GMOメディアでマネージャー兼チーフデザイナーという役割を担っている出井です。
私は、2018年にサービスデザイン部が立ち上がってから、マネジメントの立場にありながらも、現場のデザイナーとしての活動を中心に活動しています。
部長の岡本がマネジメントとして動いている中で、“2人目のデザインマネージャー” として、GMOメディアサービスデザイン部がさらに多くの付加価値を出していけるように、いわば “遊撃隊” のように新しい価値を生んでいく動きを現場から推進してきました。
では、なぜこのような役割が必要なのでしょうか?具体的に、サービスデザイン部の立ち上げと並行して自分がどのように動いてきたのかをまとめてみます。
GMOメディアにサービスデザイン部が生まれたのは、2018年のことです。
はじめは、組織づくりとして先行していたエンジニアリング組織の経験豊富なエンジニアと共にマネジメントを行っていましたが、2021年に体制を一新し、2014年に新卒でGMOメディアに入社した岡本がサービスデザイン部の部長に就任します。
実は、2021年の部長交代のタイミングで、私と岡本のどちらが部長になるのか?ということが話し合われていました。当時は、出井がマネージャーとチーフデザイナーを兼務しており、岡本はチーフデザイナーという立場でマネージャーは未経験でした。
結論として、岡本が部長に就任しました。部署の立ち上げ以前にも新卒採用中心で組織をつくってきたGMOメディアのサービスデザイン部は若手メンバーが多く、同じく新卒から入社してどんどん組織を引っ張っていた岡本がトップを担う方が、メンバー全体の目指す先も明確になるだろうと考えたためです。
ここで、部長にならなかった自分が考えなければいけなかったのは「唯一のシニアデザイナーとしてできる貢献とは何か?」という問いです。
20年弱のデザイナーキャリアがあり、そのうち10年をGMOメディアに費やしてきた自分が、トップではないポジションを取り、何をするべきなのか。どうすれば立ち上がったばかりのサービスデザイン部がより事業に価値を出していくことができるのか。そのようなことを考えていました。
ここで自分の中で決めたのは「自分は、部長である岡本を支える、2人目のデザインマネージャーである」ということでした。
デザイン組織が立ち上がっても、現場のデザイナーに対する期待に大きな変化が起きるわけではありません。
また、デザイン組織が行えることに対して全社としての解像度も低く、デザイン組織への期待にも大きな変化はありませんでした。
サービスデザイン部としては、そのような「このままでは変化が起こりづらい状態」に対して、「これもサービスデザイン部でやれますよ」と示していき、実績を出していくことで、任されることの範囲を広げていくことが必要だと考えました。
一方で、部長の岡本だけでこのようなマネジメントをすべて行うのは、非常に難しいことです。
デザイン組織のマネジメントは、現場のデザイナーの育成や採用、実績を出すためのディレクション、役割拡張のための方向性定義、他部署とのコミュニケーション...など、幅広い役割が必要なためです。
このように俯瞰していくと、シニアデザイナーである私がやるべきことは「部長を支える2人目のデザインマネージャー」として、現場とマネジメントを効果的に接続するような立ち回りだと理解できました。
岡本には前線で組織の未来を描いたり、期待を引き出してくる役割を担ってもらう。その期待に対して、速く確実に現場から応えていくことこそ、自分が責任を持つ部分だと考えています。
あくまで自分は現場でのプレイングマネジメントを担い、現場のデザインの生産性を高めていきながら、デザイン部・事業としてできることを増やしていくための実績を出すことに集中していくことにします。
そのような連携を続けていけば、その実績を持って、岡本もさらに多くの領域を開拓してこれるだろうと考えていました。
まずは、新たな期待に応えるための時間を確保するために、現場でのデザイン業務の生産性を高めていく必要があります。
自分自身、「ゲソてん byGMO」というゲーム事業にプレイングマネージャー的な立場で参加し、生産性を高めるための工夫を重ねることで、余裕を生み出しながら事業を安定的に成長させられるようにしています。
例えばその一つとして、アサイン調整面を工夫しています。
作業スピードを考慮して、緊急の案件などは自分が担当して、すぐに終わらせることが多いです。
逆に、育成の観点で、事業的にも時間をかけて良いものや、難易度が高いものは、若手のメンバーに積極的に持ってもらいます。
案件ごとのデザインレビューは、デザイナー全員で集まって行っています。
自分からのレビューは、デザインの代替案も共有したりして、チーム全体の基準の底上げができるように意識しています。
このような活動の中で現場のデザイナーに任せられる範囲が大きくなっていくと、少しずつプレイングの余裕が生まれてきます。
私は、このような余裕を使って、サービスデザイン部としてはまだチャレンジしていない新たな領域で、最初の実績を生んでいくことにチャレンジしています。
新たな領域は、事業におけるものと、デザイン組織におけるものの2つから考えています。
事業を大きく伸ばすためのアイデアや技術的チャレンジが常に生まれている中で、技術面や体制面を含め、デザインがどのように関わっていけるかについて事業オーナーと意見交換を行います。
このような議論にデザイナーが入る意義は、出てきたアイデアをそのままにせず、すぐに最小単位で実現可能なMVP (Minimum Viable Product) の仮説をつくってくることができることでしょう。
私は、毎回議論の後に出てきたアイデアを、プロトタイピングして「こんな感じですかね?」と投げかけるようにしています。
