DMM VPoE室の届木ウカです。

2021年にVR事業部のメタバースサービス「DMM Connect Chat」にリードデザイナーとして関わり、現在はVPoE室に移籍。DMM内の様々な事業部に対してサービスづくりと組織づくりの両面からデザインワークによる支援活動をおこなっています。

今回は支援活動の一部として、新卒エンジニア・デザイナーに対して行ったサービス開発研修の内容をまとめます。

DMMでは、新卒のエンジニア・デザイナーに対して3ヶ月間の技術研修をおこなっています。その最終工程として、新卒メンバー同士で開発チームをつくり実際にサービスを企画して実装する「サービス開発研修」を2019年から毎年開催しています。

サービス開発研修は、3週間のスクラム開発形式をとった実践的なサービス開発体験を通して「実務で活かせる知恵や視点を獲得する」ことを目的としています。

実践を繰り返すことで失敗する機会をつくる、DMMのエンジニア向けデザイン研修

今回は、2022年春に行ったサービス開発研修の内容を、実際に使ったスライドや資料を公開しながらご紹介します。

DMMのサービス開発研修は、従来的な企業研修でありがちな「単なる知識やフレームワーク習得」が目的ではなく、実践的なサービス開発体験を通して「より実務レベルで活かしやすい知恵や視点を獲得できる」ことを目的としています。

理論やフレームワークを伝えるスライドは極力少なく、Discordやmiroを使って実践しながら学べる比重を増やしている

このような設計にしているのは、単に知識やフレームワークを学ぶだけでは解消しづらい、現場で直面しやすい課題を解決するためです。

具体的には

  • プロダクトオーナーから指示されたタスクを消化することが目的化してしまう
  • デザイナーとエンジニアでコラボレーションが起こらない
  • 一過性の顧客ニーズに思考が偏り、ユーザーの本質的な課題に寄り添ったアイディアが生まれづらい

このような課題が現場ではよく生まれています。

サービス開発研修では、座学でフレームワークを学ぶよりも、discordやmiroを使いながらチームでスクラム開発を実践する比重を高めて、現場で当たるであろう壁を乗り越えるための知恵や視点を身に付けることを目的としています。

本年度の研修では、昨年度の参加者やメンターからのフィードバックを取り込み、実際の開発現場でつまづきやすいポイントを想定して、研修目的と内容は以下のように設定しました。

3週間のスクラム開発に向けて、自分達のチームで作るサービスを3日間で企画するカリキュラムとなっています。

大事にしていたのは「価値のある失敗の経験を積んでもらう」ことで、主に3つのポイントで工夫しました。

  • 座学の時間を最小限に、実践ワークを多めに
  • 現場の事例を伝えるQ&A
  • 小さく失敗する経験をつくるユーザビリティテスト

これらの工夫を、効果とセットでまとめていきます。

一つ目の工夫は、研修序盤でフレームワークや理論を学ぶ座学や講義をできるだけ行わず、ワークショップの時間を増やすことです。

前年度までの研修ではフレームワークを学ぶための講義にも時間をかけていたのですが、今回の研修ではあえて座学や講義の比重はほとんど取らず、実践の時間を多くしました。

理論の説明にかける時間をできるだけ短く、実践の時間を長くした。

まず実際にサービスを設計してみて、つまづいた時にあらためて詳細な説明をおこなうことで、より実感を持って学びを身に付けることができると考えたためです。

初めに全体の流れや講義で取り扱う思考プロセスや手法としてのフレームワークを軽く説明した後、すぐにワークショップに入り、つまづく度に知識の共有を行うようにしました。

実際のワークシート。研修中はDiscordでボイスチャットをしながらMiro上のワークシートで設計を行ってもらった。

研修の中でサービス設計や開発に行き詰まったチームには、講師陣がDMMでの「実際のデザイン業務」の事例を紹介しながら悩みの相談やQ&Aをおこないました。

現場で同じような問題にぶつかった時、どのように解決したかを事例で答える。

「実際の現場では同じような問題をこう解決した」など具体事例を伝えるようにすることで、体系的な知識ではなく実話を基にした経験を糧に、配属後の業務で活用してもらうのが目的です。

また、寄せられた質問や先輩からのアドバイスはログとして記録することで、他チームや次年度の新卒メンバーも参考にできるよう、ナレッジの共有化をおこなっています。

本研修では実際のサービス開発のように、プロトタイプを講師陣や他チームの新卒メンバーに触ってもらうユーザビリティテストをカリキュラムに組み込みました。

本格的な実装を前に「そのサービスが本当にユーザーの課題を解決できるのか」を、細かな失敗を通して見つめ直すタイミングを設けるためです。

現場のデザイナーが活用しているユーザビリティテストのテンプレートを配布して、プロトタイプでユーザビリティテストを行う。

自分達では良いアイディアだと思っていたサービスや機能が、リリースしてみると実態のユーザーの課題・ニーズにマッチせず利用されなかったなどは往々にして起こりえます。

ユーザビリティテストなどの検証で、大きな失敗をおこなう前に事前に細かな失敗を積み重ねる行為に意味をもたせることが重要です。

DMMでは実際の現場でもプロトタイプの制作とユーザビリティテストなどを推奨しており、プロダクトのユーザーが目的に適した画面設計や操作体験であるかを事前に検証しています。

DMMのサービス開発研修は「いずれ現場でするであろう様々な失敗を経験し、課題解決力を身につけること」を重視しています。

今年度は従来の研修をよりアップデートする形で、各メンバーがその後の実務での意識や行動が変わる気づきが得られるような内容にするように心がけました。

実際に、研修の2/3終えたところでサービスをほぼ0から設計し直すようなチームがあったり、研修終了後のアンケートでも「サービス開発の難しさを身をもって体験できた」など、失敗をもとにリアルな業務のイメージがついた感想が生まれました。

研修に参加した新卒エンジニアからの感想

より良いユーザーの課題解決としてのサービス開発のために自ら決断し試行錯誤した経験は、今後の事業への配属後でも大きな強みになると思っています。

今回の研修は「Tech、Business、Design など職能に関係なく、より良いサービスを作るために自ら改善や解決が行える開発職を増やす」というDMMが掲げる開発行動指針「DMM Tech Vision」に基づいて設計されています。

DMMエンジニアに求めるものをまとめた「DMM Tech Vision」

今年度のサービス開発研修のカリキュラムも完璧ではなく、次年度以降に改善出来る点がたくさんあります。

カリキュラムを改善したい! と思った新卒メンバーは次年度の講師に立候補し、自ら改善を回せるのもDMMの新卒技術研修の特徴です。

新入社員といった肩書きにとらわれず、より良いサービスを生み出し、改善し続けていけるよう、VPoE室では今後も開発組織への支援を引き続きおこなっていきます。

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