SmartHRコミュニケーションデザイングループでコンテンツディレクターをしている史朗(Shirow)です。
長い肩書きですが担当しているのは主に動画。
「のっぺりしているものに物語と緩急を生み出す」を心掛けてことに当たっています。もともと事業会社で映像の仕事をしていたところから転職し、気づけば入社してから3ヶ月が経ちました。
入社直後はSmartHR1人目デザイナーのbebeさんがつくった動画やビジュアルを引き継いで、動画にしていくことが多くありました。
今回は、デザイナーとの連携の中で「どんな視点で動画制作を見ているか」「動画制作にどう関わっているか」ついてまとめてみたいと思います。
特に事業会社に関わるデザイナーさんなど、普段動画制作をあまりやることない方のお力になれると嬉しいです。
入社してから初めて任されたのは「ラクラク分析レポート機能の紹介動画」の文言アップデートのための修正作業。
これまでの紹介動画をつくっていたbebeさんから作業データを引き継いだ時に、思わずびっくりしたのは「動画で伝えたいことがすごく明確」だったことでした。
内容はいわゆる「よく見るサービス説明動画」で、めちゃくちゃリッチというわけでもなく大変平凡。ですが、そこに安定を感じたのです。
動画が専門ではないデザイナーからプロジェクトファイルを引き継ぐというのは正直怖いところもありますが、その必要は全然ありませんでした。
カラーや文字、要素のレイアウトが普通に整っている。初の動画制作なことを感じさせない安定感です。
構成が整理されており、直感的でわかりやすいキーワードやシンプルなアニメーションで、一目で理解できる動画になっています。さすがSmartHRのデザインに背骨を通したデザイナーが作ったのだなと、感嘆したのを覚えています。
整っていて当たり前の場合でも、一つにまとめあげることが難しいのが動画。
伝えたいポイントが鬼盛りになり、過剰な演出で表現過多になっているのをよく見掛けます。肝心なのは手法と伝えたいことが適切に噛み合うことです。その点でこの「ラクラク分析レポート」の動画は適度なバランスだと感じたのです。
この整い具合の心地よさの背景には、SmartHRのバリューの1つである「認識のズレを自ら埋めよう(ズレ埋め)」というカルチャーが影響していると思います。相互理解のためとことん話し合おうというコミュニケーションのことで、入社後はこのズレ埋めの徹底ぶりに凄まじさすら感じました。このような日常的なズレ埋めによりサービス情報が整備されているからこそ、動画の表現においても構成がブレなかったのではないでしょうか。
そつのないアニメーションにも、bebeさんが長年デザイナーを努める中で培われた強みが発揮されています。デザインの基礎が動画でも大いに役に立つことを感じました。
元々の動画の伝えたいことが明確なおかげで、私の作業はテキストを直すだけに留まりました。
今後制作する動画では、SmartHRの他のデザインに倣い、モーションデザインの専門性を深め拡充していきたいと考えています。
次の仕事は、SmartHRユーザーのオンラインミートアップイベント「PARK」のオープニングムービーの制作でした。
「PARK2021」イベントレポート
しかし最初からオープニングムービーを作ると決まっていたわけではありませんでした。
会社の中にこんなに大掛かりなライブ配信環境を作ってしまうほどの大規模なオンラインイベントでしたが、「ライブ配信のアドバイス」ぐらいの雰囲気で気軽に参加したのが始まり。
しかし運営メンバーは多忙を極めていて手が足りていませんでした。そこで私も、これまでの映像演出の経験を活かして台本のリライトから幅広くお手伝いすることに。構成やら舞台セットのレイアウトやらをディレクションする傍ら、オープニングに着手したのが本番1週間前。
普通なら「なんでそんな短期間で動画を作るのよ」と怒られたり呆れられたりする特急対応ですが、いろいろドラマがあり挑戦してみることになりました。この辺の裏話はコムデが配信しているポッドキャストで話しているのでよかったら聞いてください。
