みずほ銀行の内製デザイン組織「UXUIチーム」を支援しているgood Inc.の関口です。

僕は、2022年からこれまで約2年半、みずほ銀行でのデザイン組織立ち上げと拡大に関わってきました。

みずほ銀行でのデザイン組織立ち上げに、2022年から2年半関わる

プロジェクト単位でサポートするのではなく、内部のチームに入り、案件のディレクションやデザイン業務、さらには組織としてのロードマップや体制づくりなど経営的な視点が求められるマネジメント業務も行なっています。

事業や組織のフェーズの変化に合わせて、デザインの強みを軸に、さまざまな領域を越境し事業や組織の成長に貢献する役割のことを、good Inc.では「デザインイノベーター」と呼んでいます。みずほ銀行の組織立ち上げにおいても、組織フェーズの成長に応じて以下のように立ち回りを変更してきました。

デザインイノベーターとして、組織フェーズの成長に合わせて、領域とらわれず越境しながら推進

この2年半取り組んできた、みずほ銀行でのデザインイノベーターとしての活動について、具体的にまとめてみます。

みずほ銀行の内製デザイン組織であるUXUIチームは、2021年のみずほダイレクトアプリのリニューアルの推進を経て、正式に組織として立ち上がりました。

みずほ銀行の内製デザイン組織 UXUIチーム ( https://cocoda.design/teams/mizuhohttps://cocoda.design/teams/mizuho )

2021年立ち上げ当時の人員は、マネージャーの佐竹さんと、プロパー出身の社員が数名、中途で入社したデザイナーが数名という体制。そこに、外部パートナーが実務を担当するために関わっているような組織でした。

2022年当時の みずほ UXUIチーム の組織体制

僕はデザインイノベーターとして2022年から関わり始め、はじめは実務の推進をサポートしていきます。

後述しますが、今では組織全体のロードマップや案件管理、体制づくりなど広くマネジメントの役割も担うようになっていきました。

なぜ外部パートナーである僕が実務案件だけでなく、マネジメントにも入り込んでいるのか。それはデザイン組織の立ち上げ時のマネジメント課題が無数にあるからだと捉えています。

例えば当時のみずほUXUIチームで、案件のディレクションをメインで担っていたのは、マネージャーの佐竹さんでした。

主にマネージャーが案件のディレクションを担っていた

立ち上げ期には、案件をこなす以外にも、たくさんの課題があります。

採用、育成、案件獲得、メンバーのケア、これらを実務を推進しながら行うのは、1人のマネージャーだけでは難しく、ましてやみずほ銀行のような大きな組織ではその難易度は跳ね上がります。

1人のマネージャーだけではカバーできないくらい多くの課題が立ち上げ期には存在

当初から佐竹さんは「結果が出なければ、来期から予算がなくなるかもしれない」と肝に銘じられていました。

これは冗談ではありません。事業組織の中で、立ち上げたばかりの内製デザイン組織は、いわば新規事業のようなものです。

何に貢献できるか分からないところから、存在意義を示さなければいけない。投資対効果が見えなければもちろん打ち切りとなってしまうこともあるでしょう。

貢献を示せなければ、組織への投資が打ち切られてしまうかもしれない

偶然発生した業務だけこなしていけば良いわけでなく「これが内製組織を置く価値だ」と、強く自分たち側から主張していかなければいけません。

このためには、1人目のマネージャーである佐竹さんが、デザイン組織としての方向性を描き、役割を拡げ、価値を拡大できるような案件獲得に注力していく必要があります。

存在意義を示すためにも、マネージャーの佐竹さんは価値を拡大していくことに注力していく必要がある

そこで僕は、佐竹さんがデザイン組織の存在意義を示していくためにも、その裏側で躍動する「懐刀」のような存在になろうと決めました。

具体的には、決められた役割を担うのではなく、「案件推進」から「マネジメント業務のサポート」まで、組織の状況が変わっていくにつれて生まれる必要な機能を、越境し、毎回柔軟にカバーしていくようなサポートをしてきました。

ここからは、その役割の変化を、順を追ってまとめてみます。

組織フェーズに応じて変わっていった役割の変遷

組織立ち上げフェーズにおいて、僕がまず責任を負ったのは、トッププレーヤーとしての役割でした。

トッププレーヤーとしての役割

前述のように、それまで、マネジメントを担う佐竹さんは、現場の案件ディレクションも担っていました。

まずは現場のディレクションや、デザイン案件を自分が担い、役割を剥がしていく。そうすることで、佐竹さんが案件を生み出すことに集中できるようにしようと決めました。

現場でのディレクションをどんどん引き受け、デザインも自分で行うものもあれば、メンバーのサポートにも入っていきます。

現場のディレクションやデザインを担う

このような役割においては、デザイン組織として扱える案件のキャパシティを広げていくことを意識しています。

デザイン組織としての案件のキャパシティを広げていくことを意識

さらに、少しずつ佐竹さんのマネジメントとしての役割も剥がしていけるように、僕もマネジメントの役割を担いはじめます。

具体的には、まず、これまで佐竹さんだけで考えていたマネジメントの話題を、2人でざっくばらんと話してみる1on1を週次で行い始めました。

1on1で、マネジメントの話題を議論しはじめた

例えるなら、マネジメント定例のようなものです。佐竹さんからは「同じマネジメントの目線で話せる相手が当時はチーム内にいなかったので、壁打ちができること自体が非常にありがたかった。」という感想を伝えてもらっています。

