私は、2024年5月にプロダクトデザイナーとして入社し、エンジニア組織の開発生産性可視化・向上SaaS「Findy Team+」のUI設計を担当しています。

「Findy Team+」のプロダクトデザインを担当

デザイナーの役割として、デザイン作成だけでなく、ワイヤー作成、PRD作成...へと、プロダクト開発におけるデザイナーの領域をどんどん広げていくように動いていくことで、デザインで事業貢献をしていくことに挑戦しています。

エンジニア組織のパフォーマンスを、いかに可視化し、改善につなげてもらうのか?今回は最近リリースされた新機能の事例も踏まえてお伝えします。

ファインディでは、IT/Webエンジニアの転職サービス「Findy」や、エンジニア組織の開発生産性可視化・向上SaaS「Findy Team+」など、複数のサービスを展開しています。

これはファインディのビジョンである「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」という思想にもとづいており、エンジニア組織のパフォーマンスを高めるところから、採用まで、丸っとファインディのプロダクト群で支援していくことを意図しています。

ファインディがつくるエンジニアプラットフォーム

私はこの中でも、エンジニア組織の開発生産性可視化・向上SaaS「Findy Team+」のプロダクトデザインを担当しています。

「Findy Team+」は2021年10月に正式にリリースされた、エンジニア組織向けのSaaSツールです。エンジニア組織のパフォーマンスを高めるためのデータを可視化し、活用していける機能を提供しています。

「Findy Team+」が提供する機能

お陰様でローンチより好評をいただき、「Findy Team+」は多くの会社様に導入いただけるようになりました。

一方で、データ可視化の新機能を多数リリースする中で、「さらに迅速に課題を分析し、改善につなげたい」という声も生まれていました。そのような声に応えるために、今回の施策に取り組みました。

導入企業の方の声

これまではCS(カスタマーサクセス)メンバーがお客さまに寄り添いながらサポートを行ってきました。しかし、より多くのユーザーにスムーズに対応するためには、新たなアプローチが必要と感じる場面も出てきました。

そこで、蓄積されたCSのナレッジを活用しつつ、それをAIに組み込むことで、お客さまにより適切なアドバイスを提供できるのではないかと考え新機能の開発に至りました。

この課題を解決するためにリリースしたのが、AIを活用した新機能「オンボーディングレポートβ」です。

AIオンボーディングレポートβ

この機能の目的は、「Findy Team+」を初めて利用するチームがスムーズにスタートを切れるようサポートすることです。

具体的にはGitHubのデータや、CSメンバーの知見をもとに、AIがチームの現状や課題を分析し、改善に向けた具体的なアクションや次に確認すべきデータを提案します。

ここからは「AIオンボーディングレポート」機能が誕生するまでのデザインプロセスや、課題をどのように解決したかについてお伝えします。

大きくは3つのステップで取り組みました。

  1. デザイナー側でも要件定義を自分ごと化し、課題解決のために施策の解像度を高める

  2. AIに拘らず「伝わる方法」を考える

  3. CSメンバーと連携しながら、方向性を変更

今回のプロジェクトは、PdM(プロダクトマネージャー)から共有されたPRD(プロダクト要求仕様書)をもとにスタートしました。

デザイナーとして最初に行ったのは、要件の整理とPdMとの認識合わせです。

初期段階では優先すべき情報や全体の方向性がまだ曖昧なことも多いので、PdMと何度も確認を繰り返しながら、認識のズレや不足している情報を補いました。このプロセスを通じて、デザインの基盤となる要件を明確化していきます。

デザイナー側でも要件定義書をまとめ、変更があれば更新している

ファインディのプロダクトデザインチームでは、コミュニケーションデザインチームでも使っているクリエイティブブリーフを活用して要求の掘り下げを行います。

以下のような流れで整理し、今回の機能ではやはりAIが必要だと判断しました。

  • 当初は「トレンドのAIをプロダクトに活用したい」という話や、お客さまからの「AIがインサイトを出してくれると嬉しい」といった声からスタート

  • 要件を整理する中で「AIを使用しない診断機能」にするかと検討したフェーズもあった

  • さらに検討する中で「AIは自動的すぎる」「逆に診断(AI非活用)だけではマニュアルらしくなってしまう」ということで、ハイブリッドにして納得感を醸成したいと考え「AI×CSのナレッジを組み合わせる」という形になった

  • 別の課題として「CSの属人化を緩和する」「より納得感のあるアウトプットにする(チームごとのカスタマイズ性)」などの観点から総合的に考え、AIを使用することを改めて判断

