ログラスでは、あらゆる経営の領域に対して複数のプロダクト立ち上げを目指す、マルチプロダクト構想が掲げられています。
このように急激な事業拡大を進める中で、デザイン組織としても、「どのように組織の拡大に適応していくか?」という問いが生まれます。
そこで私たちが取り組んでいるのは「スケーラブルなデザイン組織づくり」です。Qごとにどのように組織体制を更新していくのか。短期的に発生する課題へどうOps的に対応していくのか。こうした論点をマネジメントの観点で整理し、「デザイン組織ロードマップ」に落とし込んでいます。
この「デザイン組織ロードマップ」構築のプロセスについて詳しく振り返っていきます。
ログラスでは、シリーズBの資金調達を終えた直後、経営陣から「同時並行で、複数のプロダクトを立ち上げる = マルチプロダクト構想」という方針が掲げられました。
この方針は、経営全体の動きを大きく変えるものでした。マルチプロダクト立ち上げにチャレンジするということは、同時並行でいくつもの新規事業を推進することを意味します。
新規プロダクトの立ち上げにおいては、既存事業のグロースとは異なるスキルや推進力が求められます。不確実性の高いフェーズにおいても仮説を立て、検証しながら前に進めていける、そんな人材が必要です。
さらに、プロダクトを開発して終わりではなく、その後の継続的な改善や運用も欠かせません。立ち上げと運用を並行して支える体制をどう設計するかが、経営課題として顕在化してきました。
もちろん、マルチプロダクト化という経営方針に対して、各部署は組織としての対応を求められます。実際に、デザイン部門に限らず、エンジニアやPMなどすべてのチームで、「この方針にどう組織的に対応すべきか」という議論が一斉に始まりました。
当時のデザインチームは、業務委託を含めて12〜15名程度の体制。採用計画も一旦落ち着いていた段階でした。
ただ、その人数と体制では、10プロダクトを展開するには到底足りません。どのタイミングで、どんなスキルセットのデザイナーが必要になるのか。プロダクト横断で支援できる体制も必要になるだろう——そんな議論が、日常的に行われていました。
評価制度や情報共有の仕組みを含めて、組織全体を根本的に見直す必要がある。そうした課題感が急速で生まれていました。
このような状況の中で、私たちが重視したのは「デザイン組織として、マルチプロダクト化にどのように貢献するのかを示す」ことでした。
そのために、デザイン部マネージャーの植田がファシリテーターとなり、部長の高瀬とともに、Notion上に「デザイン組織をどう変えていくべきか?」というアジェンダを設け、少人数のディスカッションからスタートしました。
複数のプロダクトを並行して進める体制をどう組むかというだけでなく、未来の組織像をどう描くかという、理想と現実の両面を行き来するような議論を繰り返しました。
具体的には、以下のような3点を明確にしていくようにしています。
- デザイン組織としてのコアバリュー
- デザイン組織が発揮し続ける価値を明示する
- 中長期の組織体制のロードマップ
- いつ、どのフェーズで、どんな体制・人員が必要になるのかをプロダクト展開の計画と照らし合わせながら整理
- Design Opsとしての支援領域
- 特定の個人に依存しすぎないよう、再現性をもって支援できるOps的な戦術も合わせて設計
ログラスには、これまでにもデザイン組織として積み重ねてきた価値発揮の歴史があり、経営や全社からの期待も生まれています。だからこそ受け身ではなく、ログラスのデザイン組織だからこそ発揮できるコアな価値を定義し、それを組織体制に反映していくことを試みました。
これらのアウトプットの詳細についてまとめていきます。
議論の出発点としてまず取り組んだのは、ログラスのデザイン組織としての価値を言語化することです。
このステップを最初に置いたのは、マルチプロダクト化という事業戦略に対して、デザイナーがどのように貢献するべきかを定義するためです。これまでの実績や信頼をベースにしつつ、「デザインとして果たすべき役割」をチーム全体で共有できる状態をつくることが重要でした。
私たちが定義したのは「未来のWowな体験を生み出す」というコアバリューでした。これは、ユーザーにとっての理想的な体験を想像し、その実現を通じて驚きや感動を届けていく、というデザイン組織としての姿勢を表したものです。
このようなコアバリューが最適だと考えたのは、実際にこれまでログラスのデザイナーが発揮してきた価値や、経営から期待されていることが「新しい価値をつくる」ということだったからです。
実際に、Loglassの立ち上げ初期段階ではデザイナーとして実装前の機能のプロトタイピングを活用して受注を増加したり、「レポート機能」という新機能によってプロダクトの体験を一新することで事業のPMFを早めることができたりと、多くの新しい価値を創出してきました。
