カオナビは、タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供する企業です。

カオナビでは、ブランドデザイン、プロダクトデザイン、マーケティングデザインの3つにデザイン組織が分かれています。

3領域に分かれる、カオナビのデザイン組織

そのうちのひとつが、ブランドデザインを担う「コミュニケーションデザイン室」です。 コミュニケーションデザイン室の役割は「全てのステークホルダーにファンを作ることをミッションに掲げ、カオナビブランドの思想を具現化すること」。 その象徴的な案件のひとつが、2022年6月に公開したリブランディングプロジェクトです。カオナビが目指す姿・存在意義を定義したパーパスを軸に、思想をあらゆるアウトプットで具現化。関係各所を取りまとめ、完遂させました。

コミュニケーションデザイン室が先導した、リブランディングプロジェクトの全体像

単にデザイン制作に関わるだけではなく、パーパスの社内外への浸透も役割に持つ、コミュニケーションデザイン室の成り立ちや、具体的な活動についてまとめてみます。

カオナビは2008年に創業。早くからHRテクノロジー業界に対して参入し、8年連続で国内シェアNo.1 (*1)を獲得するなど、リーディングカンパニーとしてがむしゃらに走ってきました。

出典ITR「ITR Market View:人材管理市場2023」人材管理市場:ベンダー別売上金額シェア(2015~2022年度予測)、SaaS型人材管理市場:ベンダー別売上金額シェア(2015~2022年度予測)で8年連続1位

長くサービスを提供する中で、競合となるサービスも多く生まれていました。さらには、日本社会の変化や、テクノロジーの飛躍的な進化、社員数や顧客の増加なども起こっており、いま一度「カオナビがなぜ存在し、今後何を成し遂げるべきか」を整理する必要がありました。 そこから、リブランディングプロジェクトが始まります。まず、カオナビの存在意義を表すパーパスと、その考え方を体現するロゴが新たに策定されました。

新たに策定されたパーパス。変更背景や由来について詳しくはnoteに掲載。
https://note.com/kaonavi_404/n/ne78d860e2ee4

しかし、パーパス策定後、社内外に対してどのように浸透させていくのかまだ考えられていませんでした。 当時のブランドデザインチームは正社員1名、業務委託1名の計2名という体制。全社へのパーパス浸透に向けプロジェクトを推進していくには、実行力が十分とは言えない状況でした。 このタイミングで私が入社し、改めてプロジェクトの進め方やチーム体制から見直していくことになりました。

パーパス浸透には、SAY(伝えること)とDO(実行すること)の言行一致が欠かせません。一つひとつの施策を完遂できる、実行力のあるチームをつくろうと考えました。

そこで、まず検討したのはチームの役割やメンバー構成です。


まず、チームの名称をコミュニケーションデザイン室(以下、CD室)に変更。チームのミッションとして「パーパスの社内外への浸透」「ブランド価値の向上」「社内コミュニケーション活性化」「全体最適を考えた仕組み化」の4つを掲げることに。

CD室が掲げる4つのミッション

さらに、このミッションを遂行できるチームには、デザイナーだけでなくプランナーやコピーライター、ディレクターなど、様々な専門性を持った職種が集まることが必要だと考え、採用を強化していきました。

CD室では共通してBXデザイナーの役割を持ちつつ、それぞれが専門性を発揮しています

結果、新チームにプランナー兼コピーライター、制作ディレクターなどのメンバーが入社し、幅広い専門性を持った、実行力があるチームへと進化していきます。 ちなみに、CD室には、マネジメントの役割はあえて置いておらず、高い専門性を持ったメンバーがそれぞれ主体性を持ちつつ機動力高く動いているのが特徴的です。

CD室の具体的な活動として、前述のリブランディングプロジェクトがあります。

それは、パーパスを起点とし、社内外のステークホルダーに向けて、カオナビの思想を一貫したメッセージとビジュアルで届け、浸透させていくものです。

リブランディングプロジェクトの全体像

まず、パーパスをより具体的にイメージできるような補強材料として、タグライン・ステートメントを開発することに。 パーパスは端的なメッセージであり、それ単体では人によって受け取り方や理解度に差が出ます。そこで、興味喚起させるフックとして「タグライン」を、パーパスを具体的に説明する文章として「ステートメント」を開発。カオナビが目指す未来を具体的に想像できるようにしていきました(新しく入社したコピーライターの藤丸さんが活躍してくれました)。

