2023年4月時点では2名体制だったファインディのコミュニケーションデザインチーム  (以下、コムデ) は、この1年で6名に増加。現時点では2025年末には15名体制にまで拡大しようとしています。

ファインディのコミュニケーションデザインチーム (コムデ) の体制変遷について

2023年の前半段階では、事業部から依頼を受けて制作する役割がメインでしたが、今はコミュニケーションデザイナーがプロジェクトに入り込むことで数字が高まることを事業部からも分かってもらえており、企画から入り込み事業推進の中心的な動きができるようになりつつあります。

その裏には、コミュニケーションデザインから事業を推進していくための、度重なる体制変革の検証がありました。ファインディコムデが、なぜ事業に目線を向けて新しい施策を取り入れることができるのか。また、具体的な変革の流れについてまとめていきます。

変革に動く前の2023年4月、ファインディのデザイナーは全員で6名。まだコミュニケーションデザイン専任チームはなく、コミュニケーションデザイン業務を担当するメンバーが2名所属するのみでした。

そこから1年後の現在、コムデに所属するメンバーは6名に増加、各自が担当事業を持つ体制が取られており、チームとしての毎月の制作数は「100」を超えています。

ファインディのコムデで制作しているもの (一部)
事業部と連携しながら、毎月100以上の制作物をつくっている

ファインディにおけるデザイナーの役割はプロダクトデザイナー、コミュニケーションデザイナーに関わらず「事業成長をデザインの力でサポートし、ビジョンの実現を早める」と定義しています。

そのためチームとして事業へのコミットメントを高めていくためのさまざまな仕組みを用意しています。(効率化という文脈というよりも、より事業効果を高める文脈での仕組みづくり)

ファインディコムデの、事業へのコミットメントを高めていくための仕組み (詳細は後述)

ファインディのコムデが事業貢献を強めるための体制変革を始めたのは、2023年6月のことです。その背景にはコムデとしての目線の変化がありました。

当時デザインチーム全体の人数は順調に6名(うち2名がコムデ)にまで増えていました。以前に比べアウトプット数も増えている感じもしましたし、良いものが作れている感覚はありました。

ただ、日々プロジェクトを完了させていく中で何か違和感を感じ続けていたのも事実です。そんな中、各自の動きが見えづらくなっていることが問題視されました。

そこで、コミュニケーション不足や、各自の活動の不透明性を解消するために、デザインチームの振り返りを始めます。

各自がやっていることを共有するような形で、デザインチームとしての振り返りを開始 (今だからこそ分かるが、デザインチーム自体に目線が向いてしまっていた)

今だからこそ分かることですが、その時の違和感の正体は「ただ単にそれぞれの動きが見えにくくなっている」という事ではなく、「目に見えるアウトカムが無かったためにお互いに見えにくくなっていた」のだと思います。制作物の振り返り自体は良い取り組みとして今も継続していますが、当時は「やった事」に安心してデザインチームとしての居心地は良くなりましたが、事業に目線を向けることはまだできていませんでした。

チームとして事業へのコミットメントを高めることはできないまま、結局依頼を受けて制作する体制から脱せておらず、コミュニケーションデザインから事業数値を上げることに貢献できている感覚はありませんでした。

しかし、あるタイミングから、少しずつ事業貢献に対して目線が向くようになり、あわせて、より事業に対する制作の質を追い求めていく体制ができていきました。

そのように目線を変えることとなったのは、2つの要因があったように思っています。

ファインディコムデが事業貢献に目線を向けられるようになった要因

1つ目は、「専門性の高まり」です。経験豊富な専門性も高いコミュニケーションデザイナーがどんどん入社してくれたことで、事業部の作りたいものを作れる体制が整ってきており、さらに「今までできなかったことをやれるのでは?機が熟してきたのでは?」と少しずつ思えるようになっていました。

2つ目は、「事業成長」だと思います。ファインディでは、すごい速度で事業成長しているからこそ、デザインチームも意思を持って中長期的な目線を持って動かなければ会社の中でプレゼンスを発揮できず、社内受託的になってしまうのではないかと常に危機感を持っていました。

成長し続ける事業環境で、パワフルなメンバーが集まっているならば、「もっとコムデから事業貢献を強めていけるはず。生産性を高めていけるはず。」と考え、より全員が事業にコミットメントしていけるように体制づくりに注力しはじめました。

