合同会社 DMM.com (以下、DMM) デザイン部 第1グループ マネージャーの根本です。

弊社には新規・既存含めて約60の事業があり、全社では100名のデザイナーが所属しています。

事業全体の体験を一貫したものにするため、プラットフォーム全体のユーザー体験 (以下、UX) の整理や、複数サービスをまたいだインセンティブの設計などに取り組むのが、横断デザイン組織である “デザイン部 第1グループ”です。

全社各所のデザイナーと横断デザイン組織の第1グループの関係図

DMMの社内各所にデザイナーがいる中で、なぜ横断組織が必要となったのか?横断デザイン組織で何に取り組めば成果に繋がるのか?

第一グループの泉谷さん、野崎さんと共に取り組んだ、「体制整備」「実態調査」「プラットフォーム全体のUXをつなげる施策」について事例を交えて紹介します。

DMMでは、横断デザイン組織が置かれるまで、関連性の高いサービス間のUXの連携を、各サービス所属のデザイナーが個別に調整していました。

そのため、プラットフォーム全体を通したUXは設計されておらず、サービスをご利用いただく顧客の皆様に、一貫して「関連するサービス / サービス併用のメリット / 共通機能」等々を知って、活用いただく事が難しくなっていました。

横断デザイン組織が置かれる前の「サービス所属デザイナー間の連携」イメージ

DMM全体で、ビジネス観点においても「多種多様なサービスをつなぎ、ユーザーメリットを最大化すること」が、他社との競合優位性を際立たせるために重要であると再認知されていました。

プラットフォーム全体の体験設計という大きなテーマに向き合うために、全社横断でUX設計を整えるためのプロジェクトチームを立てるところから対策が始まりました。

プラットフォーム全体のデザイン統括をする第1グループと、周囲の組織との関係図

プロジェクトには、DMM全体のプラットフォームプロダクトの開発/運営を担う「プラットフォーム事業本部」、マーケティング戦略策定と実施を担う「マーケティング本部」が中心に参画。

加えて、「DMM全体のUXの旗振り役としてのデザイン組織」が求められていたことから、新規サービス開発の領域のデザインを管轄していたデザイン部に、新たに「プラットフォーム全体のデザイン統括」を担う “第1グループ” を組成し、プロジェクトに参画することとなりました。

さらに、しばらくして、全社横断的に企画/プロジェクト推進を担うために組成された「アルファ室」も加わり、4つの組織が絡み合う体制になります。

本プロジェクトが目指すものは「サービスや機能単位ではなく、DMM全体としてのUXの最適化」であり、特にデザイン観点では、ユーザーが初回訪問してからロイヤルユーザーとなるまでのプロセス全体の改善に取り組んでいます。

第1グループとして、まずは、プラットフォーム全体の体験の流れを整理するため、様々なデータを組み合わせ、可視化していきました。

第1グループとして取り組む範囲は「顧客育成プロセスを含む、体験設計の最適化」としている。
非会員から会員になるまでのフローを、データから可視化し、課題を整理していくことから始めた。

取り組みの一部を、事例として紹介します。

プラットフォーム全体で、ユーザーがどのように行動すると理想的かを考え、ジャーニーとして再設計しました。

プラットフォーム全体の、初回訪問からログイン、購入、継続、サービスの併用の流れを整理したジャーニー。

例えば、どのプロダクトが流入のきっかけになり、どのプロダクトがきっかけで会員登録し、その後サービスを併用するのか、など理想的な流れをまとめた。

複数あるサービス同士の関係性を整理して、初回訪問から、サービスを併用するロイヤルユーザーになるまでにどのような流れを踏んでいってもらうかを整理しています。

さらに、データの取り扱いに長けた専門組織に依頼し「DMM会員のうち何%がどの区分(顧客ステージ)に属しているか」という、ユーザー分類の可視化に着手しました。

ユーザーの過去1年間の購買行動をもとに、会員登録のみ、初回購買/1サービス、継続購買/1サービス、毎月購買/複数サービス...のように、ある月の時点でどの顧客ステージにいるのかを判定します。

顧客ステージの実態を可視化するため、調査目的とデータの活用方法など、調査依頼をまとめて、社内の専門組織に依頼

過去1年間のユーザーの購買行動をもとに

・会員登録のみ
・初回購買/1サービス
・初回購買/複数サービス
・継続購買/1サービス...

