キュービック・エクスペリエンスデザインセンター・UIデザインチーム、マネージャーの原です。キュービックには、2020年にUIデザイナーとしてジョインしました。

今回は、現在進めている「UIデザイナーが能動的に施策を提案できるようになるための取り組み」についてまとめていきます。

気づけば「依頼されたものをただカタチにするだけ」の状態になってしまってもどかしい思いをされている事業会社のUIデザイナーの方、メンバーがそのような状態になっていることを課題に感じているマネージャーの方はぜひ参考にしてみてください。

(私たちのチームもまだ道半ばではあるので、一緒に知見を分け合えたら嬉しいです!)

私がキュービックへ入社した頃のUIデザインチームは、私含め3人で構成されていました。ただ、当時はなかなかチームとしての成果をあげられていませんでした。

というのも、UIデザイナーは他部署から来たオーダーに対して、「ただカタチにするだけの存在」となってしまっていたのです。

他部署からのオーダーに対して、「ただカタチにするだけの存在」に...

社内の受託部署として確立されているチームの場合、それでも大きな問題はないのかもしれません。しかし、キュービックは「マーケティング×デザイン」を強みとして磨き込み、事業をより前進させていこうと意気込む会社。ですから、この状態には危機感を抱いていました。

CDO(チーフデザインオフィサー)の篠原も同じ課題感を持っていました。そこで、UIデザイナーのスタンスとスキルを抜本的に変え、自ら事業課題を設定して解決できるチームにしようと動き始めました。

私たちは早速、プロジェクトの企画フェーズからUIデザイナーをアサインしてみることにしました。まずは、LPを最適化するプロジェクトでチャレンジ。

LPのUIを作ること自体はこれまで何度も経験していたのですが、

・そもそもなぜそのLPを作るのか

・どのような数字を上げるべきなのか

・その数字を上げるためには、どのようなデザインが最適なのか

という問いと向き合い、上流から思考することに意味があると考えたのです。これはUIデザイナーにとって必ずいい経験になると思いました。

企画の上流からUIデザイナーが入ることに

ところが、想定した通りにはいきませんでした。プロジェクト自体の目標は達成できたのですが、アサインされたUIデザイナーが自ら施策を考えることはできず、結局いままでも行ってきた「LPをカタチにする」業務に終始してしまったのです。

プロジェクト終了後にUIデザイナーと話したところ、「携わるビジネスや商材への理解が足りず、何をやればいいかわからなかった」という感想が聞かれました。また、知識不足だけでなく、「仮説を立てて考える癖がないから難しい」という声もあり、「知識と思考法をいずれも持ちあわせていない」という課題が見えてきたのです。

当時のUIデザイナーの声

マーケターから施策に関連した知識の提供はあったもののUIデザイナーの理解が浅く、ねらっていた一段深い思考と戦術立案にまでは及びませんでした。結果、プロジェクトの裁量は自ずとマーケターに寄ってしまい、UIデザイナーの提供価値の幅は広げられませんでした。ですから、さらにやり方を変える必要があると感じました。

着目したのは「プロジェクト」というアサイン対象です。プロジェクトの性質上、単発で終わってしまい、新しいプロジェクトの始動とともに別のマーケットの理解をしなくてはならないので学習効率が悪いのではないかと考え始めました。

プロジェクトに次々とUIデザイナーをアサインするのでは、せっかくのインプットも短期間でリセットされてしまう。そうではなく、マーケティング部署の定常業務で時間をかけながら事業や施策の考え方を学んでいくほうが、UIデザイナーの成長に繋がるのではないかと思ったのです。

そこで次の策として行き着いたのが、「社内交換留学」です。

社内交換留学についてまとめた資料の一部

UIデザイナーの中園に「1年間マーケティング部署へ留学し、マーケターとしての素養を身につけてきてほしい。そして、そこで得た学びをUIデザインチームに広めてほしい」とお願いし、「留学」と題しマーケティング部署でOJTを行ってもらうことに。