事業に貢献できるような体制や、コミュニケーションデザイナーの動き方を、少しずつ検証しながらつくっていきます。

最初からこうすれば良いと分かっていたわけではなく、全員が足並みを揃えて水準を上げていけるように、一つ一つ体系化していきました。

ここからは、大きく6ステップで整理して、ファインディのコムデが行ってきた体制づくりの変遷をまとめていきます。

ファインディのコムデが行ってきた体制づくりの変遷

0. コムデが力をかけるべきことを把握するための「可視化」
1. 制作のフォーマットを揃える「クリエイティブブリーフ」
2. 制作のナレッジを蓄積する「あゆみ👣」
3. 事業部に入り込み案件を引き出す「かけはし🌈」
4. パフォーマンスを高める「コムデート」「パワーモニタ」
5. 事業貢献に向けた仕組みのブラッシュアップ

はじめに、コムデが何に取り組んでいて、どこに力をかけるべきなのかを明確にするために、「コムデのタスクの可視化」に取り組みました。

まず、事業部からの依頼を一本化するために、制作依頼フォームを作成。そこから来た依頼がひと目でわかるようなタスク管理シートをつくりました。

さらに、そこから「どの部署の誰からどういった相談があるか」「制作完了数・完了までのスピード」「制作の中でのやり取りの多さ」「締め切り前に完了した数と割合」「デザインの時間投下割合と概算の金額」なども自動で測定されるように可視化を進めていきます。

ファインディのコムデが可視化しているものの一覧。まずコムデが何によって事業貢献できるのか、どのくらい事業貢献できているのか、を可視化するところから始めた

個別の制作のクオリティをいかに高めたとしても、それらがゴールに近づいているかどうかわからないと、コムデによる事業貢献度合いは正しく測定することはできません。

まず初手として、コムデのやるべきことを可視化したからこそ「何がコムデとして事業貢献するための要素なのか」を分解して考えられるようになりました。このあとの仕組みづくりに取り組めたのも、可視化が前提になっているように思います。

コムデの人数が3名になったタイミングで、各人が自由に制作をしていくのではなく、チームとして事業貢献の狙いを持ち、ファインディらしさを意識した制作ができるようなフォーマットをつくることに取り組みます。

そこでつくったのが、事業部からの依頼に対して、なぜつくるかを言語化してから制作に臨めるようにする「クリエイティブブリーフ」 (ヒアリングシート) です。

事業に対してどのような結果を生み、ファインディらしさのどの辺りを強めるのか、を言語化してから制作に臨むための「クリエイティブブリーフ」

ヒアリングシートとして活用し、依頼を受けた後に事業部側にヒアリングを行いながら内容を埋めていく

事業部にヒアリングしながら、「なぜやるのか」「課題」「達成したいゴール」「利用シーン」「解決アプローチ」を制作の前に言語化していきます。

また、同時にファインディらしい表現ができるよう「デザインコンセプト」も記載します。(ファインディのデザインコンセプトである、シンプル/ルールのある創造性/遊び心 の中からどこを強めるかを選び、都度制作の方向性を決めています)

リリース後は「結果」もまとめ、デザインチームの振り返りでも、このフォーマットを使うようにして、チームとして事業意識を高めていきました。

クリエイティブブリーフに結果もまとめ、デザインチームの振り返りでもこのフォーマットを使って振り返りを行うように。チームとして事業意識を高めていく

前述した制作依頼フォームから依頼を受け、クリエイティブリーフを使ったヒアリングを行い、狙いから明確にすることを愚直に行うようになりました。

結果として、事業部からも、コムデに積極的に依頼が起こり始めるようになります。

その後、コムデ4人目のメンバーもジョインし、次のステップとしてディレクション/制作のナレッジ蓄積に取り組み始めました。

クリエイティブブリーフによるヒアリングの結果、コムデと事業部の連携が強まってきた一方で、まだまだ進め方が型になっていない部分が多いことが分かってきました。

そこで、型になっていない部分をなんとか乗り越えた事例や、うまくいかなかった進め方を細かく知見として貯めていくことで、チームとして同じ轍を踏まないようにするための「あゆみ👣」というディレクション/制作のナレッジを蓄積する場所をつくりました。

