デザイナーの章(@xiolkee)です。

前回、ペットフード領域の新規事業立ち上げにあたり、サービスの体験設計に奮闘した話を書きました。

Obremoというペットフードブランドを、プロジェクトジョイン後3ヶ月でローンチ。リモート下で、サービスのコアをラフに具象化していったことで、徐々に肉付けされ、チームもサービスも一つに、より加速していきました。

今回は、ブランドコンセプト決めから怒涛のクリエイティブ・UIづくりについてまとめます。

初めての経験で手探りな部分も多かったですが、新規事業にアサインされたデザイナーのみなさんや、スタートアップで1人デザイナーとして奮闘されているみなさんのお力になれると幸いです。

前回お話したとおり、ローンチ目標日を3ヶ月後に控える中、体験設計から0ベースで構築していったことから、いわゆるデザイン作業にかける時間はかなり限られており、しかも対象物はWebからパッケージ、段ボールなどなど、非常に多岐にわたっている状況でした。

まずは、実際にリリースされたものをかいつまんでご紹介します。

ロゴ・商品パッケージ・段ボール・ブランドブック
新規購入者向けWebサイト
既に購入している人向けのモバイルアプリ

そして、これらの制作物に一貫性を持たせるためのカラーガイドラインも作成しています。

今回、他職種の人たちと重要な意思決定を行いながらも短期間でこれだけのクリエイティブを作る上で工夫した点は、幅広い選択肢の中から期待をヒアリングすることで制作の的を絞っていくことです。 主に取り組んだことは以下の3つです。

  • ブレないコンセプトをチーム内で丁寧にすり合わせたこと
  • 手法ではなく期待することをヒアリングしながら判断基準を定めたこと
  • 要件を満たせているかフィードバックをもらいながら表現に変換していくこと

Obremoで最も重要なものは、お客様の手元に届く商品そのもの。 商品が手元に届き、使用いただく際の印象でその後継続して購入いただけるかが決まります。 そして、商品はObremoが表現する世界観の中心にいる存在ですので、商品の一部となるパッケージがきちんとデザインできれば、残るクリエイティブに関してもスムーズに制作できると踏みました。

進め方としては以下の通りです。

  • ブランドコンセプト・名前を決める
  • 期待要件のヒアリング・ペルソナ作成
  • ブランドカラーを決める
  • ロゴ制作
  • パッケージ制作
  • 最終調整

そして今回パッケージ制作に関わったメンバーはこちらです。

  • 事業責任者:1名 (コマーステック代表)
  • マーケター:1名
  • デザイナー:1~3名
  • 営業:1名

それでは順番に振り返っていきます。

ブランドロゴ・商品パッケージをはじめとしたクリエイティブ制作には、サービス・ブランドにかける想いやコンセプト、そして誰をターゲットにしているかが意思決定する上で重要な判断基準となります。

実は私がジョインした当初、ペットフードのブランド名検討の真っ只中でした。 一度、この名前で行こう!と決めたものはありましたが、プロジェクトを外から見守るエイチームの林社長にFBをもらったところ「ターゲットの嗜好とそぐわないのでは?」と指摘をいただき、再検討する流れに。 同時に商品パッケージの入稿期日も1ヶ月後に迫っており、迅速なクリエイティブ制作と意思決定が求められました。 (入稿期日はその後相談して制作に余裕のある期日にずらしていただきました。) 各々で商品に込める想いはあるものの、それが明文化されているものはなかったので、私を含めた事業責任者・マーケターの3名でまずはコンセプトのすり合わせを行うことをMTGで提案しました。 ブランド名の決定においても、コンセプトをすり合わせておくことによってメッセージ性と愛着あるものに決められることを期待しました。

ブランドコンセプトのすり合わせはリモート下において円滑に進むよう、社内wikiに進め方をまとめ、関わるメンバーに展開しました。

いつでもここを見れば実施背景を辿れるよう社内wikiにドキュメントを残していきます。

事業責任者・マーケターの2人にもアイデアを出しやすいように他社事例を共有しながら、サービスと商品、それぞれにかける想いを発散してもらいます。

意思決定は基本的に事業責任者である望月さんとマーケター、私の3名で行いましたが、発散フェーズに関しては事業立案者の一人である取締役の船越さんにも加わっていただきました。

上記内容を元に、私でキーワードを整理・抽出し、ブランドコンセプトの草案を3種類作成しました。

抽出したキーワード
コンセプトの草案

方向性を固めながら、最終意思決定者である望月さんと1on1の対面で細かなニュアンスをすり合わせ、最終的に決まったブランドコンセプトと名前がこちらです。

ブランドコンセプトについてしっかりすり合わせを行えたことで、ブランド名も一貫したストーリーを定めることができました。 これが、Obremoの骨格になっていきます。 ブランドの骨格づくりに関する考え方・フォーマットについては、『LOGIC』を立ち上げた佐々木智也さん/株式会社パークの、Designship2020の発表内容「デザイナーの僕が40歳からD2C事業を始めた話」を参考にしました。(貴重なデザインナレッジをありがとうございます🙏)

