ウエディングパークに所属する約20名のデザイナーを横断的に支援するデザイン戦略チームで、推進をしている西嶋です。
実はウエディングパークは、新卒採用を中心にデザイン組織づくりを進めてきた「育成型」の組織です。
このような育成型の組織には、特に初期に「人によってスキルセットが違い、アウトプットの品質が揃わない」という問題が生まれやすくなるように感じています。私たちも例外ではなく、このような育成型の組織づくり特有の問題に直面し、それを「属人化しない仕組み」によって解決していくことに取り組んできました。
今回は、同じように育成中心の組織づくりに積極的に取り組むみなさまに参考になるように、ウエディングパークにおける品質担保の仕組みのつくり方についてまとめてみようと思います。
ウエディングパークは、21年前にクチコミを見ながら結婚式場を見つけられるプラットフォームという領域からサービス提供を開始しました。
国内の結婚式だけでなく、海外挙式やフォトウエディング、結婚指輪領域を広げたメディアを展開し、さらに多くの付加価値を届けるために、式場向けのデジタルマーケティング支援、DX事業など複数の事業を立ち上げてきています。
そんなウエディングパークには、複数の事業を並行して進めるために、約20名のデザイナーが所属しています。
組織体制としては、それぞれのデザイナーは事業部に所属しており、それらの横断的な戦略を推進するチームとしてデザイン戦略チームがあるハイブリッド型の構造を取っています。
そんな私たちウエディングパークのデザイン組織には、2つの特徴があります。一つは「コードレベルの最終品質までデザイナーが責任を持つ」こと。もう一つは「育成型のデザイン組織づくり」を選んでいくということです。
ウエディングパークでは、デザイナーの職種を分割していません。プロダクトデザインの範囲も、一般的な組織よりもおそらく少し広く、仕様やUIの設計だけでなく、ユーザー視点と開発視点の双方を意識してフロントエンドのコーディングまで担当しモックアップの作成にも携わっています。
これはなぜかというと、ユーザー体験をつくるための最終的な品質まで、デザイナーが責任を持つためです。
私たちが責任を持っているのは、ユーザーに良い体験を届けることです。そして、そのためには「デザインデータだけつくり、実装はしない」と役割を限定的に考えないことが大事だと思っています。
具体的なワークフローとしては、一つひとつのプロジェクトにアサインされたデザイナーは、企画から仕様設計、UIデザイン、フロントエンドのコーディングを一貫して担当します。
また、デザインの最終段階と、コーディングの最終段階で、それぞれ体験を確認するためのレビューを置いており、これを通過したものだけ世の中にリリースされるような流れにしています。
ウエディングパークのデザイン組織は、経験豊富なデザイナーを採用する組織づくりではなく、カルチャーに共感して入ってくれたデザイナーを育てていく「育成型」の組織づくりを選んでいます。
2021年に、経営方針として「ウエディングパーク的『デザイン経営』宣言」を発表し、ウエディングパーク全社としてデザイン経営を実践していく必要性が語られ始めました。経営としても、ウエディング業界に新しい価値を生んでいくために、デザインに惜しみなく投資していくことが意思決定されています。
ただ、デザインに注力する組織が増え続けている市場環境を見ると、デザイン組織を立ち上げ始めたばかりのウエディングパークに経験豊富なデザイナーが集まるわけではないことが容易に予想できました。
なので、カルチャーにフィットするデザイナーに新卒で入社してもらい、長い期間育てる覚悟を持って接していく、育成型の組織づくりに取り組んできました。社内で、同じクリエイターであるエンジニア組織が育成型の組織づくりを続けてきたことも背中を押しました。
もちろん、育成型の組織づくりを選んでいると、いくつも課題が発生します。中でも、特に課題であったことの一つが「メンバーごとに、出せるアウトプットの品質に差がある」ということでした。
ウエディングパークには新卒メンバーも多く、全員がはじめから高い品質のデザインをアウトプットできるわけではありません。
育成型を選ぶならば、このようなメンバーのスキルセットの課題や、アウトプットの品質の差分が出てくるのは当たり前です。