中園本人も、

・事業会社の一員なのにビジネスがどう動いているかよくわからない

・デザインを依頼された時に背景や状況を理解できずデザインしづらい

・個人のキャリア的にもこのままでいいのかなと不安

といった課題を感じていたこともあり、前向きに参加を決めてくれました。 

受け入れ先の交渉もスムーズでした。元々キュービックは100名以上の学生インターンと共に働いており、未経験の人に教えながら働くことに慣れている組織です。マーケティング部署の部長へデザイン部署の課題感とともに留学を提案し、「メンターとして中園をサポートしてほしい」と伝えたところ、快く引き受けてもらえました。

留学期間は、リソースの半分をUIデザイナーとしての仕事に、もう半分をマーケターとしての仕事にあててもらうかたちに。

こうしてスタートした社内留学。中園がまず最初に任されたのは、SEOメディアの記事改善です。マーケターからすると日常的な業務かもしれませんが、当時、知識も経験もない中園にとっては、なかなか難易度の高いチャレンジだったように思います。

ユーザーや市場の理解、SEOの知識とスキルを同時に身につけないと成果が出せない仕事。悪戦苦闘しながらも、中園はなんとかそのミッションを果たしていきました。

3ヶ月かけてSEO業務を進めるうち、徐々に事業への理解とマーケティング力がついてきた中園。次の業務としてディスプレイネットワーク広告のLPOを任されました。この頃には3C分析なども習慣化し、思考力やスキルも大きく伸びてきていました。

留学の体験談を社内に共有

留学期間中の中園と私のコミュニケーションとしては、目標設定と週1回の1on1が中心となりました。あとはほとんどマーケティング部署のみなさんにお任せしていました。

週1の1on1で留学中のUIデザイナーをサポート

ところで、この社内留学の取り組みは、チームの枠組みを超えるものなので、実現ハードルが高いと言えばそうなのかもしれません。私たちの場合は、そのハードルを「交換留学」とすることで乗り越えました。UIデザイナーがマーケティング部署にお邪魔するだけの「一方向」ではなく、マーケターもデザイン部署に受け入れる「双方向」の取り組みに。

キュービックは「マーケティング×デザイン」を強みに成長する会社ですから、全社的に「ビジネスとクリエイティブの両方に理解がある社員」を育み、増やしていく必要があります。そうした意味でも、UIデザイナーとマーケターの交換留学は、とても大きな価値を持つものだったのです。

マーケティング部署(事業部側)にも同様の課題感が

社内交換留学を終えた中園がチームに戻り、最初に行ったのは、学びのシェアでした。定量・定性データを元に3C分析し仮説を立てる方法、企画における重要な観点など、マーケティング部署に身をおいて見えた景色を留学に行っていないメンバーに共有してもらいました。

社内交換留学で学んだことをUIデザインチームに共有

中園はそれからも「マーケティングがわかるUIデザイナー」としてチームに新たな気づきをもたらし、事業に対して施策提案を積極的に行うなど、チームを牽引してくれています。

同じデザイン部署のUXチームにはマーケター出身のメンバーも在籍しているのですが、その人への積極的な相談が増えたり、自チーム外のマーケターを巻き込みながら仕事する様子が見えたりと、中園以外のチームメンバーにも徐々に変化が現れてきています。マーケティング部署に対するUIデザイナーからの施策提案数も、着実に増えてきています。

徐々に増えてきたUIデザイナーからの施策提案

社内交換留学がマーケターにとってもデザイナーにとっても、何より全社にとっても有意義な取り組みであったことは間違いないので、第2回をこれから企画する予定です。

キュービックが強みとする「マーケティング×デザイン」の両要素に長けたメンバーを、これからもどんどん増やしていきたいです。その突破口が、まさに今回の取り組み。UIデザイナーがカタチをつくるだけでなく、コトをつくり、ユーザーの一連の流れで得られる体験そのものをデザインする。そこまでできる組織にしていきたいです。これからも新しい挑戦の機会や場を生んで、チームみんなで成長し続けたいと思います。

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