MIXI デザイン本部 動画クリエイティブ室 コンテンツディレクショングループでは、先日とある動画コンテンツを制作・公開しました。 その名は「CDOは今日も話し相手がいない」。全10回のショート動画シリーズとして公開しているのですが、まずは1本、ご覧になってみてください。

「これはなんだ...?」と思った人もいるかも知れません。

このシリーズは、MIXIのCDO横山の「デザイナー的な思考」を掘り下げる企画です。デザインをテーマにしながらも、その枠組みを超えて、世の中に対しての疑問やバイアスに気持ちよく気づけるようなコンテンツをつくりたい。そうした思いのもと、デザインに関する大事な考え方を、MIXI全体に広げていくことに本気で取り組む中で生まれたアウトプットです。

社内Slackにて動画の告知をした際の一コマ

もっと言えば、事業会社であるMIXIにおいて、動画クリエイティブやディレクターの活躍範囲を広げていく(今回であれば組織関連のイシュー)ためのチャレンジでもありました。

「CDOは今日も話し相手がいない」が、なぜ・どのように生まれたのか、その裏側をまとめたいと思います。

動き始めたきっかけは、ふとしたものでした。

CDO横山とCISO亀山の1on1の中で、社内向けに公開している「セキュリティ啓発動画」が社内外で面白がられているという話題があったようで、その話にとても興味を持ちました。

デザイン本部でも、デザインにまつわる大事な考え方を、動画を活かして「MIXI全体に広げていく」ような取り組みをできないかと思い、まずはCDOとディスカッションをしてみることに。

CDOがディスカッション時のことを振り返っての一コマ

しかし、ディスカッションを始めた段階では、何から手をつければいいのかイメージが湧いていませんでした。ただ、話していくうちに、CDOの頭の中には、これまでの経験から培われた「デザイナー的思考」や、誰かに伝えたいことが詰まっているんだなということに気づきました。

「デザイナー的思考」は、一言で説明するのが難しく、とっつきにくい印象もあるかもしれませんが、より良いものづくりを行う上で、デザイナーに限らず多くの人に役立つ考え方だと思います。だからこそ、CDOの視点を解釈しながら、事業会社のデザイン部門として丁寧に言語化し、発信していくことには意義があるように思えました。

そして、せっかくやるなら、少しでも面白く、身近に感じてもらえる形で届けたい。そこで、 僕らが得意としている動画の力を活かすことに決めました。

やってみようと思えたもうひとつの理由は、MIXIのデザイン組織に属する動画ディレクターとして、動画というケイパビリティを活かせる領域をもっと開拓していきたいという想いがあったからです。

これまでもMIXIの動画ディレクターは、モンストのPVや配信、千葉ジェッツのYouTubeチャンネルの運営など、事業をしっかりと伸ばしていくために、動画のケイパビリティを活用してきました。

一方で、今回は社内向けの施策であり、いわばデザインの啓発活動という、これまであまり踏み込んでこなかった領域です。テーマの難易度も高く、非常に難しい企画だと感じていました。

それでも、未知の領域だとしても、動画のケイパビリティを拡張して自ら前例をつくっていくことは、意義あるチャレンジだなと素直に思えました。

実際に企画を詰めていく過程では、CDOが持つ「デザイナー的思考」を動画に落とし込み、MIXI全体へ伝えていくという方向性から、少しずつ具体的な要件を整理していきました。

まず決めたのは、「ショート動画シリーズとして公開する」という形式です。長尺のコンテンツでは、堅苦しく説教っぽい印象を与えてしまう可能性があり、興味がない人はそもそも見てくれないでしょう。

その点、ショート動画であれば、気軽に見てもらえるコンテンツになりやすく、僕たちが培ってきた経験も存分に活かせるだろうと考えました。

企画の進め方としては、CDOにふと思ったことをボイスメモでつぶやいてもらい、それを僕らが聴いてアイデアを拾っていくというスタイルを取りました。

例えば、オフィスからの帰り道など、ふとしたタイミングでボイスメモを残してもらうようにすれば、多忙でまとまった時間を確保しづらい状況でもリソースを割きやすく、よりリアルな思考の断片をキャッチできるのではと考えたのです。

気づいたら沢山送られていたCDOのボイスメモ集

ボイスメモには、ものづくりに関する雑学から人間の心理に関することまで、さまざまな話題が残されていました。中には抽象的で、すぐには理解できないものもありましたが、よく考えてみるとハッとさせられるような、僕ら自身にも気づきがあるような内容でした。

思い返せば、CDOは普段からこうした「デザイナー的思考」を巡らせていて、でもそれを一方的に伝えるのではなく、「答えは自分で見つけてほしい」というスタンスで、あえて問いだけを投げかけるようなコミュニケーションをしていることがあります。

そこから派生して、企画として「初めて見る人でもどうしたら興味を持ってもらえるか?」を考えたときに浮かんできたのが、「CDOは今日も話し相手がいない」というタイトルでした。

執行役員 CDOであり、責任と立場のある人間が「話し相手がいない」と聞くと、なんだか気になるし、ユニークさもある。でも、実際に見てみると、そこには思わず考えさせられるような問いや気づきが詰まっている——そんなコンテンツにできたらと思ったのです。

最初につくった企画のメモ

企画のアイデアが定まってからは、シリーズコンテンツとして各回でどんなテーマを扱うか、台本はどう構成するか、どんな演出にするか、誰に出演してもらうか、どこでどう撮影するか――といった運用フェーズでの試行錯誤を繰り返していきました。

制作メンバーもそれぞれ複数の案件を抱える中、限られた時間を縫って集まり、あーだこーだと意見を交わしながら、どうすればもっと良くできるかを探っていく。そんなプロセスで、なんとか10本をベストなクオリティで作り切るんだという思いで進めていました。