事業部とコムデがよりうまく連携していくために、”あゆみ寄り” した事例を知見として残していくためのシート「あゆみ👣」

プロジェクトごとに「事業部×デザインチームの連携におけるOps」「事業部×デザインチームでやっていきたい解決策・アイデア」の2項目で申し送りを残しています。必ずしも良いことだけでなく改善したいことも内容として残すので、虹色をイメージしたカラーリングや、少し笑えるメッセージを入れておくなど、出来るだけポジティブな印象になるよう配慮しています。

コムデの人数が増えてきて、事業部との連携も多くなってきたからこそ、「ここで迷ったよ」「ここは気をつけないとこう失敗するよ」というナレッジを貯めておくことに意味が生まれてきます。チームとして事業貢献するための進め方を、少しずつ学習していきました。

コムデから事業に貢献する動き方が体系化できてきたタイミングで、さらに事業貢献を強めていくため、より事業部との関わりを強めていきます。

依頼フォームをつくった以降も多くの人が使ってくれていたのですが、例えば「もう制作段階だけど、本当はその前からコムデに依頼して欲しい、そうすればもっと事業成果を出していけるのに...」という案件がたくさんあるように思っていました。

そこで、コムデが主導して、コムデが入るべき案件を確実にキャッチアップできるようにしていけるように、全事業部との定例mtg (架け橋になる場なので「かけはし🌈」)を始めました。

コムデが主導して、コムデが入るべき案件を確実にキャッチアップできるようにしていけるように、全事業部との定例mtgを開始 (架け橋になる場なので「かけはし🌈」)

はじめは、よく依頼をもらう7チーム(マーケ×4事業部、採用、経営管理、2BSales)と、それぞれの過去の依頼数に応じた頻度(週1 / 隔週 /月1)でmtgを開催していきました。

「最近どう?なんか作りたいものない?」を聞くお悩み相談くらいの位置付けで、各チームのみなさんをカレンダーに招待して、ひたすら課題を聞いていき、その中で「これができるのでは?」というところを見つけて提案するようにしています。

「かけはし🌈」のアジェンダ
ざっくばらんにお互いの状況共有をしながら、コムデから入っていけるところがないかを相談ベースで探っていく

この動きによって、余裕を持って企画段階からキャッチアップできるようになり、コムデの制作にスピード感を持たせられるようになりました。かつ相談ベースで話を聞けるようになり、施策リリース後のフィードバックも頻度高くもらえるので、事業部とより深い議論ができるようになっています。

事業部と、企画の段階から連携していくことができるようになってきたので、さらにコムデのパフォーマンスを高めるために仕組みをつくっていきました。この段階で、5人目のコムデメンバーもジョインしています。

一つは、デザイン品質を定量化するための、振り返りの仕組み「コムデート」です。

デザイン品質を定量化するための、振り返りの仕組み「コムデート」

隔週で各自メインの案件のクリエイティブブリーフを持ち寄り、35の項目をチーム全体で評価する形で、アウトプットが本当に事業貢献できているか、ファインディらしさを表現できているか、を定量的に測定しています。

もう一つは、コムデの余裕度を見える化する仕組み「パワーモニタ」です。

コムデの余裕度を見える化するための仕組み「パワーモニタ」

毎日の日報で、各自で余裕度 (← 余裕 🥳 😉 😐 🙄 👹 キビー →の5段階) を入力すると、チーム全体としてどのくらいの余裕があるのかが見えるようになります。

これで、デザイナーの状況を把握して、自チーム内のヘルプに使ったり、事業部とのコミュニケーションに使っています。

一見すると見える化は「管理」といった考えになりがちですが、コムデでは常にチームの余裕とアウトプット数を比較し、適切な状態であるかどうかをモニタリングするために可視化をしています。

余裕がある際は日々のオペレーションを改善し、余裕がなくなれば全体最適を図るためにプロジェクトの見直しなどを行っており、健全な状態で最高の価値提供(=事業貢献)にトライしています。

ここまでにつくった仕組みを、さらに事業貢献につなげていけるように、日々ブラッシュアップしています。

例えば、コムデートによる測定を通して、課題の欄が抽象的に埋められてしまっていることや、毎回「ユーザーゴール達成 | ターゲット」の項目が低くなりがちなことが分かっていたので、その指標を高めるためにクリエイティブブリーフの項目を改善しました。