ブランドの骨格が定まったところでいよいよクリエイティブ制作準備に入っていきますが、幅広い可能性の中から選択肢を絞るために、まず事業責任者・マーケターの2名に商品パッケージに期待することをヒアリングし、要件を固めていきました。

個々の想いや、ビジネス目線で商品パッケージに期待する要件を洗い出し

また、ブランド名決めの反省点を活かし、顧客像が置いてけぼりにならないようにペルソナを作成しました。

ペルソナの解像度をチームで高めるために、ファッションや居住空間のイメージも貼っていきました。

方向性に迷ったり、意見が割れたりした際に、堀さんが好みそうか、自宅に置いてくれそうかなどといった具合にクリエイティブの方針決定のシーンで度々登場することになります。

Obremoが提供するドッグフードは人間と同等水準で管理された食材を使用し、健康に配慮して不要な添加物を含めないことはもちろん、キッチンに置いても気にならない香りが特徴です。

これらの商品コンセプトを加味して、デザインコンセプトを以下のように定めました。

カラーによってブランドの印象は大きく変わるので、ここは慎重に検討していきました。

Obremoに対する想いとして出現した様々なキーワードから連想される色候補を出しながら、実際にサイトに当て込んだ際の印象も検証し、最終的に「自分たちが最も伝えたい価値」を判断基準として茶・紺・オレンジの3色に決定しました。

検討途中のカラー候補
実際に色の組み合わせを当て込み、事業責任者にも印象をチェックしてもらい、決定

定義したカラーに関してはインナーブランディングも兼ねて社内メンバーに愛着持ってもらえるよう、Obremoオレンジ・Obremoブルーと名付け、コンセプトと共に展開しました。

ブランドカラーは使用時の割合と共に3色定義し、デザインコンセプトに従ってそれぞれ意味も込められています。

パッケージデザインは、使用する素材の検討から始まりました。

PET素材やマット加工など、様々な選択肢がある中でサンプルなども確認しながら、デザインコンセプトに則って素材の良さやナチュラルさが感じられるクラフト素材を選定。

表面に施すデザインに関しては最初はとにかくパターンを出していきますが、その中からどうやってデザインを絞っていくか、パッケージに担わせる役割を基準に事業責任者・マーケターで再び認識を揃えていきます。

すり合わせた評価基準に則ってデザインパターンを絞り、実寸のモックを作成したり、社内の中でも一般消費者に近い感覚にいる管理部門の方々にコンセプトに沿った印象を持ってもらえているか聞いて回ったり、「このパッケージ何に見えますか?」というような認識のブレを測るアンケートを取ったりしながらデザインをブラッシュアップしていきました。

パッケージデザイン 評価のためのアンケート

今でこそ肉球がトレードマークとして存在するObremoですが、制作当初はそのアイデアはありませんでした。

社内アンケートの中で、(水玉模様のパッケージについて)「肉球ぽくて好き」という意見をもらい、これは、と思い肉球をモチーフにパッケージを作り替えてみたところ、反応も大きく良くなりました。

肉球をモチーフにしたパッケージのモックアップも制作。写真の人物はパッケージ制作を伴走してくれた営業のKさん

同時進行で制作していたロゴに関しても、単純にロゴタイプだけだと印象に残りづらいかもしれないという声があったため、肉球はロゴにも反映されました。

肉球のあしらいをつけたことでロゴだけでもペット関連のブランドらしさが出てきました

様々なフィードバックをいただきながら最終調整を行い、お客様の手元に届く商品が完成しました。

写真のチワワはコマーステック代表・望月さんの愛犬、虎徹くんです🐶

一連のプロセス内でカラーの定義やグラフィックテイストの方向性は固まったので、アプリやWebサイトに関しても定められた方針の表現を適応していくことでスムーズに作り上げることができました。

こうして、数多くの制作物を短期間で無事にリリースすることができました。

振り返ると細かい部分で反省点が多い進め方でしたが、デザイナーとしてとても良い経験になりました。

まだまだブラッシュアップの余地がある中で事業自体も順調に成長しており、これからもやることが山盛り状態です。

振り返って思うことは、チーム内でブレない判断基準を定めることと、フィードバック内容を表現に変換していくスピード感の重要性はもちろん、何よりも、プロジェクトに関わる全員がコトに向かって率直にアイデアやフィードバックしてくれる環境への感謝が大きいです。

チームメンバーのおかげもあり、大変でしたが非常にやりがいのあるリリースでした。

プロジェクト終了後、代表の望月さんからも嬉しい言葉をもらいました。

まだスタートラインに立ったばかりなので、これから多くの方々に愛されるブランドに育てていきます!

事業への関与がとても色濃いのがエイチームのデザイナーの特徴だと思っていますが、事業づくりと具体の制作どちらも非常におもしろいので、これからも発信していこうと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

今後の記事公開もお楽しみに!

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