2021年、私は前任の岡村陽久からバトンを託され、新卒から10年以上働いてきたアドウェイズグループの代表に就任しました。
私が代表に就任する前から現在まで意識をし続けているのは、アドウェイズが開発するプロダクトを通して、インターネット広告を“あるべき姿”に変えていきたいということです。
アドウェイズが全てのステークホルダーにとって、より “本質的” なプロダクト/事業を提供できるように、例えばこれまでにも以下のような取り組みを行ってきました。
- デジタルマーケティング業界の指針になるプロダクトとして『UNICORN』を立ち上げ
- 企業として明確に「誰かを“騙す”可能性のある広告表現は行わないこと」を意思表示
- 「社会にとっての、アドウェイズの存在意義」「アドウェイズが、大切にしている価値観」としてパーパスとバリューを制定
- アフィリエイト広告の概念をアップデートする組織『ADWAYS DEEE』を分社化
- エージェンシー事業で、職能を超えて価値に向き合えるよう事業部別の組織体制へ
従来のインターネット広告の「あり方」から変えていくアドウェイズグループの取り組みをまとめてみようと思います。
では、なぜアドウェイズが、インターネット広告を “あるべき姿” に向けて導く存在になろうと考えるようになったのか。私の新卒時代から遡ってお話していきます。
私がアドウェイズに新卒入社をしたのは、2007年のことです。当時は前代表、現会長岡村が一代でアドウェイズを上場 (当時最年少上場) させ、さらにインターネット広告産業も大きく成長期を迎えたことで、アドウェイズも好調な事業成長を続けていました。
私は入社直後から新規事業の立ち上げチームに配属され、成功と失敗を繰り返しながら、いくつもの新規事業の責任者を担当しました。2011年には、『AppDriver』というプロダクトを開発し、事業単体でも上場可能な規模にまで成長させることができました。
ただ、このように新規事業を立ち上げ続ける中で、アドウェイズ、さらには業界全体の広告への向き合い方に、違和感を持ち始めるようになりました。
違和感の一つは、「売上重視の経営スタイル」についてです。アドウェイズは上場後、事業成長を一番の目標にしていたため、裏を返すと売上、つまりは「儲かるのか?」という点以外の要素を十分に考えられていなかったのです。
この違和感を感じたのは、事業単体で上場できる規模にまで成長した『AppDriver』が、2012年にプラットフォームの規約変更の影響でサービス提供が一時できなくなった時でした。
この時初めて、売上を作ることだけを考えていては、持続的な事業成長には限界があるということを強く感じたのです。
スマートフォン向け広告配信サービスである『AppDriver』は、サービス開始から約2年で国内ダウンロード獲得数が1,200万件を超えるなど、順調に成長をし続けていました。ただ、当時提供していたサービスは、あくまでプラットフォームがあってこそ成り立つサービスだったため、決して良い言い方ではありませんが「おんぶに抱っこ」状態でした。
結果的に2012年、プラットフォームの規約が変わり、『AppDriver』はサービス提供を行うことが一時できなくなりました。規約に左右されるようなビジネスモデルだったため、当時、周囲の人たちから「不正なビジネスを行って儲けているのでは?」といったニュアンスの指摘をされたこともあります。私にとってこの一連の出来事は、非常にショックを受けつつも、腑に落ちる思いでもありました。
ユーザーに適切な情報を、広告を通した価値として提供し続ける。広告企業として、そんな当たり前のことが当時はできていなかったことがわかったからです。自分たちは、広告を通して価値ある情報を提供し続けなければならない。収益が上がることだけに重きをおいて、ビジネスの仕組みをハックする形で成果を出すビジネスモデルは長くは続かない。
つまり「どうやったら儲かるか」ということだけに意識を向けるのではなく、「誰から見ても価値や意義のある仕組みをつくり、持続的に利益を生むシステムを作ろう」という価値観を持って、プロダクトと向き合わなければいけないと考えるようになりました。
そもそも、従来のインターネット広告市場は、ハックしやすく、“誰かを騙すような広告”が生まれやすい環境でした。
私たち広告事業者が利益を追い求めるがゆえに、ユーザーに対して“価値の薄い広告”を配信することが増え、広告はできれば見たくない、触れたくないものだと、煙たがられることが多くなってしまっていたのです。
しかし、『AppDriver』で得た教訓を活かし、私は市場全体が “あるべき姿” に近づいていかなければならないと考えるようになります。
しかし、まずは自分たちが自信を持って、あるべきインターネット広告事業に向き合わなければ、市場を牽引することなど到底できません。そのため「誰かが損をしていないか」「誰が見ても胸をはれる事業なのか」という点を強く意識した事業やプロダクトづくりをし始めました。
広告業界全体を “あるべき姿” に近づけていくために、新たなプロダクト開発や組織づくりに注力していきます。そうして、立ち上げたのが『UNICORN』でした。