さらに、ウエディングパークでは、デザインだけでなくコーディングまでデザイナーが担当するので、他組織よりもこの課題は大きくなります。
この状況に対して、当時の解決策としては、最も長く在籍しているデザイナーである私 (西嶋) が、すべてのアウトプットの最終品質をレビューするようにしていました。ただ、20名のレビューを1人がすべて担うのは非常に負荷が高く、組織としての解決をしなければと思い始めます。
繰り返すと、このようなシチュエーションは「育成型のデザイン組織づくり」を選ぶ場合、必ず起こる課題です。一方で、このまま西嶋のレビューという人による解決策に頼っていくのでは、組織としての発展がありません。
私は、ウエディングパークのような育成型のデザイン組織が、組織課題に対して取るべき解決スタンスは「属人化しない解決方法を選ぶ」ということだと考えています。
育成対象のメンバー数が少ない組織ならまだしも、新卒採用を積極的に行い、スキルセットの伸びしろがあるメンバーが複数いるウエディングパークでは、個々人に向き合って個別に育成していく方法を取る難しさがありました。
そこで「アウトプットの品質担保」「メンバーのスキルセット向上」といった組織課題を、できるだけ仕組みで解決していけるように取り組んでいきます。
紐解くと、今回の課題は以下のように整理できました。これらの課題を、西嶋が経験年数が長めなメンバーと連携しながら、プロジェクト化して解決しています。
ソースコード自体の品質を統一する
ユーザーにとっての体験品質をレビューできる人を増やす
デザイン段階から体験品質を守れるようにする
ここからは、構築中のものも含め、ウエディングパークにおける属人化しない品質担保の仕組みの詳細をまとめます。
まずは、コード品質の課題解決から取り組み始めました。
コード品質と言いつつ、課題は「ソースコード自体の品質」と「ユーザーにとっての体験品質」という2つに分けられます。まずは前者から解決することに取り組みました。
既存のコーディング規約をもとに、Lintツールの導入をしました。コード記述の揺れや基礎的なミスを自動で検知できるようになり、記法の統一と品質の平準化を実現しています。これにより、レビューでは文法やスタイルの指摘など、基礎的なレビューをする必要がない状態に近づけようとしました。
ソースコードの記法が守られたところで、ユーザーにとっての体験品質が守られているかどうかは依然確認する必要があります。
ここで課題としたのは「ユーザーにとっての体験品質をレビューできる人を増やす」ということでした。前述のように、これまではユーザーにとっての体験品質は、経験が長い私 (西嶋) が属人的にレビューをする体制をとっていましたが、このようなレビューができる人を増やせれば負荷を分散できると考えました。
このレビュアー移行の方法は、ボトムアップ的に進められています。
デザイナーの五島さん (2023年新卒入社) から「西嶋さんのコードレビューの観点を学びたい」と申し出ていただき、私がコードレビューをした後に「西嶋さんのレビュー意図を学ぶ会」的な勉強会を毎週開いてもらい、そこで西嶋がどういう意図でレビューをしていて、体験品質として守るべき部分はどの辺りか、を言語化していくようにしていきました。
さらに学びのラップアップとして、五島さんを中心としたメンバーから全デザイナーに向けて「レビューの心得」をインプットしてもらう機会も設けてもらいました。
このような流れの中で、これまで西嶋に属人化し始めていた体験品質のレビューを、五島さんもできるようになっていき、コードレビューに関しては一部を西嶋から五島さんにレビュアー移行することができました。
コードの品質担保のための仕組みが用意できてきた上で、次にフォーカスしたのは「デザイン段階から体験品質を守れるようにする」ということです。
当時のワークフローとしては、実装に進む前段階で、デザインレビューを西嶋が行うようにしていましたが、そこでは表層面・体験品質面ともにレビューをしっかり行う必要がありました。レビューの後に差し戻しが起こることも多く、デザイナーの負荷も大きくなっていました。
この問題は「LV1: レビュアー増加 (レビューの属人性を解決)」「LV2: デザインシステム整備(スキルの属人性を解決)」... という段階的な成長ステップで対応しています。
まず第一段階として、コードレビューと同じように、レビュアーを増加することに取り組みました。
