分かったので、デザインチーム内だけでタスク管理をしやすいようにJiraに移行しました。
チーム外に向けて、ブランドデザインチームの作業状況を伝える場所としては、社内日報を利用しています。
それと同時に、他チームとのコラボレーションも強めていきます。
他チームが何に注力しているのか、ブランドデザインチームに何を求めているのかを定期的に知れるように、他チームとの定例を設置したり、すでに行われていた定例への参加、あわせて1on1を仕掛けるようにしました。
もともと定例が置かれていないプロジェクトやチームには、こちらから定例を置くようにコミュニケーションしていきます。
これらのチーム内外との連携を強める動きによって、よりチームとしての業務が安定して回るようになっていきました。
さらに、よりブランドデザインチームと他チームとの間での、根本的な業務の障壁がわかっていきます。
時を同じくして、ブランドデザインチームに、業務改善をミッションに持ったデザイナーの宮里さんが入社してくれたこともあり、本格的にOps活動へと投資していくフェーズへと入っていきます。
こうして、現在も取り組んでいる、拡大フェーズの動きへと入っていきます。
よりブランドデザインチームとして生産性を高めていけるように、ディレクターとしてOps活動に注力しているのが現状です。
これまでのフェーズで明らかになってきた業務ブロッカーを解決するために、Ops活動に投資しています。具体的には、すでに以下のようなことを行ってきました。
Opsチームにて改善ポイントの洗い出しを行い、デザインチームには目安箱を設置し、そちらに改善要望をあげていただける仕組みにして、一つひとつ解決していくようなフローをつくっています。
例えば、依頼フローをSlackワークフローから、Googleフォームに変更。一次情報をより詳しく記載いただき、コミュニケーションコストを減らす仕組みを作りました。またフォーム送信と同時にJiraへチケット化、Googleドライブへのフォルダの生成も自動化しました。
案件へのアサインについても、より興味や専門性に沿ったものに取り組めるように、朝会ボードに振り分けスペースを作ってアサインしています。
案件に興味を持てるよう、事業にどんな影響があるか、どんな組織の人と繋がりを持てるか、などもあわせて説明しつつ、ある程度こちらで担当の目星をつけた状態でアサイン会へ持ち込み、アサインしています。
ブランドデザインチームの影響範囲が拡張してきたことや、事業のさらなる急成長により、専門性が必要な案件も増えてきています。(ex. 大規模なカンファレンス、新サービスのブランドガイドライン整備...)
現在、それらの案件に、それぞれのデザイナーを専任のように配置していこうとしており、コミュニケーションラインも増えていくので、あわせて新たにディレクターを採用していこうとしています。
これまでの2年半の活動を経て、ブランドデザインチームとして扱えるようになった守備範囲は広がり、デザイナーの活動の生産性も高まっています。
いまだにクラウドサインは急成長し続けています。2021年には1000万件だった契約送信件数は、2024年には2000万件を超えています。制作の幅も広がり、ブランドデザインチームの体制も拡張しています。
Ops活動を一緒に進めつつ、現場での交通整理も行えるような2人目のディレクターの採用に動き出しています。
最後に私が思う、クラウドサインでのディレクターの必要性についてまとめます。
今回、交通整理の役割について重きを置いて説明しましたが、すべての活動の目的は「デザイナーのパフォーマンスを高める」ことだと考えています。
デザイナーのパフォーマンスが高まり、適切なクリエイティブの量が増えていけば、ブランドが浸透し、事業が成長していきます。
そのような事業成長のためにも、依頼の質を高めたり、交通整理を行ったりと、とにかくデザイナーが「制作しやすい」環境を用意していくのがディレクターの責任だと思っています。
2年半前と比べて、クラウドサインでの制作体制は大きく変わりました。一方で、事業成長し続けていくため、より幅広い制作の機会が生まれており、依然としてディレクターは重要な役割を持っています。
ディレクターとして、誇りを持ってブランドデザインチームの「裏方」に責任を持ち、120%のパフォーマンスを出せるように支えていきます。
これからブランドデザインチームでは、ディレクターを増やし、より体制を強化していくことに取り組みます。一緒に第2章を進めてくれる人も募集中です!