パーパスの理解度や解像度を上げるため「タグライン・ステートメント」を開発
完成した、タグライン・ステートメント

続いて行ったのは、ブランドのガイドライン化です。 パーパスの考え方を体現したロゴはもちろん、カオナビらしさを定義し、らしさのあるデザインを誰でも表現できるよう、ブランドデッキにまとめていきました。

カオナビらしいトンマナを定義した、カオナビブランドデッキ。
策定の背景等、詳しくはこちら... https://note.com/kaonavi_404/n/nb6dc4263e968
ブランドデッキには、デザイン指針だけでなく、ロゴやカラーの基本ルールも取りまとめられています。

さらに、パーパスに基づいて浮き上がってきたカオナビの個性を社内外に伝えていくために、コーポレートサイトをはじめとした、あらゆるタッチポイントのリニューアルに取り組みました。 パーパスをまとめた資料をつくるよりも、より頻度高く活用されるコーポレートサイトでカオナビの個性を齟齬なく伝えられれば、より多くの方がパーパスに触れるきっかけになると考え、コーポレートサイトのリニューアルから始めています。

フェーストビューには、シェイプを組み合わせたアニメーションが。

さらには、ブランドデッキをもとに、リブランディングプロジェクトを関係各所と連携し進行。カオナビらしいトンマナをプロダクトデザインチーム、マーケティングデザインチームとも共有しながら、プロダクトデザイン / サービスサイト / TVCM / 営業資料など各種タッチポイントに落とし込んでいます。

パーパスをもとに設定したカオナビらしいトンマナを、各種タッチポイントに落とし込んでいく。

CD室では、パーパスをよりイメージしやすくする社内浸透施策も各種実施しています。 未来の働き方をよりイメージできるよう、ジオラマで未来の街をつくった「kaonavi Town」は、パーパス浸透のための象徴的な施策です。

パーパスが実現された未来の様子をジオラマで可視化した「kaonavi Town」
https://town-event.kaonavi.jp/

他にも、カオナビ初の全社総会「kaonavi camp」をCD室がプロデュース。コンテンツ企画から会場装飾までこだわり実施。その結果、満足度が9割を超えるなど、全社に向けてパーパス浸透の貴重な機会となっています。

初めての全社総会「kaonavi camp」。キャンプさながらの臨場感を演出。
https://vivivi.kaonavi.jp/articles/kaonavi-camp-230509/

現在、CD室は、さらにチームづくりを進め、高い専門性を持ったチームに成長しています。

  • クリエイティブディレクター:1名
  • アートディレクター:2名
  • コピーライター/コミュニケーションプランナー:1名
  • 制作ディレクター:2名
現在のCD室の体制について

重要なプロジェクトが動く際にはCD室がアサインされるようになっており、いわば、ジョーカー的な立ち位置になってきているようにも感じます。 例として、2024年3月期 第1四半期決算説明では、以下のメインアジェンダにおいて、コンセプト・ネーミングといった上流から、トンマナ策定・実装までCD室がトータルブランディングしています。

CD室が手掛けた、2023年の代表的な3案件

このように、会社の中心になるようなプロジェクトにはCD室がほとんど関わることができており、「パーパスの浸透」という役割を持ったデザインチームに対して、会社全体から価値を感じてもらうことができています。

「パーパスの浸透」に重きを置いたデザインチーム、コミュニケーションデザイン室の成り立ちと具体的な活動についてまとめてみました。 ここまでは、どちらかというとカオナビというブランドの地固めをする期間だと位置付け、比較的近いステークホルダーにファンを作ることに比重を置いてきました。 その成果か、ホームと呼べるようなブランドが育ってきたように感じています。そんなホームを得た今、これからはもっと事業への影響力を強めていきたいと思っています。 Saasはスピードも大事ですが、質も求められる時代になってきていると思います。その質の部分にクリエイターとしてさらに貢献していきます。

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