キュービック・XDC(エクスペリエンスデザインセンター)・プロジェクトマネージャーの根岸です。XDCの中にあるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)というチームに所属していて、ビジネスサイドと制作サイドを繋ぐ仕組み構築・プロセスの最適化を担当しています。

組織状況に合った業務プロセスを構築し、運用を行うPMO

今回はPMOの一員として推進した全社単位のナレッジ蓄積の仕組みづくりについてまとめていきます。

2021年末から、GoogleドライブとNotionの使い方を定義、全ての社内ナレッジ(デザインデータやリサーチログ、施策の企画書から結果まで)を蓄積し、全員が閲覧可能になる「Dashboard」という仕組みを作り、浸透を進めてきました。

情報を1箇所に集約するDashboardという仕組みを作り、社内に広めています

まだまだ活用率100パーセントとはいきませんが、取り組み前より情報蓄積・共有の状況はよくなってきたというメンバーからの声が上がってきています。同様の取り組みを行う機会がある方にとって、少しでも参考になる内容になればと思っています。

入社する前から聞いていた複数の組織課題と、これまでの経験を踏まえて感じたギャップや違和感の本質について明確にしていくために、まずは複数の社員にインタビューを行い、現状の把握から行いました。

現状のツールに対する運用面の課題や懸念点を回収

人や部門によってデータやタスクを管理するツールが異なっていて、「誰が何をやっているか・やってきたのか」がほとんど可視化できていない状態にありました。

情報の可視化が進んでいないことで、例えば、

・多種多様なメンバーが多いチームで、実際にメンバーがどれだけ業務を進めてきたか、本人の口頭共有意外に知る術がなく、貢献度が測りにくい

・Webサイトを新たに更新する際に、当時案件を担当したデザイナーにわざわざデータの所在を聞きに行かなくてはならない

・契約していたプロジェクト管理ツールも定着まで至らず、ほぼ未使用な状態

といった状況が起こっていたようでした。

メンバーから挙がった「情報蓄積・活用」に関する声の一部

このままでは会社としては大きな損失であると考え、全社の情報蓄積・共有の仕組みをつくるべく、プロジェクトが始まりました。

全社単位の情報蓄積は、かなり重要でインパクトのある動きではあるのですが、「今、絶対にやらなくてはいけない理由」を明確に示すことが難しく、緊急度は低いように捉えられてしまいます。しかし、規模が大きいため、全社員の協力は不可欠。より強い感情に訴えかける、動機付けを行う必要がありました。

当時のメモ書き。どのように全員を巻き込んでいくか、いろいろと考えていました

正直、今「危機的な状況」にあるわけではなかったですし、とにかく面倒な作業であることには間違いありません。課題感を全体に共有していくのがかなり困難だったのですが、組織の中で比較的影響力のある人から理解してもらうことで、少しずつ協力者を増やしていきました。

新しい仕組みを作ることで「コストダウン」という明確なメリットが生まれることを示す

プロジェクトがスタートできる状態になって、仕組みの構築・データ移行のロードマップを最初に立てました。

新しい仕組みの構築、既存ツールからのリプレイス、データ移行などの現実的なロードマップを立てる

「気づかないうちに自然に使われてた」という設計を目指し、仕組みを使う人(全社員)にどのような順番で動機付けをしていくかを考えつつ、スケジュールを決めていきました。

自然に全員が使い出すまでの流れを設計

次に行ったのがツールの選定。「工数」「使用感」の2つの観点からNotionを導入することに決定しました。

Slackと同じような感覚で、気軽に・そして自由度高く、「コミュニケーションツールにもなりえる」という要素も大事にしていました

Notionを導入した後は、「ツールに慣れてもらうこと」「情報共有を体験してもらうこと」の2つを目的に、社内でNotionを使ったタスク管理を行ってもらうことに。

Notionそのもの、全体で情報を共有することに慣れてもらうことを目的に、極力簡単な形でのタスク管理から始める

5,6割の人が使うようになってくれて、会社全体で少しずつ「自分のやっていることを開示する」ことへの抵抗が減ってきたように思います。

会社全体がNotionに慣れてきたタイミングで、Dashboardを作り始めました。

Dashboard作成にあたり、各部へのインタビューをもとに構成案を作成

最初にお伝えしたように、DashboardはNotionとGoogleの共有ドライブを連携させたもの。会社のIT部門から、共有ドライブへの情報蓄積は以前から呼びかけられてましたが、そこまで実践されていませんでした。

それを私たちもサポートする形で、使ってもらえる情報蓄積システムを検討していきました。

そしてDashboardの完成に合わせて、運用ルールも決め、全メンバーへの共有を行いました。

目的から使用方法まで、メンバーに丁寧に説明
「情報の検索性」も考慮し、命名規則も設定。細かい想定をせずに、まずはわかりやすさを重視

仕組みを作っても、使われなかったら意味がないので、プロジェクトメンバーとともにメンバーへの周知にはより力を入れました。あるメンバーは現場の各チームを行脚して、使用状況や困りごとを聞きながら、仕組みの活用をサポートしてもらう。一方、僕はマネージャー陣が集まるMTGに参加し、「現場の人は使い始めてくれてるので、一気に推進しましょう」と呼びかける。

このように「点」と「面」をとりにいくような巻き込み方は、うまくいったように思います。

対象によってコミュニケーション内容を変え、様々な視点から利用者を広げていく

また、個別でサポートするのも大事です。仕組みを使わない人は、積極的に使わない理由をシェアしてくれません。自ら取りにいく必要がありました。マネージャーに使用状況をヒアリングしたり、現場に飛び込み、一緒にPCを開きながら使い方を説明したり、コミュニケーションは密にとるようにしていました。

仕組みを使わない人に対して、丁寧にサポートしていくのが、地道なようで一番近道と思っています

まだプロジェクトは現在進行中ではあるのですが、積極的に情報を溜めていく動きは増えてきています。

UIチームで、自ら能動的に業務ナレッジを蓄積する動きがありました

ここまでプロジェクトを進めてきて感じているのは、地道なアプローチが結局は一番の近道であるということ。

仕組みやルールの良し悪しは活用率にそこまで影響しないと思っていて、大事なのは仕組みに対するそれぞれの「感情的な部分」だと思っています。便利なのはわかってるけど面倒くさい、前のやり方のほうが好みなど、それぞれの感情に寄り添い、抵抗を取り除いていく。

仕組みそのものを、最初からみんなが使いやすいように時間をかけて高水準なものにするのではなく、まずはβ版でもいいので出してみて、一緒に使っていく。全社のナレッジ蓄積・共有の仕組みづくりはまだまだこれからが戦いだと思うので、引き続き丁寧にコミュニケーションをとりながら進めていきます。

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