2025年4月よりDeNAデザイン統括部部長に就任した久田です。

DeNA Design は、このたび新たな体制へと移行しました。キーワードは、「集権的パートナーシップ型組織から、自律分散・共同体型組織への進化「全社のナレッジや関係を循環させるデザインボード」の2つです。 これは、デザイン組織発足から10年以上の変遷を経て、これまで以上に事業に寄り添い、デザインが果たせる役割を拡張していくための一歩です。

DeNA Design 新体制に関するキーワード

今回は、このたびの組織変更の背景や狙い、新たにスタートした取り組み「デザインボード」、そして統括部長としての意気込みをお伝えします。

DeNA Designは、これまでエンタメ領域だけでなく、ヘルスケア、オートモーティブ、スポーツなど多岐にわたる事業を支えながら、幅広い領域のデザインを手がけてきました。そのなかで培ったノウハウや実績を活かし、より事業に直結したかたちで価値を生み出したいという思いが、今回の組織変更の大きな推進力です。

組織としての機能やパフォーマンスを高めるには、デザイナーが事業理解を深めた上で、スピーディに意思決定やアウトプットを行う必要があります。一方で、デザイナー同士が連携しやすい構造を保ち、社内で培ったナレッジを共有できる状況をつくることも不可欠です。これらを踏まえて、DeNA Designは新体制へと舵を切りました。

今回の体制変更におけるポイントは、「自律分散・共同体型組織」への進化です。

これまでのDeNA Designは、集権的な横断デザイン組織として、各事業部にデザイナーをアサインする形で機能してきました。今後は、各事業部内にデザイン組織を移管(※)し、自律分散的にデザイン組織を運営していく一方で、全社横断のつながりは引き続き保持する構造へとシフトします。

(※) すべてのメンバーが事業部所属になるわけではなく、事業を横断して活動する方が価値発揮しやすいメンバーは引き続き横断組織に所属する方針としている
DeNA Designの組織変化の概要

このような組織変化の背景には、事業会社であるDeNAにおいて、デザインが発揮する価値をいかに高めていくかという根本的な「問い」があります。

デザイナーの役割は「絵を描くこと」にとどまらず、戦略策定やリサーチ、プロトタイピング、実装に至るまで、職域を広げるほど価値が増す存在だと捉えています。

特に事業会社においては、これらを一貫して担うことで、戦略と表層の一貫性が生まれ、意思決定やコミュニケーションの効率も格段に高まります。だからこそ、このようなマインドセットとスキルを兼ね備えたデザイナーをいかに増やしていけるかが、重要なテーマであり続けてきました。

ただし、これを個の力だけで実現することは難しい。そのため、マインドセットやスキルの育成、事業部との連携強化などの役割をDeNA Designという横断組織に集約し、推進してきました。今回の体制変更も、そうした取り組みの延長線上にあるものです。

DeNA Designの変遷 (カルチャーデックより抜粋)
https://design.dena.com/uploads/pdf/culture-deck.pdf

DeNA Designでは、これまで以上に事業に深く入り込み、事業成長をさらにリードしていける状態が整ったと考えています。

そう考える根拠の一つに、GL(グループリーダー)の増加があります。単にピープルマネジメントができるだけでなく、事業戦略にアラインしたデザイン戦略を描き、チームを率いて実行し、成果を出せる人材が着実に育ってきました。

その結果、各事業部においてデザイン面から事業を推進する事例や、事業部ごとに最適化されたデザイン組織の立ち上げ事例も増えてきています。

また、「どのような人材が必要か」という要件やキャリアパスも整備され、それがGLの増加にもつながっています。加えて、「DeNA Design」という組織のプレゼンスも高まりました。

このような土台をつくれたからこそ、事業へさらに深く入り込み、各事業で求められるケイパビリティに沿った形で事業成長をリードしていくという狙いがあります。

事業に深く入り込む一方で、事業部を横断した全社横断での情報・知見の共有や人間関係が希薄になってしまうと、インハウスデザインとしてベースとなる強みや成長が失われるリスクも考えられます。