社内での撮影の様子

ここからは、そんな制作プロセスの中で工夫していたポイントをいくつかまとめたいと思います。

そのひとつが、企画において大切にするグランドルールを、制作を進める中で適宜言語化していくことでした。

例えば、少し分かりづらかったり、センシティブに思えるテーマであっても、「興味がない人でも見たくなる」ように表現とアイデアで勝負すること。そういった挑戦ポイントを意識する一方で、主演の横山や他の出演者の品位を損なうような演出にはならないよう、徹底して気を配ること。

こうしたグランドルールを都度言語化していくことで、チームでより良いコンテンツをつくれるよう心がけていました。

もうひとつは、台本を考える際のフレームワークを型化していったことです。

デザイナー的思考という一見捉えどころのない概念を、「今のMIXIにとって必要なエッセンスとは何か?」という視点から僕たちなりに解釈し、わかりやすく、そして面白く伝えていく。それがこの企画の根底にありました。

加えて、ボイスメモからネタを拾い、他の出演者との会話形式に台本を変換するという、「CDOは今日も話し相手がいない」ならではのプロセスも特徴です。この特殊なプロセスの中で、より良いコンテンツに仕上げるための型を、試行錯誤しながら少しずつ見つけていきました。

データとの向き合い方に関する話題を扱った「キャラアートのお作法とかデータとか…いろいろ言うてますけど。」を例にしてみると、以下のような構成になっています。

■ CDOのボイスメモ (元ネタ)

■ 「台本作りの型」と記載例

■ 実際の台本

■ できあがった動画

これはあくまで一例ですが、目的に沿ったおもしろいコンテンツを自分たちなりに科学して、型にしていくことも重要な取り組みだったなと思います。

さらに、ただ動画をつくるだけでなく、なるべく多くの人に興味を持ってもらい、実際に見てもらうための工夫にもこだわりました。

例えば、Slackでの告知文ひとつ取っても、毎回オリジナルで作成し、動画の内容にちなんだ気になるトピックを織り交ぜながら投稿することを徹底。

Slackでの告知文の例。文章にはチーム内でフィードバックを重ね、Slack上に表示される「動画ファイル名」にもこだわっていた

他にも、これまでのあらすじや登場人物の相関図をキャッチーに図解して投稿するなど、少しでもコンテンツを身近に、そして面白く感じてもらえるような工夫を凝らしていました。

Slackに投稿していた人物相関図

一見するとおふざけのように見えるかもしれませんが、僕たちは至って本気でした(笑) 組織に対してデザインの大切な考え方を伝え、広げていくという目的のもと、デザイン本部の看板を背負って発信する以上、やれることにはすべて全力で取り組む。そんな姿勢を心がけていました。

このような試行錯誤の末に、「CDOは今日も話し相手がいない」の全10回のショート動画シリーズを公開することができました。

もともとは社内向けのコンテンツとして企画しましたが、社外の方にも見ていただけるようにYouTubeで公開しています。デザインやクリエイティブを身近に感じたり、クスっと笑える内容になっているので、ぜひ見てみてください。

CDOは今日も話し相手がいない
https://www.youtube.com/playlist?list=PLSy1zuVb8HVk74AP-Y7-sg9w0cuPi_DoS

社内からの反響としては、新しい動画を公開するたびにリアクションをくれる人がいたり、「あれ、面白かったよ」と声をかけてくれる人がいたりと、想定していた以上に良い手応えがありました。

実は出演者は、デザイン本部に限らず、経営推進本部、はたらく環境推進本部、開発本部など、他部署のメンバーにも意図的に出演してもらっていました。特にそういった回は反応も大きく、より身近に感じてもらえたのではないかと思います。

また、CDOのSlackチャンネルへの参加者も施策開始前比で200%増加しており、少しでもデザインやクリエイティブの考え方に触れ、興味を持ってくれる人が増えたのではないかと感じています。

そして何より、動画というケイパビリティを持つ自分たちが起点となって、事業に限らず、組織にまつわるイシューにも積極的に向き合い、形にできたということは大きな成果だった思います。

MIXIにおいて、動画ディレクターとして活躍できるフィールドは広がり続けています。

しかし、僕たちが目指しているのは、単に動画をつくるだけの存在ではありません。変化の激しい今の時代、とくにAIの進展が加速する中で、今までの業務範囲を飛び越えてもっと大きなワクワクを生み出し、推進力を持って新しいディレクター像をつくっていくことが必要だと考えています。

だからこそ、ときには「やれるかどうかも分からない」ようなテーマに挑むこともあるし、むしろそうしたチャレンジの先にしか、新たな可能性は開けないとも思っています。(「やったことのあることだけやっても面白くない」という、クリエイターとしての性分もあるかもしれません。)

実際、今回の企画でも「こんなことに時間を使っていていいのか」と思われるくらいのことをやりたかったし、逆にそう思われたら勝ちだとすら思っていました(笑)

結果的に良いコンテンツをつくることができましたし、次に繋がる手応えも感じています。

僕たちは、クリエイティブを生業とするチームです。だからこそ、これからもその力を最大限に発揮したアウトプットを続けていくことで、業界の先端を走っていきたいと思います。


メインスタッフ ディレクター:菅野 昌宏 / 福﨑 哲 クリエイティブディレクター:折原綾平 監修:横山 義之(CDO) スペシャルサンクス サウンド:笠島 伸吾 デザイン:田中 完二


僕たちが所属しているMIXIデザイン本部 動画クリエイティブ室の詳細がまとめられているnoteもありますので、こちらもあわせてご覧ください。

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