このような歴史を踏まえ、既存の価値拡張ではなく「未来のWowな体験を生み出す」ということこそが、ログラスのデザイン組織がマルチプロダクト化に向けて貢献していくためのコアな価値だと見出しました。
このバリューは、体制設計や評価基準、採用・オンボーディングの方針にも反映され、今後どんな判断をする場面においても一貫した軸になるよう設計しています。
コアバリューが固まったタイミングで、2年間でのプロダクト数の変化、必要な人員構成、支援体制の変化などをQ単位で整理していきました。
「この時期に新規事業がいくつ立ち上がる」「運用すべき既存事業がどのくらい増える」などのプロダクト計画に合わせて、各Qごとに必要になる人員・機能を洗い出しています。
組織計画における大上段のお題は「これから事業が10プロダクトになるとすると、デザイン組織はどうすべきか?」という問いです。
この問いに対して、デザイン組織としては大きく分けると3つの課題が生まれると予想できました。それが「純粋な人員不足」「パフォーマンスの属人性」「マネジメント不足」の3つです。
これまではプロダクト数が少なかったため、課題にはなっていませんでしたが、10プロダクト、さらにはもっと多くのプロダクトを立ち上げるとなると、物理的な人員は確実に不足します。
また、パフォーマンスが属人的ということも課題になると予想できました。プロダクトの立ち上げに関するデザイナーの貢献については、これまで部長である高瀬が1人目のデザイナー時代から推進してきた部分が大きく、同時並行でプロダクトを立ち上げるとなると、このプロダクト立ち上げのナレッジを属人的でない形で広めていく必要がありました。
さらに、人が増えてくるとどうしてもマネジメントも複数必要になっていきます。マネジメントを担えるようなシニアなデザイナーをさらに増やしていくとなると、ここも注力して解決する必要があるだろうと考えていました。
急速にプロダクトを立ち上げていくとなると、組織としてはこれらの課題を同時並行で解決していかなければいけません。なので、これらを解決する3つの方向性を整理しました。
方向性に照らし合わせて、Qごとの組織体制の仮説をつくります。既存プロダクトに関しては、大体どのくらいの人員が必要なのか工数レベルで把握できるようになっていたので、確実な人員の読みがつくれます。
一方、新規プロダクトはまだ不確実性が高いため、そこまで多くの人員をかけることはリスキーです。人員としては0.5人と見積もり、体制の仮説をつくっています。
ログラスデザイン組織では、人員計画と合わせて、組織としての横断アクションも計画しました。
「事業を立ち上げられるデザイナー」は非常に希少で、採用も簡単ではありません。だからこそ、立ち上げのノウハウをチームとして蓄積し、支援体制に昇華させていく必要があります。
特に、同時進行するプロジェクト数が増えることで、属人的な対応ではカバーしきれなくなるリスクが大きくなってきます。そのためには、再現性をもった支援体制の構築が欠かせません。「過去にこういう支援をしたから、次も同じような支援ができる」といった事例や、「この領域ではこのアプローチが有効」といった知見を記録・共有し、ナレッジとして横展開していく仕組みを整備しています。
当初は植田が「ユーザビリティテストやデザインシステムを通じたレビューなどをAIで自動化していく実証実験」「採用アクション」「新規事業立ち上げのプロセスの型化」などの推進などを担い、その後はこの横断アクションを専任で担うDesingOpsというポジションを設置しました。
こうした取り組みを経て、ログラスにおける、マルチプロダクト化に対応していくための「デザイン組織ロードマップ」がアウトプットされました。
ここで強調しておきたいのは「組織計画は事業状況に合わせてアップデートし続けるべき」だということです。
現在、無事にいくつものプロダクトが立ち上がり、マルチプロダクト化が進捗しています。
このようにプロダクトが増えていくと、そこに合わせた組織体制変更が必要となります。なので、デザイン組織としては、常に事業状況を確認しながら、今回計画した体制仮説を柔軟にアップデートし続けています。
マルチプロダクト化のように、会社全体の動きが急速に広がっていくタイミングでは、デザイン組織も同じスピードで変化していく必要があります。
そのときに大切なのは、「組織としての理想の状態を、自分たちから定義する」ことだと思います。
目の前の課題解決だけでなく、長期的にどうありたいのかを言語化しておくことで、目の前の意思決定にも筋が通りやすくなります。待っていても、このような期待は生まれないはずで、自分たちから強く示していく必要があります。
今後も事業戦略の変化にあわせて、デザイン組織もアップデートし続けていく必要があります。そのときの軸となるのは、今回言語化したコアバリューであり、そこから逆算した体制設計や支援体制です。このコアバリューについても現在また見直しているところなので、そちらについても改めて事例で共有します。
これから同じようにマルチプロダクトに向かう組織にとっても、何らかの参考になれば嬉しいです。