エイチームコマーステックのデザイナーの章(@xiolkee)です。

先日ペットフードブランド「Obremo」 立ち上げ時のクリエイティブ制作についてまとめました。

現在も絶賛改善を重ねる毎日を送っております。

今回は、Obremoのクリエイティブの一つ、「商品お届け時の梱包」について、その制作プロセスをお伝えします。

Obremoのペットフードを購入すると、このような梱包で商品が届きます。

パッケージやノベルティ制作では「受け取る瞬間」「使う瞬間」などの利用体験を考慮して設計することが重要な一方、配送梱包の制作に関しては「その前後の体験」も考慮する必要があるという話をまとめてみました。

▼ 事業の立ち上げプロセスや背景についてはこちら

Obremoは、ペットの健康を気遣う飼い主さまに向けたペットフードブランドです。

ブランド名は"絆"を意味し、私たちの提供する商品・サービスを通じてペットとの"家族の絆が深まる、健やかで楽しい日々"が実現することを願って名付けられました。

現在、商品として鶏肉・馬肉・鹿肉の3種類のタンパク源から選べるオールステージドッグフード(以降Obremoフード)を展開しています。

ObremoフードはObremoの公式サイトからフード診断を通してお買い求めいただけます。

Obremoフードの初回購入時には、商品と共に「Obremo BRAND BOOK」というブランドブックと、お礼のお手紙をお届けしています。

その際の梱包はこのようなものです。

ブランドブックでは、Obremoフードについてより詳しく知ってもらうために、ブランド立ち上げの背景やフードの与え方、種類について解説しています。

ブランドブックの中身

梱包とブランドブック、商品すべて含めて「ブランド体験」として、開けた瞬間ワクワクしていただけるように設計しています。

続いて梱包の設計プロセスを見ていきます。

まずはリサーチから着手。

私自身、新しいペットフードをインターネットで購入する上でどんな梱包が「良い梱包」なのか分からなかったため、類似商品や、ターゲットとなるお客様が普段買っているような商品を購入してみました。

化粧品の場合、商品の保護や高級感を演出するために段ボールの材質が硬かったり、ペットフードの場合は、商品によっては段ボールではなく、ポストに投函できるようにレターパックで送られてくるものがあったりと、多くの発見がありました。

リサーチをしながら「Obremoフードを初めて購入したお客様がどんな気持ちで商品が届くのを待っているのか」を踏まえつつ「Obremoではどんなメッセージや印象にしていくか」イメージを膨らませていきます。

私たちは普段、インターネットでの商品購入体験を検討する際には、基本的に実店舗での購入体験を基に考えるようにしています。

実店舗ではお客様が購入手続きを行った後、店員さんから「お買い上げありがとうございました」と商品を手渡されますよね。

Obremoの販売サイトでも購入手続きを行った直後にお買い上げいただいた事に対してサンクスページを用意していますが、その時点ではまだお客様のお手元に商品は届いていません。

先にお金を支払っていただいた上で購入から商品のお届けに時間がかかる分、お待ちいただいたことも含めて再度、Obremoフードを購入していただいたことに感謝を述べたいと思い、体験としてお客様が梱包を開いた瞬間に、Obremoフードを選んでいただいたことに対する感謝を伝える梱包をコンセプトに検討を進めました。

段ボールを開けた瞬間に感謝のメッセージが目に入るような梱包のパターンを検討

もちろん、梱包の製作には費用 (コスト) がかかります。

梱包は専門の梱包製造会社に発注をして作っていただくため、打ち合わせをしながら進めました。

段ボールの製造コストは、材質や、形状、ロット数、印刷に使用する色数など、要件によって変動し、1枚あたり10円程度から数百円程度と大きく異なります。

  • サイズ
  • 材質
  • 形状
  • 掲載情報

などなど……理想の体験を実現するに必要十分な要件を製造コストも加味しながら担当者とすり合わせ固めていきました。

受け取る瞬間の印象や訴求が固まってきたところで終わり、発注、というわけではありません。

忘れがちですが、お届けする商品は最初から段ボールに梱包されているわけではなく、商品を段ボールに梱包する工程が存在します。

多くのお客様に商品を早くお届けするには、梱包を行う際の作業のしやすさの観点も必要です。

梱包に必要な手順が多いとその分1つあたりの梱包完成にかかる時間もかかります。

また、お客様のもとに届いた段ボールは、受け取られ、開封を経て、処分・活用されるところまで考える必要があります。

例えば、猫砂ブランドの「しぐにゃる」さんでは、段ボールがキャットタワーになる仕掛けがあったりします。

この辺りはお客様に提供する体験として何を優先するかを考え判断します。

いろんなパターンを検討しましたが、Obremoフード自体が日常遣いの消耗品であること、2週間に一度や月に一度という頻度でお届けする梱包として考えたときに、最終的にお客様の手元に届いた後の「解体のしやすさ・捨てやすさ」が大事だと考え、シンプルなつくりで組み立てやすく、サッと片付けられるスタンダードなみかん箱形状に落ち着きました。

スペースを邪魔しないコンパクトサイズです

余談ですが、スタンダードなみかん箱形状は環境的にも経済的にも優しい形状です。

段ボールは段ボールシートと呼ばれる大きな1枚のシートから切り出されて作られます。

わかりやすく極端な例で比較していますが、同じ製造工程・シートのサイズで比較した際、左のAの形状を採用すると、1枚あたりから切り出せる型が少なく、切れ端も多く出る一方で、Bの形状の方が多くの箱が作り出せ、切れ端も少なくなることがわかります。

段ボールそのものは再利用可能なものではありますが、無駄を最小限に抑え、環境的にも経済的にも優しい製造を実現する目的達成のための必要十分な要件をデザインすることもデザイナーの腕の見せどころだと思います。

こうして、梱包が使われるあらゆるタッチポイントを考慮した上で、「個々に寄り添う」ブランドであることが感じられるように要件を定めて発注をしました。

また、実際に定めた要件が、本当に寄り添っていると感じられるのかを検証するために、プロトタイプとして、簡易なミニチュアを製作しました。

Illustratorで発注前の図面を再現し、コピー用紙にプリントアウトします。

切り込みを入れてセロハンテープで固定してミニチュアのできあがり。

Obremoのロゴが段ボールの上下を表し、開封時にお客様が上下を間違わないようにしていることや、開封時のメッセージの見やすさなどを確認していきました。

商品のお届けのタイミングは、ブランドがお客様と対話できる貴重な接点です。

つくり手からすると商品のパッケージなどは、商品のブランドを表すものであり工夫してつくることがほとんどだと思います。

一方で、まず最初にお客様の目に触れるのは、梱包である場合がほとんどです。

そしてその梱包は、受け取った後も処分されたり活用されたりとお客様の行動をつくる重要な要素です。

今回は配送梱包を、「梱包作業開始」から「受け取った後」まで考慮してデザインしたことについてまとめてみました。

まだまだ発展途上の事業なので、これから多くの変化があると思います。

今回設計したObremoフードの配送梱包に関しても、まずはスタートラインに立つためにシンプルな形状でリリースしましたが、今後ワンちゃんと楽しめる工夫も凝らしていきたいと思っています。

この記事を読んでいる方の中で、ワンちゃんを飼っている方がいらっしゃれば、ご意見・ご感想など、FBいただけますと幸いです。(TwitterのDMにていつでもご連絡ください!)

これからの改善活動も発信していきますので、見かけた際はぜひまたご一読くださいませ。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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