のように、顧客のステージと、その数や比率を明らかにしていった

ジャーニーで定義したユーザープロセス毎に、ユーザー数/比率、年間購買額や1年LTV、ARPPUを可視化することで、どのステージに属しているユーザーに問題があるのかが見えてきます。

また、カスタマーサポートにお寄せいただく「ユーザー要望などの定性データ」も重要な情報となります。

カスタマーサポートに届くユーザー要望も整理して、ジャーニーと照らし合わせて課題を抽出していった。

このように、定量・定性データを組み合わせて、ユーザープロセスのどこに課題があるのかを分析していきました。ミクロ視点ではなくマクロ視点で俯瞰的に物事を観察することを意識しています。

ここから、ジャーニーを活用して見つけた課題から、プラットフォーム全体をつなぐUXとして抜け落ちている部分の改善に取り組んでいきます。

横断デザイン組織である第1グループとして、改善を推進した事例をいくつか紹介します。

  • 施策1. 複数サービス併用のためのインセンティブ設計

  • 施策2. サービス横断の共通UIの改善

  • 施策3. DMMプラットフォームに広くまたがる新規サービスの推進

どれも、多くの組織を横断的に巻き込みながら、一つのゴールに向けて取り組んだ内容となっています。

課題の一つとして、DMMサービスの併用を促すインセンティブ設計や、購買促進するための仕組みが薄いことが分かりました。

そこで「DMMクーポン」という、ユーザーが気軽にお得にサービスを利用できる機能のUX設計に取り組みました。

サービス併用と購買促進のための仕組みとして、DMMサービスで使える「DMMクーポン」の立ち上げ

サービス併用のインセンティブの設計のために、ユーザーの状態とプロセス毎に期待するアクションをジャーニーで可視化。 「初回訪問・課金・継続利用・サービス併用」の流れのどのタイミングで何を訴求することで、期待するユーザー行動を促せるかを検討していきました。

プラットフォーム全体を俯瞰して、UXを整理、プロセス全体で成立するUI案を整理する

複数サービスのステークホルダーが関わる機能改善もスムーズに合意できるよう、ジャーニーで改善箇所を可視化している

実際に結果として、DMMクーポンを獲得しているにも関わらず「決済時に利用しないユーザー」への対策として、決済画面でクーポンの訴求を強化して認知向上を図る改善によって、クーポン獲得済みユーザーの利用割合が大きく向上しています。

バスケットから購入完了までの一連の流れを定量データで分析し改善につなげる

サービスをまたいだインセンティブの設計は、影響範囲が広く、合意形成の難易度が高い改善アプローチですが、横断組織という役割があったからこそ実現できた施策でした。

また、プラットフォーム全体を一貫した体験にするための「サービスで共通している部分のUIの統一」にも取り組みました。

例えば以下のような箇所で、共通コンポーネント化 / 共通の画面化を進めていきました。

  • 商品購入画面のアイコン / 文言

  • ログイン・登録画面のアイコン / 文言

  • 総合トップ画面 ( https://www.dmm.com/ )

  • ポイント利用画面

このような取り組みは、一貫した体験をつくるために必要な一方で、直接的にKPIへの影響が説明しづらく、対応の優先度が上がりづらい傾向があります。

そこで、「UI上の表現やユーザービリティの品質向上、プラットフォーム全体でのUX底上げにつながる」ということを、複数の役員や各サービスのステークホルダーに対して繰り返しコミュニケーション・提案を行うことで理解を促していきました。

KPIへの影響が説明しづらいUIコンポーネントの統一に取り組むことに納得してもらうため、プラットフォームの改善プロセスの全体戦略から説明することで、信頼を得ていった

また、具体的な提案では、複数サービスにまたがるアイコンや文言を揃えることで、機能の認知を正しく促せることに加えて、管理運用コストが下がるメリットも伝えるようにしていました。

一元管理による視覚情報の統一以外にも、管理運用コストを削減できるメリットを説明

そもそも、サービスごとにアイコンや文言が統一されていなかった理由は、事業成長のスピードを重視して、サービスごとの意思決定が優先されていたことが影響しています。デザインについても個々のサービスで進められ、サービス間での連携が希薄になりがちでした。

