DMMの60以上の事業群には、新規構築フェーズもあれば、グロースフェーズもあります。デザイナーは個々人の専門性やキャリア志向に合わせて、様々な活躍をしています。
DMMのデザイン組織では、それらの事業群に幅広く関わっています。その実態に合わせて2024年6月に、UI・UXデザイナーのオープンポジション求人をはじめました。
オープンポジション求人の中では、DMMで特に活躍できるデザイナーの3つの人物像を明示しています。
ここからは人物像Bに基づく例として「DMMポイントクラブ」でのリサーチによる機能改善の事例をまとめていきます。
DMMポイントクラブ(以下ポイントクラブ) は、2021年4月にサービス提供開始となった事業で、現在はグロースが求められているフェーズです。
私が所属するデザイン部 第1グループでは、UIデザインによるユーザー体験の改善をテーマに、ポイントクラブの改善に関わっています。(先述した3つの人物像の中の “人物像B” の動きが多くなっています)
リリースを経て、拡充していく機能を受け止めるプラットフォームとして、より厳密な「顧客理解」が不可欠になってきました。
しかし、当時のポイントクラブには、詳細なユーザーの意見を収集する仕組みがありませんでした。ユーザーの声をしっかりと受け止め、“より良いサービスを提供していきたい”という開発メンバーの思いが強まっていました。
そこで、ユーザーの全体傾向を捉えるための「アンケート」(定量)、サービスを継続利用していないユーザーの感情や行動を掘り下げる「インタビュー」(定性)の2つの手法でリサーチし、機能改善につなげていきました。
まずはユーザー傾向を捉えるために行なったアンケートの流れや結果について次にまとめました。
ユーザーの全体傾向を把握することをリサーチ目的とし、これまでにも定量データは十分に取得できていたものの、そもそもどのような理由でサービスを利用しているのかなどの「ユーザーの声」といった定性データを取得する機会が少なく、ユーザーとの距離をまだまだ感じていました。
そこで、全ユーザーを対象としたアンケートを実施し、ユーザーの全体傾向を踏まえた機能改善を図りました。
アンケートの主な流れは次のとおりです。
まず、アンケートの設計を行います。ここで意識したのは、あらかじめ意図や想定回答を用意しておくことでした。
例えば、データを見れば分かる内容や何の施策改善につながるかがイメージしにくいような質問を省略できるようにしました。そのため、質問内容の洗い出し→チームメンバーでの精査というステップを挟んでいます。
集まった回答は、得たい示唆がある項目ごとにまとめていきます。 また、ここでは何の機能を改善するのかをイメージしながら次のような情報も整理するようにしました。
機能ごとの情報の優先度を知るために、「web/アプリごとの各機能の利用状況」を整理
DMMカードや、支払い機能の改善のために、「支払い方法についての行動の理由」を整理
その後は、各機能改善に調査結果を活かしていきます。
例えば、機能ごとの情報の優先度を精査するプロジェクトでは、ユーザーから求められている機能の順序をもとにプロジェクトオーナー(PO)と推したい情報の優先度をすり合わせる上でアンケート結果を活用しています。
具体的な改善策では、それまで「管理」「貯める」「使う」という3つのタブしかなかったところに新しく「トップ」というタブを追加しました。
DMMとして推したい情報とユーザーが求める情報とで「差分」があることに気づき、タブを新設しました。「トップ」のタブでは、ユーザーがより求めている情報の順序となるようにしています。
リリース後、ポイントクラブ全体の回遊率の大きな向上につながっています。
ユーザーの感情や行動まで掘り下げるために行なった「インタビュー」について次にまとめました。
アンケートによってユーザーの全体傾向が分かってきたものの、離脱したユーザーの離脱理由・感情・行動などは詳しく分かっていないために、インタビューを通じて掘り下げていくことにしました。
インタビューの主な流れは次のとおりです。
ユーザーの離脱理由を探るためには離脱ユーザーだけでなく、継続ユーザーにもインタビューし、その差分を可視化していくことが必要だと考えました。
インタビューでは「ポイントクラブの活用のきっかけ」「利用頻度」「利用時間帯」「他に使っているポイントサービス」「何に満足しているか」...といった、ユーザーの行動や背景にある感情を掘り下げていきました。
これらの調査結果を、ユーザーごとの利用状況として可視化しています。
さらに、各ユーザーの利用状況を抽象化して、離脱・継続理由を考察し、ドキュメントにまとめました。
調査結果に基づき、離脱を防ぐための改善策を発散し、それらをユーザーストーリーに置き換えて整理しました。
そこから得られた優先度の高い施策を検討・実施しています。
例えば、オンボーディングやサービス継続につながる施策をすでに提案しており、まもなくリリースされる見込みです。
今回のようなインタビューのしくみは、従来のポイントクラブにはなかったものでした。
また社内からのリクルーティングのプロセスやインタビュー結果をまとめるためのシートの作成など、継続的なインタビュー体制も構築することもできました。
このような各調査からユーザー理解がより高まってきたことでポイントクラブ全体としても、いくつかの効果が生じています。
施策の確度の高まり... 施策立案の時に、ユーザーの感情の裏付けができるようになり、施策の確度が高まった
改善範囲が広がる... 点での機能改善ではなく、ユーザー像を踏まえ、全体俯瞰した体験の改善ができるように
開発の差し戻しが減る... 施策に対する納得度が高まり、差し戻しが少なくなった
ポイントクラブのプロジェクトで信頼が得られ、後続の案件においてもリサーチから施策に落とし込む動きが継続して求められています。
例えば最近では、ユーザー解像度を高めるために、機能案のプロトタイプをつくり、ユーザーテストを行うような検証を行いました。
DMMでは、UXリサーチャーのような専任ポジションを設けてなく、全員が手も動かすことを前提としたデザイン組織を設計しています。
ユーザー解像度を高めることが目的ではなく、より事業成長をするための手段としてユーザー理解度を高める、というイメージで動いています。
あくまで目的が先で、手段が後です。そして、目的に対して最適なリサーチ手法を選ぶことで、欲しい情報が手に入り、施策改善に確実につなげることができます。
また、今回のようにリサーチの手法を体系化することでリサーチの効率を高めておくことも重要です。属人的な調査ではなく、チームとして常にユーザー理解が高い状態にしておくことで、より事業成長を早めていくことができます。
終わりに、冒頭でまとめたDMMにおけるデザイナーの3つの人物像を振り返ります。
今回のプロジェクトは、特に人物像Bの業務の具体例でした。DMMのデザイン組織では、このような具体的な案件だけでなく、さらに広いUX検証(人物像A) やデータを用いた施策改善(人物像C) などの業務も引き合いがきます。
約60の事業ごとに求められるフェーズに応じて支援していくことができるDMMのデザイン組織で、さらに多くの事業貢献例をつくっていこうと思います。