「Assuredクラウド評価」から、クラウドサービスを運営する事業者が自社のセキュリティ対策状況を公開・提供できる新機能「Assuredクラウド評価 トラストページ(以下、「トラストページ」)」をリリースしました。
私は「Assuredクラウド評価」のプロダクトデザインリードとして、体験の設計からリリース時のコミュニケーション設計まで一貫して担当しました。
「セキュリティの情報開示」という新しい概念を市場に受け入れてもらい、ムーブメントを牽引していくために取り組んだ「トラストページ」のデザインプロセスの裏側をまとめます。
「トラストページ」とは、クラウドサービスを運営する事業者がセキュリティチェックシートの簡略版のような情報をあらかじめ一般公開しておける、いわばセキュリティ情報の公式プロフィールページのようなものです。
プロダクト職種のみなさんも経験があるかもしれませんが、サービス導入の際のセキュリティチェックは、サービス提供側も導入側も負担のかかる業務です。
一方でトラストページを公開することで、審査担当者が必要な情報をすぐに確認でき、追加のやりとりが省略されます。結果として審査の短縮や、サービス導入の迅速化につながります。
このような効果を狙って、クラウドサービス事業者が「Assuredクラウド評価」で作成したセキュリティ信用評価レポートのセキュリティ情報を活用して、自社サービスの「トラストページ」を簡単につくれるようにしました。
海外では多くの企業が自社のセキュリティ情報を公開していますが、実は日本ではそもそも「セキュリティ情報を一般公開する」という概念自体が浸透していないのが現状です。
企業は、「そもそもセキュリティ情報を開示しても良いのか」「開示するとしてもどこまで情報を載せるのか」ということも分からず、メリットは理解できても普及は進んでいません。
どれだけ簡単にトラストページを公開できたとしても、「セキュリティの情報開示」という文化が受け入れられなければ利用者は増えていきません。
なので私は「新しい文化をどうお客さまに受け入れてもらうか」「どう市場に広めていくか」という点を意識してデザインに取り組みました。
これまで「Assuredクラウド評価」ではセキュリティ調査を行う企業向けの体験づくりにフォーカスしてきました。
これからクラウドサービス事業者向けの機能がさらに充実することで、プラットフォームとしての循環が加速するという意味で、大切な取り組みになると感じていました。
そこで、より良い価値を届けるために、クラウドサービス事業者向けにどんな体験を届けるべきかをチームメンバー全員で整理することから始めました。
チームで理想的な体験のイメージを洗い出した後に、いくつかのお客さまの商談に同席しながら、プロダクトマネージャーと課題仮説の整理を行い、「トラストページ」の構想をまとめていきました。
「トラストページ」の具体的な仕様を詰めていくにあたって、トンマナ、情報設計、名称、リリース方法などいくつかの論点がありました。
これらをブレずに決めるために、「トラストページ」を含むAssured製品が、どうサービスとして広まっていくのかを想像することから始めてみました。
「トラストページ」は、各クラウドサービス事業者がサービスのセキュリティ情報を分かりやすく開示する目的でつくられます。そのため、それぞれのトラストページでは「情報が分かりやすい」「信頼できる情報がまとまっている」という “信頼性” を感じられることが重要です。
それに加えて、ページが増えれば増えるほど「セキュリティ情報を開示する文化が当たり前になってきている」と “ムーブメント” を感じられるようにすることも重視しました。
というのは、市場全体で「セキュリティ情報を開示する」という文化が当たり前ではない中では、このように段階的にサービスの世界観がじわじわと広まっていく設計が必要なのではないかと考えたためです。
1社1社がつくるトラストページが集まることで、セキュリティ調査をする担当者に「トラストページをつくってる企業が増えてきている」と感じてもらえるように。クラウドサービス事業者に「うちもAssuredでトラストページを出したいな」と思ってもらえるように。そんな状態を目指すことにしました。
「トラストページ」の仕様としては、企業のセキュリティ情報がまとまっていることに加えて、Assuredでつくっているという情報を意図的に散りばめるようにしました。
例えば、「トラストページ」の冒頭には「Assuredクラウド評価」で調査をした「セキュリティ信用評価レポート」が反映されるようにしています。
クラウドサービス事業者は、セキュリティ信用評価レポートから公開したい項目を管理画面でチェックするだけで、簡単に「トラストページ」をつくれます。
ページを見る人は、手軽にセキュリティ情報を確認できるうえに、Assuredというフラットな第三者機関のお墨付きがあることも伝わり、「トラストページ」に公開された情報の信頼性が増していきます。
さらに、Assured製であることが伝わると、他のクラウドサービス事業者も「Assuredでトラストページをつくろう」という行動が増えていくはずです。
各クラウドサービス事業者の「トラストページ」を各企業のトンマナに合わせるかどうかは、悩んだところでした。
ただ、結論としてすべての「トラストページ」は、「Assuredクラウド評価」のブランドガイドラインに準拠したトンマナに統一しました。
