キュービックのUXデザイナーの朝倉です。2017年に入社して以降、デジタルメディア事業のマーケターとして3年を過ごし、2020年のUXデザインチーム発足のタイミングでUXデザイナーに転身しました。
今回は僕がUXデザイナーになる前、マーケター時代にUXリサーチのプロセスを取り入れたことで、今までにない機能を生み出すことができた改善プロジェクトについてまとめていきます。
そのプロジェクトをきっかけに今はUXデザイナーという肩書きになっていますが、UXデザインのプロセスは職種かかわらず取り入れられるものだと思っているので、ぜひ興味のある人は試してみてほしいです。
2019年11月に、マーケターを対象にしたUXリサーチ研修が行われました。当時マーケターだった僕は「UXデザイン」という言葉だけ聞いたことある程度でしたが、研修で具体的な手法やその効果などを知り、とても可能性を感じました。
同時期に、僕が担当するクレジットカードの比較メディアにおいて改善プロジェクトが動いていました。
当時クレジットカードの比較サイトというのは、競合が多く、またどれも同じような仕様のものばかりでした。売上の観点から、根本的にサイトを見直し、今まで出てこなかったようなアイデアをサイトに落とし込むためのプロジェクトに、POとしてアサインされたのです。
ちょうど研修が終わったタイミングで、僕自身UXリサーチのプロセスを試したいと思っていたので、本格的にこの改善プロジェクトで取り入れることに。
実際にUIデザイナー、フロントエンドエンジニアもアサインさせてもらい、今までとは違うプロセスでプロジェクトを進めることにしました。
まず最初に行ったのが、リサーチクエスチョンの設定。明確にリサーチを行う目的を定めることにしました。それまでも、なんとなくユーザーリサーチはしていたものの、「リサーチしたけどそれが何に繋がったのか」を明確に答えられない正直行き当たりばったりなやり方をしていたように思います。
今回は、以下4つのクエスチョンを定めることに。
・ユーザーにとって比較しやすくて、意思決定しやすい比較サイトとは何か?
・ユーザーが比較サイトに期待しているもの、比較サイトに感じている価値は何か?
・ユーザーの意思決定に必要なものは何か?
・クレジットカードを決めることはユーザーにとってどれほど大きい意思決定なのか?
これらの答えを探すことを目的として、日記調査やユーザーインタビューなどを行いました。
リサーチで得たものを整理すべく、次に「価値マップ」を作ってみました。
価値マップとは、ユーザーインタビューなどで得た情報を構造化・整理することで、ユーザー自身も言語化できていない価値観を導き出す手法です。
その結果、新たに
・クレジットカードに+アルファの価値(ポイントやマイルなど)を感じていて、なるべく頻繁に使いたい
・基本は現金派で、有事のために一応クレジットカードを持っている
の2パターンでユーザーを分けられるのではないか、という仮説が生まれました。
そこで、横軸に「購買意思決定のスタンス」を設け、4象限でユーザータイプを分けてみます。
この分け方自体は、今回初めて生まれた区分でしたが、今まではなんとなく上記図でいう右下のユーザー(カードをあまり使わないつもり/意思決定は勢い派)を対象にしていたように思えました。
今回のプロジェクトでは、今までのサイトから抜本的に変えるという主旨もあったので、思い切って左上の層(カードをたくさん使うつもり/意思決定は慎重派)を狙うことに。
次にプロトタイプを作りました。リサーチからの価値マップで、ユーザーのインサイトまで深く認識できていたため、比較的スムーズに複数案を作ることができました。
そして、調査会社に依頼し、プロトタイプを多くのモニターの方に触ってもらって項目ごとの課題を洗い出していきました。
そこでさらに新しい機能アイデアが生まれ、無事サイトのUIを一新。
・それまでの機能や年会費ではなく、利用シーンからソートする検索画面に
・多くのブランドを一括に比較ではなく、気になったブランドを「KEEP」し、それらブランドを好きな項目で比較できる画面に
など、よりユーザーが自然に自分に合ったクレジットカードに辿り着きやすくなるようなサイトになりました。これらの機能は、今までのプロセスでは絶対に出なかっただろうなと、今になっては思います。
ユーザーの反応には有意な改善がみられ、プロジェクトは成功に終わりました。そして僕はUXリサーチをプロセスに組み込むことで、ユーザーと商材(今回でいうクレジットカード)の関係性を新たに捉え直せた、という確かな手応えを持つことができました。
ユーザーについて様々な切り口で観察した結果、リサーチ以降のプロセス(今回は価値マップ)で新しいユーザー像が浮かび上がったのは、一番の収穫でした。
加えて、今までのプロジェクトは基本的にマーケターだけで進めることが多かったのですが、今回プロトタイプなどの新しいプロセスを取り入れたことで、デザイナーの人と協働することが多くあり、とてもワクワクしたのを覚えています。
このプロジェクトが終了した後、2020年7月のタイミングでXDC内にUXチームが立ち上がり、CDO(Chief Design Officer)篠原の誘いを受け、僕はマーケターからUXデザイナーに転身しました。
僕自身あまり職種にこだわりを持っておらず、「今回のプロジェクトでのUXリサーチめちゃくちゃ楽しかったし、同じようなことをたくさんできるならありか」と思い、誘いを受けた形です。
様々な手法を駆使し、ユーザーのことを真に理解していく。チームの中で一番ユーザーに詳しい、いわば「ユーザーの代弁者」として、これからもユーザーに愛されるものを作っていきたいです。