そのため、今回の施策を実施するためには、開発フローにまで影響があるため、丁寧な説明が必要でした。

サービス毎の事情や懸念にも細かく向き合い、「実現させたい理想の世界観とメリット」の理解をいただくMTGを重ね重ね実施していきました。関係各所の協力や連携があり、本施策も着実に歩みが進んでいます。

DMMプラットフォームをまたがる新規事業構築の際、各サービス間の連携を推進していくことも、横断組織であるデザイン部 第1グループの役割です。

2022年にリリースされた弊社屈指の大型プロジェクト「DMMプレミアム」の立ち上げでも、複数サービスにまたがるUXに関連する調整を行いました。

DMMプラットフォーム各所に関わる影響を可視化しつつ、各サービスを巻き込み、全体的なUXをまとめていく

複数サービス・多種多様なステークホルダーが関わる大型プロジェクトでは、以下のような論点も生まれてきます。

  • 横断的に影響する仕様や、各サービスで並行で進む個別開発の状況の透明化

  • レポートライン、会議帯の設計

  • 問い合わせフローの整備、質疑応答の情報の集約

これらの全体進行についても、第1グループから、デザインに関する領域を中心に、各サービスや事業と連携しながら取りまとめていきました。 

第1グループとして、各サービスや事業管轄を跨いで、全社から舞い込んだ相談を独自に取りまとめ、課題を管理している様子

結果、本部を横断した各部署からの要望(企画フェーズからの体験設計、プロジェクト進行相談、UIデザイン案件の依頼)が、デザイン部 第1グループに寄せられるようになっています。

経営レイヤーからの相談や、提案を求められる機会も増えています。

第1グループは、全社に約100名いるデザイナーのキャリアの選択肢にもなっています。今後も様々な側面からDMM全社に寄与していきます。

最後に、第1グループに所属する根本、泉谷、野崎の3名から、横断デザイン組織ではたらいてみて思ったことをまとめます。一緒に働きたいと思っていただけた方は気軽にご連絡いただければと思います。

根本

数年前から意識しているのは、「デザイナーや、我々が生み出すデザインの価値を向上させる事」です。デザイナーの発言力や信頼がない状況では、規模感の大きな提案をする土俵にも立つことができません。

プラットフォーム開発のような複数のサービスや管轄組織、関係者が関わるプロジェクトでは、「ビジネス」「実装」「ユーザー」の3つの観点に加えて、「組織毎の思いや考え」という第三の観点が入ります。

 このような場でデザイナーは「ユーザー視点」で意見を出し、社内のステークホルダーの思いと目指すべきUXをすり合わせる架け橋になることができます。

その際に、ただ理想のUIや表現を押し付けるのではなく「高い視座にたちビジネス全体を俯瞰して、最適解を粘り強く丁寧に提案」し信頼を積み上げることを大切にしてきました。

結果、現在ではクロスファンクショナルな立ち回りが認められ、経営レイヤーにデザインから意見を届けることができる状態にまで、役割を浸透させることができました。

泉谷

プロダクト毎にサービスの種類や機能が違うように、ユーザーへ提供したい体験が違います。また、個別で進行しているプロダクト同士が競合し結果的に施策が停滞したり、それぞれに関連性がないまま「改善案」として起案されることもあります。

第1グループは、施策毎の要望や「具体化できない想い」を表層ではなく構造的に分解し、本質的な「ユーザーにとって良質な体験」を構築します。

進行する全てのシーンにおいて、デザインを通して何度もディスカッションを重ねながら交通整理をし、経営レイヤーの意思決定へ密接に関わることのできる重要で意義のある役割だと感じております。

野崎

第1グループにジョインさせていただき感じたことは「施策を点で見るのではなく、線で見る」ことをメンバー全員が意識していることでした。

ひとつひとつの施策で対応スコープはありますが、そのスコープ内だけで理想のユーザー体験を目指すのではなく、関連するプラットフォームの機能や前後のユーザー行動などを踏まえ、一貫性のあるユーザー体験を提供できるように取り組みされていました。

実現したい要望を点で捉えてしまうと、ユーザー視点で振り返った時に「ユーザーにとって本当に大切なこと」を見落としてしまったりします。

従って、私も「一貫性(線で見ること)」はとても大切だと思っていて、施策の中で実現したい要望と、それに紐づく一連のユーザー行動を俯瞰して見つつ、バランスを考えながら最適なUI / UX設計を行なっていくことを意識しています。

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