この時は、組織としても立ち上げ段階で、何を価値として発揮できるのかを模索している時期です。

なので、固定化されたアクションを体系的に行うよりも、柔軟に毎週の実践から出てくる違和感を潰していくことをコツコツ続けることのインパクトが大きいと思っています。

毎週の1on1の中で、佐竹さんと一緒に、UXUIチーム全体の課題認識のすり合わせを行うことを続けていきました。

このような現場の具体的な課題は、自分がトッププレイヤーとして稼動しているからこそ見えてきます。例えばコンサル的にマネジメント方針だけ示すような関わりだと、おそらく薄い支援になっていただろうと思います。

さらに出てきた違和感を解決するために、毎週僕から何かしらアウトプットを持っていくようにしていました。例えば、デザイン組織の成長フローや、兼業者のための思考フォーマットなど。

課題に対して、毎週アウトプットを持ち込む

佐竹さんに信頼してもらうためにも、最初に期待を超えるアウトプットをとにかく多く持っていくことは重要だと思っていました。そうすることで、佐竹さんは安心して次の課題に取り組むことができます。

このような動きの一部として行った「育成」に関わる取り組みが、Cocodaでも事例としてまとめられています。

みずほ銀行UXUIチームにおける「デザイン育成」の取り組み

そのように組織の論点を潰していく中で、新たなマネージャーの方が入社したりと、UXUIチームは順調に拡大フェーズへと進んでいきます。

そんな組織拡大フェーズにおいては、僕の役割はさらに広がり、マネジメント推進を役割としていきました。

マネジメント推進の役割

新しいマネージャーの加入に伴って、正式にマネジメント定例会を開始しています。

マネジメント定例会を正式に開始

論点も案件単位の話ではなく、組織全体の話へと移っています。例えば、組織体制、組織としてのロードマップなど。

マネジメント定例でのアウトプットイメージ

マネジメントごとの役割調整も行なっており、新しいプロセスの導入や案件のクオリティコントロールは関口、人のマネジメントは新しいマネージャーと役割を分担しています。(完全に分けずお互いの領域を少し担うようにしている)

デザインイノベーターとして、案件単位のディレクションや、デザインのサポートも行っています。

デザインイノベーターとして案件の支援

ここまでの取り組みでメンバーのスキルが高まっているので、多くのことを任せられるようになりました。

僕自身は、複雑性が高く難易度の高い案件に入る場合と、まだスキルが育成中のメンバーの案件に伴走する場合の2つが現場での役割になっています。

案件ごとの進捗については、ディレクターとして関わる4名で案件定例を設置し管理しています。

案件の進捗を管理するために、ディレクター間で案件定例を開催

今は、さらに案件を引き出していくための方法も模索し始めました。

みずほ行内で別部署の方と関わり、案件を引き出してくるのは、一定の関係値がないとなかなか難しいことではあります。そのためこれまで佐竹さんが中心にデザイン組織の案件獲得はコミュニケーションされていました。

ただ、2年半近くどっぷりと支援してきたことで、案件や育成業務を通して僕のことを信頼してくれている方も増えてきています。

今後は、一度すでに関わった部署・担当の方と、佐竹さんだけではなく僕からコミュニケーションして、案件獲得も一部役割を剥がしていければと思っています。

案件獲得についても一部佐竹さんから役割を剥がして、担えるようにしていきたい

この2年半の間に、みずほのデザイン組織の信頼は拡大しました。例えば、ダイレクトアプリだけでなく、全社HPリニューアルの支援や、新規事業のブランディング支援など、幅広く案件が生まれるようになってきています。

2年半で取り組めるようになったアウトプットの一部 (参照: https://speakerdeck.com/nakatayumiko/uidezaintimu-karutiyadetuku )

人員も増加して、スキルセットも高まってきました。今は、佐竹さんや僕が入らなくても、ダイレクトアプリの機能開発のような中難度の案件であれば難なくつくれるチームになっています。

現在のみずほUXUIチームの体制

このような支援は、他の組織でも当てはまることだと考えています。

good Inc.では、デザインイノベーターは従来のクリエイティブ職やコンサルタントの枠を超え、戦略と創造の両面から企業の成長を支える新たなプロフェッショナルとして位置付けています。

事業構想から成長・最適化までを経験したデザインイノベーターが、それぞれのフェーズに応じて戦略を立案し、自ら実行まで担うことで、事業の創造や成長に貢献します。

good Inc.は、事業創造から事業拡大をプロジェクトワークとして行いつつ、自社事業の創造も行っています。このように、デザインの案件推進ができるだけでなく、経営者・事業責任者的な視点を持って、「事業」を主語に会話しつつ、泥臭く現場にも入り込んでいける変革者としての役割を担える存在が、今後より求められていくだろうと考えています。

デザインイノベーターが事業推進できる相互還元サイクル

good Inc.と一緒にプロジェクトを進めていきたい方は、ぜひご相談ください。

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関口太一