合同会社DMM.com (以下、DMM) 企画開発部では、OODAループというフレームワークを参考に、キャンペーンにおけるランディングページ ( 以下、キャンペーンLP )の継続的な改善に取り組んでいます。

OODAループを活用した、キャンペーンLPの改善サイクル
アクセス解析をメインに用いた分析から、社内外の関係者が制作するLPを横断的に俯瞰し、仮説出しや改善策の立案の継続を主導しています。
OODAループ... Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)を繰り返して、変化する環境に対してより良い意思決定を行うためのフレームワーク

ユーザーの定量的な情報に基づいて、前提や状況の変化に対応しつつも、継続的なLPの運用が行えるようになり、キャンペーンLPに関連する様々なKPI ( 例:直帰率 )を改善できました。

改善サイクルを回した結果、直帰率が大きく改善している

以下、私達がどの様にクリエイティブの良し悪しを定量的に把握し、継続的な改善に繋げていくための体制づくり、フロー改善をおこなったかの流れをまとめていきます。

私たちが所属する企画開発部では、とあるサービスのキャンペーンLP制作を毎月担当しています。

OODAループを用いた継続的な改善に取り組む以前は、キャンペーンLPを毎月制作しているものの、つくったクリエイティブがどれだけユーザーに行動を促せたのか定量的な分析ができておらず、「作って終わり」状態で継続的な改善もできていませんでした。

今回のキャンペーンLPに限らず、何か提案したくてもクリエイティブがどれだけ数値に貢献するのかが説明できず、事業部側から「なぜこういうクリエイティブにするの?」と聞かれても、感覚をもとにした回答しかできていない状態でした。

デザイナーとしても説得力のある企画を提案できていない自覚があり、危機感を持っていました。

ただクリエイティブをつくるだけでなく、どれだけ数値に繋がっているのかを踏まえて、企画全体を動かせるようになることで、事業部からの信頼も生まれるはずだと考えました。

デザイナー自らが課題点を見つけ、自発的に事業貢献に向けた改善 / 提案をするためのプロジェクトチームを作りました。

チームの体制は、デザイナー3名/ディレクター1名/アドバイザー1名で、過去のキャンペーンLPをもとに数値の収集と分析、改善案の提案を行っています。

改善チームでは、ユーザーの定量的な情報に基づきつつも、柔軟な改善を続けることができるように、OODAループを参考に改善サイクルを定義しています。

アクセス解析、改善案出し〜レビュー/施策決定、制作・リリース...を繰り返して、改善を繰り返す

それぞれのフローで、行っていることは以下のとおりです。

まず、Google Analytics ( 以下、GA ) を用いて、キャンペーンLPへのアクセス解析ができるようにしました。

調査した数字を一覧で俯瞰して見られるようテンプレートを用意し、初めてGAを触る人でも何を調べればいいのか分かるように、簡単に数字を取得できる仕組みをつくっています。

取得するデータ項目と、それを整理するためのテンプレートを用意し、簡単に数値を取得できるようにしている
リリースしたLPに対して、GAを用いてアクセス情報を取得し、スプレッドシートに記載している様子

また、数字に対する具体的なユーザーの行動を確認するために、ヒートマップを使って、ページ内のユーザーの動きを分析しています。以下のような観点を目視で確認していきます。

  • スクロール

  • アテンション

  • クリックされた場所

  • PC/SPでの違い

  • 初回と再訪の違い

ヒートマップを用いて、具体的なユーザー行動を観察
ページ内の動きを目視で確認して、改善できそうな部分の仮説を出していく

この行動観察のステップは、担当を割り振って、定例ミーティングまでの宿題として各自が情報を用意してきます。

アクセス情報とページ内の行動を確認したあとは、そこから導き出した仮説や改善案をデザイナーでまとめた上で、1ヶ月に1回改善チームの定例ミーティングに提案として持ち込みます。