さて、オープニングムービーにはお客様をイベントの世界観へいざなう役割があります。その演出を練らなければなりません。
そこで、ふとイベントのキービジュアルを見てみました。
ちなみにこれもコムデマネージャーのbebeさんが作り上げた古のアートワークのひとつ。
PARKは、人事・労務領域ではたらく専門性が高い方々に向けたイベントのため、キービジュアルも、その方々がよりカジュアルに交流できるような、でも子供っぽすぎないバランスに仕上がっています。
個々のパーツはSmartHRやPARKを反映した姿で、それぞれの関係性を想像してみると、ここにドラマが生まれそうな気がしてきます。「これなら動画にできそうかも」と演出の道筋が見えたのです。
このキービジュアルを最大限活かし動画の制作に入りました。
と言っても時間がありません。
制作期間は2日。イベント準備と並行していたので、この期間で出来るシンプルな構成を決めたらコンテも描かずにいきなり動きを付けるところからスタートする荒療治でした。
こうしてできたのがこちらのオープニングムービー。
オンラインイベントに参加いただいた方はもちろん、コムデメンバーの反応もよく、コムデメンバーが制作物を互いに発表する定例ミーティング「制作物共有会」でもみなさん繰り返し鑑賞して盛り上がってくれました。
このPARKオープニングムービーでは、巷のオンラインイベントでよく見るような仰々しい感じや迫力のある感じではなく、PARKらしいカジュアルな雰囲気を大切にして、肩の力を抜いて参加してもらうことを意識していました。
キービジュアルにも使われている最初の時計は、今回のイベントの開始時間に。曲のイントロと合わせて、ド頭から何かがはじまる雰囲気作りを心掛けました。
さらにこの動画、全体のコマ数を減らしています。通常はだいたい毎秒30コマぐらいですが今回は8コマに。少ない手数で趣のある動きに見せることができ、キービジュアルのタッチとも相性が良くコミカルな見た目にできます。
そして複雑な人事・労務の仕事 、そこからくる日々のさまざまな悩み。
悩みのフラストレーションがもりもり膨れ上がり、最後は爆発して画面全体を覆ってしまう、という演出が可能なのも展開を表現できる動画の面白さです。
紙で行う業務が多い中、ヤギが紙を食べる表現を使いながら、SmartHRを取り入れることで電子化し、ラクになることを表現。
なぜヤギか?これは「ヤギが紙を食う=ペーパーレス」という意味です。こうして「食べる」というアクションを直接的に表現したのは当社でも初かも知れません。
このようなラフでコミカルな雰囲気を補完するためのBGM選びにも結構気を使ってます。
そしてタイトルではキービジュアルを座らせて、イベントの世界へとグッと入ってもらうような展開にしています。
日頃から非常に専門性が高い仕事をしていて、時に孤独になりやすい人事・労務に取り組む方々が、「日常を少し離れてPARKという世界観に十分に浸れるように。」そんなことを考えながらつくりました。
モーショングラフィックとしては手数の少ない簡単な動画ですが、イベントの世界観を心地よい形で表現できたのではないかと思います。
次にまた何かの機会に恵まれたら、SmartHRの世界をさらに広げるような演出を考えたいと今から楽しみにしています。
撮影したりアニメーションをつくったりと、動画制作がどんどん手軽になったことで、簡単なものなら誰でもつくれるようになってきているかもしれません。
一方で、メッセージや世界観を伝えるためには「訴求」「ストーリー」が非常に重要です。
私としては、企業から発信する動画はコミュニケーションツールの一つだと思っています。
そのためには、動画とは直接関係なくても、台本づくりでも関わる人たちとのコミュニケーションでも、なんでもやっていきたいという気持ちで、コンテンツディレクターという仕事に臨んでいます。
今後も動画制作やコンテンツディレクターの側面からコムデの活動を発信していくのでお楽しみに。
それでは。