2024年10月22日にリリースしたみずほ銀行の新サービス「M’s Palette」のロゴを、UXUIチームでデザインしました。

M’s Paletteのロゴデザイン

UXUIチームとして、このようなロゴ制作に携わることは初めての取り組みでした。その中で、M’s Paletteのサービスコンセプトを反映したロゴを制作していくと共に、ステークホルダーの方々が、当事者としてプロセスに関われるようにすることを意識していました。

みずほ銀行は組織規模も大きく、プロジェクト単位で関わる人数も多いです。また、今までデザインをまるっと外注することも多く、デザインがどう出来上がっていくのか知らないという方も居ます。

その中で、ただデザインのアウトプットを提供するだけでなく、関わる人達が当事者意識を持ってコラボレーションできるプロセスにすることで、組織内にナレッジが蓄積され、徐々にデザイン文化が浸透していく...。このような視点を持ちながら、今回のロゴデザインを進めていきました。

M’s Paletteのロゴデザインプロセスの全体像

M’s Paletteは、2024年10月から正式提供を開始した、みずほ銀行の多くの法人向けサービスを、ワンストップでご利用いただけるトータルプラットフォームです。

M’s Paletteのサービスイメージ (※キービジュアルは外部パートナーに制作いただきました)

M's Paletteの企画・推進は、みずほ銀行内のPMチームが担当し、ロゴ制作については、みずほ銀行内のデザイン組織であるUXUIチームが担当することとなりました。

ロゴデザインを進める上で、特に重要視した観点は下記の2点です。

M’s Paletteの名称には、みずほが展開する様々なサービスと、お客様の多様なニーズ、それぞれが調和することで、新たなビジネス(色)が生まれていくという意味が込められています。また、多くの法人向けサービスを、ワンストップでご利用いただけるトータルプラットフォームというコンセプトから、特定の機能にフォーカスしないサービス名になっています。

このような背景を踏まえつつ、M’s Paletteらしさを象徴的に視覚化し、関わる様々なステークホルダーにとっても納得度の高いロゴに落とし込んでいくことが重要でした。

また、デザインプロセスや関わり方を詳細に開示していくことで、「デザイナーが作ったもの」ではなく「私たちが作り上げたものだ」と感じてもらえるようにすることも狙いの1つでした。

冒頭でお伝えした通り、みずほ銀行ではプロジェクトを通じて関わる人も多様です。

今回のM’s Paletteも、プロダクト企画やシステム開発、プロモーション、営業など、様々なロールのメンバーが携わり、サービスを作り上げています。その中には、デザインにどう関われば良いのか分からないという方もいます。

一方、デザインはデザイナーだけで作れるものではありません。そのため、プロセスや判断基準などを詳細に開示し、皆さんが当事者意識を持って関われる環境を作っていくことが重要だと考えました。

また、その結果としてデザインに対する理解が進み、より良いアウトプットを生み出せるようになっていくと考えています。

ここからは、上記の考えを基に、具体的にどのようにロゴデザインを進めたかをまとめていきます。

まずはじめに、ロゴデザインプロセスの全体像やスケジュールを可視化し、PMチームをはじめとする関係者との合意形成を行いました。

プロセスの大枠をたたき台として共有しながら、必要な承認フローや情報の洗い出しを関係者全員で進めていくことで、全員がプロセスに対して深い共通認識を持ち、当事者意識を持って携われるようにすることを意識していました。

全体のプロセス・スケジュールを可視化した資料

さらに、具体的なアウトプットイメージや狙いについても可視化することで、各ステップで目指すべき状態に対して、深い共通認識を持てるようにしました。

各プロセスの具体的なイメージを可視化した資料

次に、M’s Paletteのデザインコンセプトの言語化・可視化を行いました。

まずは、関係者に当事者として関わっていただきながら、ユーザーのニーズやビジネスとして目指す姿、得たい印象などの観点から、M’s Paletteに関するキーワードを抽出しました。次に、キーワードをもとにしたストーリーラインを構築し、デザインコンセプトに落とし込んでいきました。