コムデートで測定した結果をもとに、チームとして低くなっている指標を高めるため、クリエイティブブリーフの項目を改善

具体的には、以下の項目を改善しています。

  • 常に「ユーザーゴール達成」を意識してデザインするため、「KPI(PJで達成したいこと)」「ターゲット」「インサイト」を追加

  • KPI達成のために必要なことを明確にするため、「解決アプローチ」を事業部(企画)とデザイン(情報設計)でわける

また、「かけはし」の動きをさらに強め、より事業部への貢献を強めていくために、コムデメンバーをそれぞれ事業部別に配置し始めています。(*2)

事業部との連携をさらに強めるために、コムデメンバーをそれぞれ事業部に配置するように
(*2)  ファインディのデザイナーに対する考え方について ファインディでは、事業貢献が主たる役割なので、専門性ごとに分けるのではなく、全員事業貢献に向けて事業部を担当をするような考え方をしています。もちろん専門的なアウトプットが必要な場面はあるが、それは身につけていく or エキスパートな人を巻き込んでいくように考えます。

コムデメンバーも6人目が入社。デザインチームの振り返りもまたアプデしており、現在は、それぞれの事業部担当のデザイナーが各事業の目線で GOOD / MORE / 翌月の取り組み を振り返るようになっています。

デザインチームとしての振り返り項目も、より事業目線にアップデート
事業部担当のデザイナーが、GOOD / MORE/ 翌月の取り組み を振り返り

このような変遷を経て、全社からコムデに対して当たり前に求められる基準が上がっています。事業部からの依頼も「こういうものをつくりたい」という依頼ではなく「どうやったら数値を高められるかな?」という相談が増えました。

また、経営の話に上がる回数も増えています。以前は「コムデ大丈夫??」と心配されることも度々あったように思いますが、今はそのようなことはなくなったなと感じています。むしろ、コムデからスタートした今回のような取り組みが、他チームが真似して取り入れてくれることも増えてました。

半年に一度行われる「Fine-day」という全社総会では、ファインディの5つのバリュー(*3) から表彰が行われます。2023年は上期はコムデとして「チーム賞」を受賞、下期は個人としても受賞し、月次の全社締め会でも活躍パーソンとして表彰されたりしています。

全社総会「Fine-day」では、半期で活躍した社員としてコムデからも表彰されるように
(*3) ファインディには「前向き」「誠実」「チームワーク」「スピード」「No.1」という5つのバリューがあり、コムデとしても、それらバリューを体現できるように意識しています。 参考:https://findy.co.jp/about/

このように社内からの評価が変わってきたのは、体制変革によって、コムデ側から「制作によって何が解決できるのか?」を具体的に伝えられるようになり、「コムデはKPIまで高めてくれるよね」という印象が社内についてきたからこそだと思っています。

今は、コムデにさらに投資すべき理由を経営層に問われても、数値と共にロジックを持って答えることができます。

例えば、正社員デザイナーを1名迎え入れたい場合においても

  • MoMの依頼数の増加率から事業部に1名増える事での依頼の増加数を算出

  • 正社員1人あたりの担当プロジェクト数、業務委託の方の稼働からストーリーポイントにしたときの不足ポイントの算出

  • 不足する事で事業のスピードが落ちるため、1名新たにジョインいただく必要がある

という話をする事ができるようになっています。

もちろん、この話には「事業貢献ができる(ようになる)デザイナーである」という前提がありますが、今までのコムデの動きから前提は経営にも伝わっています。

ここまでの検証を踏まえて、自信を持って、ファインディのコムデは拡大していくべきタイミングだと考えることができています。

ですが、まだ変革は始まったばかりとも考えています。今は事業部ごとに担当をしている状況ですが、事業部は違えども似た施策を進めている事も増えてきて、事業部横断で効果的に推進する必要も出てきています。そういった面で事業貢献度を上げられる余地はまだまだありますし、いかに今の良い状況を維持しながら組織をスケールさせるかという点がより重要になってきています。

また同時にブランディングにおいてもアウターだけでなくインナーにも注力するフェーズに入っていく事もあり、変化を次々に起こしていく事は今後も変わらないと考えています。

冒頭にもお伝えしましたが、そういった背景もあり来年末までに、コムデの人数を15名まで増やしていく計画を立てています。コムデが本格始動して1年、今後もさらにコムデを拡大していき、ファインディの事業成長に貢献していきます。

このデザイン組織をもっと知る

ファインディ