DMMデザイナーの鎌田、村田です。

普段は新規事業の立ち上げや、大規模なリニューアルにおけるプロダクトの体験設計や情報設計、UIデザインなどを行っています。

2021年の9月から2022年1月ごろに、新規事業であるオンライン診療プラットフォーム「DMMオンラインクリニック」の立ち上げを行いました。

今回のプロジェクトでは最初からすべての機能を開発せず、外部サービスを活用しながら必要最小限で安心して利用できるβ版をつくり、社内メンバーのみにまずリリースする進め方で、素早く検証を行うことができました。

新規事業「DMMオンラインクリニック」を3ヶ月でリリースするまでの検証の進め方

事業立ち上げにおける検証の進め方として参考になれば幸いです。

DMMオンラインクリニックは、検討開始した2021年9月から、3ヶ月後の2021年12月にリリースすることが決まっており、とにかく早くリリースすることが求められていました。

しかし、オンライン診療というサービスの特徴上、ステークホルダーが多く、また医療に関わるサービスのため小さなミスが重大なトラブルを引き起こす可能性があり、慎重に情報設計や検証を進める必要がありました。

いつまでに何をリリースする必要があるか、フェーズを切り分けてすり合わせを行った資料

初期段階からアサインされたデザイナーとして、開発の速さを維持しながら、順序立てて検証を進める方法を考える必要がありました。

今回のプロジェクトでは、開発するものとリリースする範囲を絞って小さくリリースしていくことで、確実さを維持しながら最小の開発工数で立ち上げを進めることができました。

ポイントとしては以下の2つがあります。

  • 外部サービスを活用して、初期の開発工数を抑える
  • 素早く社内にリリースして体験の改善点を見つける

検証のためのβ版段階では、コンセプトが伝わるペライチのサービスサイトだけ開発し、診断予約などの機能面は外部サービスを活用して、まずは安心して体験できる必要最小限のものを素早くつくるようにしました。

検証したいコンセプトが伝わるペライチのサービスサイトのみ開発。まだ体験が起こるかわからない機能面は外部サービスを活用。

コンセプトや体験がそもそも受け入れられるのかも検証できていない段階では、想定している機能をすべて開発してしまうと、期間がかかる割に結局使われないリスクが生まれてしまいます。

そこで、最初はサービスコンセプトが伝わるペライチのサービスサイトだけ開発して、診断予約やオンライン診療などのコアな体験は、予約フォームやweb通話などの外部サービスを活用することにしました。

その後、社外に向けてリリースするのではなく、社内メンバーに絞ってβ版としてリリースしました。

外部サービスを活用して必要最小限の体験ができるようにしたβ版のサービスを、社内の希望者に呼びかけて利用してもらいます。DMM.comには1500人を越える社員がいるので、社内の利用だけでも相当数のサンプルが得られます。

社内のメンバーに対して、利用希望者を呼びかける

この時、同時に検証のためのアンケートを設計しておきます。事業メンバーが作られた素案に付け加える形で、「UI/UX改善のための課題の洗い出し」を目的として、サイトに対する印象や操作性、品質について重点的に問う形にしました。

また、自由記入欄を設け、サービス全体に対して忌憚ない意見を集められるようにしました。

体験や機能の使い心地を確認するためのアンケートを設計

利用してくれた社内メンバーのアンケート回答を通して、体験やUIに対する課題を抽出しました。

社内での利用と同時にアンケート、体験やUIなど観点を分けて課題を抽出

社内検証を踏まえ、大きなコンセプトが間違っていないことが確認できた一方で、外部サービスでは解決できない課題も見つかりました。そこから、よりよいユーザー体験をめざし、自社でサービス内の機能を用意していきます。

外部サービスに依存していた機能を自社で開発するため、社内検証の結果をもとに、仕様からUIを固めていきます。

すでに社内で検証を回していたこともあり、仕様書の内容を早い段階でプロトタイプに起こし、プロトタイプをベースに、改善点や機能の取捨選択をおこなうことで、スムーズな開発をおこなうことができました。

社内での検証を踏まえて、プロトタイプで仕様を確定

また制作期間が短いこともあり、プロトタイプの段階で本番のデザインに近いレベルに仕上げることで、予めデザインの方向性も確認することができ、結果1週間でUIを確定させることができました。

その後、開発を進めていき、2021年12月、社外向けにサービスリリースしました。

社外向けにリリースされたDMMオンラインクリニック

この時も、一気にすべての機能をリリースするわけではなく、必要最小限の体験ができる範囲でリリースして、検証しながら徐々に体験できることを増やしていっています。

結果として、当初想定されていた3ヶ月のスケジュールに間に合う形でリリースすることができました。

リリース後も、今回のように小さく検証を進めながら機能を増やしていくことができています。

小さく検証しながら、サービス内の機能を増やしている

事業部長やDMMの執行役員からも、今回の進め方に対して共感してもらうことができたため、デザイナーとして事業づくりに関わる頻度がDMM全体としても増えています。

約60の事業を運営するDMMでは、毎月のように新しい事業が立ち上がっています。

新規事業は不確実なことが多いのが常ですが、初期段階でデザイナーが入り、リリースする機能や対象範囲を絞りながら進めることで、チームとしても安心して開発することができるようになります。

今後も、DMM流の新規事業の立ち上げ方をデザイナー目線で発信していきます。

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