2023年11月にモンスターストライク (以下モンスト)の新難易度のクエスト『黎絶』を公開し、併せて黎絶クエストをM4 FIGHT CLUB(モンスト上手い四人組)がプレイするライブ配信を実施しました。

この配信映像はMIXIデザイン本部が制作しており、私達は特に背景のバーチャル空間の制作・アニメーションの実装などを担当しました。

モンストユーザーからの注目度も非常に高く、100万回以上視聴(2024年2月時点)された今回のライブ配信。配信映像の制作においても、コンセプトの設計や、3Dでの演出・実装など、さまざまな試行錯誤を重ねていきました。

配信を通して、ユーザーにより大きな驚きや楽しさを届けるために、映像の観点から意識したことや取り組んだことをまとめたいと思います。

黎絶は、2023年11月に公開されたモンストの高難易度クエストです。負ければ即終了の高難易度クエストであり、よりハードなバトルに挑戦したいユーザーに楽しんでいただけるコンテンツです。

今までに超絶・爆絶・轟絶という難易度が登場し、今回の黎絶は前回の轟絶から約5年ぶりに登場した新難易度クエストです。この黎絶の登場をより盛り上げるために実施したのが、今回のライブ配信です。

2018年に登場した轟絶でも同様のライブ配信を実施しており、配信映像の制作をデザイン本部が担当していました。今回の新難易度クエストの登場を機会として、モンスターストライク側の配信担当者とデザイン本部の担当者で、配信そのもののアップデートを検討した結果、コンセプトや技術スタック(2Dから3Dへ)なども大幅に見直して制作に臨むことにしました。

制作にあたっては、以下のような体制で進めていきました。

  • モンスト事業部メンバー : 1名

  • ディレクター : 1名

  • デザイナー : 1名

  • クリエイティブ・テクニカル・ディレクター : 1名( 👈谷 )

  • 3Dデザイナー : 1名 ( 👈原 )

  • 配信オペレーター : 1名

まずはじめに、プロジェクトメンバーでどのような世界観を実現すると良いかを議論していきました。

見た瞬間の驚きや、オリジナリティ、M4 FIGHT CLUBがモンストを楽しむ様子を印象的に切り取れる雰囲気・場所はどんなものか、2Dではなく3Dならでは面白みはどう実現できるかなど、さまざまな観点からアイデアを出し合い、その世界観をデザイナーがコンセプトアートに反映していきました。

デザイナーが制作したコンセプトアート

最終的には「秘密基地」のようなイメージで、M4 FIGHT CLUBが黎絶にチャレンジする様子を、ユーザーも一緒に楽しめるような空間を作っていくことを決めました。

次に、3Dオブジェクトの制作や、バーチャル空間での配置、動きの実装などを行います。細かな演出や、質感、動きなどは、実際に作り進めながら何度も改善を重ねていくようなイメージで進めました。

コンセプトアートを基に、3D制作ツールでオブジェクトを作っていきます。

この段階ではライティングなどの作り込みはせず、オブジェクトの形・質感を反映したうえで、空間の広さやオブジェクトの過不足がないかを調整していきました。

3D制作ツールで仮組みしたビジュアル

次に、制作した3DオブジェクトをUnreal Engineというツールに取り込み、ライティングや、各オブジェクトの質感を作り込んでいきます。

秘密基地らしい少し暗めのライティングをベースにしつつ、場面転換時に明るくしたらどうなるか、背景のネオンやペイントは暗くても映えるようにできているかなどを確認していきました。

Unreal Engineでの制作過程

また、実際の配信時には予め作っておいたバーチャル空間と、演者を組み合わせた映像を配信することになるため、部屋やテーブルの大きさなどが、演者と比較して違和感がないようにする必要があります。

そのため、事前のリハーサルのなかで細かくオブジェクトの大きさや位置を調整していきました。

さらにUnreal Engine上で、オブジェクトの動きを実装していきます。

ただの静止画ではなく、動きが伴うことで臨場感や見たときの印象が全く変わってくるため、動きがあることで面白みが増すもの、配信の進行上あると嬉しいものを中心に作り込みを行いました。

