マネーフォワード CDO(Chief Design Officer)のセルジオです。

マネーフォワードでは2020年9月からCDO及びデザイン戦略室を設置し、経営レベルからデザインの力の最大化に取り組んでいます。今回は、私たちのデザイン組織がどのような変遷を経て立ち上がってきたのかについて、社内資料も交えながらお伝えいたします。

もともとマネーフォワードには事業部ごとに複数のデザインチームがあり、それぞれが独立して動いていました。そこから少しずつ変わり始めたのは、ちょうど私が業務委託のデザイナーとして加入した2019年1月頃です。

当時社内のデザイナーは10数名程でしたが、プロダクトやデザイナーの増加に伴い「デザインルール」の必要性が話題となっていました。

きっかけはデザインルールの必要性についてでしたが、改めてデザイナーで集まり、マネーフォワードのデザインにおける課題の整理や解決方法を考えるワークショップを行いました。そこではMission・Vision、事業、組織、業務フローなど様々な課題が挙がりました。

ワークショップを通して見えきたのは、中長期的にデザイン課題を解決し、デザインの可能性をより活かせるような体制をつくりたいということ。しかし、すぐにそれを実行できる組織を設置することは難しい。そこで、初手として始められることは何か考えていく必要がありました。

まず始めにつくったのは「Design Leads」という会議体でした。各デザイン部から代表者となるデザイナーを集め、全社課題を定期的に話し合い、経営層との対話をするための会議です。

約3ヶ月間で計11時間程の実働ではありましたが、様々な取り組みを行っていきました。例えば、各デザインチーム間の情報共有や、採用基準の策定、デザイナーのスキル可視化などです。

実際に取り組みを進めてみた結果、やるべきことや取り組みの意義が見えてきました。一方で、課題となったのは予算や工数の確保です。会議体としての活動だけでは、課題解決に対して不十分だと判断しました。

そこで、今までのワークショップや会議体での取り組みを元に経営メンバーと話し合い、「社長室デザイン戦略グループ」を立ち上げました。会議体で行っていた活動を全社的なものにできるよう、体制を社長室に組み込んだのです。メンバーはDesign Leadsを中心にしつつ、私と猪爪の2名でリーダーを務めました。

社長室デザイン戦略グループでは、「全社のデザイナーをつなぎ、マネーフォワードらしい最高のユーザー体験を届ける」をMissionとして掲げ、ブランディングの全体最適、デザイン原則やデザインプロセスの策定・普及、デザイナーの採用・育成など幅広く取り組みを進めていきました。

実際に取り組んだデザインプロセスの策定や、サービスデザインスキルの育成についてはこちらのnoteにまとめられています。

会議体時代と比べ、日々課題に向き合って解消できているという手応えが感じられました。しかし、次なる課題として「戦略的に動けていない」ということに気がつきます。当時はまだ私達として目指す組織像や、戦略が固まっていなかったので、取り組みが場当たり的になってしまっていたのです。

デザインの力を最大化させていくためには、より戦略的かつ経営レベルの取り組みにしていく必要性がありました。

そこで、2020年9月にマネーフォワード初のクリエイティブサイドの役職となるCDOを設置し、CDO管掌としてデザイン戦略室を立ち上げることになります。デザインの力を信じているからこその意思決定でした。

はじめに取り組んだのは、デザイン組織の理想像やロードマップの作成です。今後3年スパンで何を目指し、何に注力するのか、私が作ったたたき台を元にデザイナーで議論しながら決めていきました。Design Leadsが発足した時と同じく、自分たちで組織をデザインしていくスタイルは変わっていません。

「デザインの力を最大化し、マネーフォワードの目指す社会を実現する」というゴールを掲げ、そのための指標を経営、デザイン組織、プロダクトデザイン、ブランディングという4つの視点で設定しました。そこから、逆算して3年間のアクションを決めています。

このように未来を描き、一歩ずつ進んでいくことで、「デザインを通じて課題を解決し、ユーザーの人生を前に進める」そういった世界を実現できると考えています。また結果として「事業会社でデザイナーとして働くなら、マネーフォワードだよね」と言っていただけるような強いデザイン組織になれるのではないかと信じています。

このような流れで、マネーフォワードのデザイン組織は形作られてきました。最初は目の前にある課題に向き合うことから始め、今では少しずつ未来を見て動けるようになりました。現状を観察し課題を見つけ出すことも、理想の未来を描きそこから考えることも、デザイナーが得意とすることだと思います。その力を、今後も組織作りにも役立てていきたいと思います。

まだまだマネーフォワードのデザイン組織は発展途上です。完成形はありませんので、引き続き、デザイナーの視点でデザイン組織と向き合っていきます。

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