サイボウズ デザイン & リサーチグループでUXリサーチャーをしている柴田です。
サイボウズが運営しているサービスの一つに「kintone」という業務アプリを作成・管理できるサービスがあります。名前だけは聞いたことある、という方も多いかもしれませんね。
企業内での顧客管理や日報など、日々の業務で多く発生する仕事をスムーズにできるような「アプリ」を開発の手間要らずでつくれるようなサービスです。
実はkintoneは世界中で使われており、サンフランシスコや上海の拠点にも多くのお客様の声が寄せられています。
株主会議2021_第2部投影スライドより抜粋
今回は、そんなkintoneの「ポータルカスタマイズ機能」について、サンフランシスコや上海でのUXリサーチ事例を交えながら、まとめていきたいと思います。
kintoneポータルとは、kintoneのトップページのことです。kintoneのポータル画面は、アプリやスペースの並び替えができず、目的のアプリを見つけにくいという悩みを抱えていました。
これまでは上記のように、「Dashboard」欄をなんとかうまく使って見やすくしてもらっている状況でした。
それを以下のように、テンプレートやエディタを用意して、「自社の業務で必要なものに合わせて」「好きなレイアウトで」カスタマイズすることができるようにしました。
こちらは海外でのカスタマイズされたポータル (トップ画面) の例です。
海外出張も含め、要望の回収から企画、仕様決定までのリサーチ期間が約10ヶ月、開発に約2ヶ月の合計1年にわたるプロジェクトでした。
なぜ、ポータル画面のカスタマイズ機能を開発することになったのか。
そこには、多くのお客様の声がありました。
これまでのkintoneに対して、「使いたいアプリがポータルから探しにくい」「ポータルの見た目をカスタマイズしたい」などの要望が国内外から多く寄せられていました。
実際にロサンゼルスの顧客を訪ねてkintoneについての意見をもらった結果、以下のように、ポータルへの不満が浮き彫りになりました (資料は社内向けにポータルカスタマイズ機能を企画するにあたりまとめたもの)。
全ての要望に対応するのは非現実的なため、どうすれば現実的な解決ができるのかをまずは検討。
・1つの顧客企業でも、その中での職種ごとに使いたいアプリが違う
・(特に米国の顧客では) ポータルのデザインも新しくしたいという声が根強い
などを考慮して、**「HTML / CSS / JSで自由にキャンバスをカスタマイズできるようにする」**というアイデアが出てきました。
そして、特にポータルへの不満を抱えていたアメリカの顧客に対して、どうすればポータルへの不満が解決されるのか、実際に調査をしにいきました。
企画案とともに、「例えばこんな風に変わったらどう思うか?」ということで、いくつか企業ごとへのデモをつくってみました。
どのデモも実在の企業をイメージしてのもので、例えば一番左上はIntelを想定してつくっています。
実際に顧客に見せてみたところ大変な盛り上がりで、ぜひ使ってみたいということで、企画を前に進めることを決めました。
先程のリサーチを含めて、UXリサーチは3段階に分けて行いました。
- 企画の方向性を決めるためのリサーチ
- 使いやすいものになっているかを見極めるためのリサーチ
- リリース後に実際に使ってもらえるためのリサーチ・オンボーディング
特に当時はUXリサーチャーとしてだけでなく、開発PMも兼任していたので、リサーチの結果をスピーディーに製品に反映させ、マーケットインさせることを心がけて活動していました。
最初の、「企画の方向性を決めるリサーチ」は、ロサンゼルスでデモを見せたようなリサーチになります。
次の段階として、実際にプロトタイプを見せてみてヒアリングをしました。
これは中国でメンバー (右) がヒアリングをしている様子です。現地に赴いてヒアリングをすることで、本当に使われるものにブラッシュアップしていきます。
また、サイボウズには、リサーチラボと言われる施設もあり、kintoneなどサイボウズ製品を使ってくださっているお客様にきていただき、使っている様子を観察させていただく施設もあります。
このようにいろんな段階で、さまざまな角度からお客さまの意見を聞いていくことで、良いリリースになるようにしました。
3つ目のリサーチ活動として、実際にリリースされた後、現地を訪れて営業メンバーなどに対して使い方をレクチャーしつつ、意見をもらいました。
B向け製品では、営業メンバーが共感していることもサービスを広めていくために重要な要素なので、リリース後までしっかり意見を聞きながら、納得感もつくっていきました。
私が以前、マイクロソフトでワードやアウトルックの開発PMをやっていたこともあり、開発までどのように進めていくか、などはある程度イメージがありましたが、サイボウズでここまでお客さまの声を身近に感じながら製品をリリースできたのは、デザイナーだけでなく、開発PMやエンジニアも含めて徹底したリサーチ文化のおかげだと思います。
これからも、kintoneに限らずサイボウズのデザインリサーチについて発信していきますのでお楽しみに。