分析した結果をもとに改善案を出し、ディスカッションをしている様子
事前に仮説を用意しておき、仮説に対して議論する。有効そうな改善案にディレクター承認をもらう

このように、ディレクターからレビューをもらい、実装・検証の承認をもらいます。

そして、改善案をリリース、仮説を再度検証します。

改善案をリリースした結果を、GAで数値で分析
またここから仮説を抽出して、次の改善につなげる

毎月のLPリリースのたびに、このように数値を集めては仮説を出していくことを繰り返すことで、定量的な情報をもとに、改善案を提案をすることができるようになってきています。

改善の筋を良くするためには、柔軟に改善アプローチを変えつつ繰り返しトライして、チームの知見として残していくことが必要です。

DMMの企画開発部では、繰り返した改善の結果をまとめて、チームに共有するためのしくみを用意しています。

改善サイクルの中で集めた数値や考察・仮説は、一覧で見返すことができるようにまとめられています。

調査結果を蓄積しているスプレッドシートの様子

改善サイクルを一つのスプレッドシートで回しているため、キャンペーンごとの結果、そこから得られた仮説を見返すことが行いやすくなっている

このように一つ一つのクリエイティブの改善の流れや、意図、結果を残すことで、継続して成果につなげることができます。

GAやヒートマップの今までの結果や統計データから基づいた情報をもとに、ペルソナを作成しました。

アクセス情報やヒートマップから得られたユーザー行動の特徴や統計データをもとに、キャンペーンLPのペルソナを設計

ペルソナを作成している目的としては以下の2つがあります。

  • LPの制作をお願いしているパートナー企業の方に「こういうユーザーが対象です」という情報を伝え、共通認識を持てるようにする

  • 新規ユーザーをターゲットにするときにも、そのユーザーの行動についてチーム内で共通認識を持てるようにする

以前は、仮説や改善提案をつくる中で、「誰に対しての改善なのか?」という議論が起こってしまうことがありましたが、ペルソナがあることで、誰のために作るLPなのか共通認識を持てるようになりました。

改善サイクルを取り入れてみて改善されたこと、まだより良くできる点についてまとめてみます。

新しいフローを取り入れてみた結果として、以下の点が改善されました。

  • 本キャンペーンのデザイナーが改善意識を強く持ち続け、デザインに向き合えるマインドが育った。

    • 社内にいる他組織のアドバイザーを迎え入れ、打ち手をさらに増やすことができた。

    • ディレクターと「どのように事業貢献を実現するか?」の議論が活発になった。

  • 定量的な改善を活かし、定性的なアプローチを導入できるようになった。

  • KPIを設定し継続してウォッチと改善をする事で、安定したKPI推移を実現した。

以下のような点では、まだまだ良くしていけるため、引き続きサイクルの改善を行っていきます。

  • 仮説出しや分析のスピードアップ

    • 作成したペルソナを参考にした仮説の立案をさらに増やしたい。

    • 積み上げた成功を残しつつも、恐れず改善するためのサイクルをより早く回したい。

  • 知見のナレッジ化

    • 改善チームのデザイナーが得られた知見をさらに、所属する企画開発部の他のデザイナーへ横展開していきたい。

    • LP以外にも再現性のあるスキームに育てて、より多くの事業成長を支えていきたい。

DMMには、様々な職能や事業の皆さんが一緒にものづくりをする文化があります。

継続的に本キャンペーンLPの改善に取り組むことができたのは、DMM.ESSENCE で掲げられている事柄が社内文化として定着しており、チャレンジを実現するために他組織や他職能者のサポートがあったことが大きかったです。

デザイナーの本気のチャレンジ / テクノロジー導入 / 事業貢献を後押しするビジョンがあるDMMだからこそ、抜本的な体制変更に取り組めた

今後もより多くの事業に貢献していけるよう、改善サイクルを育て、得られた学びを社内外に波及させていきます。

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