要件が固まってきたため、AIを用いたレポーティングをどのように行うかを模索していきます。当初は「AIだからこそ」という表現があるのではと思っていたのですが、リサーチを進めるにつれ、そんなことはないのだと認識することになりました。

ここで重要だったのは「AIにこだわりすぎずに “伝わる方法” を考える」ということでした。

最初は、AIを活用して課題を解決する機能をリサーチしていきました。例えば、チャットボットや文章生成、音声認識などさまざまな種類があることがわかりました。その中でプロダクトと今回の課題解決と相性が良さそうなものは何だろうという視点で見ていきます。

ただ、AIを活用した機能はまだ少なく、世の中に類似事例がほとんど存在しないため、AIにこだわらずに幅広くリサーチを実施していきました。

その中で、「チームの改善に向けて適切な課題設定ができる」という点に対して診断系の機能(健康/学習/キャリア/性格/Webサイトのアクセシビリティなど)のアウトプットも相性が良さそうなことに気づきます。

さらにPdMと話す中で「改善活動のモチベーションを保って目標達成できる」という点に対してゲーミフィケーションを取り入れたいという意図があったため、ゲームアプリや学習系のロードマップ機能も幅広くリサーチ。

AIを使った機能だけではなく様々な参考デザインを収集

その中でも特にゲームの「チャレンジミッション」に目をつけました。「課題が突きつけられる嫌な画面」ではなく、ポジティブにチャレンジしていく画面にしたいと考えていたため、取り入れてみたいという話になり「チームチャレンジ」という機能案としてまとめてみます。

「チームチャレンジ」の案は、いくつかの質問項目に答えていくと、ミッションが提示され、それを一つひとつ解決していくような機能です。(後述しますが、現在の「AIオンボーディングレポートβ」とは違う方向性となっています)

初期の機能アイデア「チームチャレンジ」

「チームチャレンジ」という方向が明確になってきたので、プロトタイプに落としつつ、検証を進めます。

プロトタイプ作成の初期段階ではLo-Fiプロトタイプを用いてPdMとの方向性の擦り合わせを行い、その後CSメンバーとPdMと一緒に2段階のユーザーインタビューを行い、フィードバックを得ながらブラッシュアップを重ねました。

お客さまからのフィードバックの収集では、CSメンバーに大きく協力してもらいました。CSメンバーの皆さんがお客さまとの信頼関係を築いているおかげで、率直な意見を得ることができ、デザインを実用的かつユーザー目線に近づけることができました。

2段階のユーザーインタビューを実施

2段階のユーザーインタビューを通して、以下のようなことが分かってきました。

  • 良い部分

    • 課題を分析してくれるのは良い

  • 改善部分

    • アクションはあくまで自分で考えたいというエンジニアならではの特性を踏まえられていない

    • 既存のチーム目標設定機能と役割が被っていた

そこで、現状の「チームチャレンジ」の案は方向から見直すこととして、以下のポイントを中心にブラッシュアップしていきました。

  • チームの課題が認識できるか

  • 改善モチベーションが高まるか

  • 画面を見た後、実際のアクションに繋がるか(詳細データを見にいく/目標設定をする)

  • ただ数字を上げることを目的にするのではなく、改善をしたらどんな価値に繋がるのか理解しながら進められるか

紆余曲折を経て、最終的に現在の「オンボーディングレポート」の方向へと落ち着いていきます。

インタビューを経て「オンボーディングレポート」の方向に落ち着く

タイミングとしては、オンボーディング時に表示するものとしています。初めてログインした後に何をしたら良いか分からなくなるユーザーを減らすため、「Findy Team+」への初回ログインのタイミングで一番最初に表示するべき情報だと判断しました。

また、AIが提案する具体的なアクションのサジェストの内容には、これまでCSメンバーがサポートの中で蓄積してきたナレッジを学習させ、個社ごとの状況に合わせてカスタマイズされた組織改善項目が表示されます。

(※ご利用いただいている企業様の機密情報などが含まれていない情報ソースであることを事前に担保しています)

CSのナレッジを集約させることで属人化を軽減し、今後のプロダクト拡大も行いやすくなります。ただのAIではなく、過去にCSが蓄積したデータと組み合わせることで、「Findy Team+」ならではの価値を生み出すことができるようにしています。