具体的な機能に関しては、空中戦になるような議論は行わず、先に調べて「こうするべき」という感じでラフを持ち込みます。そこから事業責任者などのフィードバックをもらって進めることが多いです。
サービスデザイン部ができることを広げていくことにも取り組んでいます。
アイデアの種は、部長の岡本から出てくることが多いです。他社のリサーチや体系的な学びのインプットから「うちだとこれどうなんだろう」「うちでもこれやりたいね」といった意見をSlackや週2回のMTGの中で頻繁に交換し、発散の中で解像度が上がってきたらNotionにまとめていきます。
マネージャー同士の関係性としては、「アイデアの種」を岡本が生んできて、お互いに得意なタスクで分担して実現可能な形に可視化していきます。
実際には役割は明確にわかれていませんが、岡本には、どんどん攻めていくようにしてもらっています。
例えばサービスデザイン部の枠を越えて、全社の人事機能に関する取り組みを経営層や他部長陣とやり取りして進めていったり。GMOメディアの枠も飛び越えて、GMOインターネットグループ全体のクリエイターシナジー会議という会議体の中核を担っていったり。
私は、岡本が「これもサービスデザイン部でやれますよ」と持ち帰ってきたものを、高速で実現可能なアウトプットにしていくことを意識しています。実績が伴うことで、どんどん岡本が攻めていけるようになるはずだと考えています。
例えば、その一つが、全社の戦略人事機能を担うカルチャーデザイングループの立ち上げです。
これまでGMOメディア全社として存在していなかった、横断的な戦略人事機能を立ち上げる動きを岡本が開始し、結果的に2024年4月「カルチャーデザイングループ」というチームがサービスデザイン部内に立ち上げられました。
私は、2023年頭から、岡本と一緒に戦略の設計や実行を進めていました。
岡本がどんどん社内の事業部長や経営層を巻き込んで、問題の共有や、施策の決定を進めていく裏側で、私は最速でアウトプットし小さく確実に実績をつくる動きを続けます。
カルチャーデザイングループを立ち上げた直後も、ビジョンやバリューの浸透資料のアップデートやバリュー浸透のための社内ポスターの設計などの監修を行い、速度を落とさずに多くのアウトプットを出すことで期待に応えていきました。
他の例で言うと、GMOインターネットグループ全体のクリエイター戦略に関わる制作なども積極的に請け負うようにしています。
GMOインターネットグループ全体のクリエイター戦略を扱う会議で「GMOインターネットグループが提供しているサービスのUX品質を確かめられるようなものが必要そう」「GMOインターネットグループのデザイナー全体のプレゼンスを高めていくようなことをしたい」といった問題意識が生まれると、よく岡本は「GMOメディアでやりますよ」と持ち帰ってきます。
その後岡本が持ち帰ってきたものを、私や他のデザイナーで、すぐに実現可能な形にアウトプットしていきます。例えば「GMO UXチェックリスト」「GMO DESIGN AWARDの特設サイト」などをこれまで作成しています。
このような取り組みを続けることで、サービスデザイン部は、GMOメディア社内だけでなく、GMOインターネットグループ全体に対しても貢献していけるデザイン組織へと成長しています。
このような動きを繰り返すことで、サービスデザイン部は、各事業・全社組織に価値を生み出せるデザイン組織に変わりつつあります。
私が所属する「ゲソてん byGMO」事業では、常に新しいチャレンジが生まれ、デザイナーは事業での役割を広げられています。
デザイナー不在の事業部においても、サービスデザイン部からテストマーケティングや新規サービスの立ち上げからグロースの支援をおこない、可能性を広げています。
さらには、全社組織に対して戦略人事機能を担うカルチャーデザイングループの立ち上げや、GMOインターネットグループ全体のクリエイターシナジー会議なども推進していけるようになっています。
これらは、小さくとも実績を出し続けていくことで、結果として大きくなったものだと思っています。
部長という立場でなくとも、現場のシニアデザイナーの立場から、組織を引っ張っていくことができるはずだと、長く取り組んでみて改めて確信しています。
ここまで個人の目線での変遷をまとめてみて、改めて、インハウスのデザイン組織における現場のシニアデザイナーの役割の一つは「付加価値を追加していく」ことだと思っています。
単純に制作を行うこと自体にはそこまで課題がなくなった時「その先に何を担うのか?」という問いはデザイナー誰しも考えていく必要があることでしょう。
私は、自分の専門性を、事業やデザイン組織としての付加価値づくりに活用していきたいと考えています。
そして、GMOメディアでは、このようなポジションをチーフデザイナーと呼んでいます。マネジメントと対になり、現場を専門性で引っ張っていく役割です。
ただ、GMOメディアにおけるデザイナー全員が全く同じアウトプットを出す必要はありません。あくまで、自分の興味領域をもとに、自分は何の専門性で貢献していくのかを考えることが大切です。
特に私が責任を持っている専門性は、早く実現可能性のあるものをつくり、事業や組織が「こんなこともできそうだよ」ということを一番に示していくこと。いわば “遊撃隊” のような存在だと捉えています。
インハウスのデザイン組織の役割はまだまだ不確かなものです。自分の専門性の活かし方を確立させていくことに、インハウスデザイナーとして責任を持たなければいけません。
私はこれからも、GMOメディアサービスデザイン部の ”遊撃隊” として、新たな領域を切り拓いていきます。