キーワード抽出の例
ロゴデザインコンセプトのアウトプット例

次に、デザインコンセプトをベースに、例えば以下の観点から、12個のロゴデザインパターンを洗い出していきました。

  • パレットというコンセプトを形状で表現

  • パレット以外のモチーフを使用

  • タイポグラフィを使用してコンセプトを表現

制作したロゴパターンの例

この段階で、プロジェクトメンバーから各ロゴパターンに対する評価をしてもらい、12個の案から6個の案まで絞り込んでいきました。

評価をしてもらう時には、以下の評価軸を設定し、その人の好みや印象に左右されないように工夫しました。また、これらの評価軸は、一般的なロゴの評価軸として用いられるものを参考にしつつ、初めてロゴを見る人でも分かりやすく、判断しやすいものであるかを意識して設定しています。

  • Memorability : 記憶に残るデザインか

  • Uniqueness : ユニークか / 既視感はないか

  • Target Audience : ターゲットの嗜好性にあっているか

  • Brand Massage : ブランドメッセージを伝達できているか

  • Readability : 可読性が高いか

評価軸の例
評価結果のまとめ

さらに、評価をもとに絞り込んだ6個のロゴデザイン案をそれぞれブラッシュアップしていき、再度評価を実施。この段階で、ロゴデザイン案を1個まで絞り込みました。

この段階でのステータスや、今後の流れをまとめた資料。
デザインプロセスは常に開示し、共通認識をつくれるようにしていました。
6個のロゴデザイン案それぞれについて、デザインコンセプト・デザインモチーフ・バリエーションなどを明文化し、見た人が意図を理解しやすいようにしていました。

ここまでで絞り込まれた1個のロゴデザイン案に対し、配色や、フォント、シェイプなど、細かなブラッシュアップを行い、再度4個のバリエーションを作成しました。

調整を加えた4個のロゴデザインパターン

上記の4案から最終的なロゴデザインを選定するにあたり、行内投票を実施しました。具体的には、当プロジェクトに参加しているメンバーと現場担当者の約40名から投票をしてもらいました。

投票でロゴ案を選定するのは珍しいと感じるかも知れませんし、私たち自身も初めてのプロセスでした。このような方法を選んだ理由は以下です。

  • サービスに携わる当事者として、この意思決定を自分ごととして感じてもらうため

  • また、このプロセスを通じて、サービスに対するそれぞれの思いをデザインに反映させるため

投票によるロゴデザイン選定方法についてまとめていた資料

結果として、「法人サービスとしてのフォーマルさと、日常的に利用するサービスとしての身近さの療法を兼ね備えている」「アイコンのみの使用でも、サービス名称や世界観を想起できる」といった声が寄せられるとともに、投票数も多かったA案を採用することに決めました。

最終的に採用したA案のロゴデザイン
ステークホルダーに対し、ロゴイメージへの理解を深めることを目的に制作していたロゴモーション

その後は、確定したロゴデザイン案のブラッシュアップに加え、運用をしやすくするためのガイドライン作成、ロゴモーションの作成などを行い、プロジェクトが完了しました。

M’s Paletteロゴデザインガイドラインの一部

上記のようなプロセスでM’s Paletteのロゴが完成し、その後開発期間も経て、10月22日にサービスが正式リリースされました。

M’s Paletteのサービスイメージ

PMチームの方からは、今回のロゴデザインプロセスに関して、以下のようにコメントをいただいています。

また、私たちにとっても、どうすれば関わる方々の合意形成をしながら、より良いアウトプットにつなげていけるかなど、学びを多く得られるプロジェクトでした。

みずほ銀行のデザイン組織が目指す姿は、数百人のデザイナーを束ねる大規模なデザイン部ではなく、デザインに知見を持った人がすべての部署にいる状態です。

我々UXUIチームはそのような未来をつくるための、みずほ銀行内でのデザイン機能の「触媒」としての役割を担っています。

今回はロゴデザインに関する取り組みでしたが、こういった1つ1つのプロジェクトによって、少しずつ社内に協力者が増え、自分たちの影響範囲も広げていくことができると考えています。

みずほ銀行のデザインチームが目指す世界 (カルチャーデックより抜粋)
https://speakerdeck.com/nakatayumiko/uidezaintimu-karutiyadetuku

今後もデザイナーのみならず、多くの関係者と協働しながら、より成果につなげていけるように取り組みを続けていきます。

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