ウエディングパークは2026年3月、カップルの本音をいち早く引き出す本音発掘ツール「ぽんとね!」をリリースしました。

私はデザイナー兼チームリーダーとして『ぽんとね!』を立ち上げ、その後の事業戦略をリードする役割を引き続き持っています。

カップルの本音をいち早く引き出す本音発掘ツール「ぽんとね!」

『ぽんとね!』はまだ不確実性が高い新規事業であるため、過去の実績から戦略を考えることが困難です。なので私は、サービスとしての理想的な「成長サイクル」から『ぽんとね!』の事業戦略を組み立てることにしました。

『ぽんとね!』の事業成長サイクルを可視化した

今回は、この成長サイクルの考え方についてまとめてみます。

『ぽんとね!』は、カップルの本音をいち早く引き出す本音発掘ツールです。事業立ち上げのプロセスは前回の事例で紹介しています。

2026年3月にリリースした後は、クライアントとなる式場の活用を増やすためにも、『ぽんとね!』を使って「接客・集客等の組織改善をしたことで、納得感のある成約が生まれた」などの成功事例を増やしていくことが事業のテーマとなりました。

リリース後の事業のテーマ「成功事例を増やす」

一方で、プロダクトリリース直後ということもあり、開発・CX・セールスの各領域で課題が山積みとなっていました。そのため、各チームが独自に注力課題を設定し、施策の立案・実行を進めている状況でした。

私自身も、デザインの観点から解像度が高かった「確実に改善すべきプロダクトの課題」から着手していましたが、「優先順位を見誤っていないか」という懸念が常に頭をよぎっていました。

間違いなく大事なアクションをみんな行っているけど、誰も事業の全体像が見えていないような状態になっている。このままではうまく連携が起こらず、成功事例が生まれづらくなってしまうのではないかと感じていました。

この状況を早めに変えるために、サービス全体をより俯瞰するための可視化を始めました。

最終的に生まれたのが、冒頭にもまとめた『ぽんとね!』の事業成長サイクル図です。

この着想のもとになったのは、ビジョナリーカンパニーという本に書かれている「はずみ車 (Fly Wheel)」というモデルでした。

例えばAmazonは、以下のような成長サイクルを創業当初から考えていたという話を知り、「これの『ぽんとね!』バージョンをつくれば良いのでは」と閃きました。

成長する企業がつくっている「はずみ車」の考えに乗って、ぽんとね!の成長サイクルをつくる

数値的な計画ももちろん立てていたのですが、その上で「顧客体験からサービスが成長し続けるループを描く」という話は、当時の『ぽんとね!』チームから抜けていた視点でした。

デザイナーである私だからこそ、顧客体験から事業戦略をアップデートできるはず。そう思って『ぽんとね!』の成長サイクルを描き始めました。

まず「プロダクトが万全な状態に整ったとして、本当に成功事例が生まれるのか?」ということから考えてみました。

『ぽんとね!』は、ユーザーがプロダクトでアンケートに回答し、その情報を結婚式場の支配人またはプランナーが見た状態で、「組織の早い変化対応(改善)」が生まれることを価値としています。

ということは、プロダクトで本音の回答が起こることは大前提として重要です。それだけでなく、回答された情報がわかりやすく結婚式場にレポートされることも大事であることは想像できました。

『ぽんとね!』における、プロダクトがカバーしている体験

一方で、プロダクトだけでサービスの体験が成立するわけではありません。『ぽんとね!』をユーザーに紹介してアンケート回答を促すのは各結婚式場のプランナーの方々です。ここもサービスが成立するために必要な体験でした。

さらに、他にもオペレーションがたくさんある中で、確実に『ぽんとね!』をご案内いただくためには、プランナーの方の熱量が高まっている必要があります。

『ぽんとね!』における、プロダクト外の課題

これらの要素を矢印でつなげてみると、『ぽんとね!』の成長サイクルが見えてきました。

プロダクトで本音の回答が起こり、それが分かりやすくレポートされるので本音の会話が生まれ、成功事例が生まれ、さらに熱量が高まり、確実に『ぽんとね!』がカップルにご案内され、また本音の回答が起こり、、、

という体験がグルグルと回っていくと『ぽんとね!』は成長し続けるだろうと確信を持てました。

体験の流れが見えるように、成長サイクルをつくる

そして、この体験をつくるにはプロダクトとビジネスの両方でカバーしていく必要があることも分かったので、各体験を担当する職種も合わせて図解して共有しています。

成長サイクルを引いてみた後は、どこに体験的な詰まりがあるのかを考えてみました。

ここでは、最大の問題は「式場の熱量を高められていない」ことだと整理しています。

成長サイクルから、事業としてのボトルネック (= 体験的な詰まり) を考える

当時は『ぽんとね!』をリリースしたばかりで結婚式場のオペレーションも変わりきっておらず、確実にすべてのユーザーにプロダクトが案内されているわけではありませんでした。

つまり、このまま熱量を上げられなければ、案内もされず、回答も集まらず、本音データも蓄積されず。プロダクトがどれだけ良いアップデートができたとしても事業としては成長しないということが分かりました。

ここまで整理がついたタイミングで、チームメンバーに『ぽんとね!』の成長サイクルと、事業全体のボトルネックを共有しました。

成長サイクルをチームメンバーに共有した時の様子

結果として、今まで以上にチーム全員が事業に対して同じ目線で議論できる状態が生まれました。

これまでは各職種が個別に施策を考えていましたが、それらのつながりを一つの図で簡易に示したほか、共有時には各施策の「成長サイクルにおける位置づけ」や「体験指標」も明示しました。

これにより、各施策の目的や「やるべきこと・そうでないこと」が定義され、チーム全員の認識を揃えることができました。「ここが事業のボトルネックだ」「その中での自分の役割はここだ」と同じ目線で議論できるようになり、各自が迷いなく突き進める状態が生まれたと感じています。

これが今回私が行った、体験の視点から事業戦略を示すアプローチです。各施策の成果はこれから出ていくところですが、すでにチームとしての変化は生まれています。

まず、施策の優先度を決めやすくなりました。これまではいくつも施策が走っていても、「これで十分なのか」「何が優先すべきことなのか」は結論を出しづらく、「ひとまず足元でやらないといけないことをやろう」という着地になることも多くありました。

成長サイクルで各施策のポジションが明確にできたことで、「どの施策が、どこに紐づいているのか」という共通認識が生まれ、各メンバーが目的意識を持ち、優先度を認識し、まっすぐにアクションを起こせるようになっています。

成長サイクルをつくったことで、施策の優先度を決めやすくなった

また、このはずみ車をつくったことがきっかけに、事業的に最も大事な「式場の熱量を高める役割」を誰が担うべきか改めて議論されました。

結果、CXの責任者がここを担うこととなり、はずみ車と体制がうまく噛み合うように改善できています。

これまで私は、デザイナーという立場から、どう事業への責任を果たすべきか迷っていました。

ビジネス的な戦略設計も、技術的な判断も、私よりも経験豊富な方がいる中で、どのように事業に貢献すれば良いのか。今回の取り組みを通して、その答えが少し見えてきました。

私は、「体験的な判断」に責任を持つことが、デザイナーが事業をリードするための一つの答えなのではないかと思います。

UIやクリエイティブなどの表層面だけでなく、「はずみ車」のようなモデルで体験の視点から事業戦略を補強する。これができれば、事業はより確実に成長していくはずです。

デザイナーとして培ってきたものを活かして、事業に責任を持つ。ウエディングパークにとって新しい事業リードの形を、先陣を切って見つけていければと思います。

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