そこで、各事業部のデザインチームを代表するチーフデザイナーで構成する「DeNA Service Design Board」という仕組みを導入することで、以下2点を戦略的に進めていきます。

  1. 徹底した情報共有による事業成長の推進

  2. 事業を推進するデザイン人材の増加

デザインボードの概念図

1つ目は、事業を超えた徹底的な情報共有によって、事業成長を推進することです。

情報共有の重要性を語る際によく例に挙げるのが、飛行機事故の確率に関する話です。IATA(国際航空運送協会)の調査によると、100万回のフライトあたりの事故件数はわずか約0.8件。この驚異的な安全性の裏側には、業界全体における徹底的な情報共有があると言われています。

デザイナーという職種は、エンジニアリングや、マーケティングなど、さまざまな職能と常に関わる立場にあります。だからこそ、デザイナーが情報共有のハブとして機能することで、単一の事業を超えた横断的な価値を生み出すことができると考えています。

徹底した情報共有による事業成長の推進

2つ目は、事業を推進できるデザイン人材を引き続き増やしていくことです。

ひとつの事業部に属しているだけでは、幅広い経験を積みにくくなったり、ロールモデルとなるデザインリーダーの存在を身近に感じづらくなる可能性があります。そこで、横断的な仕組みを通じて学習を促進するとともに、リーダー層に限らず、若手デザイナー同士もつながりを持てるような機会をつくっていきたいと考えています。

事業を推進するデザイン人材の増加

このような目的に対し、活動内容の例としては以下が挙げられます。

  • レビューセッション:各プロジェクトのデザインを相互にレビューし合い、新しい視点やアイデアを取り入れる

  • ナレッジ共有:研究・検証結果やツール、デザインシステムに関する情報を集積・公開し、誰でも活用できるようにする

  • 共通課題の解決:複数の事業で共通するユーザビリティやブランド課題を抽出し、ガイドライン化していく

このデザインボードを活用することで、個別の事業にフォーカスしながらも「デザイナーがつながり続ける環境」を維持し、リソースや知見のロスを最小限に抑えることが狙いです。

新体制のスタートにあたり、統括部長として強く意識しているのは、「先頭で旗を振る存在」となることです。デザインを事業成長のドライバーとして機能させることや、AIとデザインの可能性を切り拓くなど、先陣を切って方向性を示し、形にしていくことで、組織全体の挑戦を後押ししていきます。

1. 事業成長のドライバーとしてのデザイン

  • ただ与えられた要件に応えるのではなく、事業戦略の一部としてデザインがどう貢献できるかを考え抜く

  • デザイン思考を広く共有し、新しいビジネスチャンスの創出にも寄与していく

2. 学習と挑戦のカルチャー

  • 失敗を恐れずにチャレンジし、すぐにフィードバックを得て改善するサイクルを組織に根付かせる

  • 個々のデザイナーがスキルアップしやすい環境を整備し、チーム力を高める

3. 全社的なコミュニケーションとシナジー

  • デザインボードなどの仕組みを通じて、事業や組織の垣根を超えた情報交換を活発化させる

  • 全社規模でデザインのあるべき姿をディスカッションし、連携・共創を進める

この組織変更は、DeNA Designが次のステージへと踏み出すための大きなチャンスです。各事業とのコラボレーションをこれまで以上に深めながら、デザイナー同士の結束力を高め、より広い視点からユーザーや社会に貢献できるようなデザインを形にしていきたいと思います。

これからのDeNA Designは、事業との強い結びつきを持ちながら、全社的な連携とナレッジ共有にも力を注いでいきます。

その要となるのが、今回ご紹介した新組織体制とデザインボードの取り組みです。ぜひ今後の成果にご期待いただければ幸いです。

読んでくださった方々に、私たちの挑戦や意気込みが少しでも伝われば嬉しいです。今後もDeNA Designの活動を追っていただき、応援していただければと思います。ありがとうございました。

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