Money Forward Xのデザイナーの佐々木です。
Money Forward Xでは、MFSD(Money Forward Service Design)と呼んでいるサービスデザインのメソッドを体系化し、トレーニングプログラムを社内で実践していくことにより、よりよいサービスを生み出せるように取り組んでいます。
今回は、そのトレーニングプログラムをどのように生み出していったのかという過程をまとめていきたいと思います。
Money Forward Xでは、「パートナーと共に、新たな金融サービスを創出する」というMissionを掲げ、クライアントを含め様々な職種のメンバーが一丸となってサービスづくりに取り組んでいます。
その上で、デザイナーに限らずメンバー皆が「ユーザー体験を軸としながらサービス設計する」「ユーザーを理解し、インサイトを得る」というようなUX/サービスデザインのアプローチを理解し活用していくことがよりよいサービスを生むために重要だと考えています。
自分自身も一人のメンバーとしてサービスづくりに向き合う中で、大学院でUXデザインを研究してきた経験や、今までのデザイナーとして得てきた学びを組織に還元しながらデザインの力を最大化できないかと考え、トレーニングプログラムをつくることにしました。
トレーニングプログラムの概要や内容についてはこちらのnoteで紹介しているので、あわせてご覧ください。
トレーニングプログラムを作ると言っても、サービスデザインのアプローチを体系化し、それをメンバー皆が深く理解し実践できるようにしていくことは、一朝一夕でできるものではありません。また、フレームワークをそのまま導入したとしても、時が経つにつれて形骸化してしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで、トレーニングの結果が自分たちに強く根付くよう、下記のことを意識しながら進めていきました。
- はじめから完成形を目指すのではなく、チームで実践してみながら、自分たちのやり方を確立していくこと
- 実際の新規サービスプロジェクトの中でトレーニングプログラムを実践していくことで、理論学習と実践経験をつなげること
トレーニングプログラムでは場面や期間に応じてレクチャー、ワークショップ、スプリント、プロジェクトの4つを設定して、各コースの活動メニューを蓄積、改善を行うことにしました。
ここからは、実際に社内で取り組んでいった事例と、取り組んだ上での振り返りをいくつかピックアップしながら、改善をしていった過程を紹介したいと思います。
あるサービスの利用状況を探るための質問項目を設計し、プレインタビューをしてみてインタビュー設計をブラッシュアップするワークショップです。今回は『UXリサーチの道具箱』に書かれている方法をベースに、クローズド質問を出した後にグルーピングし、オープン質問を出していく流れでやってみました。
取り組んでみた上での振り返りとしては、以下のようなことが挙げられます。
- オンラインワークショップでは、各自が考えていることを声に出しながらやることで作業しやすくなる。
- グルーピングするときは各自がバラバラにやるのではなく、ファシリテーターがどこからグルーピングしていくかをある程度サポートする。
- ユーザーインタビューの目的や設計した質問項目の活用イメージなどの前提を丁寧に共有する
- 一度グルーピングやラベリングした内容を振り返る時間を考慮してバッファーを設ける。
- プレインタビューは、「楽しかった!」「Fun」というコメントがあり、楽しみながらできたことが良かった。
インタビューで得られた発言からユーザーの価値を導出するワークショップです。
今回はKA法をベースに、インタビューの発言の背景にある心の声を書き出し、その後価値を出して構造化していく流れでやっていきました。
取り組んでみた上での振り返りとしては以下のようなことが挙げられます。
- インタビューの発言から出来事を書き出すときに、「状況や動機」「行動」「結果」の要素を考慮して書き出す時間を設けることで、価値を出しやすくなる。
ユーザーの価値と複数のコンテキスト、対象ユーザーの掛け合わせでアイデアを発想していくワークショップです。まずは幅広くアイデアを展開し、出たアイデアを共有した後に実行したいアイデアに投票していきます。
取り組んでみた上での振り返りとしては以下のようなことが挙げられます。
- ユーザーの価値と複数のコンテキスト、対象ユーザーの掛け合わせで強制発想することで、アイデアの幅を広げやすくなる。
- 複数のアイデアを俯瞰して見ながら、アイデア同士のつながりに気づきやすい。
このように、実際に取り組んでみながら改善を重ねていくことで、自分たちなりのやり方を見つけていきやすかったと感じています。 また、実際の新規サービスプロジェクトの中で実践していくことで、学んだことが成果物に直結するという環境で進めていたので、より効果を実感できました。
今回トレーニングプログラムを作るにあたって、まずは自分自身が経験してきた馴染みのある手法をベースにワークショップを設計して、実際にメンバーに取り組んでもらいました。初めて取り組むメンバーに対しては、想定していた以上に丁寧にやり方を共有する必要があったり、自分では当たり前のようにやっていた方法でも、複数のメンバーからワークショップに対するフィードバックをもらうことで、まだまだ工夫できるポイントがあることに気づかされました。
既存の手法やフレームワークをベースにしていたとしても、プログラムに参加するメンバーと一緒に自分たちのやり方を作り続けることが重要だなと感じました。
今後の展望として、プロジェクトの中で新しいやり方を試したりしていることもあるので、その経験をもとにさらにメニューを増やしていき、多様な手法やデザインアプローチを学べるプログラムにしていきたいなと思っています。