そもそもの大前提ですが、ウエディングパークではこの当時Adobe XDを使用して相互レビューはしていたのですが、より相互レビューを活性化させていけるように、経営に提案してFigmaを導入しました。
その後、ペア制度を導入し、プロジェクトを担当しているデザイナー同士で相互レビューを行った後に、最終デザインレビューに持ってきてもらうようなワークフローを試してみました。
一方で、それでも若手のメンバーだと「デザインレビューを自分でするのは難しい」「いきなり最終レビューに持っていくのは不安がある」という懸念が発生していたので、さらにレビューワークフローを調整しています。
結論として、現在試してみているのは「経験を重ねてきたデザイナーを、1次レビュアーにアサインするワークフロー」です。
1次レビュアーには、すでに西嶋がほぼデザインレビューをしなくてもデザインステップを完了できるような、経験を重ねてきたデザイナーをアサインしています。今は、最終関門として2次レビュアーに西嶋を引き続きアサインしているような状態です。
この1次レビューの導入によって、メンバーとしては安心してレビューを出すことができ、2次レビューの時点ではほぼレビュー不要となるような効果が出ています。
ペアレビュー・1次レビュー・2次レビューという段階的なレビューシステムを導入したものの、このままでは、実態としては「1次レビュアーの属人性任せ」という状態になってしまいます。
1次レビュー時点で、基礎的なコンポーネントの使い方など、表層的な部分のレビューも多く生まれていることも分かってきたので、スキルの属人性まで解決できるようにデザインシステムの整備を進めています。
まずは私がガッと注力して、一番規模の大きなWedding Parkのデザイン原則や、主要なデザインコンポーネントの整備を完了させました。
また、よりこれらの仕組みを運用に乗せていきつつ、その後のコンポーネント整備の見通しも立てていけるように、デザインシステム設計に専門性を高く持っている Gaudiy社の torajiroさんを巻き込みながら、デザインシステムの土台づくりを進めています。
この1年間、これらの仕組みを少しずつつくってきたことで、ソースコード品質、コードレビュー段階での体験品質、デザイン段階での体験品質...と、少しずつワークフロー全体で仕組みによる品質担保ができるようになってきています。
また、レビューシステムを拡充していったことで、体験品質のレビューができる人も少しずつ増加し、西嶋からのレビュアー移行も進んでいます。
伴って、レビュアーを担いたいと思ってくれているメンバーも増えてきています。 (ありがたい...。) 経験を重ねてきたメンバーの次のキャリアステップを示せたことも、この仕組みを取り入れたことでの副次的な良い効果でした。
ここからデザインシステムを拡充していけば、さらにメンバーごとのアウトプット品質の差分は少なくなっていくはずです。
一方で、メンバー個々人がスキル的に成長していく部分は、まだまだ仕組みとしてのテコ入れが必要だと考えていて、このあたりは次の組織課題となっています。
最後に、私が思うウエディングパークのデザイナーの理想的な状態についてまとめておきます。
これまでの組織のフォーカスは、余白をつくることでした。複数の事業のデザインを、成長途上のメンバーが担っていく構造では、目先の運用業務を回していくことで精一杯になってしまいます。
まずは、この解決のための余白づくりに取り組んできましたが、この数年で少しずつ経験を積んだメンバーが増えてきて、組織として次のフォーカスに入っていけるように感じています。
ウエディングパークでは、クリエイターによる事業成長リードを目指しており、ここからは、さらにデザインの役割を広げる攻めのフェーズに入っていきたいです。具体的には、ブライダル市場における新たな価値を生み出すような新規事業を推進できるデザイナーや、既存事業の大規模なバージョンアップを進められるデザイナーが、徐々に増えていくと理想的だなと思います。
ウエディングパークのデザイン組織づくりは、まだまだ始まったばかりですが、「育成型」という指針を明快に決められていて、投資を続けてきた強みがあります。
無いものねだりをするのではなく、組織の仕組みによって余白を生み出し、今いるデザイナーたちが事業への強い影響を生んでいけるように、引き続きデザイン戦略チームから「属人化しない仕組み」をつくっていきます。