このような流れで、2024年12月、「Findy Team+」の新機能として「オンボーディングレポートβ」がリリースされました。

「オンボーディングレポートβ」が2024年12月にリリース

機能の概要は以下のようなイメージです。

  • 直近3ヶ月のデータをもとに、改善が期待できるポイント(※画面内「伸びしろスタッツ」)4つと改善のためのアクション例をAIがご提案

  • スタッツの改善に取り組むことで、アウトプットの量やスピードが改善され、チームの開発生産性を向上させることができる

  • さらに、提案されたポイントに対してプロダクト内のどこで詳細を確認できて、どのように目標設定をして改善に繋げていくべきかという導線もページ内に設置

特にUI設計においてこだわったのは、サジェストの部分でした。

実際のサジェストイメージ

工夫したポイントを以下に残しておきます。


情報構成

  • チームの現状スコアと次に目指すべきスコアを視覚的に表示

    • スコアを4段階に分けることで、高すぎない目標を設定しやすいようにした

    • 自身のゲーム体験を元に、次のスコアを目指すモチベーションを高めるためにピラミッド型を採用

  • 数値だけではなく、何のために改善するのかを知ってもらうために、改善効果とアクションヒントをセットで伝える

導線

  • 関連の詳細分析画面、目標設定画面への導線を設置

    • チームの伸びしろスタッツを確認した後のアクションにつなげるために設置した。課題に合わせて「Findy Team+」の道標のような役割を持たせ「『Findy Team+』のどこを見て何をすればいいのかわからない」という課題を解決

  • 使い始めて最初にチーム課題とそれに対するアクションに繋げてもらうため、オンボーディングレポートとしてワンステップで誘導


まだリリースして間もないですが、早速お客さまから下記のようにポジティブなフィードバックをいただいています。

ありがたいことに「『Findy Team+』のどこを見ればいいかわかりやすくなった」「更新の上申がしやすくなる」など好反応な声をたくさんもらうことができました。

一方で改善アクションの精度をより高めるためのフィードバックもいただいています。まずフェーズを切ってMVPでリリースをしていますが、反応を見て今後も改善を重ねていく予定です。

今後のマイルストーン

今回の機能開発を通しての一つの学びは、「AIは手段であり、いかに事業貢献に結びつけることができるか」が大事だということです。

AIはトレンドとなっていますが、既存プロダクトにAIを組み込む事例はまだ少なく、プロダクトのビジネスモデルにどう掛け合わせるべきかという点で多くの試行錯誤がありました。

今回のプロジェクトでは、既存のAIプロダクト、SaaSという枠組みにとらわれない幅広いリサーチや、CSメンバーのナレッジ活用が鍵となり、ユーザーの視点を深く反映したアウトプットを実現することができました。またデータサイエンティストやエンジニア、PdMとの密な連携がAIの出力結果と実際のUIをスムーズに統合する助けとなりました。

「AI×既存プロダクト」という新たな分野は、まだ事例が少なく模索することも多いですが、デザイナーとして多くの成長機会に恵まれる分野でもあります。「Findy Team+」では、多職種の知見を融合させ、お客さまにとって価値のあるプロダクトを生み出していくことを大切にしています。

今回の事例が、これからAI活用に挑戦しようとするデザイナーの皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。

「Findy Team+」が目指すのは、エンジニア組織のパフォーマンスを高めていくことです。エンジニアとは、すなわち、「つくる人」。「Findy Team+」が普及していけば、より速く、より多く、世の中にイノベーションが生まれていきます。

テクノロジーの進化が急速に加速している今、「Findy Team+」は、今後データ解析や生成AI、機械学習などの先進技術を活用して「可視化」「指標化」「自動化」「越境化」といった4つの指標からチームにおける効率的かつ効果的な生産性の高い開発プロセスの実現を目指します。

Findy Team+、新プロダクトビジョン「チームに開発革命を」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000113.000045379.html

一方で、エンジニア組織のパフォーマンス向上についての概念は、すでに世の中にあったのにもかかわらず、実践できているエンジニア組織は少ない。つまり、プロダクトでいかにわかりやすく視覚化するか、活用を促すか?が大事なのだと考えています。

概念はあるけど、実践できていない現状を「視覚化」から変える

企業規模、事業フェーズ、開発生産性に対する理解度、など多くの変数を扱う必要があり、プロダクトデザイナーにも深い業務理解が求められます。

ですが、社内で勉強会や輪読会などの学ぶ機会が多々あったり、わからないことはすぐに質問しやすい環境です。(私自身、エンジニアリング業務への理解が最初から深かったわけではありませんが、デザインを進めながら理解を深めることができています。このように安心してプロダクトデザインに取り組める環境が整っています。)

つくる人が輝くためのプロダクトの開発を、ファインディでは今後も続けていきます。興味がある方は、ぜひお話しましょう!

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