例えば背景にあるモニターは、通常時は上部に固定されていますが、モニターを使用する時にはアームによって降りてくる挙動にしています。

背景のモニターアームの挙動

Unreal Engineでの制作風景

他にも、対戦相手である黎絶フォーサーを紹介する際には、炎が燃え上がるようなエフェクトと共にフォーサーが登場するようにしました。

対戦相手となる黎絶フォーサーの登場演出

さらに、バトルに勝利した場合には、紙吹雪が舞い、色鮮やかなライトがステージを照らすような演出を取り入れました。

バトル勝利後の演出

このような演出を臨機応変に取り入れたり、逆に削ったりもしながら、配信時により盛り上がっていただけるように世界観をブラッシュアップしていきました。

黎絶M4の配信にあたって制作した、Unreal Engineのブループリント
大小さまざまな演出のロジックを組んでいる

今回のライブ配信は1回だけではなく、黎絶クエストに登場するキャラクターの数に併せて定期的に実施していく予定です。2024年2月時点では「vs フォーサー」「vs ロヴァー」の2回配信しています。登場キャラクターや、それに伴うライティングやビジュアルエフェクトの変更といった、各回ごとに変更が必要になる箇所は、パラメーターを変更するだけで簡単に対応できるようにしています。

【2023.11.03】M4 FIGHT CLUB vs 黎絶フォーサーでの背景グラフィック
https://www.youtube.com/watch?v=CEafKzXXLs4
【2024.1.2】M4 FIGHT CLUB vs 黎絶ロヴァーでの背景グラフィック
https://www.youtube.com/watch?v=9szHn5r1Wpc

更に3Dのリアルタイムエンジンを使っているので、オブジェクトを追加したり、ライティングを変更したり、カメラの動きを調整するなどのアイデアを手軽に試すことができます。2回目の配信は1月2日だったため、せっかくなら正月らしい雰囲気に出来たらよいなというアイデアが出たのですが、比較的時間をかけずに実現できました。

このように、作ってる最中にアイデアを思いつくことも多く、「面白そうかも!」「よりかっこよくなるかも」みたいなアイデアを直ぐに試して確認してはブラッシュアップしていくというプロセスを重視しています。手軽に試すことができると失敗も怖くなくなるので、トライする心理的なハードルも下がりますし、もっと良くしたいという魂に火がつきます。こうしたことが結果として、単に作り切っておしまいではなく、遊び心やエンターテイメント性も盛り込んで、見ている人により楽しんで貰えるような工夫やトライに繋がっているのだと感じます。

引き続き、黎絶クエストの新キャラクターが登場する時にはライブ配信を実施する予定なので、ぜひ楽しみにしていてください。

このような試行錯誤を経て黎絶M4のライブ配信を行った結果、想定以上の反響がありました。

黎絶というコンテンツ自体や、M4 FIGHT CLUBのプレイに対してはもちろん、映像演出に対しても「かっこいい」「テンションが上がる」「セットもしっかりとこだわってくれるところが好き」などの、ありがたい声を多くいただきました。

また、映像演出に依るものだけではありませんが、視聴者数も前回を大幅に上回っており、多くのユーザーに楽しんでいただけたようで、嬉しく思います。

モンストは2013年のリリース以降、10年以上にわたってユーザーの皆様に愛されているコンテンツです。また、MIXIが掲げる「ユーザーサプライズファースト」を基に、作り手である私達は常に期待を超えるような体験を届けられるように取り組んでいます。

今回は、ライブ配信 (特にバーチャルプロダクションと呼ばれる技術) でのチャレンジを行いましたが、これはあくまで期待を超えていくための手札の1つです。

これからも手札を増やし、専門性を深めていきながら、ユーザーの皆様により大きな驚きや新しい楽しみを届けられるようにしていきますので、今後にもご期待ください。

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