『UNICORN』は、デジタルマーケティング業界の指針になることを目指して開発した、全自動マーケティングプラットフォームです。
当時は、広告配信時の効果最適化に非常に大きな手間がかかっており、社内を見渡せば、社員の大多数が単純作業に疲弊しているように見えました。
広告に関わる全ての人が、単純作業から解放されてクリエイティブな仕事、思考する仕事に集中できる世界を実現したい。誰のためにもならない広告が溢れてしまう業界を変えたい。そうして生まれたのが『UNICORN』です。
より自由度高く検証を行うため、あえて子会社化した『UNICORN』は、これまでのアドウェイズにはなかった、プロダクトの成長を軸に据えた組織で、かつ事業としても誰にも損をさせない、清廉潔白でハックができない事業モデルとして成長していきました。成長につれ「この考え方や方向性は間違ってはいなかったんだ」と、私もだんだんと自信を持つことができました。
2019年、アドウェイズグループでは、企業として「誰かを“騙す”可能性のある取り組みは、一切行わない/評価もしない」ことを、全社員に対して明確に宣言しました。
具体的には、例え利益が出ているとしても、消費者が不快に感じる表現のクリエイティブは許容しない、また、アドフラウド (*1) や誇大広告などの悪意のある配信手法は会社として一切行わない、ということを改めて周知したのです。
そして、このような案件で今後売上が上がったとしても、それは一切評価しないということを社員に対しても明言します。
この変更によって、一時的には売上が大きく下がることとなりましたが、それでも「誰から見ても胸をはれるか」と自分や経営陣に問い続け、方針を曲げることはありませんでした。それから数年後の現在、アドウェイズグループは、事業・プロダクトをつくる上での意識が変わり、持続的に成長しつづけられる組織になりつつあります。
さらに、2023年の3月、社会における存在意義である「パーパス」と、大切にする価値観を示す「バリュー」を新たに制定しました。
「なにこれ すげー こんなのはじめて」や「人儲け」という言葉は、スローガンや経営理念という形でずっとアドウェイズの共通の “価値観” として浸透されてきたものです。
このような、革新的なプロダクトを世の中に提供する姿勢や、利益よりも人の可能性を広げることを追求する姿勢を、パーパスという形で存在意義として社会に約束することで、さらにアドウェイズを “あるべき姿” に近づけようとしています。
もちろん、今もまだ変革の渦中ではありますが、アドウェイズグループでは、広告の “あるべき姿” を目指した事業が社員主体でいくつも立ち上がり、組織自体や事業規模もどんどん拡大しています。
いくつか例を挙げていきます。
変化が激しい広告業界の中で、クライアントや提携メディアの抱えているニーズや課題に、いち早く対応、解決するため、2023年にアドウェイズが創業時から出がけてきたアフィリエイト事業を『株式会社ADWAYS DEEE』として分社化しました。
現在、『ADWAYS DEEE』では、パートナー企業の事業成長への貢献のみならず、アフィリエイト広告の透明性や公平性の向上、健全化の推進を強く意識し、アフィリエイト広告を新たな概念へアップデートすべく、さまざまなプロダクトの開発を続けています。
また、エージェンシー事業(広告代理業)では、これまでは職能別に分かれていたところから、営業、広告運用者、エンジニア、デザイナーが職種や役割を超えて、「本質的な広告価値」に向き合う事業部別の組織を形成しています。
2022年には、「人」の高い技術力・創造力と高度なテクノロジーを融合させた、アドウェイズ独自のデジタル広告最大化ソリューション『AMP』シリーズが、広告代理業の事業部から誕生しました。
このように、「本質的な価値とは何か?」「自社の利益だけに捉われず、ステークホルダーに対して最も価値のある施策は何か?」を考え、プロダクトを創出する組織・文化が根付いてきています。
私は、本来広告とは、普段の生活では目にすることがなかった情報に偶然出会える喜び、いわば“セレンディピティ”を得ることのできる貴重な存在だと考えています。しかし、今広告はそのような “あるべき姿” とは遠いものになってしまっています。
私がアドウェイズグループの代表に就任した際、全社員に対して “特定の集団が自身の利益だけを主眼に置いた活動を行うべきではない” という言葉で、持続的な成長を志すことを伝えました。
自分たちや、一部のステークホルダーだけが良くなるような施策は、必ず誰かに負の皺寄せが起こってしまいます。逆に、誰かが損をしない、誰も騙さない、そのような経営・事業・組織づくりができれば、必ず持続的に利益を生み続けることができます。
そのような意識で、アドウェイズグループでは広告の可能性・本質的な価値を取り戻していくために新たな事業・プロダクトを創出し、市場を牽引するようなインパクトを与えられる存在になるべく歩みを進めていきます。
これまでなかった “なにこれ すげー こんなのはじめて” を、できるだけ多くの方々へ届け、すべての人が成長できる社会へ。アドウェイズは、事業を通じて、本質的な価値を創造し、パーパスを実現してまいります。