こんにちは、コミュニケーションデザイン室でデザイナーをしている西尾です。
所属するチームでは、選ばれた人だけのハイクラス転職サイト「ビズリーチ」や、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」の個人会員様向けの広告を担当しています。
これまでビズリーチの個人会員様向け広告では、「転職顕在層」と言われる、転職を検討している方々に向けたクリエイティブを制作していました。しかし現在はその方向性に加えて、現時点では転職を検討していない「転職潜在層」の方々へ向けてクリエイティブをつくる動きもしています。
今回は、ビズリーチに未登録だった方にインタビューを行い、新たなクリエイティブに落とし込んでいった話についてまとめてみようと思います。
もともとビズリーチでは、サービスのブランドガイドラインのなかに、個人会員様のペルソナを設定していました。
高年収で、キャリアづくりにも熱心な、新しいことにどんどんチャレンジしている「ハイクラス」の方をペルソナに設定。「ハイクラス」を目に見える情報で表現した広告などのクリエイティブを作成してきました。
例えば「年収実績」や「高年収求人例」を提示するもの、デザインも重厚感のあるテイストのクリエイティブです。
しかし、実際には「今すぐ転職を考えている人」が多いわけではなく、「今は転職を考えていない人」のほうが圧倒的に多いです。
その証拠に、年収を押し出したクリエイティブだけではなく、以下のような「今は転職を考えていない人」向けのクリエイティブも直近でサービス登録への成果につながっています。
また「今すぐ転職を考えている人」向けの広告より、「今は転職を考えていない人」向けの広告から、ビズリーチに登録いただいた方のほうが転職成功者が多いデータも出ました。転職を考えていなかった方に共感してもらえる広告で、そういった方の心を動かせたと思われます。
デザインチーム内でも、「今は転職を考えていない人」にもビズリーチを使っていただけるような訴求を開発していく流れにあり、そういった方々のインサイトをもっと理解して、訴求開発につなげたいと思うようになりました。
私たちの広告デザインを担当するチームは、普段からターゲットとなる方々に接する機会があまりなく、どのような人に向けて広告をつくったらいいのか、ターゲットインサイトの深い理解ができていない状況でした。
また、マーケチームからも「登録効率を上げるために、新しい切り口の訴求を開発したい」「デザインチームにも、企画からどんどん入ってきてほしい」との声が上がっていました。
というのも、Web広告は入れ替わりが激しく、すぐに広告効果が弱まるためどんどん新しいクリエイティブを作り、運用する必要があるからです。
しかし、マーケチームの期待とは裏腹に、先述の通りデザインチームは「よりターゲットに合った訴求・企画をしていきたいが、ターゲット像を深く理解できていない」問題を抱えていました。
デザイナーと協働して、登録効率の高い広告をつくっていきたいマーケチーム、よりターゲットを理解したうえで訴求をつくっていきたいデザインチーム、2つのチームの課題を同時に解決できそうだったのが、「新しいターゲットへの理解を深め、新しい訴求に落とし込むこと」だったのです。
そこで、「今すぐ転職を検討していない / ビズリーチを使ったことがない」方へユーザーインタビューすることで2つのチームの課題を解消しようと試みました。
まずは、ユーザーインタビューをするにあたり、マネージャー陣に対して施策の提案をしました。
もともと、チームメンバーにも「デザイナーの立場からより事業の成果に貢献したい」という思いがあり、施策と合わせてその思いも伝えました。
マネージャー陣からも、ぜひやってみようということでGOサインをいただき、インタビューに協力いただける方を集めていくことになりました。
インタビュー対象は、ビズリーチのターゲットとなる年代・年収帯・業種の方がメインです。
今回は知り合い経由で、10名ほどの方に快くインタビューにご協力いただけました。現年収など面と向かって聞くのがためらわれるセンシティブな情報もあったので、インタビューの前にアンケートで事前に回答いただくなどの工夫もしました。
集まっていただいた方とインタビューの同意を結び、順次オンラインでインタビューを行っていきました。
インタビューには、必ず私以外のデザイナーも1人は同席してもらい、なるべく一次情報に触れてもらうようにします。このような形で参加者を募っていました。
そして、インタビュー後は、参加していないメンバーと一緒に、インタビュー内容の共有やまとめを行いました。
まとめた結果を元に、「Customer Insight」と称して、インタビュー結果を新しい訴求の方向性に落とし込む時間も取りました。
インタビューを繰り返していくなかで、訴求の方向性がある程度固まってきたので、実際の企画案に落とし込むことを、マーケチームとともに行いました。
ロングミーティングを開催し、各自が新訴求の企画案を持ち寄り、その場でどの企画のクリエイティブを作成するかを決めていきます。
企画案は、「クリエイティブブリーフ」と呼ばれるフレームワークに沿って起案。Visionalではマーケチームもデザインチームも日常的に活用しています。
出てきた企画案はその場で承認・再考などのスタンプが押されるのも、盛り上がる要素の一つかもしれません。
インタビューから、企画案への落とし込みまで、一通り行い、新しい訴求の方向性も生まれました。
そして、ありがたいことに、実際にチームメンバーからも、「ターゲットの理解が深まった」「インタビューなしでは訴求開発を進められなかった」などの声をもらいました。
インタビューの提案から実施、企画への落とし込みまで、中心となって進めましたが、チームの課題が少しずつ解決できていると実感しています。
Web広告は入れ替わりが激しく、常に新しいクリエイティブを出し続けないとだんだん効果が薄まってくるため、コンスタントに新しい訴求をデリバリーする必要があります。今回の取り組みをチームで継続的に実施していけたらよいなと思っています。
過去にプロダクトデザインに携わっていたこともあり、プロダクトに関するインタビュー経験はあったのですが、コミュニケーションデザインのためのインタビューを行うのは初めてでした。アウトプット先は異なりますが、考え方は両者に共通する部分が多くあることが学びでした。
これからもビジネスパーソンのキャリアの選択肢と可能性を広げていくため、新たなインサイトを捉え、より良い訴求をつくっていこうと思います。