これは、Assuredでつくられていることが伝わることで信頼性が増していき、「セキュリティ情報を開示する文化」に共感してもらえるはずだと考えたためです。
カラーやフォント、フッターへのロゴ配置など、Assuredでつくられていることが伝わるようにしました。
仕様を詰めていくタイミングで「トラストページ」と「セキュリティ信用評価レポート」の名称統一も行いました。
セキュリティ信用評価レポートは以前から各社に提供されていましたが、これまでは社内で名称統一はしておらず、お客さまそれぞれに都度伝わりやすい名称でご案内をしていました。 (ex. 調査レポート、共有レポート)
「トラストページ」のリリースに向けて営業が日々お客さまと会話を重ねる中で「名称が伝わりづらい」という課題感が分かってきたので、このタイミングで誰が見ても同じ価値を感じられる名前に統一することを検討しました。
名称は、ムーブメントとして感じてもらうための「一貫性」と、今後の「拡張性」を観点として検討しています。
最終的に、機能の名称は、これからの文化の広がりを意図して国外でも使われている「トラストページ」という名前に。
レポートは、トラストページの情報に信頼性を感じてもらうということ、「Assuredクラウド評価」の目指す世界観をストレートに伝えたいという視点から「セキュリティ信用評価レポート」という名前に着地しました。
「トラストページ」は市場的にも新しい概念の機能なので、リリースコミュニケーションの設計も重要になるだろうと考えていました。
なので、一通りプロダクトの仕様が固まってきたタイミングで、広報やビジネスチームのメンバーと連携しながらリリース時の施策の打ち出し方を詰めていきました。
リリース設計のタイミングで、改めて「トラストページ」がどう認知されると理想的なのかを広報と一緒に「認知ジャーニー」としてまとめ、ビジネスチームメンバーにも連携して施策を動かしていきました。
PR施策は、「『Assuredクラウド評価』から新機能が出ました」というだけではなく、「セキュリティ情報の開示」という文化自体を広めていくように設計しています。
まず、機能リリースの前に「セキュリティ情報開示の実態調査」というレポートをリリースしました。クラウドサービスの導入・継続の際に、公開情報を活用している企業が増えていることを伝えたうえで、続けて「トラストページ」のリリースを公開しています。
さらに、クラウドサービス事業者向けにセキュリティの情報開示を推奨するセミナーを実施し、このような行動が当たり前になってきていると感じてもらうマーケティング活動も行っています。
お客さまにご案内するための営業資料も、リリース前に営業メンバーと一緒に磨いていきました。
資料化の前に「トラストページを、一言でいうと何と説明する?」というアジェンダを持ち込み、チームで整理しています。ここで「セキュリティの公式プロフィールページ」というフレーズが決まりました。これを早めに決めておいたことで、営業資料などのコミュニケーションを設計しやすくなりました。
その後、「トラストページ」の紹介資料の軸となる部分は、営業メンバーと一緒にパターンを出しながら細かなニュアンスを調整していきました。
「トラストページ」という概念に馴染みのない方も多いはずなので、ヘルプページも手厚く「概要ページ」「利用・設定詳細ページ」という2つを用意しました。
概要ページでは「そもそもトラストページとは何か」「どんな情報を載せられるか」を伝えます。
営業資料の作成でも触れた「セキュリティの公式プロフィールページ」というフレーズで機能のイメージを持ってもらい、その後は情報項目の説明をしています。
具体的な使い方は、利用・設定詳細ページで説明します。どういう考え方で設定を進めれば良いか、迷う場合のサポート先も示すようにしました。
こうして、「Assuredクラウド評価 トラストページ」機能が世の中にリリースされました。
リリース後、すでに複数のクラウドサービス事業者に「トラストページ」をつくっていただきました。
プレスリリースでは「分かりやすく情報を開示し、相互に信頼したうえでサービスを選ぶ世界が当たり前になるように」「お客さまの安心の起点になるように」という「トラストページ」への期待をいただいています。
今後は、さらにこのような企業が増えていき、セキュリティを開示する文化はより当たり前になっていくはずです。
プロダクトデザイナーという立場で、ここまで認知づくりやリリースコミュニケーションにまで積極的に関わっていくのは珍しい動き方かもしれません。
私がここまで踏み込むのは、事業に携わる誰もがサービスの世界観づくりに責任を持てるはずだと信じているからです。
アシュアードが目指している「セキュリティの信用評価」という新しい世界観づくりは、広報やマーケティングだけの問題ではありません。プロダクトの企画や情報設計まで含めてコミュニケーションを一貫させることによって、市場の共感が生まれムーブメントが生まれるはずと考えています。
私はアシュアードのデザイナーとして、新機能をつくるだけではなくて、この新しい文化に共感してもらうことを目指しています。
これからも、「使いやすい」だけでなく、「サービスの世界観が自然と広まっていく状態」をつくっていきます。この事例が、私たちと同じように、市場を切り拓く企業で働くデザイナーの参考になれば嬉しく思います。