DMMエンターテインメント本部 デザイン部の根本です。
自分が関わっている「DMMポイントクラブ」は、DMMの各種サービスを横断して利用してもらうためのハブとして、DMMポイントを軸にポイント獲得・履歴管理をしてもらうプロダクトです。
自分は「DMMポイントクラブ」の立ち上げにあたってどんなサービスにしようか検討している時期にデザイナーとしてチームに参加し、ユーザーにどのように利用してもらうかの解像度を上げる工程を担当していました。
今回はその立ち上げを例に、新規サービス立ち上げ時にブレずに開発につなげるための設計方法についてまとめていきます。
「ポイントをもっと有効活用してもらえないか?」という問題意識から始まった新規事業だったのですが、「実際解くべき課題は何か?」「誰向けにつくるのか?」をより正確に定義することから始めました。
まず、ユーザーからの要望をまとめている部署からデータを共有してもらい、定性的に起こっている問題を頻度順に並べてみました。
そこに、年齢・性別など定量的な属性情報データを掛け合わせて分析することで、ユーザーが課題に感じているポイントや、「誰が一番困っているのか?」というところを明確化していきました。
その結果、「どう使えば良いかわからない」「ポイントの種類が複雑」「有効期限が違う」などユーザー目線だとDMMポイントの価値があまり伝わっていないということが分かりました。
さらに、各事業のマーケティング目線でも、ポイントという資源を活用した施策をユーザーに提供できていないことが分かりました。
チーム内でこれらの認識を擦り合わせるため、立ち帰れる場所としてドキュメントにまとめていきました。
問題定義をした上で、ブレずに開発を進められるように丁寧にドキュメンテーションをしながら設計をしていきました。
開発に入るまでの大きなステップは以下の5つです。
① 大きな指針としてサービスビジョン作成 ② 事業全体像を表すリーンキャンパス作成 ③ ペルソナ・サービス体験を表すシナリオ設計 ④ ユーザーストーリーマッピング・詳細なユーザーフロー図の作成 ⑤ 具体的な開発要件に落とし込む
まず、より端的に自分たちが開発する指針をメンバーに浸透させるため、サービスビジョンをまとめたドキュメントを作成しました。
こういうものを作っても特に活用されないこともよくあると思うので、ブレない言語化・図解をすることを意識しました。
結果、何度もミーティングの度に繰り返し見せ、指針の浸透を進めることができました。
次に、事業全体像を表すリーンキャンバスを作り、そこをもとにペルソナやサービス体験をまとめました。 (リーンキャンバスまで作っているのは、チーム外のステークホルダーに対してビジネス的な目的を伝えやすくする必要があったためです。)
そこから、設計したリーンキャンパスやペルソナをもとに、デザイナー間での認識がズレないようにユーザーの体験や行動の想定をシナリオとしてまとめました。
シナリオでプロダクト戦略や開発方針について、ステークホルダーやメンバー間で認識合わせができたところで、ユーザーストーリーを作っていきます。
シナリオで想定していたユーザー体験を主語として、ストーリーの骨格(アクティビティ)からユーザーの具体的なアクション(ステップ)を時系列に並べていきます。
ユーザーストーリーを主軸として必要最低限な機能をプライオリティ順に並べていくので、初期MVPとして開発するのに必要な機能要件が明確になります。
さらに、ユーザーストーリーマッピングのアクティビティの粒度でより詳細なユーザーフロー図を作っていきます。
提供したいユーザー体験とそれを実現するために必要なアクション(UI/機能)と実装側の処理や分岐の条件などを図解していくことで、エラーの発見や実装の再現性を高めていきます。
このように指針を明確にしてから、具体的な開発要件を示す画面遷移図に落とし込みます。
このようにまとめることには時間はかかりますが、チーム内で設計フローがアップデートされることや、チームメンバー以外のステークホルダーと関わることが多い事業なので、第三者が見てもわかるようにすることを意図して取り組みました。
今回の開発では、DMM全体で60以上ある事業すべてをつなぐ体験をつくろうとしていたので、各事業の管轄責任者と合意形成する必要がありました。
ここで意識していたのは、デザイナーという肩書きではなく、相手の事業を伸ばす目線で話にいくことです。
1つ1つのサービスの特性やゴールを事前に理解した上で資料に落とし、DMMポイントクラブとして実現したい戦略とサービスの戦略が両立することを説明していきます。
また「ポイントクラブを作ることでマーケティングチャネルとしてどう活用できるのか?」という点に答えられるよう、ポイント価値向上、顧客育成やサービスへの送客など、DMM全体の課題や戦略をブレークダウンしたポイントクラブとしての戦略方針を伝えました。
さらに、数値をもとに現状の課題定義と改善後のユーザーフローをセットで提案することで、後のデザイン設計に根拠を持たせていきます。
最後に、「事業KPIを現状からどのように変化させるか」「その結果業績がどのくらい伸びるか」までも試算をしてコミュニケーションしました。
それぞれのサービス責任者に対して、こちら側がやりたいことやデザインだけ伝えても話が通りづらいので、合意をつくるために「これをつくることで何が変わるのか?」というポイントを相手の事業目線から話していくようにしていました。
今回のポイントクラブのような複数のサービスをまたがる設計においては、一つのサービスを新規開発するのと違って「DMMのサービス全体を俯瞰して」考える必要があります。
このようなプロセスを経験したことのないメンバーにも開発フローを基準高く想像してもらえるように、丁寧に可視化を行いながらプロセスを進めていきました。
また、複数の事業に関わる人を巻き込むために、デザインが業績にどう繋がるかを相手目線で説明できることも重要です。今回は、そのための整理や可視化を行い、うまく協力を引き出すことができました。
今後も事業数や規模感が大きなDMMで、デザインの範囲を組織全体にまで向けて、ユーザーと事業の両方に価値を届けられるようなデザインに取り組んでいきたいと思います。